ブリテン 「真夏の夜の夢」 ディヴィス指揮
夏の海に浮かぶ月。
なかなか神秘的な1枚となり満足であります。
今年はやたらと雨が多いけれど、晴れた真夏の夜、ゆったりと夏の音楽を聴くのも楽しい。
ブリテン 歌劇「真夏の夜の夢」
シェークスピアのこの喜劇に付けられた音楽。
一番有名なのは、メンデルスゾーンの劇付随音楽。
そして、パーセルの劇音楽もあるが、オペラではブリテンが作曲したものが内容的にも随一の作品であろうか。
17作品あるブリテンのオペラ系作品のなかで、1960年に作曲された11番目のオペラ。
「ねじの回転」のリブレットを担当したマリー・マイファンウィ・パイパーに意見を聞いたりしたものの、結局は朋友ピーター・ピアーズとの共同での自作台本をてがけることとなった。
ピアーズの意見だったらしい・・・。(その後、パイパーは「オーウェン・ウィングレイヴ」と「ベニスの死す」の台本を担当している。
シェイクスピアの原作にかなり忠実にしたがった仲良し二人の台本は、さすがにオペラのツボをしっかり押さえていて、劇中劇やふんだんに取り入れられたダンスや行進曲。
洒脱でシニカルなシェイクスピアのユーモアが、ブリテンのオペラに完璧なまでに取り込まれた。
そして、そこにブリテンが付けた音楽も精妙極まりない巧みなもので、真夏の一夜の幻と見まかうような繊細で幻想的なムードがばっちり。
合わせて、この作曲家の常套的な語法に貫かれていて、ほかのオペラ作品と同じようにリズムと大胆な和声、そしてクールな抒情の交錯する素晴らしくも霊感に満ちた音楽なのである。
第1幕
ところはアテネ近郊。
妖精の王オベロンと妃である妖精の女王タイターニア、インドから拝借してきたお小姓をめぐって譲るの譲らないのと夫婦喧嘩をしている。
オベロンは悔しくて意地悪をしようと、妖精パックを呼びつけ、それを寝ている間にまぶたに付けたら目覚めたその時に見たものに恋してしまうという薬草を取ってこさせる。
一方、人間界では、この国の貴族4人組(うち一人は父親に結婚を反対されている)が登場する。
ライサンダーとハーミアは恋仲(彼女が父に反対されている)、ディミトリアスとヘレナの4人だが、ディミトリアスはハーミアを好きで、ハーミアの父は彼を推しているからややこしい。
森の中、ライサンダーとハーミアは駆け落ちをすることに決し、そのあとを残りの二人が追いかけてくる。ヘレナは自分のことなんてちっとも思ってくれてないと文句たらたら。
それを立ち聞きしていたオベロンは気を利かしてディミトリアスに薬草を試そうと思う。
そのあと、村の職人たちがワイワイとやってきて近々行われる領主の結婚式に出す劇のリハーサルなどを面白おかしくやっている。
さらに次の場。駆け落ちのライサンダーとハーミアが疲れて眠ってしまう。
そこにあらわれた妖精パックは、命じられた相手をライサンダーとディミトリアスとを間違えて薬草のしぼり汁を塗ってしまう。やがてあらわれたヘレナに起こされたライサンダーは目覚めて即、ヘレナを好きになってしまう。一人目覚めたハーミアはライサンダーを捜しにゆく。
そこにやってきた妖精の女王ティターニアと妖精たち。疲れて寝てしまうと、オベロンはしぼり汁をひと塗り。妖精の子守唄とともに静かに眠る・・・・。
第2幕
織工ボトムを中心とする職人たちが森にやってくる。
彼らはまたまた、誰が何の役だとかなんとかドタバタしてる。
その中からパックはボトムをうまく誘い出し、間抜けなロバの顔にしてしまう。
やがて眼ざめたティターニアは、ボトムのロバ姿とご対面。
晴れて恋に陥るのであります。
妖精たちも周りで戯れ、リコーダーにのった稚拙でシンプルな音楽を奏で、ボトムがその音楽に乗せて歌い踊る。やがて全員まどろみはじめる。(ここでの間奏曲の素晴らしさ)
オベロンはパックに、件の4人を連れてこさせる。
そこで始まる喧々諤々の騒動。ハーミアは信頼してた友達のヘレナを責める。
ヘレナはハーミアに親の操り人形だと言ってしまい、男子も巻き込んですごい言い争いになってしまう・・・。(ドラムを伴ったスリルあるオーケストラは興奮を誘う)
ここまで見たオベロンは、パックを引きずりだしてその間違いを怒りなんとかしろと!
