ディーリアス 「北国のスケッチ」 ハンドレー指揮
この画像は、雪の少なかった昨年の3月頃の「美瑛」の丘。
パッチワークの丘やセブンスターなどの名前のついた木で夏場は賑わう観光名所も、冬はこれ。
雪がない分まだいい。
遠くに二本立つ木が寒々しい。
近くの「富良野」のファームも同じような景色。
冬場は南北で50℃くらい気温が違う日本。
東西南北・春夏秋冬、いずれもメリハリがあって素晴らしい日本。
北海道と同じ高さにある英国。
北部地方はどんな冬景色なのだろうか。
「ブロンテの嵐が丘」の世界やハリー・ポッターの世界を想像しよう。
ドイツ人を両親に持つフレデリック・ディーリアス(1862~1934)は、英国人の血は流れていないが、そのスピリットは北国的な英国のファンタジーと切ってもきれない。
ビーチャムを始めとする英国指揮者たちが、自国の音楽として愛し演奏し続けてきた。
不思議なことにボールトだけがディーリアスをあまり取上げなかった。
羊毛業の実業家の父親の関係で、英国北部ヨークシャー州のブラッドフォードで生まれたディーリアス。
北欧をも愛し、父に命じられアメリカ南部のプランテーション経営まで手伝ったが、先住民族の音楽ばかりを研究、楽しむばかりで、欧州に戻されてしまう。
音楽と酒にのめり込み、ライプチヒやパリを彷徨する「さまよえる作曲家」でもあった。
永久の住処は、パリ近郊のグレ=シュールロワンで緩やかに流れるともない河とともに隠遁生活を過ごしたという。
若気の至りで、晩年は体も目も不自由となり、波乱万丈的な人生に見えるが、その音楽はデリケートでそこはかとなく、とらえどころのない雰囲気と儚い情緒に満ちている。
中学生の頃から、ディーリアスの音楽に魅せられて、数十年。
私にとっては、四季おりおりに、その雰囲気に応じた音楽をひっぱりだしては楽しめる作曲家である。
厳しい冬には「北国のスケッチ」を取り出そう。
まさに生まれ故郷の、ヨークシャー・ムーアの大自然にインスピレーションを得て作曲されたものらしいが、具体的に何を描こうとしたかは不明で、弟子のフェンビーも「音楽のことを話すことがタブーだったのでわからない」「ディーリアスについての洞察を深めたのは、口述作曲の手伝いをしながら学んだ結果・・・」と語っている。
寡黙なディーリアスに相応しい、英国の厳しくも美しい自然。
①「秋」・・・秋風が木立に鳴る
②「冬景色」
③「舞曲」
④「森と牧場と静かな荒野」
こうした副題のついた4つの部分からなる。音楽は、タイトルそのままを感じて無心に聴けば、おのずとイメージが開かれてくる。
愛らしくも美しい音楽はたまらなく素適だ。音楽から森や野の香りが立ち昇ってくる。
1915年にビーチャムの指揮で初演。同時期の同類の作品に「高い丘の歌」がある。
イギリスの名匠ヴァーノン・ハンドレーの指揮する、アイルランドのアルスター交響楽団の雰囲気豊かな演奏は素晴らしい。
レコード時代、グローヴスとロイヤル・リヴァプールフィルの演奏も擦り切れるほど聴いた。
行ってみたいぞ北部イングランド!
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