ブリテン 「ピーターグライムズ」4つの海の間奏曲ほか ラニクルズ指揮
殺伐とした海。
ブリテンの「ピーターグライムズ」の海は、北海あたりのもっと救いようのない厳しい海だ。
海のある街に育ったものだから、海を見ると心が落ち着く。
冬でも寒さにめげず、海を見に行くことが多い。
いつも工事中で、これまた殺伐とした人工的な光景。
でも人間の表情豊かな工事仮設に、妙な安心感と温もりが。
都会の悲劇、バーンスタインの「ウエストサイド物語」。疾走する現代社会の都会では、もう起こりえないような出来事ともいえる。
無関心な人間が流れゆくように歩き去る。
今日は、20世紀のオペラ3作から、シンフォニックな場面を収録した1枚を。
スコットランド出身のオペラ指揮者「ドナルド・ラニクルズ」が手兵の「サンフランシスコ・オペラ」のオーケストラを指揮している。
ラニクルズは、以前「トリスタンとイゾルデ」を取上げた。なかなかダイナミックな音楽を作る人で、その彼が私の好きな系統の近代ものを取り上げているし、MTTの交響楽団ではない、サンフランシスコのオペラオケがどのような実力なのか、興味シンシンで聴き始めた。
1.ショスタコーヴィチ 「ムツェンスクのマクベス夫人」組曲
2.ブリテン 「ピーターグライムズ」パッサカリアと4つの海の間奏曲
3.バーンスタイン 「ウエストサイド・ストーリー」シンフォニックダンス
ドナルド・ラニクルズ指揮 サンフランシスコ オペラ オーケストラ
いやこれは実に面白い選曲であり、演奏だ。
ショスタコのこの過激なオペラは、まだ全曲を聴いたことがない。
DVDもいくつか出ているが、ロシア版ヴェリスモを通り越して、人間の欲望の行き着くところを劇にしてしまった感じの作品。その音楽も不協和音あり、ハチャメチャ乱痴気騒ぎありで、ユニークなもんだ。
そんなあとに、ブリテンを聴くとほっとする。
真面目でシリアスな音楽だけれど、気品が保たれていていい。
最後のバーンスタインになると、レニーの人間愛とでも言おうか、ダンスひとつをとっても、一緒に手をとってくれちゃう雰囲気で、都会の殺伐も捨てたもんじゃぁないと思わせる。
これらの対照的な3作を、ラニクルズは実に切れ味よく振り分けている。
ノリもいいし、ブリテンのクールさもいい。ショスタコも熱い。
そしてこのオケがまた巧いもんだ。アメリカのオペラオケの実力は恐るべしだ。
| 固定リンク
コメント
アラヤダ……遠州灘いうたらワタシの故郷ですよ(既に実家は無くなっちゃいましたけど)。
懐かしい。よくこの海で人が死にました。
ブリテンの音楽と「気品」、なんとなくわかります。統制とれてるし、保守的ですらありますし。
投稿: しま | 2007年9月 5日 (水) 11時23分
しまさん、こんにちは。
あらそう、遠州灘ですか!なかなかに厳しい雰囲気の海ですね。
ワタクシはノンキな相模湾の出です。
海と人の命はこれまた厳しい相関関係にあるようです。
ブリテンは、まだまだ未開拓分野ですが、これからじっくり広げて行こうと思ってます。
投稿: yokochan | 2007年9月 5日 (水) 23時01分