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2008年11月28日 (金)

ベルリオーズ 劇的交響曲「ロメオとジュリエット」 ミュンシュ指揮

Yurakutyo2 色々なことに悲しんでいてばかりもいられない。
そろそろ通常に戻って、シリーズの完結に急ごう。
あともいろいろ企画があることだし。
それにしても色んなことが日々起きて、私を惑わせる。
昨日は、会議があって、あまり面白くない結末に。
当然にその後、むちゃくちゃ酒を飲んだ訳である。
浜松町で焼酎を一本空けて、有楽町で日本酒を数杯。
電車の時間があることで、自己抑止力が効いて電車でウトウトしながら帰宅。
帰宅後、恐るべし、ブリテンのオペラを聴き、かつ記事をしたためながら、焼酎を飲むワタクシ。いったい私の体はどーなってんだ。
もう若くないんだから、自制しないと。

Berioz_romeo歌入り交響曲シリーズ」、取りこぼしの作品を遡って聴いている。
今回は、爆才ベルリオーズ(1803~1869)の劇的交響曲「ロメオとジュリエット」。
ベルリオーズは交響曲と名の付く作品を4つ書いている。
いずれも番号付きの純交響曲でないところが、ベルリオーズらしい。
作曲順に「幻想交響曲」「イタリアのハロルド」「ロメオとジュリエット」「勝利と葬送の大交響曲」の4つ。
そのうち、「ロメオ」と「大交響曲」が歌入りで、ロメオなどは、シェイクスピアの作品をそのまま取り上げた、かなりドラマに付随した音楽となっていて、どこが交響曲?というイメージもある。
独唱3人に、合唱を伴う大規模なもの。合唱は二手に分かれ、モンタギュー家とキャピュレット家を歌い、独唱のうちバスは、ローレンス神父役、あとのメゾとテノールの二人は、進行役的な存在。だから決して、オペラ的でもないし、オラトリオとも違う。
おまけに、オーケストラだけの写実的な場面が、そうとうに雄弁で、それらをつなぎ合わせると立派な交響曲のようになったりもする。

いずれにしても、1824年ベートーヴェンの第9が作曲されてから、15年、1839年にこのロメオは作られているから、それを考えるとベルリオーズの天才性と独創性に驚かざるをえない。ちなみにメンデルゾーンの「讃歌」が1940年だったりする。

ベルオーズはシェイクスピアに相当入れ込んでいたらしく、幻想交響曲の仮想恋人ハリエット・スミッソンはまさに、ジュリエット役で活躍した女優だった。
その最愛の作品をテーマにした劇的交響曲は、経済的な援助も受けた恩人パガニーニに献呈されている。
100分あまりの大作は、3つの部分からなり、さらにそれぞれがいくつかに分けられている。
 1部では、物語の前段として両家対立のありさまや、メゾやテノールの独唱による、物語全体の顛末も歌われるプロローグ的なもの。
二人の愛を称え、シェイクスピアの詩をも讃えるメゾの歌は甘味でもあり、とても素晴らしい。
 2部は、華やかな舞踏会と、そこに忍び込み、愛を交わしあう二人、妖精マブの女王が描かれる。オーケストラだけの部分が多く、極めて魅力的。
美しい愛の情景に、めくるめく舞踏会の場面と熱狂的なマブ女王のスケルツォ。
 3部は、ジュリエットの葬送の情景と、キャピュレット家の墓の前にひとり佇むロメオ、そしてその早合点による自殺。目覚めたジュリエットも後追いをする。
これらは、オーケストラだけで演奏される部分で、かなり雄弁かつ夢想的で、クラリネットの悲痛な叫びにも似た独白、目覚めたジュリエットが傍らにロメオを見出したときの一瞬の爆発的な歓喜。急転直下そこに死を見出した時の、弦の厳しいまでの響きと下降線を描く音型。ベルリオーズの面目躍如たる場面である。
 そして、終曲は、唯一の登場人物ロレンス神父が大活躍。
二人の死の報は、両家を再び喧噪に巻き込む。神父は、両家のためになると思い、二人を結婚させていたことを朗々と歌う。それでも、両家はけしからん、いまいましいと喧嘩ごしである。神父はさらに、二人の死の真相を語り、このままでは両家に罰が下らんと諭すが、まだまだ過去の因縁をあげつらっていがみ合う両家。
ついに神父も、静まれろくでなしどもめ!と大演説をはじめ、ついには両家にも和解の風が吹き、それぞれが敵方のロメオとジュリエットを悼み、讃美する。
「私たちは誓います。すべての怨恨を捨て去り、永遠に友であることを・・・」
 この最後の部分が長大で、全体の緊張感ある凝縮感からすると、やや冗長で持ってまわった感もあるが、壮大ですべての合唱グループが唱和するので、かなりの高揚感を味わえる。
ここを聴くと、いつもワーグナーの「タンホイザー」の終結部を思い起こす。
実際、よく似ている。

