ゲルギエフ指揮 マリインスキー歌劇場管弦楽団演奏会
サントリーホールで、マリインスキー劇場オーケストラが繰り広げている、オール・ロシア・プログラムのチクルス。
写真は関係ないけど、先日遭遇したチョコ電。
ねこ乗ってますが、あしからず。
チャイコフスキー、ムソルグスキー、ショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキーの4人だけのそれぞれのプログラム。
そして、わたしがチョイスしたのは、ショスタコーヴィチの演目。
「鼻」、第1交響曲、「マクベス夫人」、第10交響曲。一晩にこれですよ!
すさまじい大盛り、テンコ盛り大サービス!
絶倫指揮者と絶倫オーケストラが今宵お送りする絶倫プログラムに、絶倫でない多くの日本人聴衆は、たじろぎ、ホールは7割程度の入り。
ところがですよ、楽しみにしていたマクベス夫人はゲルギエフの要望で消えてしまい、代わりになんと、はちゃむちゃなピアノ協奏曲第1番に変更されたのだ!さらなる絶倫攻撃に大曲馴れしたワタクシも、ちょっと勘弁、的な気分になったものだ。
長い前半が協奏曲で終わるともう8時15分。ホールを出たのは9時40分でございました。
あ~、疲れた。
ショスタコーヴィチ 歌劇「鼻」 第2幕間奏曲
交響曲第1番
ピアノ協奏曲第1番
ピアノ:デニス・マツーエフ
(アンコール:シチェリドン ユモレスク)
交響曲第10番
ワレリー・ゲルギエフ指揮 マリインスキー歌劇場管弦楽団
(2009.12.1@サントリーホール)
と、ここで終わりにしたいところ。
そんな気分の今宵であります。
何故かって、ゲルギエフに煙にまかれた気分なのだから・・・
オーケストラは精度といい、個々の奏者の技量といい完璧。だから鳴っている音も立派で文句のつけようがない。
でも、心に響いてくるものがわたしにはないように感じられた。
これはどうしたものだろう。こちらの体調は悪くない。目の前でショスタコーヴィチのナイスな音楽がぐゎんぐゎん鳴り響いているのに、その光景を眺めているだけ。
そう、引っ掛かりのない、流れるような、すいすいとすらすらな感じ。
そんなに、せかせかと急ぎ過ぎないでよ、ゲルギーさん。
流れる車窓にも旅の喜びがあるように、変幻自在のショスタコの音楽をもっと楽しませてくださいよ。
あるいは、意識して脱ロシア臭を狙っているのか?
このオーケストラには、無用なビブラートはないし、音量もロシア的な物量攻撃型の破壊力もない。
世界各地のオーケストラと仕事しているゲルギエフは、コスモポリタン的な指揮者とその演奏を目指しているのだろうか。
かといって爆演もたくさん披露しているし・・・。
まえ聴いたベルリオーズのレクイエムは、こけおどし的なところの一切ない、真摯な祈りに満ちた演奏だったし・・・・。
ほんと、わかんねぇ指揮者だな
今日の席は、P席最前列でゲルギエフの指揮ぶりがもろに窺える位置。
トレードマークの、ちょっとひんまがった木枯らし紋次郎の爪楊枝みたいな指揮棒を持ち、チクチクひらひらと小刻みな動きで指揮をするその姿。
見にくい指揮だけど、オーケストラは何食わぬ顔でぴたりとつけてる。
それにしても眼光鋭く目力が強い。右斜め45度をたまに見上げるものだから、こちらを見据えられているようで、ちょっと居心地が悪い。
「鼻」間奏曲は、3分くらいの曲だったが、これがまた驚き。
打楽器だけのすさまじい音楽だった。大太鼓をティンパニのように叩き、ドラ、小太鼓、トライアングル、グロッケンシュピール、あとなんだっけ。。これが一番面白かったりして(笑)
交響曲第1番は、スピード感あふれる鮮やかさが心地よかったが、ちょっと飛ばしすぎに感じた。現田&神奈川フィルのビューティフルな演奏を聴いているので、物足りなく思ったが、眼下に真近に繰り広げられるオケの迫力には舌を巻いた。
ピアノ協奏曲は、こりゃもう、曲が曲だからいやがうえにも盛り上がった。
そのうえ、若いマツーエフ君のダイナミックな動きを伴う超絶技巧に、首席トランペット氏の目の覚めるようなソロも加わって、腰が浮いてしまうような演奏でありました。
会場は、ウォ~というような歓声が上がりましたね
休憩中、写真撮影をしにホール外を散策していたら、クラヲタ会でお会いしたヤマゲンさんと遭遇!
