« マーラー 交響曲第1番「巨人」 アバド指揮 | トップページ | R・シュトラウス オーボエ協奏曲 クレメント&ケンペ »

2009年6月28日 (日)

神奈川フィルハーモニー演奏会 金 聖響指揮

Minatomirai 開港150年を迎えた横浜みなとみらい地区。

昨日27日は、こちらを抜けて「みなとみらいホール」へ。

神奈川フィルハーモニー 第254回定期演奏会横浜開港150周年記念と冠されたコンサートへ行ってきました。
それにしても暑い一日。
新音楽監督 金さんの二度目のコンサート、初回は当方・消化不良だったが、今回涼やかな新風が吹きぬけるかどうか。

 武智由香 オーケストラのためのEaux Lumieres Temps
         (横浜開港150周年記念委嘱作品)

 ハイドン  交響曲第100番 「軍隊」

 ワーグナー 「トリスタンとイゾルデ」 前奏曲と愛の死

 ドビュッシー 交響詩 「海」

    金 聖響 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
                    (6.27@みなとみらい)

Kanagawa_phll200906 土曜日と金さん効果で、今回もほぼ満席。
そこに響いた第1曲目第一音は静謐でミステリアスな音楽。
武智由香さんは、鎌倉出身の若い女流作曲家。
「オ・ルミエール・タン」は、「水 光 時間」を意味するそうで、すべての根源としての「海」、その情景を描いたという。
プレ・トークで金さんと対話をしていたが、とても真面目そうな彼女、まさに生真面目で優等生的な音楽は、とても聴きやすく、美しい場面も少なくなく、もう一度じっくりと聴いてみたいと思わせるものだった。トークのなかで、「通常は亡くなってしまった作曲家の音楽を聴いているけれど、今日は生きている作曲家を・・」とユーモアを交えての金さん。
 今を生きているがゆえに、聴くわれわれから、武満徹だ、リゲティだ、J・ウィリアムズだ・・と言われてしまうのも致し方ない。
鍵盤楽器・打楽器多数を配したフル編成で、目の醒めるような大音響を期待してしまったが、3部にわたる15分間、静的で、とてもキレイな音楽でした。

次のハイドンに焦点を合わせた対抗配置。
それでも、ピアノをどかしたり、打楽器の位置を変えたりと、団員が一旦退いて大規模な転換がなされ、ちょっと興ざめになったけれど、一転、ハイドンが始まると爽快な気分に一瞬にして満たされてしまった。
やっぱり、メロディがあるのってイイ。
 今回の「軍隊」交響曲は、前回のせせこましく感じられた「時計」より、はるかにこちらに近いところで鳴ってくれたように思う。
テンポは相変わらず早いけれど、極端なピリオド奏法も今回はやや控えめ、リズム感あふれる元気のよいハイドンは、梅雨のモヤモヤを吹き飛ばす、気持ちいい演奏。
そこに、何があるの? まぁ、そんなことは言ぃっこなし。
ナイスで楽しい、パパ・ハイドンの音楽でありました。

休憩後の2曲が、今回のお楽しみ。
私の大大好物が並ぶ、でも演奏者にはとてもハードな2曲。
私の人生、トリスタンをもう何百万回も聴いてきているから、どんな演奏でもそれなりに楽しんでしまうし、たいていは音楽の素晴らしさに免じて受け入れ可能なんだ。
そして今回はだいたい予想していた通りの演奏になり、妙に納得。
やっぱりな、と思いつつ、すいすいサラサラ系のひっかかりのないスマートなトリスタン。
情念渦巻く濃い目のワーグナーは、昨今は流行らなくなったけれど、タメや旋律の歌わせ方、半音階進行の楽器間の受け渡しの妙・・・、などなどいずれもまだまだ。
前奏曲が終わって、おのずと若い水夫の歌が聴こえてくるような演奏もあるが、今回はまったく感じず。(自分でこっそり口ずさんでおりました)
コンサートピースとしての「前奏曲と愛の死」、神奈川フィルの美音が楽しめたのが最大の報酬。
あと、次の「海」でも気になったこと。
対抗配置のままの演奏で、私の席は1階前方のやや右より。
右には第2ヴァイオリン、ビオラしかない。低音域は左手奥に封じ込められてしまっているので、ただでさえ弱い声部なのに私の席では音に芯がなくスカスカに聴こえてしまった。

