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2010年1月27日 (水)

聴いてびっくりハイドン交響曲第94番「驚愕」 ミンコフスキ指揮

Asakusa_1   浅草の仲見世。
まだお正月の名残りの残る晩に撮影。
この晩は、浅草で久々に飲んだけど、隠れ居酒屋みたいな店はあったが、2軒目を探すのが一苦労。
街、というかいくつもある通りや筋に、人がいなくなってしまい寂しいのである。
Asakusa_6 Asakusa_8
アーケードで屋根のある商店街には、こんな悲しいロープが張られている。
右は、人影のない伝法院通り。

Minkowski 寂しい導入部でありますが、今日は、元気よく、そして快活にハイドンの交響曲を聴きましょう。

マレク・ミンコフスキ指揮のルーヴル宮音楽隊による、交響曲が3曲収録されたCD。
いつもお世話になっております、「爆演堂」さんで扱っております1枚。
94番「驚愕」、99番、101番「時計」の3曲が収録されている2009年6月のウィーン・ライブをいち早く聴くことができた。
 ミンコフスキは、実のところ、幻想交響曲しか持っていなくて、あとはラモーやヘンデルをちょろっと聴いたことがある程度。
古楽出身でありながら、そのレパートリーは広くロマン派全域までをもカヴァーし、ビゼーやオッフェンバック、昨今ではブラームスやブルックナー、ワーグナーのオペラ(妖精)などのドイツものも指揮している今が旬の指揮者である。

このハイドンの交響曲が実に魅力的なのだ。
と同時に、アッと驚くタメゴローな世界なのだ。
あまり種明かしはしちゃいけないけれど、昨年11月の来日でも、アンコールで94番の例の「びっくり」第2楽章を演奏していて、聴いた方のブログなどを拝見すると、ほぼ同じ仕掛けがなされているんだ。
音源だけで聴いても、けっこう、びっくらこきまくるけど、生で聴いたら思わず笑っちゃうのでしょうな。
実際、このCDでも、ウィーンの聴衆の笑い声が盛大に収録されていて、極東の狭っこい部屋で聴いているワタクシも、そこに居合わせて、びっくらこいている気分になれるんだ。
ちょっとだけ披露すると、「無音と嬌声」・・・・、ふっふっふ、あとは想像してください。
そして実際に聴いてみてください。
こんなユニークな解釈が、単なる思いつきや仕掛けに終わっていないのが、ミンコフスキの実に音楽的なところ。
奇抜さという意味で、94番の第2楽章が目を引いてしまうが、ほかの楽章、そして他の2曲を通じて、生き生きと、まるで水を得た魚のようにピチピチとした生まれたての音楽が展開されるのだ。

冒頭に寂しい浅草の話をしてしまったけれど、ミンコフスキのハイドンは、粋でいなせな、浅草人の気風のよさがにじみ出たような、小股の切れ上がったような爽快ハイドンなんだ。
ミンコフスキもなかなか学究的なところがあって、作曲家の思いを再現したいという意向が強いと語っているが、彼の音楽からは、そんな大上段に構えての頭でっかちの貧血症的な響きは一切きかれず、切れば血の噴き出すような鮮烈さと、新鮮さ、そして何を隠そう「歌」に満ちているんだ。
当然にピリオド奏法ではあるが、こんなやり方があるんだ、という驚きと感激。
思いつきでやってみました的な演奏なんかじゃなく、完全に演奏者の血肉と化していて、そこに立派な解釈が生まれている。

サービス精神旺盛なハイドンの音楽が、ミンコフスキとルーヴルの連中によってさらに極上のサービスメニューが付加されて、聴き手を楽しくさせることこのうえない。
 音楽を聴いて、感動したいというのは誰しもが思うことだが、楽しい気分になりたい、というのも絶対アリで、このハイドンはその気分をしっかりと満たしてくれた。

私が定期会員になっているオーケストラでも、新シェフが盛んに試みているが、単なる奏法という試行のずっとずっと先に行っているこの演奏を聴いて、桁違いの世界があるものだと痛感する。
こんなポテンシャルの高い演奏ができるのだから、ピリオド奏法も捨てたものじゃぁない。
そんな可能性を聴いてしまったものだから、我がオーケストラにも頑張っていただきたいし、さらに応援する決心を固めてしまった、そんなミンコフスキのハイドンでありました。

曲の面白さがいまさらわかった99番、聴き古したクロックの刻みが極めて新鮮な101番、どちらも、すんばらしい演奏なのだ。
最後には、お客さんのブラボーも盛大に飛び交ってます。
録音も優秀で、ライブならではの感興あふれる1枚、実に楽しい聴きものであった。

Marcminkowski 昨年来日を聴き逃したのは痛かったミンコフスキ。
次の来日は、大ブレークの予感。
それは、愛しのパトリシア・プティボンさまと同じ。
彼らの共演が実現したりしたら、大エンターテイメント大会になることは必須。
きゃー、思っただけでも、すごそう、楽しそう

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コメント

お晩です。ミンコフスキーのハイドン面白そうですね。ただなぁ、アルヒーフに入れたヘンデル・オペラ、あれは「引き」ました。オッフェンバックの「天国と地獄」(ナタリーの出演しているDVD)はめちゃくちゃ面白かったんですけれど。
まだ、ミンコフスキーは、丁度良い頃合がまだ見つけられなくて、戸惑っております。