所要で、後半がお聴きになれないとのこと。そう、長すぎるんですよ、今日は。
そしてご自身の座られておられた2階S席を快くお譲りいただき、後半は、P席(C席)から格段のランクアップを図ることができましてございます。
ヤマゲンさん、ありがとうございます!
P席は、オケの秘密を後ろからあれこれ見るようで好きだし、バランスは悪いものの迫真の音が聴けるのだけれど、2階前列S席にゃぁ敵いませんや。
音の溶け合いの美しさと、視覚的にオケ全体が正面に見渡せる安心感。いいもんです。
そして登場のゲルギエフ。相変わらず、指揮台はなくて平土間に立って手をあげると、今度は指揮棒がなし。素手だとヒラヒラぶりが増してみえるけど、ニュアンスが増したかというとそうでもないような・・・。
楽章間に休みをほとんどいれずに一気に演奏した10番も、冒頭に述べた印象のとおりで、気がついたら、最後のクライマックスを迎え、一気加勢に終わってしまった感じ。
ショスタコの名前のモットーは、ホルン奏者の凄演もあって耳がそばだったが、印象に残ったのはそこの場面だけというのも、自分の聴き方が悪かったのか寂しい。
ここでは、ものすごいブラボーが飛び交い、拍手も鳴り止まず、ゲルギエフは引っ込んでは、また登場し、ということを10回ぐらい繰り返す好評ぶりであったことを記しておきます。
う~む、わたくし、ゲルギエフと相性が悪いのかしらね。
でも自分にとってわからん人だからこそ、もっと聴いてみたい。
そんなことをモヤモヤ思っているうちに、家に着いたら11時を回っておりました。
はぁぁ~、疲れた。
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コメント
yokochanさん、おはようございます。
チョコ電いいですね
猫?なんのことかと思ったら???
いや~芸が細かいですね~
しかし、凄いコンサートでしたね
私だったらプログラムを見ただけで
卒倒してしまいましすよ(笑
投稿: 天ぬき | 2009年12月 2日 (水) 10時03分
昨日はお疲れ様でした。21時までに終わりそうなら最後まで聴きたかったのですが、とても無理でしたから。
お役にたてたようでよかったです。
前半だけでしたが自分の感想も同じです。ハイクオリティな音が鳴り響いているのに心のなかには行ってこない・・・例えば第一交響曲ならロジェントヴェンスキーと読売日響の演奏がレベルは低くても楽しめた。
またマツーエフはチャイコ第一コンチェルトと今回とそのクールな音色と完璧な技巧は素晴らしいと思う。しかしギリギリまで締め上げたゲルギエフの音と対決するピアノはいささかつらくなります。
(ヤンソンス/バイエルンとの共演のCDではそんな気分にはならなかったのですがね。)
クラヲタ様が10番聴いておられた頃自分は知人と銀座で
寿司たべてました。この店は穏やかな味ですが主人の信念を感じさせるもので気にいってます。(懐は銀座の店としては良心的といってもオケラになりますが・・)この店ミシュラン一つ星ですが、味が弱いなんて評価もあります。しかし幸運にもご馳走になった
確かに素晴らしいねたを使い強い味のシャリを使う同じくミシュランで二つ星以上を取っている寿司は満腹には
なりましたがややもてあましてしまいました。(誰かの演奏とおなじ?)
今回は招待券でよかったですよ。といいながら6日に所沢にもいくのですよ。このコンビを聴くのはこれで最後かな・・・5日楽しみにしております。後半の印象を改めて聞かせて下さいませ。
投稿: ヤマゲン | 2009年12月 2日 (水) 12時17分
天ぬきさん、こんばんは。
一部の方にねこのマスクを付けていただきました(笑)
すさまじいプログラムでしょ。
序曲(風)、交響曲、協奏曲、交響曲ですから!
私の好物ばかりなのですが、さすがに疲れました。
へとへとです(笑)
投稿: yokochan | 2009年12月 2日 (水) 21時16分
ヤマゲンさま、こんばんは。
そして昨晩はどうもありがとうございました。
ミュシュラン星二つのお寿司とはまたこりゃうらやましい!
