神奈川フィルハーモニー定期演奏会 金 聖響指揮
期待と不安の織り交ざった気持ちで、雨の激しく降りしきる土曜日を迎えた。
神奈川フィルハーモニーの新常任指揮者「金 聖響」さんの就任披露定期公演。
会場にはこんなゴージャス花束がいくつも。
そしてなんといっても全席完売の満場の聴衆。
おまけにいつもより年齢層が下がった感じだし、おお、女性が多い。
金さん効果バッチリである。 ハイドン 交響曲第101番「時計」
ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
「プロメテウスの創造物」序曲
(アンコール)
金 聖響 指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(4.25@みなとみらいホール)
実は、わたくし、初金さん。
そして驚くことに、初生「英雄」。
もちろん初生「時計」
後期ロマン派&オペラ男なので、このあたりの演目に弱いのでありますが、今後の聖響さんのプログラムは古典派も満載なので、苦手克服と相成りますかどうか・・・・。
オーケストラメンバーが出てくるとパラパラと拍手、出揃ってコンマス石田氏が出てくると大きな拍手が沸き起こるのだけど、今日はメンバー全員立ったまま。
おっ、ニュー神奈川フィル、このあたりからもう違うぞ、と。
そして、このホールでは見慣れない対向配置。
左手から第1ヴァイオリン、チェロ、ビオラ、第2ヴァイオリン。奥左手からコントラバス、ホルン。右手にトランペットとティンパニ、という案配。
「時計」ってどんな曲だっけ、と思う間もなくアダージョの序奏が、ツィ~っと始まる。
やはり、ピリオド奏法。
聖響さんを他に聴いてないからわからないけど、それほど過激でない。
でも1楽章はかみ合わず少しモヤモヤとしたまま進行。有名な2楽章は、神奈川フィルの弦を中心とする美音が確認でき、その上に乗る木管群の素晴らしさも相まってとても美しい瞬間を味わうことができたことがうれしい。
はじけるリズムに躍動感を大いに楽しみつつも、弦が小規模なアンサンブルを途中作ってみたりと、見て聴いて、ハイドンの音楽ってほんとによく出来てるなと感心。
そんなことを思いつつ、あっという間に1曲目が終了。
休憩中のロビーのCDコーナー、居並ぶ聖響CDに混じって、今となっては懐かしい翁のジャケットを発見。おをっ、ブルックナーの7番じゃん!
ということで、CD禁止令が発布されているのに関わらずすぐさまゲット。
これだけでも、今日来た甲斐があったぞ、とホクホクの思いで、初生「エロイカ」(何か妙なTBが来そうな・・)を待ち受ける。
開始早々、早い。早すぎるし軽い。でもやたらに見通しがよく、普段聴こえない声部が急に浮き上がったりしてきて新鮮ではある。
しかし、勇壮な第1主題が埋没してしまって響いてこない。
バスを奥へ押し込んでしまったので、ズシリと低音がない。
その変わり軽やかさとスピード感がそれにとって変わって目立つ。
トランペットとティンパニがうるさいくらいに鳴りまくる。
繰り返しも実行しつつ、すらすらと第1楽章が終わり、深刻な第2楽章も明るささえ漂う爽快な演奏に聴こえ、こちらもあっさり終了。
3楽章のトリオのホルンセクションの輝かしさ。これがよかった。
そして一気呵成の終楽章。
あ、終わってしまった。う~む。
ということで、クラヲタ42年のわたくしの初生「エロイカ」はあっけなく終了してしまった。
異例のアンコール「プロメテウス」も超スピード。オケは一糸乱れず完璧に着いていった。
実は、このアンコールが一番楽しめた。そいういう曲だからでもあろうか。
こんな印象に終始して、ワタクシを古いヤツだとお思いでしょう。
長い付き合いではないけれど、現田&シュナイト体制の華麗・重厚音を常に聴き、感動の涙を流してきた私のような聴き手にとって、金さんが神奈川フィルから引き出した音は、ちょっとがっかり、というかこれは衝撃なのかもしれない。
私の愛するワーグナーの「リング」は長大な劇作品であるけれど、最後が終わるとまた最初に戻って始まるというような循環する作品に思う。
それは、終わりもまた始まり、ということだ。
でも同じ繰り返しでなく、演出家も変えて何度も何度も違うドラマを生んでいくんだ。
だから、この始まりの神奈川フィルの演奏。私には苦い体験だったけれど、オーケストラの多様性を高め、成長してゆく、これもまた大事な一歩に違いない。
フレキシビリティあふれる神奈川フィルを感じてとてもうれしかった。
次回は、わたくしの大好物「トリスタン」と「海」が予定されていて、とくと拝聴しましょうか。
終演後は、金さんを囲んでレセプション。サインをいただく長蛇の列を尻目に缶ビール(?)を2本も頂きましたよ。
オーケストラメンバーもちらほら、お写真もばっちりいただき。
充ち足りない思いは、アフターコンサートにいつものメンバーでビアホール侵攻。
今回は、オーケストラのIさんとお仲間と合流して、若い指揮者を迎えてこれから盛りたてて行こうという、前向きでかつ楽しいお話がたくさん聞けました。
さらに、お馴染みの関内の居酒屋さんに席を移し、目もくらむようなおいしい魚に時間の経つのも忘れ・・・・、ん?
