東京大学音楽部管弦楽団演奏会 現田茂夫指揮
土曜日の晩、池袋、「勝手に神奈川フィルハーモニーを応援する会」分科会が行われた。
名誉指揮者の現田茂夫さんを聴く会であります。
オーケストラは東京大学音楽部管弦楽団で、演目はワタクシの大好物がずらりと並んだ好企画。
なんたって、わたしのこのブログのカテゴリー欄がすべてに該当し満杯。
エルガー 序曲「コケイン」
ヴォーン・ウィリアムズ 「ノーフォーク・ラプソディ」第1番
ラフマニノフ 交響曲第2番
ヴォカリーズ(アンコール曲)
現田茂夫 指揮 東京大学音楽部管弦楽団
(2001.1.23 @東京芸術劇場) まずは、また昔話をご披露しますが、東大オケは、わたしが、初めて生のオーケストラを聴いた記念すべき楽団でして、高校1年のことでありました。
小学生のときに従兄弟から影響を受けたクラシック音楽道。その従兄が東大生となり、一緒に聴きに行ったわけであります。
演目はベートーヴェンの8番とチャイコフスキーの5番。場所は杉並公会堂。
これがその時のチケット。
後生大事に持ってます。
ずらりと並んだお兄さん、お姉さんたちの大オーケストラに圧倒され、初めて聴く豊穣なる響きに陶然となったものであります。
また従兄の友達連中が、スコアをもっていて、あそこがどうだったの、どのうと議論していて、田舎の高校生のわたくしには及びもつかないことで、ある意味カルチャーショックだったのであります。
このオーケストラは歴史が古く、その発足は1920年にさかのぼり、近衛秀麿や柴田南雄、別宮貞雄、早川正昭などの著名な方々も輩出しているそうだ。
そんな東大生の皆さんのオーケストラに数十年ぶりに接したわけだが、いまや、若い彼らは、わたしの子供たちぐらいに見えちゃうところが、我ながら寂しいところ(笑)
月日の経つのは早いし、残酷なものですなぁ、としみじみしてみる・・・・・。
そんなことはともかく、東大オーケストラはやたらとうまい。
やる気が満載で気合いが入っているので、へたなプロオケを聴くよりは数等によろしい。
奏者も曲によって入れ替わり、コンサート終了後ホール出口にアンケート回収やお見送りにたくさん出ていたくらいで、メンバーは相当にいて、みんな均一の実力を持っているところがまたすごい。
若い彼らの、眩しいくらいの音楽の放射を真っ直ぐに受け止めることができて、私は若返ることができた思いで、今日の日曜日はとても気分が爽快でよろしいのである。
さらに、我らがマエストロ現田さんの指揮が、彼らの実力を引き出し、そして、いつも魅惑されてしまう、現田トーンともいうべきキレイな音色がホールに響きわたったのであります。
アフターコンサートで、応援する会の皆さんと語りあったのだが、やはりオーケストラは指揮者によって音色がてきめんに変化するのである。
神奈川フィルを聴いていて、現田→シュナイト→聖響と、音楽の質も音色もまったく異なることで自明でありましょう。
現田さんは、オペラの資質を根っこに持った指揮者だから、旋律の歌わせ方ひとつにしても、聴き手の心にある歌心の波長とピタリと合うことが多いし、曲の見通しをしっかり立てて山場造りも巧み。
だから、オーケストラの若さと、指揮者の歌心が結びついた後半のラフマニノフは、本当に素晴らしい名演だった。
この曲を得意にする現田さんの指揮も、前半とうってかわって自在極まりなく、踊るような指揮ぶりに、この曲への愛情が充分すぎるほど感じられた。
そして、ワタクシも、ただでさえ大好きなこの交響曲第2番、CDも山ほどあるし、演奏会も何度も聴いているけれど、昨晩の演奏はそれらのなかでも最上位に入るくらいのものと言ったら褒めすぎでありましょうか。
自慢じゃないけど、曲のすみずみまで知り尽くしてしまったワタクシの、ここをこうして欲しい、こう聴かせて欲しいというポイントをすべておさえてくれて、オケと指揮者、それに私の3者が完全に一体化してしまった感があったのだ。
唯一の不満は、第1楽章の最後の低音の一撃。もう少しバスを効かせて欲しかった。
それにしても、第3楽章の甘味なる旋律の歌いまわしには、心底まいりました。
じわじわと盛り上がって、弦によってひしひしと歌いこまれるあの名旋律。
わたしの頬には涙が一滴伝ったのであります。
