神奈川フィルハモニー演奏会 P・ヴェロ指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団の定期公演を聴く。
今日は暖かな金曜日だった。
お昼ごはんを食べていなかったので、少し早めに横浜入りして、「みなとみらい」とは反対側、そう私などにとっては足を踏み入れたら出てこれない魔界のような「野毛」・・・・、を無難に通り越して、一度行ってみたかった「KIKUYA CAFE」にて食事。
少し汗をかきつつ、開演間際にホールに滑り込む。
満腹中枢が、睡魔を連れて来る危険があり、それが逆に緊張感を呼び、2時間のコンサートは一音も漏らさず集中できた。
本日は、前半がチョー渋いオール・フランスプロ。
リヨン生まれの生粋のフランス人、パスカル・ヴェロの客演。
9月に、我らがじーちゃん・シュナイト師が仙台フィルに客演したのを受けて仙台からヴェロがやってきた。
このところ雑誌でもその評判がうたわれ、世評も高まりつつある神奈川フィル。
今日も会場はかなり埋まった。
その熱気は、前半と後半、いずれもそのフィナーレで大いに盛り上がった。
ルーセル シンフォニエッタ
トマジ トランペット協奏曲
Tr:オーレ・エドワルド・アントンセン
(アンコール)
フリードマン ソロス~4楽章
ベルリオーズ 幻想交響曲
パスカル・ヴェロ指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(11.7 @みなとみらいホール)
ルーセルは、たぶんCDを持っているけれど、あまり記憶にない音楽。
出だしは、まるで第3交響曲のようにリズミカルな動きに溢れた活気ある曲だが、ルーセルの音楽特有の戦下を思わせる暗い陰りも全般にある。古典風の緩やかな第2楽章に、これまた弾むような3楽章。
弦楽だけの小さな曲だけれど、小股の切れ上がったような小粋な音楽。
日本人にはもっとも難しいと思うけれど、さすがは神奈フィルの弦楽セクション、ヴェロの弾むような指揮に合わせていい雰囲気を醸し出していた。
次いでトマジ(1901~1971)。これは初聴き。
今更ながらに調べたら、このトマジ、あらゆるジャンルに作品をものした人で、映画音楽もある。そして、なるほど、世紀末風かつジャジーな音楽はとても耳に馴染みやすい。
曲想に応じて、奏者はふたつ用意した弱音器を付けたり外したりと忙しい。
小太鼓の微細なトレモロと、チェロソロの上に、トランペットが静かに優しい旋律を奏でつつ始まった2楽章。この楽章が絶美の素晴らしさで、月光に浮かぶ海を思い浮かべてしまった。そして、私はコルンゴルドの響きも思い起こしていた。
快活で体を動かしたくなる3楽章も楽しい。
ノルウェー生まれのアントンセンの完璧極まりないソロには驚き。
トランペットひとつから、どうしたらあんなに多彩な音色を引き出すことができるのか?
矢のように、ホールの最上段まで突き刺さるような音を出したと思ったら、耳を澄まさなくては聞こえないくらいのピアニッシモで歌ったりと。
アンコールも凄まじかった。楽器はひとりなのに、何人もが吹いているかのよう。
聴衆は、驚きとどよめきにあふれた!
一時、幻想フリークになり、CDも相当な数となった。
でも今宵のヴェロ&神奈フィルの幻想は、これまで聴いたことのないユニークな幻想となった。
1楽章の始まりから極めてデリケートに、そして入念に音を選びながら演奏されてゆく。
おのずとテンポはゆったりめ。そして愛を表す示導動機が徐々に盛り上がってゆくそのリズミカルなことといったらない。K・クライバーが幻想を指揮したらこんな風なんだろうなぁ、と思いつつ聴いていた。繰り返しを行ったこともその必然性が理解できる。
そのリズムの良さに加えて、歌うことへのこだわりも終始感じた。
優美な2楽章の舞踏会では、オーケストラの面々がいつにも増して体を大きく揺らしながら気持ちよさそうに弾いている。こんな流麗な2楽章なんて久々に聴いた。
最近、歳なのか、ベルリオーズの緩除楽章が心に沁みるようになった・・・。
そんな私にピッタリのデリケートでかつ爆発的な演奏の3楽章。ダイナミクスの幅がめちゃくちゃ大きい。
断頭台~ワルプルギスの夜も怒涛のようでありながら、決して騒々しくなく、慌てず騒がずの着実な演奏で、その自然な盛り上がりをじっくりと楽しむことができた。
3楽章までのユニークさがやや薄れて感じたのは、破天荒なベルリオーズの音楽ゆえか。
大きな拍手とブラボーに包まれたのはいうまでもない。
ベルリオーズのスコアを最後は掲げたヴェロさんでありました。
それにしてもこの指揮者、私は初めてだったけれど、個性的だし劇場的な感性もたっぷりでなかなかの実力派に思う。
後ろから見ていて、その動きがとても面白く、時にぎくしゃくと操り人形のような動きをしたかと思うと、ズバズバと指刺し確認・ご指名も行う、さらに踊るような優美な動きも。
指揮者を見ていて楽しかったのは、これまで、シモノフとノリントンが私のお気に入りだが、ヴェロさんも加えちまおう!
かつて新星日響でご一緒だったのだろうか、コンマス石田さまとのいちゃつきも微笑ましい(ははは)。
終演後のビールがまた美味しい!
ピッチャーを注ぐワタクシの腕も上達中。マイスター近し!
こちらはランドマークの下のイルミネーション。
もひとつおまけは、「KIKUYA CAFE」のシチュー。
うまいよ。
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コメント
昨日はお疲れ様でした。
石田さんとパスカルヴェロって新星日響で一緒だったんですね。
どうりで息が合ってるなと思いました。
次は1月の定期演奏会でお会いしましょう。
投稿: syllable | 2008年11月 8日 (土) 18時56分
syllableさん、こんばんは。
昨日もお世話様でした。
神奈川フィルのフランスものもいいものでしたね。
石田さんとの息のあったコンビもよかったです。
また客演していただきたい、ヴェロの指揮ぶりでありました。
次回またよろしくお願いします。
投稿: yokochan | 2008年11月 9日 (日) 01時21分
どうも先日はお世話様でした。
私の方は故あって非表示です(笑)。
いや、神奈フィルパワー全開でしたね。
素晴らしかったです。
今シーズンもっとも期待したコンサートの一つでしたが期待に違わぬ熱い名演でした。
サボって聴きに行って良かったです。
昨日はやっぱりサボって新日を聴いてきましたが、個性の違いって面白いですね。
神奈川フィルの方がオケ自体ニュアンスが豊かだった気がします。
来月は飯森さんですが、第9もありますからね。
現田さんの第9、心して聴かねばなりません。
それにしても音楽堂の改修は痛いですね。
毎年この時期はシュナイト音楽堂シリーズなのですが。。。
投稿: yurikamome122 | 2008年11月 9日 (日) 16時37分
yurikamomeさん、こんばんは。
先日も毎度お世話になりましてありがとうございます。
指揮者変われど、神奈フィルの音色はしっかり出てました。
新日のお話などお聴きすると、やはり心強いですね。
神奈フィルにお招きいただき、ほんとうに感謝しております。
これまで、たくさんお聴きになったyurikamomeさんが羨ましいですよ!
シュナイトさんを思うと、音楽堂改修はうらめしいです。
これからもずっと神奈フィルを応援してゆきたい気分満載であります。
投稿: yokochan | 2008年11月 9日 (日) 23時12分