ベルリオーズ 歌曲集「夏の夜」 スーザン・グラハム
仙台から帰ってきた。
昨晩は、「侘び助」で一杯。
こちらは、料理もおいしく、お酒も良いものがたくさんあって、目が廻ってしまう。
毎月、鬼平犯科帳に出てくる料理が供されるのもうれしい。
こちらは、そのうちのひとつ、夏野菜の煮物。
江戸時代は、井戸で煮物を冷やして楽しんだという。
風流ですな。
そして、こちらの煮物、とても優しい味でござった。
最近さぼりぎみの、「さまよえる神奈川県人」に近々公開します。
仙台に行かれたら、是非「侘び助」へどうぞ。
今年の夏は、公私ともに忙しくて、気がついたらもう夏も終わりに近づいてきた。
夏らしさが少なかったせいもあるけど、去る夏を思うと寂しいもの。
遅ればせながらの夏の音楽シリーズ、今日は、私の好きなベルリオーズの歌曲集「夏の夜」を一人静かに聴きましょう。
イタリアやドイツに比べたら、フランスに名歌曲が生まれるのはずっと遅かった。
しかし、この6つの歌曲からなる「夏の夜」こそがフランス語のディクションを大事にした「メロディ」というフランス歌曲のいわば出発点となったわけだし、オーケストラ伴奏歌曲というのも画期的なスタイルだった。
1841年、ベルリーズはピアノ伴奏版で作曲し、その後1843年と少し間をおいて1855年にオーケストレーションを施し、今の形が出来上がった。
ベルリオーズ自身は、6曲の歌手の指定をしていて、メゾ・ソプラノまたはアルトないしはバリトン、そしてテノールとなっている。
ところが、なかなか歌手をそろえるのも大変だろうし、一人の歌手でも詩の内容からしても全然違和感がないから、女声によって歌われるのがほとんど。
バリトンやテノールによる録音もあるが、私は聴いたことがありません。
美しいメゾで聴くことに慣れちゃったから、きっとずっこけるかもしれないし・・・。
詩は、フランスの詩人テオフィル・ゴーティエによるもの。
まさにロマンにあふれ、夢見るような内容。
その詩に、ベルリオーズはなんと美しく馥郁たる音楽を付けたことだろうか!
1.ヴィラネル
2.ばらの精
3.入り江のほとり
4.君なくて
5.墓地で、月の光
6.未知の島
新しい季節がめぐってきて、
寒さが遠のいたら
僕たちふたりで、ねぇ
森へスズランを摘みに行こうよ
摘んでいる僕たちの足元では
真珠のような露が朝に震えているようだよ
聞きにいこうよ、つぐみが鳴くのを・・・・
(ヴィラネル)
1曲目の「ヴィラネル」が大好き。歌曲集のタイトルとは関係なく、これは春の訪れを喜ぶ幸せに満ちた桂曲で、フランス語の語感とメゾの声域が生み出す艶めかしいくらいに甘やかな雰囲気が堪らなくいい。
オケも軽やかなスタッカートが、幸福感に拍車をかける。
それと明るいのは、6曲目の「未知の島」。舟歌である。
若い男が乙女を船旅に誘っている。どこへ旅立つのか・・・。でも乙女は愛の戒めを語る。
不思議な明るさをもった終曲は、そっと終わってしまう。
中間の4つは、内容的には暗い雰囲気だけれど、ベルリオーズの見事な音楽は、実に雄弁で、「ロメオ」や「ファウスト」並みの作品に勝るとも劣らない。
これらは、ワーグナーの「ヴェーゼンドンク歌曲」をも思い起こすことができる。
テキサス育ちのアメリカのソプラノ、スーザン・グラハム。
素直でクセのまったく見当たらない声でありながら、時おり香り立つような味わい深い声も聴かせてくれる。クレヴァーな彼女、フランスものを得意にしていて、私のような仏語オンチにも、その語感の美しさと完璧ぶりはよくわかる。
彼女、声域は広く、メゾソプラノとしての活躍も目立つが、オペラ歌手としても一流なだけに表現の幅がとても豊かで安定しているのも強み。とても余裕がある一方で繊細さも充分なのだ。
ジョン・ネルソンとコヴェントガーデン・オーケストラも実に雰囲気がよろしく、ベルリオーズの美しい世界を見事に描きだしていると思う。
この曲、先ごろ亡くなった、ベーレンスも録音していたはずで、一度聴いてみたいと思っている。
宮城県内を走行中、路傍でもうコスモズが咲いておりました。
まだ夏よ、終わらないで。
特に、東北から北は、梅雨終結もないままに秋が来ちゃうなんて、困ります。
