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2008年8月24日 (日)

R・シュトラウス 楽劇「ばらの騎士」 ドホナーニ指揮

4rosenkavalier 昨年の日本では、「ばら戦争」が勃発し、その余波はいまだに覚めやらない。
9月には、思い出したように新日フィルがセミステージで取り上げる。

 

R・シュトラウス「ばらの騎士」は誰をも魅了してしまう素適なオペラで、シュトラウス好きの私もまったくその一人。
あらゆるオペラの中でもワーグナーの諸作品に次いで大好きな作品だけに、昨年から今春にかけての4つの上演をすべて観劇した。
興にのって、このような画像を作成してみた。背景はウィーンで購入した銀(金)の薔薇。
4つの舞台の自分のランキングをやってみよう。

 

①演出・・・・・ミラー(新国)→ホモキ(横浜)→ラウフェンベルク(ドレスデン)→ベヒドルフ(チューリヒ) こらはもう僅差で、主観の問題。細やかな心理表現に長けていたのがミラーで、マルシャリンの心の寂しさを洒落た演出で鮮やかに描きだしていた。
実はそれに、輪をかけて心理描写に行動や周りの状況変化を伴なわせていたのがホモキ。ラウフェンベルクは、具象的な動きがわかりやすかったし、初演時の舞台設定に現在をからませた舞台は秀逸。ビヒドルフは、厨房を舞台にしたのが私には不可解。でも落ち着いたカラーリングの舞台は美しい。

 

②幕切れ・・ホモキ→ラウフェンベルク→ミラー→ベヒドルフ これは甲乙つけがたし。
 服を脱ぎ捨てたマルシャリンは新たに生まれ変わりを感じさせ、モハメド小僧は現代の少年のなりで走り去ったホモキ演出。ハンカチを拾いパグ犬を追いかける少年たちに混ざって入り去るモハメド君、原作に一番近かったラウフェンベルク。
モハメドが、テーブルの上のフルーツを盗み食いしたミラー演出に、マルシャリンとガラス越しに手を合わせあったビヒドルフ演出。

 

③歌手・・・・・チューリヒ→ドレスデン→新国・横浜
 シュティンメ、カサロヴァ、ムフ、ハルテリウスとそろった日頃の見事なアンサンブルを聴かせたチューリヒが群を抜いていた。次いで、代役ながら素晴らしかったシュヴァンネヴィルムスとリドゥルが光ったドレスデン。麻季さんは頑張ったが気の毒。
日本人による横浜も鮮やかなもの。佐々木さん安定感抜群。そして新国のニールントとローゼが印象的。

④指揮・・・・・W・メスト→F・ルイージ→P・シュナイダー→沼尻竜典
 オケも含めてスリムでスマートな現代的感覚のシュトラウスが実に新鮮だったチューリヒ。ハウスとしてのまとまりのよさもトータルに素晴らしかった。
指揮者の意欲とオケの美音がうまく結びついたドレスデンは、これからが楽しみ。
ベテラン、シュナイダーの手際よさとオペラテックな緩急。予想以上にしっかりした演奏だった沼尻/神奈フィル。

 

総合・・・・・評価不能、しいていえばチューリヒかな。

 

Rosenkavalier_dohnanyi 今日の音源は、1978年のザルツブルクライブで、おそらく放送録音と思われるが、れっきとしたステレオであるところが嬉しい。
でもエアチェックから起こされているらしく、時おり音揺れもあって、自分で作成したCDRの方が状態がいい。

この公演、本来ならベームが指揮をするはずだったかと記憶するがどうだったかしら?
影のない女と、ばらの騎士を挟んで、アリアドネをザルツブルクで指揮していたベームだったから。

 

ドホナーニは当時、ウィーンと蜜月で、日本にもベームとともにやってきたが、やや分析的でストレートな指揮をするドホナーニは、ウィーンよりはアメリカのオケやドイツの国際的なオケの方が相性が良かったのではないかと思う。
録音のせいもあるが、ウィーンフィルの管や弦のまろやかさがあまり味わえないがちょっと寂しい。

  マルシャリン:グンドゥラ・ヤノヴィッツ 
  オクタヴィアン:イヴォンヌ・ミントン
  ゾフィー:ルチア・ポップ         
  オックス男爵 :クルト・モル
  ファーニナル:エルンスト・グートシュタイン 
  アンニーナ:ドリス・ゾッフェル

