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2009年7月22日 (水)

若杉 弘さんを偲んで

Mita 昨日、体調をしばらく壊されていた杉弘さんが亡くなりました。
この報せを、日食の日の朝、新聞で知り、思わす「エーっ」と声をあげてしまった。
何ということでしょう

私は、極めて悲しいです。

ちょうど1年前、新国で「ペレアスとメリザンド」を指揮された舞台が、私にとって最後の若杉さんとなってしまった。
その時はずっと腰を掛けたまま指揮、カーテンコールにもなかなか登場せず、ようやく姿を現されたときは、舞台袖にそっと立ち、始終拝見しているのに、何かとてもお歳をめされたように感じた。
そのあと、入院され、コンサートもいくつかキャンセル。年末には復調され、得意の新ウィーン楽派やブルックナーを指揮され
安堵していた。
今年春先からまた入院、ムツェンスクや修善寺物語をキャンセルされ、秋のヴォツェックも断念の報に接したばかり。

そんな中での逝去の報せに、わたくし、どんなにショックを受けたことか・・・・・・・・。

Wakasugi
←若すぎの若杉さん、そして若すぎるその死。

私がクラシックを聴き始めたころ、若杉&読響、岩城&N響、小沢&日フィル、これら若手3人に率いられた在京オケがとても人気があった。
年末の第9などは、この3団体がいつも競っていて、いずれもテレビで見たりしたもんだ。
若杉&読響は、大曲の日本初演をたくさん手掛けていて、中でも「パルシファル」は金字塔ではなかろうか。何分お子様だったので観てませんが。

でも若杉さんは、指揮者の中でも実演をもっとも数多く聴いた方であります。
とくに私にとっては、若杉さんはオペラ指揮者だった。日本人指揮者が、ドイツのオペラハウスの音楽監督になるなんて、かつては考えられないことだった。
しかも、ライン・ドイツオペラに加えて、ドレスデン国立歌劇場の音楽監督にまでなってしまうなんて。 もちろん、ケルン放送とチューリヒ・トーンハレも快挙だった。
日本に活躍の場を移してから、新国の監督になるべくしてなり、見事なレバートリィの構築と斬新な演目で、連日満場の聴衆を唸らせとていたことはご承知の通りであります。
氏が傑作と呼んではばからなかった「ヴォツェック」や、生涯、力を注いでいたR・シュトラウスの「影のない女」を指揮できなかったこと、そして、いずれは予定されていた「パルシファル」もふくめて、きっとご無念であったことでありましょう。

実演以外でも、若杉さんはよく見かけておりました。幕間で飯守泰次郎さんと談笑している場面は何度も拝見した。
極めつけは、ある外来オペラのとき、隣接の百貨店を歩いていて、通路の角を曲がったらいきなり若杉さんと鉢合わせしてしまった。
あれ、どこかで見たことあるオジサンだなっと、思わず「こんにちは」と言ってしまった私。
若杉さんはもちろん、こちらを知らないわけだから、きょとんとしてました・・・。

オペラでは、ドイツオペラばかり観ることができた。初めて接する舞台が若杉さんの指揮によるものばかり。そう、数々の日本初演を手掛け、私もそこに居合わせることができたた。古いものからあげると。(※日本初演)

 ヴェルディ    「オテロ」 
 ベルク      「ヴォツェック」
 ワーグナー   「ワルキューレ」 
           「ジークフリート」 ※
           「神々の黄昏」  ※
 R・シュトラウス 「エジプトのヘレナ」 ※
           「ダナエの愛」    ※
           「ダフネ」       ※

 ドビュッシー    「ペレアスとメリザンド」

こんな感じで、シュトラウスは「インテルメッツォ」のチケットを持ちながらも行けなかったのが悔やまれる。これらの中では、「神々の黄昏」のラスト大団円が圧倒的な感動を植えつけてくれていて、何もなくなった舞台がただ真っ白く光るだけで、そこに自己犠牲の素晴らしい旋律があまりに美しく響いた・・・・。涙が止まらなかった。

