神奈川フィルハーモニー定期演奏会 ゲッツェル指揮
野毛山にある、成田山横浜別院から、ランドマークを眺めるの図。
ちょっと早めに桜木町に着いたから、登ってみましたよ。
さぁ、これからどんなモーツァルトとマーラーに出会えるのかな、楽しみ楽しみ。
モーツァルト 「アダージョとフーガ」
「踊れ、喜べ、汝幸いな魂よ」
S:森 麻季
マーラー 交響曲第1番「巨人」
サッシャ・ゲッツェル指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(7.10@みなとみらいホール)
まず、モーツァルトの深淵な音楽で始まった今日のコンサート。
最後には大爆発の怒涛の大おもしろ演奏会になった。
そんな結末を前半のモーツァルトに誰が予想しようか。
先週、東響に客演してその片鱗を見せていたようだが、横浜のホールに集まった聴衆のほとんどは、私も含めて初ゲッツェル。
弦楽だけで演奏する1曲目。神奈フィルの誇るキレイな弦楽セクションの音色をじっくりと味わえる。
指揮棒をもたずに入念な振り方のゲッツェル君。さすがは、ヴァイオリン出身と思わせる。
ところが、フーガに入ってその悲愴感が極まっていった時、それを見せたのである。
そう、ジャンプしちゃうんだ。
コンマス石田氏も負けてないけど、さすがにここでは飛ばないし。
モーツァルトで飛ぶ指揮者は初めて見たよ。
オルガンを真中に据え、黒と黄色の素敵なドレスの森麻季さんを迎えてのモテット。
ここではさすがに「飛び」はナシ。
それより、デリケートな麻季さんの声を巧みに活かしてオケをしっかり抑えて、それはもう天上の音楽のような背景を築きあげた。オペラや合わせものがうまい指揮者だろう。
そして、麻季さんは、そんなオーケストラなものだから、とても安心してクリスタルのように美しくガラス細工のように精巧な歌声を響かせることができたように思う。
芸劇のような巨大ホールで聴いたときは、その声がオーケストラに完全に埋没してしまってガッカリだったけど、今回は麻季さんの声の素晴らしさを心の底から堪能することができた。彼女のゾフィーがもう一度聴いてみたいな。
蛇足ながら、ソリストを立てる指揮者のステージマナーもなかなかでしたぞ。
休憩後は、オーケストラがギッチギチにステージを埋め尽くしてのマーラー。
前回定期もフルオーケストラだったけど、件の対向配置だっため、左側は一杯、右側はすかすかの、ビジュアル的にもどこか物足りないものを残していた。
しかし、今日はギチギチでいいぞ。
そしてゲッツェル氏登場。
冒頭の弱音の持続音。すごく音を抑えていて思わずこちらも耳をしっかりと澄まして聴きこむ体制に。
やがて「さすらう若人の歌」の旋律がフレンドリーに奏でられ繰り返しも行い盛り上がり、またそのあとに訪れる静かな場面。ここでも音量をものすごく落として緊張を誘う。
そして、この曲に3度ある大爆発の1回目。
そうジャンプだ おまけに今度は、石田氏も完全に腰を浮かしてジャンプ
鮮やかな強弱の対比、壮大なダイナミクスの幅。
いろんなパターンを持つ華麗なジャンプはともかく、ゲッツェル氏のこだわり抜いた部分はこのあたりか。
2楽章の弾みと中間部の優美さ、この対比も鮮やか。
意外や、一番気にいったのが3楽章。
コントラバスはソロじゃなくて、ユニゾンで奏されたが音は例によって抑えられているので、まるでソロのように聴こえる。グロテスク感よりは、優美な葬送の行進。
神奈フィルの管が今日はとても素晴らしかったから、揺れ動くテンポのこの楽章がとても楽しく聴けた。
そちらが死んだように終わったあとは、アタッカで強烈な終楽章が始まった。 この楽章、飛ぶは飛ぶは。連続ジャンプもかまし、もうゲッツェル君の一挙手一頭足にその目は釘付け。だって面白いんだもん。
とゆーか、わたしゃ、笑いをこらえるのに苦労したぞよ。
でも出てくる音楽がまっとうで、とても音楽的だからそんなパフォーマンスも「よし」なんだ。
3発連続ジャンプは、指揮台を斜めにピョンピョンと進みつつ行う。
片足ジャンプは、おもに右足を抱えるようにして上げて行う。
基本ジャンプにおいてはその着地点を完璧きわまりなく正確に定めて行う。
いずれのジャンプも、決して音を立ててはならない。
かつての大御所ジャンパーは、ライブ録音でもドシンバタンが収録されていて失笑を買ったものだ。
おっと、跳躍だけに気を取られていてはいけない。
その腕の振りも目をみはるものがあるんだ。
指揮棒持つ右手は相当にまともで、そのバトンテクニックは完璧で、実にわかりやすい。
左手は、右と一緒に拍子をとっていたかと思うと、扇風機のようにぐるんぐるんと回すことしきり。オジサンの私があんな動きをしたら脱臼して一生使い物にならなくなっちまう。
体の伸び縮みも伸縮自在、あれ、ちっちゃくなったちゃった、てな感じ。
お顔の表情もきっと豊かだったんだろうな・・・・。
そう、終楽章のはなし。
こちらでも2度の大爆発と、それらに挟まれた平安で優美な場面や過去への回想、これらの対比がまた見事なもので、神奈フィルの弦の美音で酔いつくし。
そして痺れるようなエンディング。
案の定、ホルン立ち上がり、ついでにトロンボーンまで立ち上がりーっ。
いやがうえにもアッチェランドがかかり眩いばかりのフィナーレが形成されたわけであります
一瞬の静寂後、われんばかりの大喝采。
何度も呼び出され、オケが何度も、指揮者を称え立たずに迎える姿はおざなりでないものを強く感じた。
ゲッツェル氏、オケをステージ後方席にも向かせて挨拶させたりと、ほんとによく気がまわる人で、その音楽作りも含めて楽員からも人気が高いのがよくわかるというもの。
楽員さんから絶対お勧めとのこともお聴きしていた今回。