その感覚はドビュッシーにも言えたけれど、こちらは色彩感あふれる音楽だから、かなりマシ。第1曲は、モヤモヤした感じでまとまりが悪かったけれど、2曲目からは音のキラキラ感がオケの持ち味も加わって増してきて、こちらでも情感不足と高速テンポは感じつつも、勢いで楽しめてしまう。
3曲目、ヴァイオリンの高音の美しい持続音(ヴァイオリンセクションの素晴らしさ)に乗って、オーボエから始まる木管の美しい主要主題。
この場面は、この最高の瞬間で、そこから一気に迎えてゆく、弾け飛ぶ波しぶきのようなエンディングまで、息もつかさない素晴らしさだった。

若さとやる気が、眩しい「海」も、これはいいものだ、と痛感し、金さんをこれから見守っていこうという、高揚した気分に満たされた。
そして、なんということでしょう、アンコールに、これまた私の大好きな、ドビュッシーの小組曲の「小舟にて」が演奏されました。
この素適な音楽は、私が大昔フルートをちょいとかじったときに、気にいって散々吹いた曲で、実演で聴くのは初めて。
洒落た雰囲気はなかったけれど、さわやかで気持ちのいい桂演ではなかったろうか。
「海」のあとに、これが必要だったかどうかは何ともいえないけれど、爽快なコンサートの締めくくりとしては実によかった。

という訳で、不安で終えた前回定期、伝説ともなろうシュナイト音楽堂をはさんで、今回定期は、このコンビがどちらへ向かうかまだ不詳ながらも、じっくり付き合って見極めていこうという思いに満たされた。

アフターコンサートは、新潟から新国に合わせていらした「Iさん」を交えて、毎度おなじみのメンバーに、途中から神奈フィルの「Mさん」もいらしていただいて、極めて楽しい「5時間呑み」でありました。
皆さんどうもお世話さまでした

Center_grill_1

コンサートの前、野毛の洋食屋さん「センターグリル」に出向いて、ナポリタン
懐かしくも美味なるお味に、ワタクシのお口もオレンジ色に。

|

« マーラー 交響曲第1番「巨人」 アバド指揮 | トップページ | R・シュトラウス オーボエ協奏曲 クレメント&ケンペ »

コメント

コンサート後はおいしいもの食べたいですよね。
ビールも進みそうでみれいるだけで・・・

投稿: おぺきち | 2009年6月28日 (日) 15時02分

おぺきちさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
横浜でのアフターコンサートはいつも楽しく、時間があっという間にたってしまいます。
土曜午後は時間もゆったりです。
今回は、ビフォアコンサート(?)に、一人、ビール&ナポリタンでしたぁ(笑)

投稿: yokochan | 2009年6月28日 (日) 16時09分

こんばんは。
修禅寺物語聴いてきました。 村上敏明の頼家は凜とした良い声でした。かえでの薗田真木子も素晴らしいと思いました。初めて聴く音楽で評価不能。お客はいっぱいでした。当方はベストの席で聴取。帰ってきて、なぜかピーターグライムズを聴いています。大変疲れました。後、吉松の朱鷺を聴いて寝ます。

投稿: Mie | 2009年6月28日 (日) 22時24分

Mieさま、こんばんは。お疲れさまでした。

私は、修善寺はパスしてしまいましたが、ほんとうは行きたかったのです。でも懐事情もあり・・・。
おかえり後、ピーターグライムズとはまた、「何故か」ですね。そしてまた吉松とは!

