ラフマニノフ 歌劇「アレコ」 キタエンコ指揮
ねこを見かけたので、いつものように声掛けをしたら車の下に逃げ込んでしまった。
ねこは、逃げても必ずどこかで見ている。好奇心旺盛なんだ。
オジサンはね、悪い人なんかじゃないんだよう。
ラフマニノフ(1873~1943)が残したオペラは完成されたもので3作品。
それ以外にも未完のものや、構想だけで終わったものがいくつもあって、ラフマニノフは劇場作品への適性と、多忙な演奏活動や自身のなさで、作品を完遂できなかったことがうかがわれる気がする。
今回聴いた「アレコ」は1幕ものの1時間作品で、1892年の作曲。
なんと20歳である。
モスクワ音楽院の卒業作品でもあったこのオペラ、高い評価を得て、大金メダルという賞を受賞した。
19や20歳の頃の自分って何やってたんだろ?
短い作品ながら、そのドラマはヴェリスモっぽくて、ジプシーの暗い生活と嫉妬や死の横溢する激しい内容である。原作者はプーシキン!
簡単なあらすじ
都会の生活を捨てた壮年のアレコ。ジプシーの群れに加わって生活してゆくうちに、若いゼムフィーラと恋仲になった。
年老いたジプシーは、かつて愛した女が異なるジプシーの集団についていってしまい、残された娘がゼムフィーラ、その日から女というものが信じられなくなったと歌う。
ズムフィーラは、アレコが他所から来たインテリで利己的で最近しっくりこないと思っている。あからさまに歌で揶揄し、アレコはいらつく。
有名なアレコのカヴァティーナで、かつての愛を懐かしみ、心変わりを責める。
その夜、若いジプシーとゼムフィーラはいい仲となってしまい、その場をアレコに見咎められる。アレコは必死に昔を思い出して欲しいと歌うが、それを蔑む二人。
ついにアレコは切れ、若いジプシーを殺害し、ゼムフィーラをも殺してしまう・・・。
ジプシーたちが現れるが、口々に「恐っろしい」を連発するのみで、老ジプシーも「わしらには掟なし、罪も攻めぬ。が、血も見たくない。一緒にいれない」と悲しく歌う。
アレコは「不運なこの身、またも一人・・・・」と歌い、幕。
なんともいえないばからしさではあるが、「パリアッチ」や「外套」のようだし、最後は身勝手な「オネーギン」や「ドン・ホセ」をも思わせる筋立て。
ジプシーの自由気ままさと、奔放さ。それ以外の人間との隔たりと社会との疎外感。
何とも暗い内容ではある。
若書きとはいえ、どう聴いてもラフマニノフなのである。
序奏に、ふたつある劇中のダンス、甘味な間奏曲などのオーケストラ部分。
歌も、劇の内容の濃厚さとは裏腹に結構さわやかな抒情と、ラフマニノフ特有のリズムに乗った特徴的な旋律に彩られていて、なかなかの聴きものと思う。
アレコ:エウギニ・ネステレンコ 若いジプシー:アレクサンドル・フェディン
老いたジプシー:ウラディーミル・マトーリン 老いたジプシー女:ライザ・コトヴァ
ゼムフィーラ:スヴェトラーナ・ヴォルコヴァ
ディミトリ・キタエンコ指揮 モスクワフィルハーモニー交響楽団
ネステレンコのたっぷりしたバスが聴きもの。
ロシア人特有の肉太でヴィブラートがかった声はなんとも濃厚で深刻。
アレコのカヴァティーナのあとに始まる間奏曲の幻想的でロマンテックなことといったらない。このあたりで、ウォッカ2杯は飲めちゃう。
キタエンコのシンフォニックな解釈は、べたつかずスマートなラフマニノフとして非常によろしい。
ほかのラフマニノフ・オペラも聴きたくなってきた。
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コメント
yokochan様
暫しの御無沙汰でございますが、2025年度のGW如何にお過ごしでしょうか。こちらは、ケーブルTVでのプロ野球観戦に日頃御無沙汰気味のCDの聴き直しで、過ごしがちになっておりますが‥。
このオペラのプーシキンの原作、あのレオンカヴァルロも『Zingari(ロマたち)』の題名でオペラ化してますので、結果的に競作という事でしょうか。以前に御送信しました通り、ラフマニノフのオペラは初期の『けちな騎手』しか存じ上げませんけれども、興味津々でありますね。
脱線ですが、声楽絡みのラフマニノフの作品では、先日FMで3曲だけ放送のありました、ニコライ・ゲッダとアレクシス・ワイセンベルクの歌曲集も、ぜひ一聴してみたい盤です。イギリスEMIかフランスVSMいずれの制作かは存じ上げませんが、国内ではAA8808にEAC80029とLPでは二度のお勤めがあったものの、CDになっていたでしょうか?
当番組のネット検索で見てみたものの、ワイセンベルクを特集していた『名演奏ライブラリー』での扱いで、メインの協奏曲やソロ曲(全てラフマニノフ)の使用盤の規格・番号の表記はありましたものの、歌曲3曲は無記載でしたので、怪訝に思いました次第でございます。
だらだらと長くなり、申し訳ございませんでした。
投稿: 覆面吾郎 | 2025年5月 2日 (金) 09時53分
コメント遅くなりました。
この暗すぎオペラが20歳のラフマニノフ作品とはまた作曲家の暗部をかいまみる思いです。
1時間クラスのラフマニノフの3つのオペラ、それぞれに特長が違い面白いですが、いずれも暗いです。
そしてご紹介のゲッダとワインベルク、その存在は記憶にはございましたが、CDにはなっていないはずです。
ゲッダのロシアものは、あんがいのよろしいので、とても聴いてみたいものです。
ワイセンベルクのラフマニノフも、カラヤンやバーンスタインとの協力指揮者との共演でなく、ソロの方がこのピアニストの複雑な個性などが秀でて聴けるではないかと思います。
投稿: | 2025年5月16日 (金) 09時32分
yokochan様
ワイセンベルク様、やはり旧EMIにモンセラ・カバリエにお付き合いして、スペイン歌曲集の伴奏もやっておいでだった覚えが、ございます。これも、今聴き直してみたいものです。
配信でしたら、くだんのラフマニノフ歌曲集が販売されているようですが、私ごときの原始人(笑)には、レコチョクやApplemusicと申しましても、ちょっと‥ですね。
投稿: 覆面吾郎 | 2025年5月23日 (金) 17時07分