モーツァルト 「戴冠式ミサ」K317 クーベリック指揮
正月の駅伝を見た帰りに、国道1号線を横断し、海の方まで散策してみた。
そのあたりは、私が子供時代を過ごした場所で、白砂青松の美しい海岸だった。
その後バイパスができて、橋脚と波消しブロックだらけになり、海岸線も迫ってきて、環境は変わってしまった。
一昨年の台風直撃で、ついに砂浜が消えてしまった・・・・・。
子供時代を見て過ごした海の風景は、今いってもどこにもない。
海が見えた当時通った幼稚園もすっかり改築され、新しい教会も立っている。
そして、真新しい洒落た戸建て住宅がたくさん建ってしまい、その園からも海が見えなくなっている。
自分の記憶の中にある風景だけは、いつまでも変わらないが、実際の風景は確実に変化してしまっている。
大人になって、子供の頃の街へ行ってみると、こうした変化に驚くと同時に、あれ?こんなに狭かったっけ?小さかったっけ?と、大幅なスケールダウンの構図にも目を見張ることがある。
自分にとっての思い出の街の風景は、いつまでもそのままであって欲しいもの・・・・・・。
モーツァルトが1779年に書いた、愛らしいミサ曲を聴く。
ザルツブルク時代に、宮廷作曲家としての立場からいくつも書いたミサのなかで、一番有名なこの曲は聖像の戴冠を祝うために演奏されるために作曲されたとか、ほかの説では、レオポルド2世の実際の戴冠式に演奏されたから、といった経緯から「戴冠ミサ」と呼ばれている。
25分、5部からなる軽めのミサながら、モーツァルトらしい明るく伸びやかな音楽で、このところ、重厚長大な音楽ばかりを聴いてきた、私の耳にそれこそ石清水のように清冽に沁みこむばかりに響いたものだ。
通常の典礼文通りに、「キリエ」「グローリア」「クレド」「サンクトゥス」「ベネディクトゥス」「アニュス・デイ」の5曲からなり、いずれも長調が基調で屈託なく進められ、アーメンの歌声もやたらに明るい。
そんななかで、最終アニュス・デイが、オペラアリアに傾いたような音楽となっている。
「フィガロ」の伯爵夫人のアリア「楽しい思い出はいずこに・・・」に似た旋律は、とても美しい。
S:エデット・マティス Ms:ノーマ・プロクター
T:ドナルド・グロ-ベ Bs:ジョン・シャーリー・クヮーク
ラファエル・クーベリック指揮 バイエルン放送交響楽団/合唱団
(1973年録音)
まるで、マーラーでも録音できるかのような歌手も揃えたクーベリックの指揮は、ある意味立派すぎるし、うますぎる。
もっと稚拙で素朴であってもよかったかもしれない。そう、かつてのグシュルバウアー盤のように。贅沢言っちゃいけませんな。立派なモーツァルトなのだから。
でも、最大の聴きものは最後のマティスの透きとおったような無垢の歌唱である。
これにはすっかり気分がよくなってしまう。
誰しも心洗われることであろう。
あぁ、これでぐっすりと眠れそう。気分よろし。
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コメント
こんにちは。
私もこの戴冠ミサは大好きです。
そして、この演奏、やっぱり最高ですね。
お書きになっているとおり、マティスの澄んだ声を聴くと心が洗われる思いがします。
久しぶりに聴いてみたくなりました。
投稿: romani | 2009年1月16日 (金) 12時26分
romoniさん、こんにちは。
久しぶりの戴冠式、とっても気持ちがよくなりました。
そして、romaniさんも好きのマティス、最高のモーツァルト歌いですよね。
私も、夫君と組んだ歌曲をその後聞きました。
投稿: yokochan | 2009年1月17日 (土) 15時52分