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2008年4月26日 (土)

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 アシュケナージ

Nino_garden 実家の庭に咲いていた花。
なんて名前なのかしら?
わからないけれど、輪郭がとても美しい。

世間の一部では、ゴールデン・ウィークが始まった。
ターミナル駅はなかなかの混雑だった。
私はカレンダーどおり、というか、半分は普段片付かない事務処理や決算処理の予定。
いつもフラフラしているツケが、GWや年末にやってくるというもの。

Ashkenazy_rachmanunov2_2  今日はメロディアスな音楽が聴きたい。
しばらくラフマニノフの交響曲も聴いてないけれど、「のだめ」によるブレイクも、少し過去のこととなったことだし、あまりにも有名なピアノ協奏曲第2番を取り出してみた。
私にとっての「ラフ2」は、交響曲であって、協奏曲ではないけれど、ご多分にもれず、ラフマニノフはこの2番、そして3番の協奏曲から入門した。
その後、前奏曲や練習曲を聴いて、交響曲はその少しあとのこと。

また昔ばなしで恐縮だが、中学生の頃、大木正興氏司会のN響のテレビで視聴したのが初かもしれない。その時のピアノも指揮も誰か不明。中村紘子と岩城宏之だったかなぁ?
チャイコフスキーのロシアともまったく違う、連綿とした歌と、バリッとしたオーケストラの響きに驚いた。
そしてほどなく現れたレコードが、アシュケナージプレヴィンのもの。

Ashkenazy 当時、西側に亡命してからは、ロンドンレーベルの看板アーティストの一人として大活躍していて、リストやショパンなどで超越技巧と抒情を売り物にしていたように思う。
そのアシュケナージが、EMIから貸し出されたプレヴィンとロンドン響をバックにラフマニノフを録音したものだから、非常に話題となった。
冒頭から、すごい技巧が目立つ・・・などと宣伝されたものだったが、今思えばさほどのことではなく、というか、そうしたことに重点をおいていない演奏だった。

久方ぶりに、旧盤にあたるプレヴィン盤を聴いてみて驚きは、冒頭のピアノの出だし。
ポロロ~ンと、分散させて弾いている。新盤では、一般的な聴こえ方と同じく、ほとんど和音のように弾いているのに。
この冒頭からして、アシュケナージが曲に込めた思いとラフマニノフに同化してみせた祖国への思いのようなものを感じ取ることができ、全曲に渡っての特徴に思う。
1970年の録音当時、まだ33歳だった。若さが空転することもなく、技巧の冴えの中に、ラフマニノフの抒情とみずみずしさがにおい立つようだ。
プレヴィンの指揮は、EMIへの第2交響曲の録音の頃と同時期なだけに、スタイリッシュな中に、よく歌いこんだ洗練さを感じる。旋律の歌わせ方もビューティフルで、お堅い評論家は顔をしかめそうだが、私はこんな優しいプレヴィンのラフマニノフが大好きだ。
 2度と生まれえない、若々しいラフマニノフ。

Ashkenazy_rachmanunov2 1984年、アシュケナージは今度は、ハイティンクコンセルトヘボウとともに録音した。
48歳の壮年となり、指揮活動も軌道に乗り、活動の軸足がピアノから指揮に移りつつあった頃。

以前、アシュケナージのインタビューで、伴奏指揮者として最高の人は、プレヴィンとハイティンク、そしてオーマンディの名前を挙げていた。
うむ、なるほどと思っていたら、ハイティンクとの録音が次々になされるようになった。

ハイティンクのラフマニノフなんて、あとにも先にもこれ以外にないが、コンセルトヘボウとのコンビから想像されるとおりの、重厚で渋く、くすんだ響きが聴かれる。
重いだけでなく、しっとりと憂いも含んで、唸りをあげるかのような低弦、むせぶようなホルンが素晴らしい。
 アシュケナージのピアノは、先のとおり、旧盤に比べ、思い入れが少なくあっさりした分、余裕と時おり立ち止って考えるかのような含みのある響きを感じさせる。
ことさら、抒情が明滅する2楽章でそれを感じる。
旧盤と演奏時間は、ほとんど同じながら、落ち着きとコンセルトヘボウの柔らかな響きに包まれて、じっくりと遅く感じる。

旧盤のピアノの方が、繊細でかつ奔放さがあって好きだけれど、オーケストラはどちらも甲乙付け難い魅力を感じる。

オーケストラという楽器を手にしてしまった指揮者アュケナージは、日本の我々聴衆にとって非常に身近な存在ではあるけれど、私にとっては、指揮をするアシュケナージはかえって遠い存在に感じる。
小柄な体を振り絞って、大上段に構えてシュトラウスやマーラーを必死に振るけれど、その魅力は彼自身のピアノに遠く敵わない。
バレンボイムやエッシェンバッハのような、強烈さ、いい意味での毒がないのかも。
いい人すぎるんだよね。

