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2008年10月29日 (水)

ジャパンアカデミーフィルハーモニック演奏会 シュナイト指揮

Japan_academy ハンス=マルティン・シュナイト指揮する、ジャパンアカデミーフィルハーモニックの演奏会に行く。
曲目は、ブルックナー交響曲第7番

このオーケストラは、シュナイト師の指導のもとに生まれたジャパンユースフィルハーモニックが名称を変えたもので、名誉指揮者であるシュナイト師との最後の演奏会が今回のブルックナーとなった。
音楽監督として、こちらもドイツ長老のゲルハルト・ボッセが就任とのこと。

日本にはオーケストラは数あれど、若い団員たちが、ドイツ本流の巨匠たちの教えを受け真摯に奏でる音楽は、これからも楽しみ。
終演後そんな思いになりながら、そして気持ちいい酔い心地で帰宅したものだ。

団員が登場する前に、シュナイト師が登場して、ブルックナーについての簡単な解説をしてくれた。
ゴツゴツとした岩肌ばかりの厳しいアルプスの山々の自然と、カトリック信仰、このふたつがブルックナーの心にはあったと。
曲については、リヒャルト・ワーグナーの死を悼んだ2楽章と。
シュナイト師お付きの通訳女史が、リヒャルト・シュトラウスと思い切り間違えて3回も言っていたのはご愛敬。
新説(?)だが、そういえばシュナイトさんのR・シュトラウスは絶品だったなぁ!

そんなこんなで、音楽が始まったのが7時15分近く。
深い感動のうちに曲を閉じたのが8時30分はまわっていた。
約75分の大演奏。シュナイト・テンポには今更驚かないが、この長さで、若いオケも一切弛緩せずに、緊張が張り詰めていたのが見事。
聴いていても、その遅さを意識させないのは、シュナイト師の音楽には、いつも「歌と真摯な祈り」があふれているから。
 2歳年下の、アバドがルツェルンでこの曲を演奏したものは、全曲で58分。
余談ながら、このアバドの演奏、速さを逆に感じさせない。切り詰め研ぎ澄まされた熟練の演奏の極で、そこには音楽しかなかった。
そして、シュナイト師の演奏にも音楽のみがそこにあると切に感じさせるものであった。

素晴らしくよく歌いこむ第1楽章。特別参加の元神奈フィルの黒木さんのコントラバスが支える低弦と、同じく特別参加のヴィオラの百武さんと中山さん(顧問)がしっかりと上下で締めたヴィオラセクション、それぞれが極めて頼もしい支えとなって、それをベースにヴァイオリンや木管が飛翔するような素晴らしい旋律を次々と奏でてゆく。
こうして夢中に演奏するオケの皆さんの上気した顔を見ているだけで感動してしまう。
1楽章の終結部なんてもう目頭が熱くなってしまった。
 第2楽章のワーグナーチューバの4人。破たんなく、というかまったく素晴らしい深みとつやのある音色を聴かせてくれて見事。
第2主題のあまりに美しい清らかさシュナイト師はテンポを落として、本当に心をこめて歌わせている。
そして、ハース版ゆえ、シンバルとトライアングルの高鳴るクライマックスがあるわけだが、こちらも衒わずに、極めて音楽的で、祈りが最高潮に達し感極まった・・・、という自然な盛り上がり。そのあとの感動的な後奏とともに、静かにでもしっかりとこちらの心に届いた。
 3楽章は中間部が農民たちの集う夕べの祈りを思わせるようであまりにも素適すぎ。
そして、圧巻は終楽章。
普段は10分足らずで、バランスの悪い終曲だが、シュナイト師のこの演奏では、大交響曲の末尾を立派に飾る終曲となっていた。
金管の咆哮が止むと、弦や管がいかにも優しく心をなだめるような気分に満ちた旋律を奏でる。
こうしたいわば落差のある繰り返しが数回続くが、そのどのやり取りにもこちらは引き込まれ、思わず息をつめたり吐き出したりと忙しい。
そして、ついに終結部を迎えるが、そこには輝かしさではなく、一心に気持ちを込めて演奏してきた若い演奏者たち自らを、そして会場の我々を解放して飛翔させるような希望に満ちたエンディングであった
ブルックナーの7番は数々聴いてきたけれど、こんなにも無心でいながら、心の襞に染み入るような演奏は始めて。そして終楽章に息を止めるほどに感動したのも初めて。

Suginami_hall 会場は「杉並公会堂」。全面リニューアルされて、とても美しい響きのホールに生まれ変わった。
私は35年も前に、このホールでクラシック生体験をした懐かしい思い出がある。
このホールでは、岩城&N響がベートーヴェン全集を録音したりもしている。
このホールのきれいな響きも、今回のブルックナーに相応しいものであった。

荻窪から新宿に途中下車して一杯。コンサート後の音楽談義は、時や場所を変えても楽しいものであります。音楽の感動も分かち合えます!

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コメント

杉並のアフターコンサート、お世話になりました。

いや、なかなかに素敵なブル7でした。シュナイトさんもご満悦でしたし。
杉並公会堂は今は都内でも屈指の名ホール。
僕のお気に入りのこのホールでシュナイトさんの指揮を聴けるとは♪
本当に我々は幸せ者ですね。

投稿: スリーパー | 2008年10月30日 (木) 23時16分

スリーパーさま、こんばんは。
当日はお世話になりました。
ああしたブルックナーを聴くと幸せな気分になります。

そして、スリーパーさん大推薦の杉並公会堂は本当にいいホールでした。
少しでも長くシュナイトさんの指揮を楽しめるといいですね。

投稿: yokochan | 2008年10月31日 (金) 23時20分

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