« プッチーニ 「トゥーランドット」 新国立劇場 | トップページ | モーツァルト 「コシ・ファン・トゥッテ」 ベーム指揮 »

2008年10月18日 (土)

神奈川フィルハーモニー演奏会 シュナイト指揮

わかっちゃいるけど、またやられちまいました
シュナイト&神奈フィルの名コンビに。
王道ドイツ物プログラムゆえ、想定通りの名演がしっかりと繰り広げられた次第であります。

     ベートーヴェン  ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
              Vn:竹澤 恭子

     ブラームス    交響曲第4番 ホ短調

   ハンス=マルティン・シュナイト指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 
                     (10.17 @みなとみらいホール)

Img間に合ってよかった。6時まで浜松町にいて、京浜東北線に飛び乗り開演3分前にホールに到着。
なんとか息を落ち着かせ、楽員が登場し始める。
コンサートの始まるまえ、今日はどんな演奏が聴けるかとの期待と緊張の一瞬がたまらなく好き。
おや? いつもは完全に埋まらないホールも今夜はほぼ満席じゃないか!
演目とソリスト、そして黄金コンビが評判を徐々に呼んできた証だろうか。

ちょっと大人しめのティンパニの連打で始まったベートーヴェン。オケの長い前奏は実にマイルドで重くない。
そして竹澤さんのソロが同じような柔らかな音色で緩やかに入ってくる。
この出だしからして、ソロと指揮者、オケとの三位一体が完全に美しく調和していることがよくわかる。
そして、曲が進むにつれて竹澤さんのヴァイオリンは熱を帯びてきてマイルドだなんて言っていられなくなってきた。彼女の楽器は名器ストラディヴァリウスであろうか。
その楽器を弾くにふさわしい彼女。艶やかさも、音の張りも、芯の強さもすべて兼ね備えた説得力の高い演奏なのだ。
終始、シュナイトとアイコンタクトを取りながら、時に厳しく、時に微笑みながらの表情を浮かべていて、ベートーヴェンの音楽にすっかり入り込んでいるのがよくわかる。
石田氏率いる神奈フィルも負けていない。竹澤さんの音色をよく聴きながら巧みに盛り上げてゆく。
両端楽章のカデンツァは実に圧巻だった。会場のわれわれもそうだけど、オケのみんなも一生懸命に聴き惚れている。
心技体すべてがそろった竹澤さんのヴァイオリンに、私は参りました。
久々に本物のヴァイオリンを聴いた思いだ。コンサートの前半によくヴァイオリン協奏曲が置かれ、その時は「ふむふむ、なかなかよいじゃない」とか思ってはいても、メインの後半の音楽が終わるとなかなか前半の印象が希薄になるのが常のコンサート。
でも、今日は違う。一夜明けても、彼女のベートーヴェンの熱くも柔らかく高貴な音色が耳に残っているのだ。
私の好きなオペラを聴いてその歌声がずっと残っているのと同じ。
彼女のヴァイオリンは声そのものだった。
後半がブラームス4番じゃなかったら、曲順を入れ替えてもよかったくらい!

さてその後半のブラームス、「もうなんもいえねぇ・・・」

いやになっちゃうくらいにピシリとはまった名演に、言葉はいらない。
お馴染みのゆったりめのテンポで45分をかけたとは思えない。
推進力と歌心があるためにテンポ感を聴く側にまったく意識させない。
全曲集中して息も切らさずに聴き入ってしまったけれど、印象に残った場面を列挙するとと・・・・・。
1楽章のじわじわと盛り上がるコーダの熱さに胸が熱くなる。
2楽章の弦のピチカートに乗って歌われる管の古風な歌のたたずまいと、後半に弦のユニゾンで壮麗に歌われる旋律に目頭が熱くなる。
3楽章の重厚さとチンチロ鳴るトライアングルのバランスの良さに感心。
4楽章のむなしさあふれる旋律のフルートソロの見事さに、パッサカリアの幾重にも展開する変奏が、徐々に盛り上がってゆく。シュナイト師の背中と音楽にのめり込んで夢中で弾いている楽員の姿たちを見ていると、その盛り上がりに併せてこちらの胸も苦しくなってくる。ブラームスの4番って、こんなに熱い曲だっけ!
再三ここに記したが、このコンビの音は南ドイツ風の重厚さと明るさを備えたものに思う。
ブラームスやブルックナーに相応しい音色に、いつの日かワーグナーを聴かせて欲しいと夢想するわたくし。

ブラボー飛びかう会場に、この演奏に大満足の喜悦の表情のシュナイト師。
舞台袖に戻らず、最初からオケの中を巡って楽員たちを称える好々爺ぶりに、会場の拍手も大きくなった。
またもやしばらく他の演奏が聴きたくない「ブラ4」。こうしていくつも封印された音楽が増えてしまうのか。日常はますます変な曲やオペラにのめり込んでゆくことになるのか。

Landmark アフターコンサートは、火照った顔と胸を冷ますことなく、おいしいビールでまた楽しい集いとなりました。

皆さんありがとうございました!