この曲に初めて接したのが、75年にブーレーズがBBC響とやってきた時のオーケストラ抜粋の演奏。テレビとFMで繰り返し視聴した。
ブーレーズの整然とした指揮ぶりは熱狂とは遠かったが、愛の情景やスケルツォが本当に素晴らしかった。その後、マゼールとフランス国立管の全曲演奏の来日公演をこれもテレビとFMで楽しんだ。

音源では、ちょっと古くて音も割れ気味ながら、ロマンと熱狂、そして格調に満ちたミュンシュのステレオ盤が素晴らしい。幻想とカップリングで廉価盤となった、超お得のCD。
ボストン響の香り高い響きと、技量の高さ。独唱陣、とりわけハープにのって歌わえる、メゾのエリアスの歌は夢幻的でたまらなく好きだ。

     Ms:ロザリンド・エリアス  T:チェザーレ・ヴァレッティ
     Bs:ジョルジョ・トッツィ

      シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団
                      ニューイングランド音楽院合唱団 
                         (1962年録音) 

Yurakutyo1 大きな街はどこもかしこもイルミネーションだらけ。
植物もかわいそう。

有楽町フォーラムを左手に。

Yurakutyo3 有楽町マリオンの中通路。

  

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コメント

とってもステキそうな曲ですね。ロミオというとプロコフィエフのしか知りませんでした。
歌入り交響曲はこんなにたくさんあるのに、ほとんど演奏されませんね。いろんな曲にチャレンジしたいのにもう第九ばっかり・・・。言葉が難しくて、アマチュア合唱団ではなかなかできないのも一因かなと思います。

投稿: はざくら♪ | 2008年11月29日 (土) 09時16分

はざくらさま、こんばんは。コメントありがとうございます。ロメオを題材にした作品は、結構あるんですよ。
プロコフィエフを代表に、チャイコスフキーに、グノーのオペラ、バーンスタンのウエストサイドもそうです。
いずれもとてもいい曲ですので、機会があれば味わってみてください。
やはり、フランス語は、日本人にとって一番手ごわい言語ですね。
聴く側はこの時期、第9ばかりを求めてしまいますので、歌う側は大変ですね。
スクリャービンのような大胆な選曲をどちらもしていただきたい、今日この頃であります・・・・。

投稿: yokochan | 2008年11月30日 (日) 01時04分

 今晩は。
 私はデュトワとインバルのCDを持っています。デュトワ盤は、86年ごろに発売されたものですが、「緊張感が無い」だの「生ぬるい」だのと評論家の先生方から酷評されたのを覚えています。ほぼ同じ時期に出たムーティ&フィラデルフィアのほうが評判が良かったと記憶しています。でも今聴き返してみるとデュトワ盤は叙情的でいい演奏ですよ。長大な愛の場面や、舞踏会の場面が特に好きですね。デュトワ盤は、葬送と勝利の大交響曲が収録されているのも魅力です。今は廃盤なのではないでしょうか?復活して欲しいものです。
 ベルリオーズは文学好きな作曲家ですが、特に古代ローマの大詩人ウェルギリウスとシェイクスピアとゲーテが好きだったと聞いています。ウェルギリウスへの傾倒が「トロイ人」をシェイクスピアとゲーテへの傾倒がこの曲や「ファウストの劫罰」(ショルティ&シカゴ最高ですね)を生んだのですね。ウェルギリウスのことはよく知りません。ゲーテと沙翁は「それほど凄い作家かなー」と思っています。ドイツの作家ならヘルダーリンやトーマス・マンのほうが好きですし、英国の作家なら国民作家でストーリー・テラーのディケンズのほうが好きです。どうして彼らの作品を題材にした音楽作品が、ゲーテや沙翁と比べると少ないのだろうと思っています。    yokochan様御贔屓のブリテンのオペラ「ヴェニスに死す」はマンの同名の小説が題材のようですね(間違っていたらすみません)。機会を見つけて聴いてみたいと思っています。

投稿: 越後のオックス | 2009年7月21日 (火) 01時14分

越後のオックスさま、こんばんは。
私はCDでは、このミュンシュ盤しか持っておりません。
小沢やバレンボイムのDG盤が欲しいのですが、ジャケットが気に食わなかったりで買いそびれて、数十年経ちました(笑)。
デュトワはN響で演奏しましたね。ビデオで録画してあります。録音がきれいすぎるので、デュトワとMSOのものは、そうした批評が出がちですね。
デッカでなく、フィリップスだったらまた印象が異なるのかもしれません。
 「トロイ」はできれば年内に、ご指摘のT・マン原作の「ベニスに死す」は近々に、取り上げる予定です。
ショスタコ、ブルックナーも未完ですので、プレッシャー大ですよ(笑)

投稿: yokochan | 2009年7月21日 (火) 23時16分

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