若杉さんの知性と劇性のバランスのとれた安定感ある指揮は、オペラ上演の核的な存在として極めて頼もしい存在だった。
バトンテクニックも的確で、大曲を破たんなくまとめ上げる力は並々のものではなく、そうした力がヨーロッパでも高く評価された由縁であろうか。
まだまだたくさんオペラを指揮して欲しかったし、もっと聴きたかった若杉さん。

Wakasugi_tmso
今日は、若杉さんが黄金時代を築いた東京都交響楽団とのライブCDから、もっとも得意としたワーグナーの「ジークフリート牧歌」を追悼に聴きます。

コジマのための、贅沢な目覚めの廻廊の音楽。
今宵はこの心安らかな美しい音楽が、こんなにも切なく哀愁を持って響くなんて・・・・。

ゆったりめのテンポで心を込めて演奏されていて、オペラティックな感興も湧き上がって聴こえるほどに雰囲気がゆたか。

このCDには、シュトラウス「ドンファン」、プフィッツナー「パレストリーナ」、ヒンデミット「ウェーバー変奏曲」も収められていて、これ1枚がそっくり、若杉ワールドともいうべきお得意の作曲家で固められている。

NHKでは、さっそく追悼番組として、マーラーの第9の放送が予定されているようだが、若杉さんが嗜好をこらした、6番や、8番、9番のそれぞれシリーズもしっかり放送して欲しい。
さらに都響とのマーラー全集、読響との幻想やベートーヴェン、たくさんある録音も復刻して欲しいものであります。

若杉弘さん、たくさんのオペラや未知の音楽を聴かせていただきどうもありがとうございました。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

(冒頭の写真は、本日、都内で撮影したものであります)

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コメント

お晩です。
若杉さんの訃報は7/22の新聞で知りました。
初めての若杉体験が、コンサート・オペラの「ペレアス」であったというのは何かの符合なのでしょうか?それはそれはとても素敵な「ペレアス」の上演であっただけに、氏の、オペラをもっと体験したかった、と悔やまれます。
氏のご冥福をお祈り申し上げます。

投稿: IANIS | 2009年7月23日 (木) 02時03分

yokochanさま こんばんは

若杉さん、お亡くなりになりましたね
残念ですね〜
私は田舎に住んでいますので、最近はまったくその演奏に触れることができませんでした。

大学時代、京都に住んでいたのですが、確か京響の指揮者をされていた時代もあったと思うのですよ。マーラーの5番のシンフォニーを聴いた記憶があります。

指揮者としては、これからもまだ活躍の場があったと思います。
ご冥福をお祈りします。

ミ(`w´彡)

投稿: rudolf2006 | 2009年7月23日 (木) 02時46分

本当にショックでした、まだまだ若杉さんの演奏を聴いていたかったのに、若杉さんが監督になった新国立歌劇場はめざましいものがありました。
あの人にあの劇場を任せるのが遅すぎました。本当に残念でなりません。
ご冥福など祈りたくありません、棺桶を開けてたたき起こしてもう一度指揮台に立ていただきたいです。
悔しく、そして悲しく残念です。

投稿: yurikamome122 | 2009年7月23日 (木) 13時25分

拙プログへコメントとTBを頂き、ありがとうございました。

いやはや、読ませていただきyokochanさんの若杉氏への思い入れの深さを知り、当方の記事の浅はかさを恥入るばかりです。
悲しさもさぞやと拝察いたします。

私は、残念ながら本当に、若杉さんを聴くチャンスがなかったです。めったに関西方面には来られませんでしたし、朝比奈氏亡き後の大フィルには何度か来られましたがご縁ありませんでした。
オペラの世界、読響、N響、都響等在京オケとのいろいろなど、すべて守備範囲の外でした。

今さらながら、その死が惜しまれます。

投稿: 親父りゅう | 2009年7月23日 (木) 14時45分

昨日の空も悲しかったのでしょうね。 
修善寺物語をとても楽しみにしていたのでキャンセルだけでかなりのショックでしたがもう二度とお姿を拝見できないのかと思うと。。。 
このようにたくさんの思い出としてyokochan様の中で生き続けられているのも確かです。 
ご冥福をお祈りいたしますが時折ここで氏のお話も聞かせていただければ大変嬉しいです。

