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2008年4月30日 (水)

バックス 交響曲「春の炎」 ハンドリー指揮

Azeria 一気に初夏の陽気に。
ツツジもあわてて一斉に開き初め、甘い香りが漂っている。

普段にも増して、ぼぉーっとしてしまいそうな日々がこれから続く。
寒い時とか、酒を飲んでるときは、シャンとしているのだが、春から夏はどうもイカン。
苦手な季節。暑いのイカン。
ビール飲み過ぎちゃうし、お腹ぽっこりになっちゃうし、厚着でごまかせないし、頭が日に焼けちゃうし??

まあ、いずれにしても、年中飲んでいるのだな、これが。

Greenwood 酒と言えば、ワタシらが酒を飲みだした頃は、今のようなカクテルや酎ハイといった小洒落た飲物はなかった。かといってビールも高かったし、発泡酒なんてものもなかったから、いきなり日本酒か、ウイスキーだったんだ。
 ともかく飲んだ。でもウイスキーは、貧乏ながら一応選んで飲んでいて、たいていは「ホワイト」。
「レッド」は次の日、死ぬということを本能的に感じとっていた。「オールド」なんてめったに飲めなかったし、「リザーブ」なんぞ、拝むことすらできなかった。

ところが今はどーだ。
国産酒には見向きもせず、ジョニ黒・赤なんぞも、ありきたりの酒となって、量販店にごろごろ転がっている。

体のいらんところに肉も付き、嗜好も贅沢になってしまった・・・。
そんな、ワタクシのお気に入りのウイスキーは、アイリッシュモルト。
ブッシュミルズ、ボウモア、タラモアデュー、タリスカー、ジェムソン・・・、醸造元の街の名前で、いろいろな種類のボトルがあるが、あまりこだわらない。
ピートの燻した香りが味に染み込み、ヨード臭の強いものがとりわけ好きだ。
いわゆる、ヨードチンキですよ。
おねーちゃんもいない、ちゃらちゃらした雰囲気の一切ないバーのカウンターに腰掛けて、2~3杯ロックで飲む。

Bax_spring_fire_2 そんな時、きまって頭の中に流れる音楽が、アーノルド・バックス(1883~1953)の音楽。
ロンドンっ子ながら、アイルランドを生涯愛したバックスの音楽には、ケルトの香り、海の潮の香りがぷんぷんだ!

とらえどころがないところも、ニンフのようでもあり、夢の中の音楽のようでもある。
単なる自然の描写だけでなく、そこに感じるマジックやファンタジーが伴なっているものだから、ミステリアスな雰囲気がいつもある。

7曲ある交響曲は、いずれも番号だけの純粋交響曲だが、すべてが3つの楽章で、先にあげたようなムードに満ちているので、どの番号を聴いても、みんな同じに聴こえてしまう。
そこがバックスの面白いところで、何度も何度も聴いてゆくうちに、すっかりその虜となってしまう。

 今日の「春の炎」は、バックス初期の作品で、5つの表題を与えられた楽章からなっている。
Ⅰ「夜明け前の森にて」、Ⅱ「夜明けと日の出」、Ⅲ「一日」、Ⅳ「森の愛」、Ⅴ「manads」。
一気呵成にやってくる北国の春の様子が、幻想的かつダイナミックに描かれている。
ソフトで夢見るような森の国の夜明け、冬の眠りから醒めた大胆で陽気な森、あまりにも美しいロマンスのような情景、爆発的な妖精の踊り。
作曲後、第一次大戦の勃発や、その後も演奏の困難さなどで、演奏がなかなかされず、楽譜も消失したりした、なかなか恵まれない作品だったようだ。

ここでは、そんな経緯はともかく、ヴァーノン・ハンドリーロイヤル・フィルの詩情溢れる演奏で、とことんバックス・ワールドに浸ることができる。

一度ウイスキー片手に、バックスの音楽を楽しんでみてはいかが?
お酒がダメな方は、ヨードチンキ片手に弧高の海を思い浮かべながら、どうぞお聴きください。

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コメント

さすがyokochanさん。バックス、僕は交響曲とピアノ曲しか聴いたことがなかったです。シベリウス+ニルセン+ブリテンの混合のような音楽、なぜか心惹かれるものがありますが、この音楽もそうなのかしら?
[追記]
ウィスキーの話、懐かしいぜ・・・。中年親父の飲んだくれ族は大部分似たような経験持っているんですねぇ。

投稿: IANIS | 2008年5月 2日 (金) 08時19分

IANISさん、こんばんは。
暴飲暴食出張から帰還しました。
>シベリウス+ニルセン+ブリテンの混合のような音楽<
だいたいそうです。でも初期の頃の作品なので、後年のものに較べるとメロディアスで、印象派風で、ディーリアス入ってますね。私にとって、こんなバックスはご馳走のようであります。

ウィスキー話、ご賛同いただけましたか!
ははっ、みんな金がないのによく飲んだもんです。
一升瓶を背負いながら、ハイキングしてましたし(笑)

投稿: yokochan | 2008年5月 2日 (金) 23時26分

 バックスの交響曲(?)では本作がいちばん好きです。っていうかバックスって取っつき悪いですね。そのなかでもいちばん親しみやすいと思います。

 エルガーのオラトリオ「使徒たち(Apostles)」良いでしょう!? わたくしは「ゲロンティアスの夢」よりも「使徒たち」の方がどちらかというと好きなんです。ただ「神の国」や「ゲロンティアスの夢」ほどの華やかさがないので、自分は好きになるのにずいぶん苦労しました。噛めば噛むほど味が出るような作品です。

 「アビイ・ロード」、わたくしも大好きです。アナログ盤でも10種ぐらいは持っているでしょうか。もし「イエロー・サブマリン」のあと「ゲット・バック」をリリースしてそのまま解散していたら、ビートルズは今ほどの評価は得ていなかったかも知れません。分裂しきったバンドが再集結した奇跡のアルバムだと思います。

投稿: なおらー | 2008年5月 4日 (日) 06時26分

なおらーさん、こんにちは。京都にはとんとご無沙汰してます。
この作品、初期のものゆえ、後年のバックスのように旋律らしいものがない音楽とかなり異なり聞きやすいです。
私も大好きな曲であります。

そして、「使徒たち」は、記事に向けて出張や通勤のお伴に何度も聴いてます。ほんとに味わい深い音楽ですね!

アビーロード10枚もお持ちですか!スゴイです。
>分裂しきったバンドが再集結した奇跡のアルバムだと思います<  まったく同感であります。ロック界のモーツァルトです。

投稿: yokochan | 2008年5月 4日 (日) 15時11分

ごぶさたしています。時々拝見はしていましたが、コメントは残していませんでした。
ちょうど、バックスのspring fireをyoutubeでこの曲をこの演奏で聞いていましたので、クラヲタさんのところなら曲の紹介があるかなと思ったら、しっかりありましたので、コメントさせていただきました。
 英国音楽好きなら、しっくりきますね。バックスはnaxosのCDで「黄昏に?」を聞いたのが最初ですが、そのころからいいなと思っていました。それでは。

投稿: udon | 2018年5月19日 (土) 08時36分

udon さん、こちらこそしばらくでした。
バックスはどの曲も似たような雰囲気を持ってますが、その金太郎飴的な雰囲気が、いったん好きになると、たまらない魅力に感じるのです。
ファンタジーあふれるバックス作品、ピアノソナタや小品なども、とても美しいですよ、そちらも是非お聴きください。
コメントありがとうございました。

投稿: yokochan | 2018年5月25日 (金) 08時33分

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