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2008年9月19日 (金)

エルガー&ラフマニノフ 交響曲第2番 追悼ヴァーノン・ハンドレー

Handley 英国の名指揮者、ヴァーノン・ハンドレーが9月10日に亡くなった。1930年生まれ、享年77歳は指揮者としてはまだ早い。
英国音楽を愛好する者にとって、やはり早く亡くなった、ブライデン・トムソンとともに、その死が本当に悔やまれる。

(Handley ハンドレーかハンドリーか、その読み方は何とも言えませんし、弊ブログでも両方あったりして、あいすいません。)

ハンドレーで知ることとなった英国音楽は数知れない。スタンフォードにバントック、バックス、ブリッジ、ブリスにモーラン・・・・。
私が英国音楽にのめり込んでゆくとき、その時の指揮者は、たいていハンドレーかトムソンか、ヒコックスだった。

ボールトに認められ英国楽壇にデビューし、全英・アイルランドで活躍したハンドレー。
日本にも客演しているが、残念ながら聴く機会がなく終わった。
その練習がかなり厳しくて辛辣なため特定のポストに恵まれなかったというが、音楽を愛するあまりの修道僧のような人だったのだろうか・・・・・。

英国音楽の今後、同じようなオールマイティ派は、ヒコックス一人となってしまった。
後続の若手に期待したいが・・・・・。

Elgar_sym2_handley 昨日から、ハンドレーの指揮した2つの交響曲第2を聴いている。どちらも激安の廉価盤なところが嬉しくも寂しい。

まずは、ロンドン・フィルハーモニーとのエルガ
同じLPOを指揮しても、悠揚迫らぬ男性的なトムソン盤とくらべ、ハンドレー盤は、テンポとしては快適なまでにノリが良く颯爽としている。
 歌と自国愛に満ちた伸びやかな第2交響曲の魅力を、ハンドレーは巧まずして描きだしている。
2楽章のラルゲットの気品と悲壮感は、ハンドリーの死を悼み聴いてはいるものの、前向きで明るい明日を心に秘めているようで、何だかとても気分がよくなってしまった。
終楽章の低回なく進むなかにも感動的な音楽が立ち昇ってゆく様は神々しいものだ。

Rachmaninov_2_handley

同じような規模の第2交響曲でも、ラフマニノフは国を遠くから恋焦がれる切なさに満ちた泣きの音楽。
生真面目なハンドレーが、ロイヤルフィルを振って、意外や意外、相当に熱っぽい名演を繰り広げる。
元来、英国の音楽家達はラフマニノフが得意だが、この演奏は相当に、いや、かなりに素晴らしい。
 冒頭から、気の入れ方が違う。
3楽章の情熱の高まりはノーブルながら、そのじわじわ感が堪らない。
そして、騙されたと思って終楽章の熱き盛上りを聴いてみて欲しい。

英国の指揮者たちは、気品があって安定感のある人たちに往々にして見受けられがちだが、実はその腹の一物の熱きことただものではない人々が多い。
ヴァーノン・ハンドレーもまちがいなく、その一人で、英国音楽の演奏と録音にかける情熱な並大抵のものでなかった。
また一人、私の楽しむジャンルの達人が亡くなってしまった。
 でも、きっと大英国のことであるから、ヒコックスばかりでなく、ベテランや若手からも、その伝統をしっかり引継ぐ人が続出するに違いない。

ヴァーノン・ハンドレー(ハンドリー)さんのご冥福をお祈りいたします。

ハンドレー指揮の過去記事

 「ホルスト 惑星」
 「モーラン ヴァイオリン協奏曲とロンリーウォーターズ」
 「ディーリアス ピアノ協奏曲」
 「ディーリアス 夏の庭園で」
 「ディーリアス ヴァイオリン協奏曲」
 「ディーリアス 北国のスケッチ」
 「ブルッフ スコットランド幻想曲」
 「バックス 交響曲 春の炎」

 

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コメント

英国音楽を愛好する人(僕もその一人です)にとって、本当に大切な指揮者が逝かれましたね。僕は彼が録音したフィンジのCDを大切にしています。トムソンやハンドレー共に生で聴いてみたかったですね。

投稿: なんなん | 2008年9月20日 (土) 02時52分

こちらでこの訃報を知りました。ハンドリー・ファンとしては実に残念なことで、久しぶりに彼の指揮したベートーヴェンでその素晴らしい演奏を偲んだところです。若い頃のボールトのような明晰で雄渾な演奏が私は好きだったのですが…。
また良い指揮者が一人いなくなりました。残念なことです。

投稿: Schweizer_Musik | 2008年9月20日 (土) 09時11分

ナンナンさま、こんばんは。
地味な存在でしたが、何気にショックです。
ブライデンとともに、英国音楽の十字軍的存在でしたから。
ライブで聴いてみたかったですね。
その人柄や指揮ぶりがあまり語られることのない存在ですが、残されたCDは英国音楽愛好家にとっては宝物のようなものばかりですね。

投稿: yokochan | 2008年9月20日 (土) 22時52分

Schweizer Music先生、こんばんは。
先生もハンドレー・ファンでらっしゃいましたか!
英国音楽以外、特にドイツものもなかなか豪気な演奏をしてますね。
こうした味のある指揮者が次々に消えてゆくのが堪らなく寂しいです。

投稿: yokochan | 2008年9月20日 (土) 23時00分

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作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独 曲名  : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61 (1806) 演奏者 : アルヴェ・テレフセン(vn), ヴァーノン・ハンドリー指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 このアルバムは こちら 最近は音符を書くのが忙しいということもあったのだけれど、どうも世情に疎くなっていたようで、ヴァーノン・ハンドリー氏が亡くなったということも、今日、yokochanさんのブログで知った。あわてて検索をかけると色々と... [続きを読む]

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