ブリテン 「真夏の夜の夢」 名古屋二期会公演
名古屋です。暑かったです。
愛知芸術劇場にて、名古屋二期会公演、ブリテンの「真夏の夜の夢」を観劇。
このブリテンのオペラは、シェイクスピアの原作が親しみやすいこともあって、国内での上演機会も多い。かつて、若杉さん指揮の上演を逃したのはとても残念で、ただいまブリテンのオペラにはまっていることもあって、名古屋に出向いた次第。
お仕事がうまく絡めることができず、日帰りとなったが、皮肉なもので、後で仕事がはいり、今週また名古屋に出向くことが決まっております。 客席は8割の入りでしょうか。どこの席でも見やすいこの劇場、私は1階席にて観劇。
客層は東京の劇場と違い、若い人が少ない。(自分もすでにそうでないケド)
上品なご婦人方多数。
そして、皆さんとても静かで大人しく、マナーもよろしい。
多くの方にとって未知の音楽であるブリテンのこの作品、反応はいまひとつともいえたが、その分、私は舞台と素晴らしい音楽に集中することができて嬉しかった。
しかしですよ、大苦言をひとつ。1幕では、私の前は数席きれいに空いていたのに、2幕には子供連れの方が陣取った。
二人のお子さんは、おそらく幼稚園児と未就学児。
最初はおとなしくしていたし、ロバに変身したボトムで間がもったが、次第に落ち着きなくなりコソコソし始めた。当方の、気も散ること半端じゃない!
いったいどのような方々なのでありましょうか?
楽しい児童向けオペラと思われたのでしょうか?
お金持ち風だったので、情操教育なんざましょうか?スポンサー筋の方なのでしょうか?
劇場側も親同伴とはいえ、これを許してよいのでしょうか?
不思議なことに、ありがたくも、3幕ではこの親子、きれいにいなくなっちゃった!
ゆえに、余計に不可思議、そして腹の立つ仕儀でありました。
これをのぞけば、本日の公演はまことに楽しく、そして立派で、この作品への理解が一段と高まったといえる。
このオペラの内容については、ブリテンオペラ全作品挑戦中のこちらの記事をご覧下さい。
ブリテン 歌劇「真夏の夜の夢」
オベロン:谷田 育代 タイタニア:森本 ふみ子
パック:岡田 真千代 スィーシアス:石川 保
ヒポリタ:鶴岡 圭子 ライサンダー:与儀 巧
デメトリアス:塚本 伸彦 ハーミア:奥野 靖子
ヘレナ:加川 文子 ボトム:水谷 和樹
クインス:時 宗務 フルート:松岡 重親
スナッグ:堀内 紀長 スナウト:山本 治樹
スターヴリング:吉田 裕貴 蜘蛛の巣:林 弘子
豆の花:杉山 梨恵 辛子の種:真野 一枝
蛾:北野 実果
阪 哲朗 指揮 名古屋二期会オペラ管弦楽団
師勝少年少女合唱団
総監督:中田 直宏 演出:中村 敬一
(2009.9.6 @愛知県芸術劇場大ホール)
時代設定をブリテンが活躍していた頃に設定。
だから、50年前くらいであろうか、妖精軍団はともかく、人間たちは、割と身近ななりで登場。しかもいずれも、自転車をこいで、キッキーといわせながら(笑)
これは、なかなかに秀逸なアイデア。
同様に、すばしこいパックは、尖った耳をして、リュックを背負い、ローラー・シューズを履いてスィーっと滑りながら舞台を駆け巡る。これもナイスで、パック役の岡田さんは小柄でかわいらしく、バレエ出身だけあって、動きも軽やか、転回も決めてくれた。
妖精の親玉夫妻は、この世ならぬ豪奢なドレスで、黒と濃いピンク。
オベロン役はメゾソプラノ代用で、お二人とも同じような体型と背丈だったので、双子みたいだったのが何とも・・。
妖精たちは、大人女声と児童合唱。黒い衣装に、それぞれ色の違う道化師の襟のようなものを付け、黒い傘を持っている。その傘を開いたり閉じたりするから、ちょっと落ち着かない。人間には見えないということを象徴したのだろうか。