投稿: IANIS | 2010年1月28日 (木) 02時10分

 お早うございます。
ハイドンの交響曲は、アダム・フィッシャー指揮の交響曲全集で全部聴きました。三ヵ月後ほどかかりました。初期の交響曲AやBもちゃんと入っていました。第一番が意外にに立派な曲なので驚きました。次は弦楽四重奏曲を制覇しようと思っております。デニス・ラッセル・デイヴィスがハイドン全集を録音するとは思っていませんでした。レパートリーの広い人ですね。

ピリオド楽器のハイドンの交響曲は大いに興味がありまして、アーノンクール、ミンコフスキ、ノリントン、ブリュッヘンなどが聴きたいのですが、お金も時間も無いなぁとぼやいております(笑)。
ドイツ語検定に受かるために勉強を始めました。ヒアリングが非常に難しいですね。独逸語のテキストに付いている語学CDだけでなく、独逸語のオペラも沢山聴いて、独逸語耳を培おうと思っております。

投稿: 越後のオックス | 2010年1月28日 (木) 04時41分

オペラシティでのアンコールでは、一発目の笑いに「えーーーー!?」という女性の奇声が混じりましたよ(笑)
彼らの演奏は「今まさにこの瞬間に音楽が生まれている」と実感させずにはおかない、奏者ひとりひとりの自発性が本当に素晴らしい。腕利き揃いでありながら、仔細に聴けばアンサンブルは決して常に完璧ではありません。「そんなことよりもっと大切なものがあるだろう!」と言わんばかりの、はじけるような、ほとばしるような演奏ぶりでありました。
新日本フィルのハイドン・チクルスでは、ブリュッヘンがもはやかつてのエネルギーに満ち満ちた彼ではなく、まるで悟りの境地に達したかのような澄み切ったサウンドを聴かせてくれました。(それでいて柔らかな遊び心やユーモアも見せてくれたことは付け加えておかなければなりません)
今年は、一昨年衝撃的なヘンデルを聴かせてくれたエルヴェ・ニケがパーセルの「アーサー王」を聴かせてくれることですし、いまやピリオド・スタイルは、その豊かな可能性の多様な実りを、日本にいながらにして味わえるところまで来ていますね。ありがたい、と同時に財布に堪えることであります。

投稿: 白夜 | 2010年1月28日 (木) 20時00分

IANISさん、こんばんは。
ミンコフちゃんのヘンデルは、いかんですか?
というか、多様すぎますか?
なんとなくわかります。
オペラ3作品のセット、聴いてみようと思ってるんです。
オッターとのアリアや、序曲集、ミンコフのオッフェンバッハは、まっこと面白いですね。
ナタリーとのDVDも正規に欲しいと思ってます。あの蜂に嫉妬したくなりますねぇ(笑)
ミンコフとは、このハイドンで、完全に折り合いがつきました。いろんな演奏に飢えている状況です(笑)

投稿: yokochan | 2010年1月28日 (木) 23時20分

越後のオックスさん、こんばんは。
まずは、ハイドン・シンフォニー制覇おめでとうございます。
わたしでいたら、きっと、いや必ず挫折してしまったでしょう。それは、酒とワーグナーのせい、と言ってしまうのでしょう(笑)

ハイドンは、意気込まずに、さりげなくチョイチョイと聴くのがいいのかと思ってます、
そんな私には、ミンコフスキのハイドンは最高度に素敵な演奏でしたね。
肩の力を抜いて、心から楽しんでもらいたいと思います。

独語は、さすがにそんなに力を抜いてはいけないと思う言語でしょうけど、むずかしい勉学も楽しんですすめらたら、気が楽だと思います。
がんばって、くださいね!応援してますよ!

投稿: yokochan | 2010年1月29日 (金) 00時43分

白夜さん、こんばんは。
11月の来日公演、お聴きになられたのですよね!
あのころは、プティボンや出張に忙しく、残念な思いをしまして、いまにして、こうしたCDを聴いて悔やんでおります。
音源だけでも、ほんとに楽しく、昨夜は夢のなかにハイドンの音楽が出てきたくらいなんです(笑)
ブリュッヘンやニケさん、彼らが身近に演奏してくれる日本の音楽環境は、世界に冠たるものでしょうね。
古楽演奏のトレンドも、日本を無視できないようになってますし、われわれ聴き手の耳も肥えているんですよね。
誇るべきことだと思いますし、ダメなものはダメだししなくてはなりませぬ(難しいことですが・・・・)

寒いお財布も含めまして、白夜さんのコメントに100%同意ですっ!

投稿: yokochan | 2010年1月29日 (金) 01時09分

古楽以外はやはり幻想交響曲しか持っていませんし、古楽もちょっとしか聴いていませんが、「鮮度の高さ」ではピカ一の指揮者かもしれません。
初めて聴いた、あるアリア集のCDでビックリしました。久しぶりにそれ聴いてみます。
ハイドンもさぞ活きの良い演奏でしょうね。

投稿: golf130 | 2010年1月30日 (土) 18時38分

golfさん、こんにちは。
新鮮とれたての、ピチピチしたミンコフさんの音楽でした。
見た目は、くまさんのようですが、音楽は機敏そのもの。
こうした芸風が今後どうなっていくか楽しみな人ですよね。
わたしも、彼のCDを集めてみようかと思っている最中です。

投稿: yokochan | 2010年1月31日 (日) 10時12分

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