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2007年9月19日 (水)

プレヴィン指揮 NHK交響楽団 武満、コープランド、ラフマニノフ

Nhkso9_2 奇跡的なチケットゲットに眠れない前夜。というより、飲み過ぎ過ぎで寝不足。眠いなんていってらんない。「そんなの関係ナ~イ!」ってんだい。
プレヴィンのラフマニノフが聴けるんだから。

 武満 徹 「セレモンディアル」 An Autum Ode
         笙 :宮田まゆみ
 コープランド バレエ組曲「アパラチアの春」
 ラフマニノフ 交響曲第2番


宮田ますみ笙による武満徹の作品をライブで聴くのはこれが3度目。
プレヴィンとN響(マーラーの4番をやった!)、ジョナサン・ノットとバンベルク響である。
いずれもコンサートの冒頭におかれ、その繊細な響きに聴き手の集中力をのっけから高めてしまう効果があった。
今回は、それと同時に静謐な雰囲気の笙のソロを受けたオーケストラの柔らかであまりにも美しい音色に魅了されてしまった。

アパラチアの春は結構好きな曲で、新旧バーンスタインを聴いているが、プレヴィンは録音してないかもしれない?
開拓時代のよきアメリカの素朴な物語。映画「シェーン」のラストに出てくるような風景を思わせる懐かしい音楽。プレヴィンはN響から、心暖まる明朗でほのぼのとした音を難なく引きだしてしまう。最後のシェーカー教徒の印象的な賛美歌が各楽器に橋渡しされていって、全楽器のユニゾンで奏されるとき、その歌わせかたの素晴らしさに目頭が熱くなってしまった。

Ap_b1_15 休憩後、満場の聴衆が待ち望んだラフマニノフ
今日の奇跡のチケットは、プレヴィンを正面から見据えることができる夢のP席。
これまでNHKホールでの2回のコンサートは、遠めにプレヴィンの腰かけた後姿しか見えず、様子がわからなかった。
ところが、コープランドまでと全く違う指揮姿がそこにあった。
冒頭の低弦による重々しい出だしから、プレヴィンの目はしかと開き、譜面は広げながら、ほとんど、楽員を見つめながらの指揮。
まずは、顔の表情が実に豊かだ。プレヴィンのにこやかな顔は、実は昔からあまり写真では見かけない。でもラフマニノフでは、指揮をしながら笑みを浮かべたり、楽章の合間には楽員に微笑んだり。そして厳しい場面では、しかめっ面をしてみたり、2楽章でホルンがトチったときなど、レレレ?ってな顔をしていた。プレヴィンは、ほんとうに、この曲が好きで、心と体を開放してしまっているんだ。
腰掛けながらも、オケに押さえる指示や、奏者へのキュー出しなどもさかんに行なう。
そして何と言っても、左手で豊かにビブラートをかける仕草で、歌心を引き出そうとする指揮姿が常にあった。
ラフマニノフが望郷の思いを託した美しくも甘い旋律の数々、プレヴィンはオケに心から歌うように、歌うようにと指示を出しているに違いない。
もう最初から最後まで、私は心も体も音楽に引き込まれて、すべてを忘れて没頭した。
ラフマニノフの音楽が五臓六腑まで染み渡ったプレヴィンのもと、われわれ聴衆も心の底から哀愁と情熱に満ちた音楽の虜になってしまった。

圧巻はやはり3楽章。横川氏のクラリネットソロが素晴らしい導入となり、涙に濡れたかのようなメランコリックな旋律は、いやがうえにも盛り上がって行き、クライマックスを迎えるとき、プレヴィンは指揮棒を両手に持ち大きく振りかぶるようにした。
そして、私はこの日、数回目のうるうる状態である。
 
爆発的な終楽章は、もうドキドキしっぱなし。
燃え立つような第1主題。憧れに満ちた第2主題はゆったりとノーブルに歌いまくる。このふたつが、交錯しながら、最後のコーダを迎えた。このまま終わって欲しくない。ずっと浸っていたい、という望みを持ちながら、音楽は感動の頂点へ上り詰めていく。
N響も全員が体を大きく揺らしながら、プレヴィンの棒に応えている。
高らかなエンディングは、私の心を高みに押し上げていき、感動のあまりオロオロするばかり。涙ぐんだのはいうまでもなく、気が付くとブラボーしていた・・・・・。

