ブランデンブルク協奏曲第3番 シェルヘン指揮
ススキが哀れを誘うし、山の紅葉も色あせつつある。
日本各地には、こんな光景がまだまだ、たくさんあると思う。
日本昔ばなし的な、心くすぐられる景色じゃないかと思う。
今日はEINSATZレーベルから、ヘルマン・シェルヘン指揮でバッハのブランデンブルク協奏曲第3番を。
6曲あるブランデンブルクの中でも、ひときわユニークな第3番。
なぜかといえば、その楽器構成が、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのみで、しかもそれぞれが3部に分かれている。
あまりに渋いその構成ゆえに、音楽もかなり渋くまとまっていて、2楽章形式ながら、その間をつなぐ中間部が、チェンバロやオルガンの緩徐楽章的な間合いがある。
最近ご無沙汰のブランデンブルクであるが、私の愛聴盤は、シューリヒトやリヒターのドイツ的な演奏や、アバド・スカラ座の明るい演奏。
さて、シェルヘンの1954年録音による当盤はいかに。
オケは、セント・ソリ管弦楽団。パリ・オペラ座を中心とする、50年代花の都のオケメンバーを選りすぐったメンバーからなるオーケストラ。
第3番といえば、小編成で小気味よくツゥー・ツゥーとスピーディに演奏されるのが常で、私もそうした演奏ばかり聴いてきた。
そこで聴く、このシェルヘン盤の濃厚な味付けに、出だしから度肝を抜かれる。
一音一音、しっかりと、それもテヌート気味に弓をしっかり上下させて歌っている。
まるでロマン派の音楽のようである。
しかし聴くうちに、退廃的ともいえるムードに参っていってしまう。
あまりにゆったりとした1楽章と、ほんの数秒ながら過去に軸足をおいたような、チェンバロを効かせた緩徐的な部分。
そして2楽章でも、しっかりと楽器を鳴らしつつ、濃厚な味わいをかもし出す。
まるで、学生さん方の練習のようにしっかりと音を選びながら演奏している雰囲気に、おいおいという気分にもなるが、ここまで大胆かつやり放題の演奏は、逆にお目にかかったことがない。
そこまでやらなくても、いいじゃないかととも思うが、普通にきれいに仕上げようと努力した演奏よりはるかに表現意欲があって、これはこれでいいじゃないか、ということになる。
バッハの演奏様式は、非常に幅広い受容範囲を持つものと思うがゆえに、こんなバッハもありと納得。
シェルヘンのマタイは、聴いたことがないが、いったいどんな風なんだろう?
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