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2009年10月 9日 (金)

神奈川フィルハーモニー定期演奏会 湯浅卓雄指揮

Landmark 最大級の台風は、関東に大風をもたらし、8日は、電車も動かなくて、家で待機。
でも、私は横浜へ行かなくてはならないのだ!

神奈川フィルオール英国もの。
英国音楽を愛するものとしては、神奈フィルだし、絶対絶対行かなくてはならない。
台風のバカヤローである。

電車の動くのを待ち、15時30分に、千葉の家を出たはいいが、遅れがひどくまったく時間が読めない。会社に寄って、なんて思ってたらとんでもない。
桜木町にたどりついたのは、開演20分前。
席に着いたら、指揮者のプレトークが終わるところでありました。

Img  エルガー 序曲「コケイン」

  ヴォーン・ウィリアムズ オーボエ協奏曲

 ブリテン 6つの変容から
        (アンコール)

     オーボエ:渡辺 克也

 エルガー 交響曲第1番イ長調

     湯浅 卓雄 指揮

  神奈川フィルハーモニー管弦楽団
   コンサートマスター:石田 泰尚
     (2009.10.8@みなとみらいホール)

アンコールの無伴奏オーボエ曲まで含めて、すべて英国一色。
英国で長く活躍する、指揮者湯浅卓雄氏の面目躍如たる素晴らしすぎるプログラミング。

オケが出そろい、コンマス石田氏登場。
おやっ、髪の色が。うーむ、前の色を見慣れちゃっていたものだから、すこーし違和感が。
こちらで、イメチェンぶりを確認してみて。

ロンドンっ子が見たロンドンの街を描いたエルガーの「コケイン」。
コンサートでは初めて聴く曲だが、オルガンが入るとは知らなかった。
バルビローリなどのおっとりした、よき時代のロンドン賛歌を聴いてきた私には、今宵の「コケイン」はたいそう賑やかで、きらびやかに聴こえた。
古き良きロンドンは、高層ビル立ち並ぶTheシティなのだ。
このキラめく音は、指揮者のものか、いや、やはりオーケストラとホールの持ち味なのであろう。朝から活気あふれるロンドンの街が目に浮かぶ。 
 指揮棒を持たすにテキパキと振る湯浅さんは快活なエルガーの側面を巧みに描き出して、いにしえでない、今を活きるコクニー達を感じさせてくれて、楽しい聴きものであった。
ニュー石田氏も中身は従前のとおり、弓で拍子をとったりと見せてくれます。

続く、ヴォーン・ウィリアムズ(RVW)のオーボエ協奏曲
こうして、エルガーの間に挟まれると、同じ英国作曲家でも、その作風の違がよくわかる。
エルガーはどこを聴いてもエルガーの響きがして、まるで金太郎飴みたいだけど、RVWは、多面的で斬新な不況和音あり、田園抒情あり、民謡調あり、教会旋律あり、喜劇あり・・・。そのどれもが好きなRVWだけれども、一番は、英国のなだらかな風景を思わせる抒情的な側面。
このオーボエ協奏曲もまさにそうした雰囲気が満載で、20分足らずの3つの楽章は終始ゆったりとしたほのぼのムードなのだ。
交響曲でいえば、3番や5番のに通じる世界。
ずっと吹きっぱなしのオーボエはここぞという聴かせどころがないかわり、弦楽だけのオーケストラの上に軽やかに飛翔するようで、渡辺さんの完璧な技巧とホールの隅々に届く温かなオーボエの音色は、うっとりするくらいの美しさ。
音楽も、その演奏も3楽章がとても素敵なもので、私は涙が出そうになった。
アンコールのブリテンでも、渡辺さんのオーボエの音色はグローリアス!
輝いてましたね。