終電やばいと思ってお先に失礼したものの、時間計算を間違え家まで電車で帰れないことが判明。公園で寝ると捕まっちゃいそうだから、会社に宿泊。
晴れた朝に長傘をもってご帰還日曜日でございました。6時間も飲んでしまった。
皆様どうもお世話になりました。
そして、名古屋から転勤で神奈川にいらした「ピースうさぎ」さんとご挨拶できました。
ピースうさぎさん、次回のシュナイト音楽堂、どうぞよろしくお願いいたします。
以下写真集でございます。
金さ~ん
いろんな方の頭かぶってます。
コンマスとチェロ首席。
誰がそんな二人と想像しようか。
気になった方は、神奈川フィルを聴きにおいで
「俺だ」
石田さま。
アフターコンサート第二部の素晴らしき肴たち。
ほや
サバ
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コメント
はじめてまして。
検索でたどりつき、拝読いたしました。
花束を抱えた聖響さんを隠してしまっている後姿はワタクシでございます。
カメラの前をお邪魔してしまって申し訳ないです(^^;;
地元神奈川のオケとは思いつつも、川崎市民にとっては東京交響楽団の方が「わが街のオケ」という感じがして、これまで神奈川フィルはあまりご縁がありませんでした。
(聖響さんの客演を3回、現田さんを2回ほど聴いたことがある程度でした)
でも聖響さんの就任をきっかけに横浜へ足を運ぶ回数が増えそうです。
古くからの神奈川フィルファンの方にはミーハーファンが増えて…と思われる点もあるかと存じますが、同じ客席の中にいるご縁、ということでお目こぼし頂ければと存じます。
投稿: まゆ | 2009年4月26日 (日) 13時10分
yokochanさんが「初生エロ烏賊」とはハイドン94でした。しかも演奏はもうひとつツボではなかったようで・・・。
私は一度ウッカリ某U野氏のエロイカを実演で聴いてしまった苦い過去がありまして、それから15年くらいエロイカを聴く気になれませんでした。
ピースうさぎさんにお会いしたのがウマヤラシイ、じゃんくて羨ましいです。
投稿: リベラ33 | 2009年4月26日 (日) 14時08分
リベラ33さんのコメントともにこちらにもコメントいたします(笑)。
初生エロイカ、というのも意外ですね。
私は古典ものは好きで割りと聴くほうですが、ベートーヴェン交響曲全曲生で聴いているか怪しいですね。記憶をたどると第8番を聴いたことがないです。
私はオペラのほうがあまり見る機会がなかったです。これからは多少増えるかもしれませんが。
来月のシュナイト氏の演奏会も楽しみです。またよろしくお願いいたします。
投稿: ピースうさぎ | 2009年4月26日 (日) 16時11分
聖響さん就任披露を聴けなくて残念無念でした
エロイカは実演で憶えてるのはレニー、朝比奈、ボッセ、聖響OEKとかですが、どれもイマイチでした。いろいろと難しい曲だと思います。第一楽章は、だいたい誰の棒でもなんとなく落ち着かないと言うか「せわしない」感じだったりで・・・。
今回、聖響さんの目指す音楽を、主として方向性の異なった演奏をやってきたオーケストラとの出会いで短期間に創る難しさがあったのかも知れませんね(聴いてないのに何にも言えないのですけど・・・)。でも、みなさんのレビューを拝見する限り、何か新しい息吹を吹き込んでいたようですし、かなフィルのチェリストさんもブログで「あの男、まじやる気」だったかな?そんなふうに綴ってみえましたから、今後に期待ですね。
ぜひ、実際に聴きたいと思います。
そして、お写真の宴席に入れて頂ければ、この上ない幸せでありましょう~!
投稿: 親父りゅう | 2009年4月26日 (日) 18時04分
先日はお疲れさまでした。
)。
そしてありがとうございました
いままでの神奈川フィルもよかったのですが、聖響さんと神奈川フィルがどんな音楽を作っていくのか非常に楽しみです。
これからもすてきなレポ&神奈川フィルの宣伝をよろしくお願いします~(って私がいうな?
