ブリテン 青少年のための管弦楽入門 スラトキン指揮
臨海副都心のトンネルに入らんとする。
上は海。
とそこに、なにか命令が書いてある。
ブリテン(1913~1976)の9歳の写真を使ったこのジャケット。
スラトキンとロンドン・フィルハーモニックの演奏による、管弦楽作品の名品。
この美少年を見てどう思われるかは、それぞれ皆さん次第でございます。
ブリテンの少年趣味は、オペラにもほかの作品にも多々登場するが、一方で反戦と平和希求を常に訴え続けた優しくも志の高い人であった。
そして保守的な面も残しながらも、斬新な和声と大胆な楽器の扱い、無調の世界と英語の美しさを活かした歌唱、東洋音楽への傾倒など、ブリテンならではのユニークな世界を築きあげた。
相当数の作品が残されているけれど、まだ未発表の作品も多々あるという。
63歳という早すぎる死を思うと、その早筆ぶりと天才性に驚きを禁じえない。
学校の音楽の授業で、誰しも、「ピーターと狼」と並んで、そのナレーション入りのものの洗礼を受ける「青少年のための管弦楽入門」。
私の場合は矢島正明のナレーターに、カラヤンかマルケヴィッチのレコードだったかな??
大人となり、ヲタ的な耳で聴くには、ナレーションなんて無用だし、そのタイトルも「パーセルの主題による変奏曲とフーガ」といった方がいい。
BBCの音楽教育番組のために作曲されたのだけれど、よく味わって聴いてみると、先のブリテンの音楽の特徴が随所に聴いてとれる。
ホルンや金管の咆哮に、厳しいピーターグライムズの響きを聴くことも可能だ。
曲の大半をオーケストラの各楽器・パートを主役とした変奏曲が占め、最後の数分を全オーケストラによる壮大なフーガが受け持って、二重の掛け合いによる極めて面白いフーガとなっている。このあたりのかっこよさは、ブリテン特有のもので、ライブでは大いに盛り上がるわけだ。
このCDには、パーセルの原曲をブリテンが弦楽用に編曲したものも録音されていて興味深い。
英国音楽を得意にする、レナート・スラトキンとロンドン・フィルの正攻法の演奏はしっかりしていてとても聴きごたえがある。
この曲もいいが、このCDに収められたふたつの名品が、私はとてつもなく好きなんだ。
皇紀2600年の日本に奉じられたけれど、お祝に鎮魂曲とはなんぞやと演奏拒否されてしまった「シンフォニア・ダ・レクイエム」。
北の絶海が主役であるような人間の生き様の悲劇「ピーター・グライムズ」の4つの海の間奏曲とパッサカリア。
音の強弱・出し入れがとてもうまく、新鮮な音楽を作り出すスラトキンに、弦主体にくすんだ響きと柔らかな管のLPOが素晴らしく機能している。
RCAに録音した英国音楽の数々、廃盤も多いがこれからも聴いて行きたいスラトキンである。
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コメント
こんにちは。
先日「青少年のための管弦楽入門」を久しぶりに聞きました。中学校の音楽の時間に聞いて以来かもしれません。
演奏は小澤/BSO盤です。
じっくり聞いてみると実におもしろい曲ですね。楽器や楽器群の特性を生かした変奏が見事だと思いました。
投稿: よんちゃん | 2009年7月11日 (土) 09時53分
よんちゃんさま、おはようございます。
わたしも、中学時代に聴いていらい、バカにしてたら、マリナーとN響の演奏をテレビやFMで聴いて、これは面白い曲だとの認識をあらたにした覚えがあります。
ほんと、楽器の特性を生かし、よく書けた曲ですよね。
ライブで聴くと結構興奮します。
一度だけ、ラトルの指揮で聴いたことがあります。
小沢盤の存在は知りませんでした。
今度探してみます!
投稿: yokochan | 2009年7月11日 (土) 10時53分
こんにちは。
これからすみトリに向かうところでカキコです。
ところで、「ラジオを聞け」ってwwwww
ラジオなら何でもいいのですかね?
「青管」(笑)は何年か前に初演のサージェント指揮の映画を見たんですが、面白かったんでもう一度見たいです。
投稿: naoping | 2009年7月11日 (土) 13時34分
naopingさん、こんにちは。
ラジオ聞けって言われてもねぇ。
CD視聴中だったので、着けなかったけど、おもろいものが聞けたかもしれず、無念であります。
青管ですかい(笑)、なんともいえない短縮版ですな。
サージェントのジェントルな指揮もあるんで、私も見てみたいです。
ところで、昨日は連チャンコンサートになってしまうため、すみとりは泣く泣く断念しました・・・・。
投稿: yokochan | 2009年7月12日 (日) 11時39分
今晩は。
私も中一のとき音楽の時間にこの曲を聴きました。誰の指揮した演奏家は覚えていません。日本語のナレーション入りのLPレコードでした。今は大学時代に購入したブリテンの自演盤を愛聴しています。小沢盤は私も聴いてみたいですね。
シンフォニア・ダ・レクイエムとピーター・グライムズ抜粋は、ベッドフォード指揮ロンドン響の演奏を好んで聴いています。シンフォニア・ダ・レクイエムはラトルのバーミンガム時代の演奏も好きです。お祝いに鎮魂曲を提出したブリテンは、反骨精神旺盛な人だったのでしょうか?当時の日本政府は面食らったでしょうね。ショスタコーヴィチの第9番を初めて聴いたときのスターリンと同じぐらい。
投稿: 越後のオックス | 2009年7月19日 (日) 00時54分
越後のオックスさま、こんばんは。
中学時代はもう一丁前のクラヲタでしたから、ナレーション入りはちょっと小馬鹿にしたもんです(笑)
でもいまでは立派にブリテンしてる名作と思います。
ダ・レクイエムも、ブリテンのオケCDにはついてきますし、それ以上にこの作品が好きです。
マリナーの実演で接し大いに感銘を受けたのです。
反戦と平和希求の気持ちをもって書いた作品を純粋な心で日本に送ったのでしょう。
信じらんない思いでしたでしょうね。
投稿: yokochan | 2009年7月19日 (日) 23時19分