だいぶ以前に、「ワルキューレ」のセミステージ上演で、戦乙女たちが、傘を振りかざし、同じように開閉を繰り返していた舞台を見たことがあるが、その時もどうもいい気分がしなかった。私は、先端恐怖症じゃぁありませぬが、ほんとにダメな人だっているのだから、大量の傘はどうかと思いますよ。
アテネ郊外の森を舞台に、妖精たちの世界、若い恋人貴族たち、市民たる職人たち。
最後は宮殿に場所を移し、大公夫妻。
こんな具合に、住む世界の異なる人物軍団が出たり入ったり。
しかも、それぞれ重なることなく出入りするし、だぶっても、人間には妖精たちは見えない。
だからまともに舞台をしっかり作って場面転換してたら大変なことになるし、見ていて落ちつかないことこのうえなくなる。
ゆえに、今回の舞台装置は、全3幕を通じて、真中に天蓋の付いた廻り舞台が据えてあって、これがベットになったり、森の中の緑の絨毯になったり、劇中劇の舞台になったりと大活躍。
そのまわりは、ほの暗いからこの天蓋ステージだけが浮き上がって見える。
その三方に引かれたカーテンから登場人物が出入りする場面も多いが、回転する間に隠れていて、こそこそ舞台袖に下がるのが見えるのはやや興ざめ。
でもこの装置はシンプルで、観る方も舞台に集中できるので、とてもいいと思った。
それと楽しかったのが、3幕の職人たちの劇中劇。
CDだと、この場面がわかりにくいし、何だかとってつけたように感じる部分だが、こうして舞台に接すると、1幕の森での愉快な職人たちの練習や、ロバになったボトムが帰還した皆の喜び、そのあたりのつながりがよく理解できたし、なんたって、訳のわからない皮肉たっぷりのその劇が滑稽で笑えたし、男6人がドタドタとベルガマスク舞踏をするさまも愉快だった。このあたりのブリテンの音楽の冴えは最高!
シェイクスピアの描いた高度なコメディとブリテンの巧みな音楽の妙なる融合。
12時をまわり、人間たちが眠りに去ったあと、(3組の夫婦はそれぞれ、3方のベットに)
妖精軍団が出てきて大団円を迎えるが、天井からは、無数のきれいな電球が下がってきて、極めて美しい光景となった。
そして、パックが最後登場して、軽快に口上を述べ、急転直下、ブリテンらしい洒落たエンディングの音楽となるわけだ。
ここでオーケストラがバッチリと決まったとは言い難いのがやや残念。
ブリテンの音楽が精緻に作られているゆえに、もう少しオーケストラには精度を求めたいところではあったが、この音楽をすっかり手の内に入れた様子の阪氏の的確な指揮ぶりは見ていて頼もしいものであったし、舞台を引っ張る力量も感じとれた。
氏は、ドイツのレーゲンスブルク歌劇場の音楽監督に、この後就任するという。
日本人指揮者が、こうして欧米のオペラハウスで活躍するのは若杉さん亡きあとの、オペラ界において、とても心強いことであります。
カウンター・テナーがおいそれと使えない日本の舞台の宿命か、女声のオベロンであったし、パックも女性。
名古屋の歌手のみなさん、私にはなじみの名前はなかったが、それぞれ実力充分で、芸達者。
その見事な歌唱や、アンサンブルに演技、かなりの練習も積まれたことであろう。
とてもよかった。
中でも気に入ったのは、オベロンの谷田さん、ライサンダーの与儀さん(客演)、ヘレナの加川さん、フルートの松岡さん(客演)。
秋暑の名古屋。
夢かうつつか、幻想味あふれるブリテンの音楽を堪能し、その舞台を大いに楽しみました。
帰りに名駅近くの居酒屋にて一杯。
タコぶつと、土手煮だがね。
こちらも堪能、新幹線で夢のなか。
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コメント
余韻をカフェで
雨の日も
投稿: 傘ピタ | 2009年9月 7日 (月) 10時19分