最終楽章のめくるめくコーダも、手を握り締め感動のエンディングを迎えたのであります。
思わずブラボー一声献上いたしましたことは言うまでもありません。
感極まって涙ぐんでいる女性の楽員もいて、お父さんはさらにウルウルしてしまいましたよ。
アンコールのヴォカリーズもお約束通りにビューティフル
もちろん、英国音楽の徒でもあります、わたくしですから、前半も最高潮に楽しみましたよ。
ノーブルさと活気がみなぎった明るい「コケイン」。
「ノーフォークラプソディ」は、ヴィオラ主席君が、素晴らしいソロを聴かせた茫洋とした前半と、明るい後半の対比が見事。
こうして続けて聴くと、その違いが明確。
ドイツ的ともいえるカッチリした枠の中に英国魂を満載したエルガーに、英国の自然や世相を徹頭徹尾、心象風景的に音楽に盛り込んだヴォーン・ウィリアムズ。
素晴らしいプログラムに、感動的な演奏の@東京芸術劇場でございました。
ご一緒いただいた皆さん、お世話になりました。
追)
ラフ2フェチの私は、同時にエルガー1番も愛し、このふたつは、私の好きな曲の交響曲部門の1位と2位なのです。
このふたつの交響曲を得意にしている指揮者といば、そう、尾高忠明さんと大友直人さんでございます。
お二方ともに、何度も聴いておりますが、現田さんもエルガーの交響曲を是非ともものにしていただきたいものであります。
大友、現田、そしてついでにワタクシは、同い年なのでして、とても親しみはありますね。
二人とも、若々しくて、頭のあたりが特に私と大違いなところが、悔しいというかなんというか・・・・。
尾高さんと、飯守さんを別格尊敬指揮者として、同期二人を合わせたこの4人が、若杉さん亡きあとの、私のフェイバリット日本人指揮者でございます。
尾高さんのラフ2は、今年N響と札響で聴けますぞ。
ラフマニノフ 交響曲第2番の過去記事~たくさんありますなぁ~
「プレヴィン&ロンドン響」
「ハンドレー&ロイヤル・フィル」
「現田&神奈川フィル」
「尾高&東京フィル」
「尾高&BBCウェールズ」
「プレヴィン指揮 NHK交響楽団」
「大友直人指揮 東京交響楽団」
「ロジェストヴェンスキー指揮 ロンドン交響楽団」
「ヤンソンス指揮 フィルハーモニア管弦楽団」
「ビシュコフ指揮 パリ管弦楽団」
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コメント
こんばんは。今、何かと日本のオーケストラ仕分け問題で揺れ動いていますが、こうして、学生オケなどのアマ・オケも頑張っていますね。
別項で触れたラフマニノフの「交響曲」マゼールは「第2番」しか持ってなくて。勿論、「ヴォカリーズ」が併録されてます。他は廃盤なのかな・・・。プレヴィン。ザンデルリンク。ラトル。デュトワとロシア以外の指揮者が目立っていることがわかります。(「全集」ではアシュケナージにかなわないようですね・・・)
実はシノーポリ、フィルハーモニア管の「運命の力」の「全曲版」に桐朋学園オーケストラの「序曲」演奏のリハーサル風景が併録されたのに感動した。シノーポリが学生オケとの共演でアドバイスして、最後に本番演奏までが収録された。1987年録音でシノーポリも日本の学生オケと演奏会を行う希望があったが、それがかなわなかった無念さ。現役だったら、今頃は夢の共演が実現できたでしょう。3枚の劇版とリハーサル風景を聴くたび、涙が出てきます。
投稿: eyes_1975 | 2010年1月24日 (日) 20時27分
eyes_1975さん、こんばんは。
ちょっと苦手なマゼールとアシュケナージですが、ラフマニノフだけは例外です(笑)
オケがベルリンフィルとコンセルトヘボウだからよけいににいい訳です。
ロシア組のラフマニノフでは、なんといってもスヴェトラーノフがすさまじい情念の塊で聴かせます。
あとは、ロジェヴェンもいいです。
それ以外のロシア組は、意外やスマートで、西欧の影響を受けているところが面白いのですね。
シノーポリと学生オーケストラ、ありましたよね。
テレビで見た記憶があります。
名指揮者になるほど、若い人たちを熱く指導しますね。
バーンスタインやアバドもそうです。
運命の力の全曲盤には、桐朋学園の演奏はもう挿入されていませんね。残念です。聴いてみたいです!