後半は、私の大好きなエルガーの第1交響曲
あらゆる交響曲の中でトップ3に入るくらいに好き。
冒頭のモットーが、ゆるやかに始まり、徐々に音量をあげて盛り上がってゆく。
ここを聴いただけでもうウルウルときてしまうワタクシ。
主部に入ってのめくるめく展開も堪らないし、第2楽章の中間部の滝の飛沫を浴びるかのような涼しげな雰囲気。
3楽章の高貴な憂愁、そして終楽章終結部に現れる、冒頭のモットー主題。
ここにおいて、わたしは、どんな演奏でも感極まってしまうのだ。

ここまで、思い入れのある曲を、湯浅=神奈川フィルがどう聴かせてくれるか。
わくわくとしながら聴きはじめたが、どうもしっくりこない。
横へ横へ伸びてゆくような感じで、縦の線がピシッと決まらない。
モットー主題も意外とあっさりと流されてゆくようだ。
尾高さんや、大友さんの演奏が懐かしい・・・。

でも主部に入ってスピードがあがると、先の「コケイン」と同様に推進力あふれる強い演奏になって、徐々に私の方の気分も乗ってくるものがあった。
このところ、充実してきた神奈フィルの中間セクションがしっかりと支えているから、内声部に厚みがあってエルガーの音楽の持つ輝かしさと陰りの対照の妙が、とても映えて聴こえるように思った。
2楽章の活気も素晴らしいもので、石田ヴァイオリンの輝きもやはり特筆もの。
そして、この演奏の圧巻は、3楽章。
泣き濡れたような極美の旋律を、神奈フィルの弦セクションのきれいな音色で聴けるとは!ここに本日のハイライトがあったと思う。都会的な洗練された美しさではあるが、こんなにきれいな3楽章を私はちょっと聴いたことがない。
湯浅さんの指揮は、エルガーの音楽を慈しむようにゆったりと指揮をしていた。
最後のホルンとトロンボーンの儚い合いの手も見事に決まっておりました。
ついに終楽章。
ここでも明るく力強く、最後の勝利へ向かって突き進む。
そして、やって来ましたよ。最後のモットー主題が。
少し味気ない感じもしたが、そこはもう生演奏だから、一生懸命しかも感動しながら弾いている神奈川フィルのメンバーたちや、湯浅さんの大きな指揮ぶりを見ていると、もう胸が詰まってきてドキドキしてきた。
見事なエンディングに、わたくし、ブラボー一声献上

終わってみれば、元気で煌めくようなエルガー1番も悪くないと思った。
まぁ、大好きな曲だからこそ、どんな演奏でも楽しんでしまうという訳ですな。

追)神奈川フィル&石田ヴァイオリンで、RVWの「揚げひばり」を熱望

Beer アフターコンサートは、毎度おなじみ反省会、というか飲み会

黄色と黒をジョッキ内で混ぜていわゆるハーフ&ハーフ。

Yokohama_bar今回もよく飲みました。
東京方面終電時間をにらみながら2軒目も参加。
英国を聴いたから、やっぱりウイスキーを飲まなくちゃ完結しないですな。

怒涛の音楽会通いは、これであと1週間お休み。
お酒も少し休みましょう。
故某元大臣のようになっちゃ困るし。

エルガーの交響曲第1番の過去記事

 「マリナー/アカデミー管弦楽団」
 「尾高忠明/NHK交響楽団」
 バルビローリ/フィルハーモニア管」
 「
大友直人/京都市交響楽団 演奏会
 「
尾高忠明/BBCウェールズ響
 
ノリントン/シュトットガルト放送響
 
プリッチャード/BBC交響楽団

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コメント

どうも先日はありがとうございました。
あれから翌日も2時まで飲んだくれて、昨日もお呼ばれのBBQであきる野まで行って飲んだくれて三連チャンで飲んだくれてコメントが遅くなり申し訳ありません。やっと酒が抜けました。
それにしても鮮やかなコンサートでしたよね。
神奈川フィルも思いっきり美音でガンガン演奏しておりまして、いやー、本当にシビれました。
私の知っているエルガーのイメージではなかったですがやはり説得力はありました。
こんな演奏を聴けて幸せでした。
あの日あそこに集まった人は音楽の聴き方がそういう方ばかりだったのではなかったでしょうか。
拍手もいつもよりもあたたかかったような気がしました。
次回はまた現田さんですね。
よろしくお願いいたします。