Pic_main_lilacs もうひとつラフマニノフの話題。
今回ネットで発見。映画「ラフマニノフ ある愛の調べ」というロシア産の映画が上演されているようだ。ラフマニノフに恋愛ってそぐわないようなイメージがあるけれど、きっとメランコリックな内容になっているのだろうな??
さすがに、オヤジ一人じゃ見れないので、どなたかレポートお願いします。

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コメント

ご無沙汰しています。
アシュケナージとハイティンクのラフ2、僕も持ってますが、ハイティンクとコンセルトヘボウの渋く重厚、かつメロディのゆったりした流れは絶品だと思ってます。ラフ2のマイ・ベストです。アシュケナージのピアノは、それほど・・・。でも、ラフマニノフの甘美で憂いをたたえた音楽の姿をアシュケナージみたいに素晴らしく表現できるひとは滅多にいないでしょう。
作曲者の表現に一番近いと思われるハフの演奏が味気なく感じられるというのは、アシュケナージとハフの演奏家としての資質の違いなのでしょうが。
[追記]
ついに、バレンボイム2度目のバイロイトの「トリスタン」が発売されますね。

投稿: IANIS | 2008年4月27日 (日) 11時56分

yokochanさま こんにちは

このディスク 私も持っています。
出た頃は分からないのですが、2番のコンチェルトの伴奏をするときに買ったと思います。
プレヴィンの伴奏も良かったような、ラフ2も良いですよね~。

それに、アシュケナージはピアニストの方が圧倒的に良いように思います、私も~。やりたくなるのは分かるのですが、ピアニストで終わった方が良かったのでは、と思いますね~。

ミ(`w´)彡 

投稿: rudolf2006 | 2008年4月27日 (日) 12時35分

IANISさん、こんばんは。
ハイティンクとコンセルトヘボウの素晴らしさがここでも味わえますね!ピアノは確かに、今思うと他に素晴らしい方々・・・・。
伴奏屋のように言われていたハイティンクが、こんな大巨匠になるなんて・・・。うれしいです。来年の来日が大変なことになるでしょうね。チケットどうします??

バレンボイム・トリスタンは、ヨージ・ヤマモトの衣装のヤツですか?あれもマイヤーとイエルザレムでしたっけ!

投稿: yokochan | 2008年4月28日 (月) 00時07分

rudolfさん、こんばんは。
この旧盤は、2枚組の全集のものです。
懐かしい1枚でした。

アシュケナージは、もう70歳を過ぎてますが、若いですね。
指揮者の余興のピアノみたいになってしまいましたねぇ。
rudolfさんに同感です。

投稿: yokochan | 2008年4月28日 (月) 00時11分

 yokochan様今日は。
 とかく批判されることの多いアシュケナージの指揮ですが、私は好きです。コンセルトヘボウを指揮したラフマニノフの交響曲は最高です。ピアノでも指揮でも優等生というイメージの強い彼が第2交響曲のスケルツォの冒頭で羽目を外しまくっているのは私には微笑ましくさえあります。「ウ、ウ、ウウウ…」という彼の唸り声も聴こえて来る大熱演です。ただ最近はピアニストとしての活動が少なくなってしまったのは残念ではありますが…
 ピアノ協奏曲第2番は私もプレヴィン盤とハイティンク盤の両方を聴きましたが、私はハイティンク盤のほうが好きです。yokochan様とは好みが別れてしまいますが…カップリングされている第4番も好きです。「この曲はインスピレーションの枯渇が感じられる」なんて言ってる評論家もいますが、なかなか魅力的な曲だと思います。
 ラフマニノフはアシュケナージにとって最も大切な作曲家なのだと思います。あれだけ多くの楽曲を録音しているのですから。バーンスタインにとってのマーラーのような存在なのかもしれません。

投稿: 越後のオックス | 2008年11月 6日 (木) 15時47分

越後のオックスさま、毎度どうもありがとうございます。
アシュケナージのラフマニノフ交響曲は、1番を聴いたのみで、先に進みませんでした。
どうもイメージが先行してしまっていけませんです。
ブラインドで聴かされてみたいもんです(笑)
でもピアニストとしてのアシュケナージは文句なしです。
ショパンとベートーヴェンのリサイタルを聴いたことがありますが、さりげなく登場した小男が素晴らしく美しいショパンを弾き出して驚きでした。
やはりアシュケナージも亡国の人なのですねぇ!

投稿: yokochan | 2008年11月 6日 (木) 23時48分

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