投稿: yokochan | 2010年1月24日 (日) 23時47分
お早うございます。
ブログ主様が初めてオケのライブをお聴きになったのは高一の時だったのですね。もっと早いのかと思っておりました。私は中二のときに初めて聞きました。尾高先生と東京フィルの長岡公演です。曲目はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、シューベルトの未完成,シュトラウスのドン・ファンでした。ヴァイオリン・ソロは堀米さんでした。
マゼールのラフマニノフ第二番は聴いたことがあるのですが、新ウィーン楽派の曲みたいな特異なラフマニノフでした。聴くのには少し覚悟がいるかもしれません。柴田南雄先生は、アシュケナージやスラトキンよりもマゼールの方が好きだと言っていましたがアシュケナージのラフマニノフは決してわるくはありません。スラトキンのラフマニノフは未聴です。CD化はされていますよね?
投稿: 越後のオックス | 2010年1月25日 (月) 04時42分
そうなんですよねー。東大のオケってハンパなくうまいんですよねー。以前、コンサートマスターをしている方を自宅に招いて一席もうけたときに「僕は東大の医学部に入るか、芸大に入ってバイオリニストになるか迷ったんです。結局、東大に入ってしまいました」というお話しを聞きました。え?東大に?入ってしまいました?え?芸大に行くか迷った?それって芸者大学とかじゃないよね?そうか。。。東大に行くか芸大にいくが悩んだんだ。。。どうして君だけそんなにカッコよすぎるんだ!と思った思い出があります。そんなことはともかく、東大のオケはやたらうまい!そうなんですよ。
投稿: モナコ命 | 2010年1月25日 (月) 18時23分
越後のオックスさん、こんばんは。
高1でデビューし、その後はすぐ、ブーレーズ・ニューヨーク、ムーティ・ウィーン、朝比奈、小沢と狂っていきました(笑)
マゼールのラフマニノフは、1、2番が未聴ですが、意外と思い入れがあるのですよ。
同様にスラトキンのラフマニノフにも愛着あります。VOXから全曲がCD化されてます。
2番の交響曲で好きな演奏は、ヤンソンス(フィルハーモニア)、ラトル、スラトキンといったところであります。
投稿: yokochan | 2010年1月25日 (月) 19時41分
モナコ命さん、こんばんは。
そう、めっちゃくちゃうまかったのですよ!
それにしても、またまた珍しい経験をされてますね。東大と芸大で悩むなんて、私のように、日々、熱燗かお湯割りかで悩んでる煩悩親父とは桁違いのお方ですねえ!
従兄からは、たくさん影響を受けましたが、だんだん優秀過ぎてついていけずになってしまった凡人のわたしでございます(笑)
投稿: yokochan | 2010年1月25日 (月) 20時07分
そう言えば…、
東大か芸大か、までは行きませんが、高校の同級で、「理系か、音楽系(テノールだったと思いますが本格的に上手かった)か、体育系か」迷って、結局体育大に進学した奴がいたのをふと思い出しました。
「天は二分を与えず」というのは嘘だと、全てに於いて無能の私は当時思いました。
投稿: golf130 | 2010年1月25日 (月) 20時55分
golfさん、こんばんは。
<理系、音楽系テノール、体育系>
あっちゃぁ~、すさまじい三択でございますねぇーーー。
羨望を通りこして、けしからんという気分になりますな。
福山雅治にも、この場合は容姿も含め、そんな感情を抱いてしまう、下々の凡人たちのひとりであることを誇りに思いたいです???(笑)
投稿: yokochan | 2010年1月25日 (月) 21時08分
おはようございます。
その節はいろいろお世話になりました。
このコンサートは素晴らしかったですね。
現田さんの歌心と若い率直なひたむきさと、情熱が何倍にもふくらんで、もう大感激の一夜でした。
現田さんの音楽の聴いている側の心を見事に読んだようなあのフレージングはなんなのでしょうね。
涙と震えをこらえるのに必死でした。
なんと言ってもあの響き、本当に神奈川フィルのようになるんですよね。
あとはこの日の収穫はノーフォークでした。
あれはいい曲ですね。
ハイティンクでもう一度聴き直しましたが、やっぱりこちらの印象がまだ強くて。
本当に素晴らしいコンサートにご一緒させて頂き本当に感謝です。
ありがとうございました。
投稿: yurikamome122 | 2010年1月26日 (火) 08時21分
yurikamomeさん、こんばんは。
土曜はどうもありがとうございました。
あんな素敵なコンサートが、2000円で聴けるなんて、これから悩ましですね(笑)
ああした曲はライブに限りますし、現田さんの指揮姿も実に音楽的でした。
私も、ヴォーン・ウィリアムズの曲があんなにいい曲だったのかと、再発見。
現田さんの英国ものに、今後期待してしまいます。
わたしは、来週、アリアのコンサートに行こうと思ってます!
投稿: yokochan | 2010年1月26日 (火) 20時05分