パックは、4人を声色などを駆使して、それぞれ恋人同士にして集め、眠らせてしまう。
妖精たちの美しい子守唄のなか、パックはライサンダーのまぶたにしぼり汁をタラリ。
第3幕
森の朝、さきの4人に加え、ロバ姿のボトムとティターニアの6人が眠っている。
ストリングスによる前奏曲が徐々に厚みを増してゆく素晴らしい音楽。
オベロンはティターニアを優しく起こし、仲直りをして、音楽に合わせて踊る。
その後、目覚める4人は、みな一人づつ爽やかでまるで生き返ったかのような思いを歌にして、素晴らしい4重唱となる。
さて、ボトムは普通の姿に戻るも、まだ混乱が覚めやらず、いずこかへ去る。はてさて・・・・。
職人仲間5人は、ボトムをいないとあわてて探しつつも、後釜はどうのこうのと言っている。そこへボトムの声がして、やってきたものだから、あなたがいないと始まらないと、おべんちゃらを言う面々・・・。
街には、領主テセウスと婚約者ヒッポリタ(アマゾンの女王!)が帰ってきて、婚礼の祝宴をあげることに。
ハーミアの結婚も許され、ここに3組の婚姻がととのった。
職人たちの劇がにぎにぎしく始まる。古典的な劇中劇。
ライオンや月、ご婦人やwall(?)などの賑やかなもの。
エピローグは宮廷風の舞曲でのダンス。
やがて0時の鐘がなり、領主は散会を歌う「Sweet friend, to bed」。
皆がさったあと、妖精4人が歌い、オベロンとティターニアが仲良く唱和して物語の大団円となる。
でも、これで終わりじゃないよ。
狂言回しのパックが最後は登場して、口上を述べる。
妖精の仕業はみなさん、ありますよ~!
だいたいこんな感じでしょうか。
対訳がないため、創造で補いましたよ。
やはりオペラは舞台を見なくては。
若杉さんが二期会で2000年に上演(森麻紀ティターニア!)、大阪カレッジが昨年上演、そしてこの9月、名古屋二期会が上演。
オベロン :ブライアン・アサワ
ティターニア:シルヴィア・マクネアー
パック :カール・アーガソン
テセウス :ブライアン・アナタイン・スコット
ヒッポリタ :ヒラリー・サマーズ
ライサンダー:ジョン・マーク・エインズリー
ディミトリアス:ポール・ウィーラン
ハーミア:ラビー・フィロジーン
ヘレナ :ジャニス・ワトソン
ボトム:ロバート・ロイド
クィンス :グィゥン・ハウエル
フルート:イアン・ポストリッジ
スナッグ :スティーブン・リチャードソン
スナウト:マーク・タッカー
スターヴリング:ニール・デイヴィス
妖精:蜘蛛の巣、豆の花、からしの種、我・・・・ボーイ・ソプラノ
サー・コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団
ロンドンチルドレンコーラス
(96.12@ロンドン・バービカン)
作曲者自身の録音から36年を経て、この曲を普通にオペラの一作として演奏した、ある意味オーセンテックな録音。
クールだけど、音楽の枠組みをしっかり築きつつも、いつしかオペラテックな感興にあふれた演奏をつくりあげる、サー・コリン・デイヴィス。
初演時のアルフレッド・デラーのカウンターテナーも一時代前のものと思わせてしまうくらいに、滑らかである意味女性的すぎるアサワ。これは逆に、完璧なまでにすごくて、かえって妖精夫婦が、女同士みたいに聞こえちゃうくらい。
録音当時絶頂期にあったマクネアーのコケトリーで、かつ完璧な技巧を伴った歌も素晴らしい。2幕で、眠りに就くまえのモノローグなどは極めて美しい。
若い4人組に、職人6人、王様二人、いずれも実力派揃い。
当時まだそんなに活躍してなかった、ポストリッジやエインズリーはとりわけ耳を惹く。
滑らかな歌声でイタリアものも得意の、R・ロイドのバスが味わい深く気にいった。
ブリテンの自作も含めて、このデイヴィス盤も、ハイティンクのグラインドボーンDVDも、いずれもいまは廃盤。
夏の休日、外の豪雨も気付かずに、この素敵なオペラに聴き入ってしまった。
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コメント
こんばんは。
あ~、ワタシ行きました若杉さんの指揮の上演。ナマ森マキさまを初めて見ました。なんかすごいハイヒール履いていたのを覚えています。2000年って もう・・・9年も前の話なんですねえ。当時はブリテンのオペラなんてちょっと分かりにくいかも・・・って思って観たんですけど結構笑っちゃったりしました。あの頃は楽しかったなあ。若杉さんカムバック!
投稿: naoping | 2009年8月10日 (月) 23時17分
naopngさん、こんばんは。
いいなぁ、行かれたのですね。
悔やまれるオペラ公演、その一でございますよ。
麻紀さん、ほぼデビュー時ですよね。
いまはママみたいになっちゃったからなんですがね。
若杉さんがブリテンまでこなしていたとは露知らず。
ほんと、悔やまれる死です。
尾高さんは重責です! しっかり応援したいです。
来月の名古屋、行ってしまおうと思ってますよ。
投稿: yokochan | 2009年8月11日 (火) 00時01分
yokochanさん、ブリテンもいいんですが、IE8環境だと、月の横に人の顔が・・・?!
投稿: IANIS | 2009年8月11日 (火) 01時49分
IANISさん、ほんまですか??
私には見えませんですが・・・。
この画像は、数年まえの夏、旅行した鹿児島で撮ったものです。目の前は錦江湾です。
薩摩隼人の怨念でございましょうか・・・・。
恐ろし。。。。真夏の夜の夢なり~
投稿: yokochan | 2009年8月11日 (火) 23時04分