  ヴァルツァッキ:デイヴィツト・ソー    
  歌手:ルチアーノ・パヴァロッティ

    警部 :クルト・リドゥル

 クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮 ウィーン・フィルハーモニー
                   (78.7.26ザルツブツク)

この音源は、オケよりは歌手の顔ぶれに魅力がある。
まず録音のほかにない、ヤノヴィッツのマルシャリンが素晴らしい。持ち前のリリカルな歌声でりりしくも気品のある元帥夫人となっている。1幕の聞かせどころの独白の場面、か細い印象を抱きがちだったヤノヴィッツの声が静まりかえったホールに凛々と響き渡るのを聴くことができて感激。正規録音を残さなかったヤノヴィッツのマルシャリン。素適すぎ。
 それと、ニュートラルで中性的なミントンのオクタヴィアンもいいし、我らがポップのゾフィーもお馴染みのとおりだけれど、もうこの頃のポップの声は元帥婦人を歌えるくらいの力が備わってきているのがわかる。
そして絵に描いたように理想的なモルのオックスは文句なし。
贅沢にも、パヴァロッティがテノール歌手を歌っている、ちょい役も贅沢な顔ぶれなところが往時のザルツブルクである。

いやはや何度聴いても、いい音楽・いい台本である。
アルミンクの上演は、グスタフソンと藤村さんが楽しみである。土曜のチケットは完売とか。            

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コメント

印象が近いのでうれしいです。シュテンメの表現は繊細で圧倒的でした。ハルテリウスもすばらしいと感じました。メストの音楽もすごいと思いましたが、見た目、案外振っていませんでした。最後の三重唱では、ホロリ。遠方なので、遅くなって新幹線が間に合わないとまずいので、普段はいただかないのですが、ムフ以外の三人サインをいただいてしまいました。今までサインをもらったのは、今回とプチボンだけです。

投稿: Mie | 2008年8月25日 (月) 22時20分

Mieさま、こんばんは。コメントありがとうございます。
演出は私には不可思議でしたが、演奏はほぼ100点でした。
シュティンメは若々しい元帥夫人で、ご指摘のとおり繊細で素晴らしかったです!あれ以来彼女のファンでして、イゾルデ聴きたさにパッパーノ・トリスタンを買ってしまいました。
 3人のサインは羨ましいですね!
私も日頃サインはもらわず、電車の時間を気にしてホールをあとにするのですが、この日は火照った気持ちを静めたくて、飲み屋さんに急行しました(笑)

投稿: yokochan | 2008年8月25日 (月) 23時31分

はじめまして。Shushiともうします。いつも興味深く拝読いたしておりました。

私も昨年の「ばら戦争」のうち、新国立劇場、チューリヒ、ドレスデンをみて参ったということもあって、記事を興味深く拝読しました。演出はミラーを筆頭にあげられているのは大賛成です。

幕切的にはやはりどうしても新国立劇場のニールントさんのオクタヴィアンのほうを一瞬振り返る演出にクラッときてしまいました。オクタヴィアンのツィトコーワさんが演技も歌もすばらしかったと記憶しておりまし、一幕の最後で雨が窓をぬらす演出にもクラッときてしまいましたということもあって、私的にはどうしてもミラー演出の新国立劇場が忘れられない思い出となっています。

そして、初回されているCD。これはもう発売されていないのでしょうか? ヤノヴィッツさん、モルさん、ポップさんとくればもう垂涎ものです。是非にも聴いてみたいです。売っていますでしょうかね? 本当に貴重な情報です。

投稿: Shushi | 2008年8月27日 (水) 03時05分

Shushiさま、こんにちは。そしてはじめまして。
私も貴ブログは時おり拝見しておりまして、同じような音楽の好みに共感しておりました次第です。

ミラー演出は本当に素敵でしたね。ご指摘の終幕場面でのマルシャリンの振り返り・・・、思い出しましてググッときました。そして、何といっても窓にかかる雨と、煙草をさりげなく吸う元帥夫人。最高のシーンでありました!!
願わくは、レパートリー化して再上演してもらいたいものですね。

そして、このドホナーニ盤ですが、昨年HMVのネットで購入しました。今確認したら、在庫ありでまだ手に入りそうです。是非ともお聴きください。ヤノヴィッツがお好きでしたら絶対お薦めです。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/666950

貴ブログにもお邪魔させていただきますね。(アバドのベルク最高!)

投稿: yokochan | 2008年8月27日 (水) 12時57分

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