投稿: yurikamome122 | 2009年10月11日 (日) 19時36分

yurikamomeさん、先日はどうもお世話になりました。
そして、怒涛の3連チャン、お疲れさまです。
音楽に酒、これはやめられませんね。

私もあの晩は、聴衆がRVWの美しい世界や、エルガーの一風変わった壮麗な響きを、とても理解し、楽しんでいたと思います。
オケも聴衆も耳が育ってます!

次回、とても楽しみです。よろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2009年10月12日 (月) 00時03分

 yokochan様お早うございます。
実は私、湯浅さんのファンであると同時に彼の現代日本音楽にかける情熱を高く買っている者です。湯浅さんの実演はいまだに聴いたことがありませんし、得意のイギリス音楽もほとんど聴いたことがないのですが、ナクソスの日本作曲家選集の彼の演奏や選曲が大好きです。湯浅さんがレコーディングで取り上げてくれなかったら永遠に埋もれてしまったかもしれない近現代の日本の作曲家の名曲がどれほどあることか。山田耕筰の交響曲「かちどきと平和」なんて湯浅さんとアルスター管弦楽団のナクソス盤を聴いて冒頭からもう涙ぐんでしまいました。気高く美しい主題をかっこよく歌い上げてくれる湯浅さんの手腕に拍手喝采してしまいました。イギリス音楽でも日本近現代音楽でもこれからも八面六臂の大活躍をしてほしいものです。
 余談ですが、バッハのカンタータを全部聴こうと思い立ち、ブリリアントのルーシンク盤で毎日のように聴いています。モーツァルトの全オペラやワーグナーの指環に匹敵する豊かな楽想の宝庫ですね。お金が無いのでこのところCDは買わないことにしていますが、大好きなガーディナー氏が、バッハカンタータ完全全集なんか出してくれたら嬉しさのあまり、またまた無謀な散財をしてしまいそうですね(汗)

投稿: 越後のオックス | 2009年10月13日 (火) 04時40分

越後のオックスさん、こんばんは。
湯浅さんのファンでらっしゃいますか。
大阪が活動の拠点のようですので、あちらではファンも多いとききます。関東のオケへの客演も珍しいのではないでしょうか。
私はもちろん初湯浅氏でしたが、英国音楽へのしっかりした見識をかんじさせる演奏でしたし、毎度書いてますが、オケがきれいなものですから、ユニークなエルガーが聴けました。
会場でCDを販売してまして、たしかに日本の作曲家のものがたくさんありました。
そして、氏のHPを見たら沢山録音があるのですね。
日本と英国、アメリカものです。
英国はタヴァナーまで!
これは、私ももうちょっとしっかり聞かなくてはいけませんね。

バッハのカンタータ。
おっしゃる通りの宝の山ですね。
いつもお世話になってます、作曲家の鎌倉スイス日記の先生も先日指摘されてました。
私はリヒターの選集とガーディナーの過去のものしか持ってませんが、鈴木さんや、コープマンのものが気になりはじめてます。

投稿: yokochan | 2009年10月13日 (火) 22時28分

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朝から仕事をこなし、夕方、香港行きの航空券の申し込みにちょっと大船まで出かけ、そのまま神奈川フィルのコンサートを聞いてから急いで帰り着いて、続きを少し書いたところ。これ以上やっても無駄なので明日早く起きてやることにしよう。 神奈川フィルのコンサートはオール・イギリス物で、エルガーの魅力あふれる序曲「コケイン」にはじまり、ヴォーン=ウィリアムズのオーボエ協奏曲、そしてエルガーの交響曲第1番。 石田氏がコンマスに座り、それなりの指揮者がやった神奈川フィルのコンサートはいつもながら素晴らしい出来映えで... [続きを読む]

受信: 2009年10月11日 (日) 03時55分

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