ベルント・ヴァイクル
前回取上げたイケアには、スウェーデンの酒や食材も売っている。
そこで見つけた「ELDER FLOWER」のドリンク。
そう、「にわとこ」の花のことなんだ。
ヨーロッパでは日常的な草木らしく、その花のエキスをシロップにして飲んだり、木や根を薬草としたりしているらしい。
「にわとこ」にピピッときたのは、そう、ワーグナーをお好きな方なら、もうおわかり。
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の第2幕で、ザックスが初夏の夜に、自分の靴屋の店先で、若い騎士の斬新な歌や、今日起きた出来事を回想して歌う。
このモノローグが「にわとこの花の香しさ・・・・」である。
してその味は・・・・、一言でいえば、爽やかの一語。
蜂蜜入りなので、私にはちょっと甘めだから、ミネラル・ウォーターや炭酸水など割るとさらに爽快になる。
いや、焼酎と炭酸で「にわとこハイ!!」。
実際に試してみたら、かなりイケル。
「わたしは気にいったぞ」
夏の一夜、物思いにふけりながらの1杯にどうぞ。
でもくれぐれも、酔って靴を叩いたり、大声で歌をうたっては、なりませんぞ。
「ベルント・ヴァイクル」ほど、ザックスとして舞台で絵になる人はいない。
すらりと姿勢のいい長身で、お髭も上品。
嫌味のない人柄がにじみ出たかのような、クセのない美声。その声域は広いが、特に中域のあたりの美しさには惚れ惚れとしてしまう。
ウィーン生まれのヴァイクルは、当初カヴァリエ・バリトンとして甘口の役柄ばかりだったし、大作録音ではメロートや伝令士やベックメッサー!ばかりだった。
そのヴァイクルは、先達プライやF=ディースカウと同じように、徐々にドラマテックな役柄にステップアップして行くことになる。
ウォルフラム、ヨカナーン、マンドリーカ(素晴らしい)、アンフォタス、アルマヴィーヴァ伯爵、オランダ人、そしてハンス・ザックス!!
ヴァイクルのザックスは、バイエルン国立歌劇場の来日公演で接することが出来た。
若々しく覇気に満ちたザックスは、3幕で椅子を投げ飛ばし、嫉妬してみせるような演出もあって、思慮よりは行動が先に立つタイプに思われたが、その朗々たる声は、NHKホールの隅々まで響き渡っていた。
それより前に、NBSが企画した「ガラ・コンサート」でも真近に聴いたし、飯守氏率いる名古屋フィルでのリサイタルも最前列で聴くことができた。
後者は、目の前で歌っていただけに、その声が耳にビンビンと響き、圧倒されっぱなし。
そんな訳で、まだまだ元気なヴァイクルが好きである。
「タンホイザー」「マイスタージンガー」「ハンス・ヘイリンク(マルシュナー)」「ヴァンパイア(マルシュナー)」「オイリアンテ」「皇帝と船大工(ロルツィング)」「低地(ダルベール)」「火の欠乏(シュトラウス)」
ドイツ・ロマンテックオペラの真髄がここに惜しげもない美声で歌われている。
加えて、大半を指揮する、故ハインツ・ワルベルクの雰囲気豊かな伴奏がいい。
1982年の録音。
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コメント
こちらでもこんばんは。ヴァイクルのザックス(と、マンドリーカ)は私も観ましたが、それよりこのCDの曲目は気になります。マルシュナーにダルベール、ロルツィング・・・。美味しいところが揃ってますね。魅惑的です。
投稿: naoping | 2007年8月23日 (木) 22時23分
naopingさん、こんにちは。
これいいでしょ。アカンタレーベルは、R・コロも大量に出てましたが、いずれも「まぼろし」状態のようです。
ワーグナー以外の曲がえらく素晴らしいですよ。
そんなにいい声だして、もったいないよ!と言いたくなるヴァイクルさんです。
追)にわとこハイ、チャレンジしてみて下さいネ(笑)
投稿: yokochan | 2007年8月24日 (金) 00時39分
>「ELDER FLOWER」のドリンク。
へぇ〜〜飲んでみたいです^^;
>ヴァイクル
かっこいい方ですね・・そういえば、
>「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
新国で演出をなさったとき「ニワトコ」についてオペラトークで語ってらっしゃいました。
『ヴァイクル:まず、この物語の中の日付ですが、6月20日、21日という時期です。ヨハネ祭が6月21日です。実は、この歌、Was duftet doch der Fliederの“Flieder”は通常“リラの花”のことを指しますが、この時期にはバイエルン地方ではリラの花は盛りを過ぎています。ただし、同じFliederでも“ニワトコの花” (Holunder/英語名はElder)を意味することがあり、この場合はこのニワトコについて歌われていることになります。実際にFliederという名前のワインがありまして、それに使われている実はHolunderニワトコなのです。』
http://www.nntt.jac.go.jp/release/r473/r473.html
投稿: edc | 2007年8月24日 (金) 08時24分
euridiceさん、こんにちは。
ヴァイクル演出、私も観劇しました。同時期上演のミュンヘン演出が後味悪かったのに比べ、室内の多用は目立ちましたが、素直に納得できる演出でした。名ザックスだけに、細部もよく研究してるんですね。
興味深く拝見しました。
Fliederという名のワインを是が非でも飲んでみたいもんです。
にわとこ(?)ドリンク、お試し下さいませ。
投稿: yokochan | 2007年8月24日 (金) 23時55分
ヴァイクルの録音で是非一聴してみたい盤が、ございます。1979年頃に国内盤LPの出た、コード・ガーベンのPf伴奏による、DG原盤の『リヒャルト・シュトラウス・リート集』です。これは未だ外盤でも、CDリリースされて居ないのでしょうか。
投稿: 覆面吾郎 | 2020年11月29日 (日) 10時35分
ヴァイクルのシュトラウスのご案内のレコード、ジャケットをよく覚えてます。
たしかに廃盤のままですね。
せんだって、ヴァイクルのヴェルディアリア集を入手しましたが、朗々としたあの声で聴くヴェルディ、なかなかのものでした。
投稿: yokochan | 2020年12月 1日 (火) 08時39分