初聴の音楽も楽しいですが、疲れますね。

投稿: yokochan | 2009年6月28日 (日) 22時44分

昨日はどうもありがとうございました!神奈川フィルの「アカルイミライ」を聞くようで、清々しい演奏会でしたね。
シュナイトさんのような深さ、現田茂夫さんのような艶やかさを彼に求めても無い物ねだりしているだけになってしまいそうです。
あの颯爽とした若々しさを楽しみたいと思っている次第です。しかしよく飲み、食べましたね!!

投稿: Schweizer_Musik | 2009年6月28日 (日) 22時50分

昨日はお疲れ様でした。
今回一番楽しみしてた「海」ですが、あのキラキラ感は神奈川フィルならではですよね。
聖響さんの高速テンポもあれはあれでいいのではないかと満足してます。
いったいこのコンビはどこに行くのか、まだ色々やるようなのでじっくり様子を見ていきましょう。

投稿: syllable | 2009年6月28日 (日) 23時23分

土曜のアフターコンサートはお世話になりました。

今回の聖響さんの指揮、個人的には大方、満足でしょうか。特にハイドンは、前回とは異なり十分に「聖響さんらしい」ハイドンを聴けたと、個人的に満足してます。

今後も、聖響さんの若々しい指揮に神奈フィルがどのように変化していくか見もの(聴きもの)ですね。

では、次回は7月定期に。

投稿: スリーパー | 2009年6月29日 (月) 00時02分

どうもお付き合いありがとうございました。
コンサートも前回とうってかわってと言う表現が適切なような変わりようで、いったいどうしたのでしょうね。
でも少々面食らいましたがなかなか良かったと思います。
神奈川フィルの個性的な音が聴けて、私はあれで結構満足してしまう以外と軽い聴衆であることを自覚してしまいました。あの輝く音を聴けただけであれだけ満足してしまうとはなんともです。
でも、シュナイト=現田のコンビで私は音楽の深みを知ってしまったんですよね。
懐かしむというのではなく、本物の料亭の味を知ってしまったのはもう仕方がないです。
早く聖響さんに演奏に味わい、深みを増してくれるように期待したいです。

それにしても来月が楽しみですね。今からワクワクしています。

またよろしくお願い致します。CDもありがとうございました。
今日の1曲で早速エントリです。

投稿: yurikamome122 | 2009年6月29日 (月) 00時05分

Schweizer_Music先生、土曜日はお世話になりました。シュナイト&現田体制を意識せざるをえない若武者金さんには、焦らずじっくり神奈川フィルと良い関係を築いて欲しいものですね。
とりあえずの希望はブラームスとシューマンをやらないで欲しいというところでしょうか(笑)
少しビールを飲み過ぎました。違い酒類も織り交ぜるようにしなくては、とも反省してます??

投稿: yokochan | 2009年6月29日 (月) 08時38分

syllableさん、土曜日は毎度お世話になりました。
キラキラも派手でなく、美しいところが神奈フィルですね。
私も、金さんは今はあれでよいのかと思います。
しばらく定期はありませんが、ミューザのバーンスタインや悲愴など、現田さんとかぶるところが、なんとも微妙なところではありますねぇ~

投稿: yokochan | 2009年6月29日 (月) 18時30分

スリーパーさん、不眠のコンサートにアフターにと、お疲れさまでした。
私はハイドンの熱心な聴き手ではありませんので、あれはあれでとても楽しかったです。
欲をいえば、打楽器が近すぎで・・・。
金さん初心者ですし、その個性はまだつかめませんが、先々は楽しみではあります。

