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2007年11月23日 (金)

ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団演奏会③

Jansons2007_2 ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団の来日公演の最終日を聴く。
休日のサントリーホール、6時の開演、祝日ならではのゆったりした雰囲気が漂う。私はいつものようにちょびっと会社に出たもんだから、毎度バタバタの滑り込み。トホホの余裕のなさ。

 ブルッフ    ヴァイオリン協奏曲第1番
         Vn:サラ・チャン

 ブルックナー 交響曲第7番(ノヴァーク版)

  マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団

            
(11.23@サントリーホール)



Sarah_chang ミューザに続いて、サラ・チャンのブルッフ
前回は書かなかったけど、彼女は前後左右にかなり動き回るし、弾きあげると弓を思い切り上にかかげるし、片ほうの足も上げちゃうしで、なかなか派手な弾きかたなのだ。
でも出て来る音楽は、決してその動きとは連動していないように感じる。
つやつやした美しい音色で聴く第2楽章は爽やかなロマンティシズムに満ちていて、大家が時として弾く濃厚な味付けとはかなり違う。終楽章はヤンソンスとともに猛然とアッチェランドをかけて爽快に曲を閉じた。

ヤンソンスには、ブルックナーのイメージがあまり結び付かないが、このところ徐々に取り上げつつある。バイエルンとコンセルトヘボウといったブルックナーとマーラーに伝統を持つオーケストラのシェフを務める以上、はずせないレパートリーだし、本人もかなり傾倒しつつあると語っているようだ。
以前、3番の演奏をテレビで見たが、伸びやかで屈託のないブルックナーだった記憶がある。

先般聴いた、上岡/ヴッパータールの精緻で敏感な長大な7番のテンポと響きがまだ脳裏にあるが、ノヴァーク版による今宵のヤンソンスは、まるで違う曲のように鳴り渡った。
そりゃそうだろう、上岡版ブル7は、あまりにユニークかつ、誰しもマネできない演奏だったのだから。
Jansons そこへ行くと、ヤンソンスのブルックナーは普遍的なもので、日頃聴くブルックナーの延長線上にあって、安心して身を浸すことができる。
ブルックナーゆえか、ヤンソンスにはいつものように、伸び上がったり、下から持ち上げるような独特の指揮は一切見られず、旋律線を横へ横へと紡いで行くような、呼吸の豊かな指揮ぶりに思った。
1楽章から低回感なくずんずん進められるが、テンポは妥当で、流れるように歌われる各フレーズはとても自然で美しい。
その美しさは、第2楽章で最高潮となった。カラヤンの影響が強いヤンソンスであるが、師カラヤンが時に耽美的なまでに美を求めるのに対し、ヤンソンスはもっと開放的で我々の気分を開放してしまうような明るい美しさに満ちているように感じる。
だから、第2主題では、あぁ~、いい旋律だなぁ~、と心から思ってしまう。
3楽章のスピード感と、トリオの牧歌的なムードの対比も見事。
突出してしまうぐらい凄い、トランペットの名手は、だから音をすごく押さえこんでいた。
それから、アンバランスな佇まいを持つ終楽章で、こんなにスリリングな興奮を味わったのも珍しい。テンポで煽っているわけでもないのに、音楽が次へ次へと繋がって止むことがない。この楽章は、中間部で楽器間のやり取りが楽しく、教会の外の鳥のさえずりのような澄んだ世界をも感じることがあるが、このオーケストラの名手達の自然で鮮やかな演奏にこちらも目を細めながらそうした情景を思い描いて聴いたものだ。
終結部のクレッシェンドは、着実に盛上りを築きあげて輝くばかりのエンディングを迎えた。
演奏時間訳65分の、明るく明晰なブルックナー。
曲の特性もあろうが、どこまでも伸び伸びとして晴れやかで気持ちのいい演奏だった。
こんなブルックナーも私は肯定的に受け止めたい。
この演奏の特質の半分は、南ドイツ風の明るくも精妙かつ積極的なオーケストラの特色にもよるのではないかろうか。コンセルトヘボウとブルックナーをやったらどうなるだろうか?

思えば、ミュンヘンはかつてより名音楽たちが活躍してきた街だ。
ドレスデンと並んで、モーツァルトとワーグナーとシュトラウスが実際活躍したし、70年代は、オペラのサヴァリッシュ、放送オケのクーベリック、フィルハーモニーのケンペ、といったスゴイ顔ぶれが揃っていた。
今は、ヤンソンス、ティーレマン、K・ナガノらが、ミュンヘンの新しい顔となっている。
それを思うだけで、なんだかワクワクしてしまう。

Jansons_berlioz今年も例年どおり、マリスのサインを頂戴した。
通常手に手に入れにくい、バイエルンとの幻想のCDを会場で思い切って購入。

疲れもしらぬヤンソンス、にこやかに長蛇の列を作ったファンのサインに応えていた。
来年もまたよろしく、マリス君!
コンセルトヘボウとの蜜月も聴かせてくれたまえ!
願わくは、本国でも演奏する、メシアンの「トゥーランガリラ」を持ってきて欲しい。

Ana_tokyo

今年のサントリーホールには、クリスマスツリーや、イルミネーションがいまのところない。
隣接する全日空ホテルのツリーを1枚ペタリ。
ブルー、グリーン、パープルととりどりに変わって美しい作品。



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コメント

yokochanさん こんにちは。

私が、心の中で行く予定にしていた今年最後のコンサートがヤンソンスのブルックナーでした。

カラヤンの影響があるということで、カラヤンのCDでブルックナー、マーラーで行ったつもりコンサートをやろうと思います。

そういえば、結構前ですが、バイエルンでマゼールの指揮でブルックナー「8番」聴いたことがあります。その時も全体としては、明るいブルックナーだったな、と記憶しています。オケの伝統ですね。

投稿: HIROPON | 2007年11月24日 (土) 12時45分

HIROPONさん、こんにちは。
かわりといってはなんですが、聴いてまいりました。
ナイスガイ、ヤンソンスはワーカホリックの典型らしく、練習も勉強もすごいらしいです。
そんな努力を微塵も感じさせない自然さがいいところです。
いいブルックナーでした。
マゼール時代もそうですね。そしてクーベリックのマーラーなどにもバイエルンの明るい音色は聴いてとれるかもしれません。
ミュンヘンのオケの特徴ですね。

投稿: yokochan | 2007年11月24日 (土) 18時47分

こんばんわ(^^)。
この公演は行きたかった~。法事帰省と重なってしまい。。。
ヤンソンスさん、2006年のニューイヤーコンサートが
大変楽しかったのが、強く印象に残っております。
幻想も、すごく似合いそうな気がします。
来年はコンセルトヘボウと来日なんですね。是非行かねば!

投稿: 左党 | 2007年11月25日 (日) 22時58分

左党さん、こんばんは。
ご法事と重なりそれは残念でした。
すごい熱演でしたよ。ニューイヤーの真摯な指揮もよかったです。幻想は一昨年このコンビで演奏してくれまして、場内熱狂でした。来年は、展覧会やドヴォ8、イタリア、ブラ3などが予定されているそうです。
楽しみですね。是非お聴きください。ヤンソンスにはまりますよ(笑)

投稿: yokochan | 2007年11月26日 (月) 02時21分

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