聴衆と楽員の拍手に応えるプレヴィン。
自らも拍手をしながら、会心の笑みを浮かべていたのがとても印象的。

大指揮者というタイプではないけれど、常に私の心に響く等身大の音楽を描いてくれる。
いつまでも元気に活躍して欲しい。
次もその次も来日して、私の好きな曲をどんどん演奏して欲しい。

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コメント

kjyskw改めCozyです。プレヴィンのラフマ2番、羨ましい限りです。2夜連続の同一プログラム、完売なんですね。20日の東京出張が日帰りでなければ、ホール前で並んで奇跡を待つことも試みるのですが、20時の羽田最終便なので・・・・・ラフマニノフの交響曲2番は彼のLSOとの73年録音で、そしてロイヤルフィルとのエルガーの第1番の録音もお気に入りです。ノーブルで甘美なカンタービレ、そしてスケルツォやフィナーレの曲想や展開がどこか共通しているように思えるのですが、まさにプレヴィンの得意とするツボにハマっているのでしょうか・・・・

投稿: Cozy | 2007年9月20日 (木) 01時10分

羨ましいなァ。本当は行こうと思ってたんですよ、このコンサート。結局、ナンだカンだで行けなかったですが。この曲を世に知らしめしたプレヴィンの功績は「大」です。ウィーン・フィルやミュンヘン・フィルとのライヴ盤もありますが、どれも素晴らしいですね。

投稿: einsatz | 2007年9月20日 (木) 05時12分

yokochanさんの感“激”ぶりが目に浮かびますですよ。静かで柔和なあなた様がそこまで感極まるとは・・・。
オンエアでyokochanさんのブラヴォーが入っていますかどうか楽しみです。

投稿: IANIS | 2007年9月20日 (木) 21時21分

Cozyさん、あらためましてようこそ。そして再びよろしくお願いいたします。
私の初日も当日券は完売。チケットを求む方がたくさんいらっしゃいました。
会場は95%くらいの入りで、5%の空席がありました。
もったいないですね!!
本当に聴きたい人がたくさんいたのに。
NHKホールでやればまだよかったのに・・・・。
余談ですが、N響のサントリー定期は、若い方が少なく、年配の方が多いように感じました。ウィーンのように、世襲性にまでなってしまうのでしょうか??

それにしても素晴らしいラフマニノフを堪能しました。
そして、私も好きなことでは劣らないエルガーの1番との同質性、なるほどですね。
CDで確認しながらコメントお返ししております。

そうそう、私も土曜が運動会。5時起きして、肌は真っ赤かです(笑)

投稿: yokochan | 2007年9月20日 (木) 22時46分

einsatzさん、こんにちは。
へへ、いいでしょ。もう最高でしたよ。
でもサントリー定期は、会員で満タンで、発売時から正規チケットはありませんでした。
NHKはバカです。NHKホールでモーツァルト、サントリーでラフマニノフですから!
以前もブロムシュテットの定期の時に、NHKでモーツァルト、サントリーでブルックナーをやって聴きたい人から非難ごうごうでした。モーツァルトの方がたくさん呼べると思い込んでるでしょうか?

ウィーン盤は、私も自家製CDRで聴きます。これまた、すごい名演ですね。ミュンヘンは未聴です。
オスロもいいですよ。

投稿: yokochan | 2007年9月20日 (木) 22時53分

IANISさん、こんにちは。
そうです、このワタクシとしたことが・・・・(笑)
本当に好きなものには、興奮してしまうんです。
留守録エアチェックを確認したところ、ワタシの声は不明でした。残念といえば残念ですが、ホッとしてま~す。ははは。

投稿: yokochan | 2007年9月20日 (木) 22時56分

yokochanさんも生を聴けたのですね!知っていれば終演後に感動を分かち合う杯を上げられましたねー。ホント、すぐに帰宅したくない気分でしたよ。P席からのプレヴィンの表情のリポート、夕べの超名演を追体験する思いで読めました。テレビを見るのが益々楽しみです。

投稿: pockn | 2007年9月21日 (金) 00時20分

pocknさん、こんにちは。
そうですね!ご一緒すればよかった!
ホールをあとにしながら、頭はラフマニフだらけで、るんるんでした(笑)
最後といわずに、何度も姿を見せてほしいですよね。
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2007年9月21日 (金) 07時55分

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