そしてゲッツェル、楽しもうではありませんか。
TSOと、トリスタンやばら騎士やるんですね~。

投稿: yokochan | 2009年6月29日 (月) 18時34分

yurikamomeさん、土曜日は毎度ながらお世話になりました。
輝く音色を聴いたあとは、輝く液体に身を浸すのが心も体もすっかりお馴染みになってしまいました。

前回と音も雰囲気もすべて違いましたね。
されが今後どう変化していくか、とりあえず、ミューザのガーシュインに行ってみることにします。

しかし、「料亭の味」とは見事な表現ですね!!
それでは、さしずめ、今のところは、永谷園のお茶漬け海苔って感じですかね。

京響、うまく録れていてなによりでした。
次回もよろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2009年6月29日 (月) 18時41分

遅まきながら・・・神奈フィルを愛するyokochnさまはじめ5名の皆様、そして団員のMさん、新潟からのこのこ出ていった私を温かく迎えていただき、ありがとうございました。これからも、上京の折、なんとか神奈フィルとブッキングするよう努めます!
金さんとオーケストラの呼吸、徐々に合い始め、ドビュッシーは楽しめました。ハイドンはスダーン=TSOで慣らされておりますので、もっと尖ってもよかったと思うのですが。
でも、神奈フィルのデリケートな肌触りと透明で色彩感豊かな音色は魅力的ですね!

追記;「修善寺物語」、村上、黒田、特に薗田が良かったです。音楽は、オネゲルっぽかったなぁ。それと、アンチ山田を念頭に作曲したのに、「ペレアス」風な朗唱よりはかなり“楽劇”してました。日本語を「オペラ」という様式に一番上手に乗せていたのは林かな?

投稿: IANIS | 2009年7月 1日 (水) 22時25分

IANISさん、先日は遅くまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
新潟と横浜、港町ですねぇ。
日頃、飲みながら音楽談義を重ねている皆さん同士、こちらこそ大いに楽しく刺激的なひとときでした。
金さんがどうのこうのは、酒を飲んで彼への期待に転じさせてしまう昨今です。

修善寺は、ほんとうは行きたかった公演なんですが、懐厳しく断念でした。そうですか、オネゲルして、楽劇してましたかぁ。日本語のオペラは難しいのですねぇ。
林光氏は、数ある合唱でも背筋が伸びてしまうような霊感が漂ってます。
NHKは、こうした日本人オペラを、というか新国上演はすべて放送すべきだと思うんですが。
国営放送云々の沽券にかけて!

また神奈川フィルを企画して下さい。
お待ちしておりまーす。

投稿: yokochan | 2009年7月 1日 (水) 23時05分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 神奈川フィルハーモニー演奏会 金 聖響指揮:

» 神奈川フィルの定期 [鎌倉スイス日記]
昨日は神奈川フィルのコンサートに出かけ、色々と考え、色々と話し、たくさん飲んで、食べて…帰った。 以前に金 聖響氏が神奈川フィルに客演したのを聞いているが、常任となって私ははじめて聞く金 聖響と神奈川フィルの演奏会となった。 私の今回の関心事は、武智由香氏による新作の初演を聞くことであった。 その作品「オーケストラのたのEaux Lumieres Temps」は、「声明」や雅楽などの日本の伝統的な語法を自らの語法へと消化し、新たな創造へと結びつけた大変な力作であると思った。 ただ、こうした作... [続きを読む]

受信: 2009年6月28日 (日) 19時19分

» 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第254回定期演奏会 [yurikamomeの妄想的音楽鑑賞とお天気写真]
神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第254回定期演奏会 -横浜開港150周年記念- 公演日:2009年06月27日(土) 開演:14:00 開場:13:30 会場:横浜みなとみらいホール 13:40より指揮者によるプレトーク 指揮:金聖響 ソロ・コンサートマスター:石田泰尚 武智由香/オーケストラのためのEaux Lumieres Temps   (横浜開港150周年記念委嘱作品 世界初演) ハイドン/交響曲第100番ト長調「軍隊」 ~15分休憩~ ... [続きを読む]

受信: 2009年6月29日 (月) 00時05分

« マーラー 交響曲第1番「巨人」 アバド指揮 | トップページ | R・シュトラウス オーボエ協奏曲 クレメント&ケンペ »