 

 

Blue_dal おまけ画像
横浜生まれのキャラクター、「ブルーダル」の神奈フィルバージョンのストラップ。
思わず購入(笑)
なかなか良いでしょ!

|

« プッチーニ 「トゥーランドット」 新国立劇場 | トップページ | モーツァルト 「コシ・ファン・トゥッテ」 ベーム指揮 »

コメント

昨日はご一緒させていただき、ありがとうございました!!
ホント、良い演奏会でしたねぇ…。感動的なブラームスに言葉がなかったです。神奈川フィルの演奏会の度に封印の名曲が増えて、嬉しい悲鳴です。でももう他の演奏が聞けなくなりそうで、いや参りました。
今度は浜離宮でお目にかかります。ひそかに私は楽しみにしておる次第です。

投稿: Schweizer_Musik | 2008年10月18日 (土) 18時59分

Scweizer Music先生、昨晩はどうもお世話になりました。
あのブラームスは、感動の渦がじわじわと押し寄せてくるような名演でした。
まさに封印。ブラームスの未封印の交響曲はあと1番を残すのみとなりました(笑)

松村氏のHPを拝見しました。
次回の浜離宮のコンサート、大いに楽しみにしております。

投稿: yokochan | 2008年10月18日 (土) 22時46分

どうもおつきあいありがとうございました。
それにしても素晴らしいコンサートでした。
あの2曲を私の認識を大きく変えさせてくれた大変に貴重な体験でした。
そしてその後に盛り上がるアフターコンサートでのビールのうまいことといったら。
つい飲み過ぎてしまいました。
でも当日券なしはなんと言いますか、今後の私たちのコンサートのチケットの融通を考えると、おっしゃるとおりあまり褒めない方がいいかもですね。
今度はブルックナーですね。
楽しみにしております。

投稿: yurikamome122 | 2008年10月19日 (日) 10時22分

yurikamomeさん、どうもお世話になりました。
私もちょっと飲み過ぎてしまいましたが心地よい二日酔いでした。
あんなベートーヴェンにブラームスは聴いたことがありません。
これからどうしたらよいのでしょうか?

今後のチケット対策のためにも、言葉少なにすべきでしたが、ついつい誉めそやしてしまいました(笑)
ブルックナーの回、私も大いに楽しみです。

投稿: yokochan | 2008年10月19日 (日) 15時34分

金曜はお世話になりました。

またもや、名演を生み出したシュナイト&神奈フィル。
絶品のブラームス、もう言葉もないくらいの名演でした。
竹澤女史とのコンチェルトも情感豊かで素晴らしかった!
今や現田&神奈フィルとともに日本屈指の名コンビでしょう。
素晴らしい演奏を届けてくれる神奈フィルに心から感謝したいですね。

>彼女の楽器は名器ストラディヴァリウスであろうか。
仰る通り、彼女の愛器はストラディヴァリウスです。
名前は・・・忘れてしまいましたが(照)

投稿: スリーパー | 2008年10月19日 (日) 23時04分

スリーパーさん、こんばんは。金曜はこちらこそお世話になりました。
いやになっちゃうくらいの名演に、どうしようもなかったですね。どこまでこんなすごい演奏をしてくれちゃうんでしょうか!
現田さんも含めて、ずっとこの体制を続けて欲しいものですね。

やはりストラディヴァリウスですか。
10年以上前に彼女の楽器のことをレコ芸かなにかで読んだことがあります。
「世界のTAKEZAWA、ストラディヴァリを弾く」でありますね。また横浜に登場して欲しい方です。

投稿: yokochan | 2008年10月19日 (日) 23時42分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 神奈川フィルハーモニー演奏会 シュナイト指揮:

» 神奈川フィルの定期 [鎌倉スイス日記]
昨日は打ち合わせ→そして神奈川フィルの演奏会であった。とても間に合わないと思ってあきらめて打ち合わせから向かったのだげど、なんとギリギリではあったけれど間に合ってしまった。 プログラムは竹澤恭子をソリストに迎えてのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、そしてブラームスの交響曲第四番という超名曲が2曲。シュナイト氏の指揮、石田氏がコンマス。これで良い演奏でなかったら事件である。 それはどうも世間に知れ渡っていたようで、当日券は完売ということて、横浜のみなとみらい大ホールはほぼ満席(定期会員で欠席者が... [続きを読む]

受信: 2008年10月18日 (土) 18時56分

» 神奈川フィルハーモニー管弦楽団  第247回定期演奏会 [yurikamomeの妄想的音楽鑑賞とお天気写真]
神奈川フィルハーモニー管弦楽団  第247回定期演奏会 2008年10月17日(金) 19:00 開演 横浜みなとみらいホール    指揮:ハンス=マルティン・シュナイト ヴァイオリン:竹澤恭子 ベートーヴェン  ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61 ~休憩 15分~ ブラームス  交響曲第4番ホ短調作品98 6時40分よりロビーコンサート  J・S・バッハ   無伴奏チェロ組曲第4番より    プレリュード    サラバンド  チェロ:三宅進 ... [続きを読む]

受信: 2008年10月19日 (日) 10時06分

« プッチーニ 「トゥーランドット」 新国立劇場 | トップページ | モーツァルト 「コシ・ファン・トゥッテ」 ベーム指揮 »