投稿: moli | 2009年7月23日 (木) 21時07分

IANISさん、毎度です。
ご一緒した昨年の「ペレアス」がお互い最後になってしまいましたね。
来シーズンこそ、若杉ワールド全開の新国でしたのに、こんな風に幕を閉じてしまうなんて無念極まりないです。
ご冥福をお祈りしまう。

投稿: yokochan | 2009年7月23日 (木) 21時44分

rudolfさん、こんばんは。
若杉さんは東京での活動が多かったですから、関西ではあまりお聞きになれなかったかもしれません。
そう、京響の指揮者も一時されてましたね。
FMで聞いたチャイコフスキーの5番が鮮やかな演奏でした。
日本のオペラ界を引っ張った若杉さんでした。
合掌です。。。

投稿: yokochan | 2009年7月23日 (木) 21時56分

yurikamomeさん、コメントありがとうございます。

そう、私もyurikamomeさんのように過激に、眠ている場合じゃないと、起こしてさしあげたくなります。
それくらい惜しい早世。
まだまだ、指揮者としてやるべきこと、やりたいことがたくさんあったのではと思われてなりません。
そう、外人などを起用せずに、若杉さんに任せればどんなによかったことでしょうか!
敬愛する音楽家の訃報は悲しいです。

投稿: yokochan | 2009年7月23日 (木) 22時00分

親父りゅうさん、こんばんは。
めっそうもない、関東にいるからこそ、若杉さんを親しくお聴きできたまでです。
朝比奈おやっさんを、ほとんど聴いてませんです。

それにしても残念な死。
ご本人が一番無念であったでしょうね。
氏の残したマーラーが復活することを念じつつ、ご冥福をお祈りしたいと思います。

投稿: yokochan | 2009年7月23日 (木) 22時12分

moliさま、こんばんは。
コメントありがとうございます。
次々と新国の指揮をキャンセルされ、とても不安な気持ちを持っていましたところ、いやな予感が的中。
昨日は、そう、涙雨も降ってご覧のような霞んだ日蝕になってしまいました・・・・。
マジで悲しいですが、moliさんのおっしゃるように、こちらでその思い出をひも解いていこうかと思ってます。
とりあえず、今宵はニャンコがらみで・・・・。
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2009年7月23日 (木) 22時16分

こんばんは、私は結局ついぞ若杉さんの演奏を聴くことなく終わってしまいました・・まだまだ活躍して欲しかったです。評判はかねがね聞いていただけに残念です。こんな時いつも思うのですが、追悼番組や残されたCDで触れてみたいです。

ところで、日食の写真素晴らしいですね。
くっきりと欠けている様子がわかりますね(^^
私もいつかチャレンジしてみたいものです。

投稿: stonez | 2009年7月24日 (金) 01時44分

stonezさん、コメントありがとうございます。
若杉さんのご逝去はかなりの反響ですね。
ブログ記事もたくさんありました。
こうした声を受けて、廃盤だらけの音盤復活を強く望みたいものです。

日食写真、曇っててだめかと思って事務所を出たら、みんな上を見上げてるじゃありませんか。
あわててシャッターをきりまくりました。
もっといいカメラだったらと惜しまれます(笑)

投稿: yokochan | 2009年7月25日 (土) 12時30分

若杉弘さんは 現代日本の作曲家の作品をレコーディングされてたり 沢山初演されたりしてて 自国の作曲家の作品をとても大切にされていて とっても素晴らしいことです。

投稿: 北 たけし | 2009年8月 2日 (日) 21時31分

北 たけしさま、コメントありがとうございます。
若杉さんは、それこそ若い頃から晩年まで、現代日本の作品を積極的に取り上げ、紹介しておりました。

この前、古い切り抜きを見ていたら、来日したブーレーズと一緒にリハーサルしている画像を見つけました。
70年の万博のものです。
日本の現代作品も、海外のその分野も、とても大切に取りあつかっていらっしゃった若杉さんでした。

投稿: yokochan | 2009年8月 3日 (月) 22時08分

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