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コメント
おはようございます。
ベーレンス亡くなりました。残念です。一度もお聴きしたことがありませんが、メットのトスカのLDを昔よく見ました。最近は聴きませんが、イゾルデも長いなあと思いながら聴いたものです。夏の夜、大好きです。歌はクレスパンが、音楽はヘレがお気に入りです。明日、班女行ってきます。大野のエクサンでのメイキングビデオ見てから、何とか聴きたいと思っていました、ワクワクしています。
投稿: Mie | 2009年8月22日 (土) 06時05分
こんばんは。仙台を満喫されたようですね。私はたった今、川崎市主催の花火大会から帰ったところです。夜空に打ち上がる花火を見終わった後は本当の夏の終わりの寂しさを覚えます。
「夏の夜」はそれに等しいですね。フォン・オッター、レヴァイン、ベルリン・フィルはたまたま、「ロメオとジュリエット」のカップリングだったこともあり、大編成オケに対してこの「夏の夜」は小編成オケと対照的。
福田前総理がバルトーク、ベルリオーズが好き。これには共感します。あの総理の漫画ヲタクは異常過ぎ。趣味に差があるのでしょうか。
もうすぐ選挙ですが、誰に入れようかな~。
投稿: eyes_1975 | 2009年8月22日 (土) 22時27分
Mieさん、こんばんは。
ベーレンスの死はちょっとした驚きでした。
最近はすっかりご無沙汰してましたが、ここ数年日本にきてくれていて、いつかと思いつつ聞けなかったのが残念です。
このベルリオーズの素敵な歌曲、ベーレンス盤をとても聴いてみたいです。それと、クレスパンも!
「班女」は、名前だけは知ってましたが、上演されるのですね。今調べたら、小森さんも出演されるんですね。
ウォータン以来好きな歌手です。
楽しんでいらしてください!
投稿: yokochan | 2009年8月23日 (日) 00時02分
eyes_1975さん、こんばんは。TBありがとうございます。
今日明日あたりが、夏祭りも最後のところが多く、夏の最後の雰囲気濃厚で、ホント寂しいですね。
この愛すべき歌曲集を聴くと、おっしゃるように夏の終わりも感じます。
オッターの澄んだ声もよさそうですね。
福田さんはクラシックがお好きだったのですか。
そうは見えないところがアレですが、漫画の某オジサンよりははるかに良いですな・・・。
あと1週間で8月も終わり。そして日本も変わっちゃうんでしょうか・・・・・。
投稿: yokochan | 2009年8月23日 (日) 00時08分
お早うございます。
バーゲンセールで暴れるオバサンのように私ばかりが
大量の書き込みをして申し訳ありません。
たった今早朝勤務から帰ってきたところです。
私の妹は看護士です。医学の知識は多少はあります。
その妹が父の病気はあまり心配する必要は無いかもしれないと申しておりました。油断を許さぬ状況ではありますが。
ベルリオーズの件の歌曲集、聴いてみたいと思っているのですが未聴です。
ベーレンスさんが亡くなったのは本当に残念です。
私も彼女のブリュンヒルデが大好きでレバインの
DVDでよく見ていますので。
歌も上手いですが、見るからにブリュンヒルデらしい容姿をしているのも彼女の魅力だと思います。
ブログ主様はベルリオーズの歌劇「ベアトリーチェとベネディクト」をお聴きになったことはありますか?
前から全曲盤を聴きたいと思っておりました。
先日、バレンボイム指揮の全曲盤を入手できました。
これから聴こうと思っております。
こちらこそ不束者ですが、今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: 越後のオックス | 2009年10月29日 (木) 10時00分
越後のオックスさん、こんばんは。
バーゲンおばさんは怖いですが、音楽愛好家の方ならおばさんでも、老若男女OKですよ(笑)
ベアトリスは未聴です、巨大なトロイしかオペラでは聴いたことがありません。今後の課題です。
夏の夜は、名演目白押しです。カナワとバレンボイム、ロスアンヘルス、クレスパンも素晴らしいですよ!
投稿: yokochan | 2009年10月29日 (木) 22時46分