私の方はおかげさまを持ちまして良席で10番を聴いたのですが、ぼんやり聴いてしまった感がありまして、あっという間のフィナーレ突入。そして割れんばかりのブラボーの嵐に、一人取り残されてしまいました・・・・。
なんともいえない演奏会にございました。
ヤマゲンさんの豪華お寿司とともに、人からしたら贅沢な話なのでしょうね。
どうもしっくり来ないものはしかたがないですね。
蒲田会の翌日にゲルギーとはまたすごいですね。
今度こそ心に届くといいですね。
ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2009年12月 2日 (水) 21時32分
相変わらず、ゲルギエフは曲目変更好きですねえ。私は昔「カテリーナ・イズマイロヴァ」の券を取ったらその日は「マクベス夫人」に変更に(?どっちがどっちだったか忘れました?)なってしまいました。まあ、もともとは一緒の曲ですし、タコ君はあまり詳しくないので細かい違いはよくわかりません。
チョコ電、ご覧になったのですね。私も先日見ましたけどなんか嬉しいものですね。
投稿: naoping | 2009年12月 2日 (水) 21時40分
こんばんは。11/30のN響に行きましたが、「すらすらと」進んだ印象を持ちました。翌1日もそうだったのですか?あら不思議(?)。曲は「悲愴」だったのですけどね。
投稿: steph | 2009年12月 2日 (水) 22時49分
nopingさん、こんばんは。
ゲルギーの曲目変更は常套だったのですか。
ほんと、手ごわいオッサンですよ。
なにやらかすかわからない、わからないおやじです。
タコ好きの私を唸らせてはくれなかったですが、次回に期待したいと思います。
チョコ電、写真撮って、そのあと乗りましたよ。
実は乗るのは2回目ですが、1回目は、人身事故で、乗った歯いいが運転見合わせ。
4日が最終日だそうですが、naopingさんの嫌いなクリスマスラッピングでもして欲しいと思ってますがダメでしょうかね(笑)
投稿: yokochan | 2009年12月 2日 (水) 23時11分
stephさん、こんばんは。
N響の回を聴かれたのですね。
悲愴も「すらすら」でしたか。
すらすらでも、それが心に留まればいいのですが、私には、何もなくそげ落ちてしまったのが昨晩でした。
NHKの放送を見てみたいと思います。
ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2009年12月 2日 (水) 23時16分
ゲルギー、お疲れ様でした。お話を伺ってるとやっぱし「あっしにはかかわりございません」です。りゅーとぴあでゲルギー聴いたときもそうだったなぁ、と、今思い返してます。それに対して僕はりゅーとぴあにて、アダム・フィッシャー=ハイドン・フィル聴きました(同じ日)。委嘱作「ハイドンの庭」、「オクスフォード」、「告別」、「ロンドン」、アンコール「報いられたまこと」序曲でした。このネームで500人超!ハイドンって人気ないんでしょうか?しかし、心に残る演奏会とはこういうものを言う!りゅーとぴあの極上の響きとハイドン・フィルの信じられぬ美しい響きだけでもご馳走なのに、演奏がまた「超」のつくヴァイタルなエネルギーに溢れた演奏でございました。
サントリーの7割の聴衆よりりゅーとぴあのお客さんのほうが幸せだったようでございます。
投稿: IANIS | 2009年12月 2日 (水) 23時39分
タコ・ヲタと言われる人ほど評価の低いゲルギエフのショスタコーヴィチですが、わたしはそれほど深い思い入れがないせいか、オーケストラの妙技や多彩な音色、緊張感あふれるピアニッシモと強靭なフォルティッシモの生み出すコントラストの面白さを素晴らしいと思いました。コンチェルトもユーモアと詩情とスリルの交錯が堪能しました。ただ交響曲第1番抜きのコンパクトなプログラムにしたほうが、かえってすっきりしてよかったのでないかという気はします。キャッチーな「鼻」の間奏曲を冒頭にもってくるアイディアには脱帽です。
N響との「悲愴」は、リハも十分ではなかったのでしょうがオケの反応が鈍く、ゲルギエフの指揮ぶりも安全運転。かつてウィーン・フィルとのチャリティコンサートで受けた感銘には程遠いものでした。
投稿: 白夜 | 2009年12月 3日 (木) 00時01分
IANISさん、こんばんは。
りゅーとぴあは、エステルハージーになったのですな。
いいなぁ、あのホールで本場のハイドンなんて。
近ければ駆け付けたいところでした。
東京でも今週やるみたいです。
いやいや、ぼーっとしてたのは私ぐらいで、6割以上の方々はしっかり堪能されてらっしゃいましたよ。
なんかもったいない。
ゲルギエフはただものじゃないですから、次回もまた聴いて確認したいと思ってるんですよ。
もちろん曲目次第ですが。
投稿: yokochan | 2009年12月 3日 (木) 00時17分
白夜さん、こんばんは。
タコヲタと呼べるほどじゃありませんが、私のなかで出来上がったタコイメージとかけ離れていたのかもしれません。
ですから、これもありの演奏であることは間違いありませんね。
そして長い前半。1番は省いてもよかったかもしれません。
強烈・痛快な協奏曲で、影が薄くなってしまいました。
そしてあの「鼻」は面白かったですね。
N響との演奏はテレビで確認したいと思います。
ゲルギエフは、今回バレエの指揮もするんですね。
おそるべきタフマンです!
投稿: yokochan | 2009年12月 3日 (木) 00時21分