そのお勧めどおりに、とても素晴らしく楽しいコンサートでございました。
そして胸のつかえがすっととれたような感じでもありますねぇ。あ~おもしろかった。
ゲッツェル氏は、ウィーン生まれ。ウィーンフィルの団員だった父に手ほどきを受け、自身もウィーンフィルのヴァイオリン奏者になった。
そして、有能な指揮者をたくさん育てたパヌラに師事したりして、指揮者に転向したという。
調べたら、現在フィンランドのクオピオ交響楽団とトルコのイスタンブールのオーケストラの指揮者を務めている様子。
まだ若くて将来を見込める指揮者だからゆえ、神奈川フィルもしっかりつかまえておいたほうがいいですよね
草食系の金さんに、ヨーロッパ肉食系のゲッツェル氏。
神奈川フィルも多彩なオーケストラになりつつあります。
アフターコンサートは、毎度おなじみ、まるで2週間まえからずっと飲んでるような錯覚におちいるような楽しい会でございました。
気がついたら店は、神奈川フィル関連だらけ(笑)
みなさん、今回もお世話になりました。
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コメント
昨日は楽しい演奏会&飲みでしたね。
ジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!で耳だけでなく目も忙しかったです(笑)
さすがにステージ脇の席だったので真面目な顔で聴いてましたが。
もちろん演奏も気持ちよく素晴らしかったです。
これからも色々な神奈川フィルの音を引き出していってほしいですね。
投稿: syllable | 2009年7月11日 (土) 23時44分
こんばんは。
ゲッツェルさんは楽しい指揮者ですね。
僕はこのコンサートは聴けませんでしたが、先日、東京交響楽団に彼が客演したコンサートを聴きました。
このコンサートでも、ジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!
ここ最近、まれにみるエキサイティングなコンサートでした。
神奈川フィルはぜひこの指揮者に何らかのポストをプレゼントをして、ながいお付き合いをしていってほしいですね。
投稿: ナンナン | 2009年7月12日 (日) 00時25分
syllableさん、先日もお世話さまでした。
ともかく面白いコンサートでした。
ジャンプの数を最初は数えていたんですが、途中からもう数えられなくなってしまった(笑)
神奈川フィルといい関係になりそうな人ですね。
投稿: yokochan | 2009年7月12日 (日) 11時47分
ナンナンさん、こんにちは。
東響のコンサート、私も行きたかったのですが、そう何度もコンサートにいけませんので断念しました。
トリスタンとバラキシでしたから、無念きわまりないです。
まして、あの面白い指揮を見てしまったものですから(笑)
ぜひとも、ゲッツェル氏に首席客演かなにかのポストを与えてほしいですね!
投稿: yokochan | 2009年7月12日 (日) 11時51分
どうも先日はありがとうございました。
前回定期でMさんに「絶対聴きなさい、聴かないと10年損をする」とまで言われるといやが上にも期待がふくらみ、そしてその期待通りでしたね。
モーツァルトの2曲も音楽の深みをたっぷり味わった素敵なものでした。ほんとに”素敵”という言葉が適切と思いました。
それにしても良く飛び上がりましたね、あそこまで凄いのは初めてです。オレ様石田様と一緒で見た目がエキセントリックでもやってることはトラディショナルに正統派で、しかも若々しさが漲り眩しいばかりでした。
あちらこちらから神奈川フィルの指揮者熱望論が出るのは仕方ないですよね。
神奈川フィルは音楽監督が空いていますから。。。。
隣の席の某女史は、あまり有名になる前でギャラの安いうちに契約していた方がよいとエージェントのようなことをいっておりましたがなるほどと感心してうなずいてしまいました。
今度アンケートに書きましょう。
投稿: yurikamome122 | 2009年7月12日 (日) 13時54分
yurikamomeさん、先日はこちらこそお世話になりました。
ほんと、あれだけのご推薦の価値の証しがしっかりと確認できましたね。
モーツァルトもよかったし、久々にマーラーに感激しました。
いまなら確かにお買い得ですね。
金さんも、マーラーを聴きにきていたようですから、世代的にも大いに気になるところだったのでしょうね。
神奈川フィルを舞台に、ライバルみたいに高めあっていって欲しいです!
と、アンケートに書きましょう!
投稿: yokochan | 2009年7月12日 (日) 16時04分
こんばんは。東響の定期公演に参りました。そしてその3日後、ソリストだったガヴリリュクのリサイタルに行ったら、ロビーにサッシャらしき人を発見しました。トヨタ・マスタープレーヤーズ・ウィーンの来日の際にも何年か前に第2Vnを弾いてたみたいですね。もちろん今年はいなかったですが。
投稿: steph | 2009年7月13日 (月) 22時44分
stephさん、こんにちは。
ガヴリリュクのコンサートは、前々回の神奈川フィルの定期(金さん)の時に、みなとみらい小ホールで、同じ時間にかぶってやってました。
どうもいろいろつながりがあって面白いものです。
暇なときに、過去のニューイヤーコンサートを調べて、サッシャ氏の姿を確認したいと思ったりしてます。
見つけたからといって、どうということはないのですが・・・(笑)
投稿: yokochan | 2009年7月14日 (火) 13時23分