投稿: カンナ | 2009年4月26日 (日) 21時20分
先日は実に楽しい飲み会でしたね。
写真保存させて頂きましたよ。
神奈川フィルの新時代の到来に戸惑うところもあった演奏会でしたが、これからどういう進化を見せてくれるのか楽しみです。
前を懐かしむ気持は今度のシュナイト音楽堂でケリをつけることにいたしましょう。
投稿: syllable | 2009年4月26日 (日) 22時22分
まゆさま、コメントありがとうございます。
わたくしの方こそ、後ろ姿ながらお写真を載せてしまい、申し訳ございませ~ん。
最初は、まゆさんのほぼ後ろにいたんですが、ご挨拶したい方がいらっしゃって、移動したんですよ。
やはり川崎ですと東響になりますね。
東響も好きなオケですから、大友さんや新国のオペラなどでよく聴いてます。
私は聖響さんにはまだ不慣れ(?)ですので、これからじっくりとお付き合いして行こうと考えております。
聖響さんと神奈川フィルを大いに盛りたてて参りましょうね!
またよろしくお願いいたします。
投稿: yokochan | 2009年4月27日 (月) 02時01分
リベラさん、毎度です。
初生エロ烏賊は、実はちょっと眠かったりしました。
夜強く、昼には弱いもんで・・・・。
ネット上でしか会えない皆さんと、コンサートを通じてお会いできる。
とても素晴らしいことだと思います。
投稿: yokochan | 2009年4月27日 (月) 02時11分
ピースうさぎさん、土曜日はどうもありがとうございました。私は今回で、ベートーヴェンを全部ライブで聴いたことになりました。
小田原フィルの7番から、足かけ35年かかりました(笑)
関東ではオペラもぜひお楽しみください。
ハマってしまうかもですよ。
またよろしくお願いいたします。
投稿: yokochan | 2009年4月27日 (月) 02時20分
親父りゅうさま、コメントありがとうございます。
ご指摘のとおり、1ヵ月前の神奈川フィルと全然違う音が出てきたものですから、正直戸惑いました。
でもこれもまた必要なことなのでしょうね。
オケメンバーの声も、やる気に満ちているから、こっちも、いっちょやったるか的な言葉がありました。
実際、一生懸命ぶりは目を見張りました。
ピースうさぎさんもいらしたことでもあり、親父りゅうさんも、是非機会をお作り下さい。
ついつい飲み過ぎてしまいますが、音楽のあとの歓談は本当に楽しいものです。
お待ちしてま~す。
投稿: yokochan | 2009年4月27日 (月) 02時26分
カンナさん、土曜日はお世話になりました。
秘話もたくさん聞けて楽しいひと時でしたね。
そして、新しい一歩を踏み出した神奈川フィルを、しっかり聴いて、写真もしっかり撮って(笑)応援していきたいと思っております。
投稿: yokochan | 2009年4月27日 (月) 02時31分
syllableさん、土曜日はお世話になりました。
楽しくて、ちょっと飲み過ぎてしまいました(笑)
ニュー神奈川フィル、確かに複雑な思いでしたが、今後の展開が楽しみであります。
ケリをつけたい気分は山々ですが、きっと聴いたら聴いたでまたウルウルしそうであります。
投稿: yokochan | 2009年4月27日 (月) 02時36分
なんと、楽しい秘蔵写真公開ですね。
楽しいひとときでした。Iさんもとっても素敵な方でしたね。舞台を降りても彼らはエンターティナーでした。
遅くまでお引き留めして申し訳ありませんでした。
次回は時間を気にしながらまたご一緒させてください。
演奏会はやはり微妙ですよね。
実はゲネプロから参加していたのですが、その聴いた印象でもやっぱり微妙でした。正直を言えば、皆さんとのアフターコンサートがなければゲネプロで帰ったかも知れませんでした。
彼はまだ若いですから、シュナイトさんや現田さんの芸術性を求めること自体無理があることを思い知りました。
まだまだこれからの聖響さん、サポーターとして叱咤激励をしていくことにします。オケも聖響さんも本気みたいですから応援しがいもあるような気がいたします。
それにしても、シュナイト=現田の神奈川フィルを聴くことができたのは私には幸運でした。そしてある意味不幸なことかも知れません。あんな田園も、ブラームスも
ブルックナーもR・シュトラウスももう聴くことはできないかも知れませんものね。
投稿: yurikamome122 | 2009年4月29日 (水) 07時59分
yurikamomeさん、先般は大変お世話になりました。
またもや楽しい美酒に酔いしれてしまいましたが、コンサートの後味がいま一つでしたので、酒でうっぷんを晴らした感がありますね(笑)
大切なオーケストラですから、私もyurikamomeさんに負けないように叱咤激励、そして応援をしっかりしていきたいと思います。
私は、少ししか味わえませんでしたが、あの名演を思い起こすだけで、涙が出そうになります。
大切な思い出です!
投稿: yokochan | 2009年4月29日 (水) 21時53分