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2010年2月11日 (木)

シューマン ピアノ協奏曲 アバド指揮

Furofuki_daikon 凍てつく晩には、ふろふきダイコンをあてに、熱燗ですな。
柚子味噌と大根。なんて合うんでしょう。
 大根は、申し少し薄く輪切りにして、テフロンのフライパンで油もひかず、胡椒だけサッと振って焼き上げてもおいしい。大根ステーキざぁますわよ。
大根の甘さがかじると染み出てきて、とてもおいしい。
醤油をちょこっとつけてもいい。

Schumann_piano_conceruto_brendlabba 今年はシューマン生誕200年の記念の年。
おくればせながら、シューマン・イヤーを記念しまして、ピアノ協奏曲を聴きましょう。
ただシューマンだけにスポットをあててもつまらないから、アバドの指揮に着目して聴いてみようではありませんか。
私はアバドの40年来のファンでありますが、そのアバド。シューベルトやメンデルスゾーン、ブラームス、ロッシーニは盛んに指揮しても、同世代のシューマンはなかなか指揮しなかった。
かつては、かのカラヤンも取り上げなかったから、いろいろと憶測がなされたのだけれども、カラヤンはピアノ協奏曲をよくとりあげたし、ついには交響曲全集も70年代前半に録音したものだ。
 そして、アバドの初シューマンは、ブレンデルとともにフィリップスに録音したこちらの協奏曲。
アナログ最終時期のロンドン響とのものは、まず、その録音のよさ。
芯のあるその音楽的な録音の素晴らしさは、ピアノの暖かな響きと、オーケストラのまさにウォーム・トーンがしっかりと捉えられたことに感銘を覚えてしまう。
そして演奏も水際立ったロマンの抽出が見事で、ともかくロマン派の音楽然としていて、溢れいづる音楽の泉に、聴く側も瑞々しい早春に息吹を感じてしまうのだ。
ロンドン響のニュートラルな新鮮な響きもそれに相応しい。
79年6月の録音。

Schumann_piano_conceruto_polliniabb ついで、アバドがそのパートナーに選ばれたのが、同郷で朋友、ポリーニ
おりしもベルリンフィルの音楽監督になって3年目。89年の録音。
ここでのアバドは、まだベルリンフィルとの共演では、お互いが手探り的な演奏もままあったりして、この協奏曲も流れはいいものの、どこか引っかからないスームスすぎる場面が続出する。
立派すぎるくらいに、いい演奏なんだけれども、この二人ならもっとできる、そしてもっと若ければ、そしてもう少しあとに録音してくれれば、という思いの残る過渡的な演奏に感じる。
カップリングのシェーンベルクは、切れ味鋭い演奏だから、よけいにそう思う1枚。
何故だろう。

Schumann_piano_conceruto_perahiaabb ついで、94年12月のジルヴェスターコンサートのライブ。
ファウストや、ゲノヴェーバを取り上げた「オール・シューマン・プログラム」でのライブ録音。
これが実はまた素晴らしい演奏。
ペライアとアバドは、完全に同質の音楽を根ざしていて、そこにあるのは豊かな歌なのである。
それは繊細な中にも、心の底から歌っているからこそ、その歌からドラマが生まれ、そこからシューマンの屈折したロマンとほとばしる情熱が浮かび上がってくる。
2楽章の弱音における歌の見事さでは、この演奏が随一かも。
そして3楽章の飛翔しまくるような、めくるめく世界は、聴いていて一緒に体が動いてしまうくらいに素晴らしいもの

Schumann_piano_conceruto_piresabbad いまのところ、最新のアバドのシューマンのピアノ協奏曲の録音は、97年9月のピリスとのもので、オーケストラはベルリンフィルと並ぶ当時の若い手兵ヨーロッパ室内管のもの。
ベルリンとも蜜月の時代を築きあげ、次の高みを目指しつつあったアバドの心の中には、若い演奏家たちとの気の置けない楽しい触れ合いと、彼らの無限の可能性を一緒に引き出す喜びがあったものと思う。
病気に倒れるまえで、この頃から数年、気の抜けた音楽の瞬間も聴かされることが多くなったのも事実で、ここでのシューマンは、そうした時期の直前であろうか。
 だがここでは、小編成のオーケストラ、そして鋭敏なECO特有のセンスあふれるキレのいい響きが堪能できる一方、いかにもピリスらしい音をひとつひとつ厳しく選びとったかのような緊張に満ちたピアノが主導してしまった濃密度の音楽が聴かれる。
アバドはそうした流れに乗ってしまって、若いオケの手綱を締めたり緩めたりと、自在な指揮ぶりなんだ。
透けてみえるような室内オケ特有に響きに、聴いていて耳がそばだってしまう。
ピリスの繊細きわまりないピアノにも、耳が集中してしまう。
なんて詩的で敏感なピアノなんだろう。
ちょっとすごすぎて、辛くおもってしまうのも事実で、ブレンデルの溢れるロマンや、ペライアの豊かな歌が懐かしく思えてしまう。

ポリーニもそうだけど、あんまりウマすぎたり、気がはいりすぎたりするのも、シューマンの場合、聴いていてシンドイこともある。

合わせものがうまいアバドとの名ピアニストたちの、シューマン。
アバドの姿もそれぞれだった。

そして、それぞれにいいと思いつつも、一番は、学生時代の思い入れもふくめて、ブレンデル。
次いで、ペライア。そしてピリスとポリーニでありましょうか。
こんな贅沢な順位付けってありだろうか?
こんなにも立派な演奏の数々に、まことに申し訳なく、ここにお詫び申しあげます。

シューマン35歳の、ロマンあふれる短調の協奏曲、アバドの指揮に焦点をあててみたけれど、あと愛聴盤は、ルプープレヴィンの素晴らしさ)、リパッティ&カラヤンリヒテル&マタチッチなどでございます。

みなさんの愛聴盤は

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コメント

yokochanさん、こんばんは

ブレンデルとの協演盤は愛聴盤の一つです
おっしゃる通り録音がいいのも魅力の一つ
もう一つの魅力はカップリングされている
ウェーバーの小協奏曲にあります

曲、演奏、録音
三拍子揃った名盤の典型
そう思っております(^^

投稿: 天ぬき | 2010年2月11日 (木) 19時36分

こんばんは。まず、「ピアノ協奏曲」ですが、アバドのはポリーニから聴きました。ペライアはメインが目的でなく、「序奏と協奏的アレグロ」が「赤とんぼ」の♪夕焼け小焼けの~というフレーズに似てるとの話を聞いたが、1枚も持ってなく、中古店で執念で見つけました。思わぬところで珍曲とめぐり会えました。結果的、アバドはこの2種が手元にあります。フランツ、バーンスタイン、ウィーン・フィル。アルゲリッチ、ロストロポーヴィチ、ワシントン・ナショナル響なんかもいいです。(アルゲリッチはまだ、録音も存在するそうです)
なぜか、グリーグのは冒頭から似たフレーズが繰り返されるのか、そちらとカップリングが一般的ね。(共にイ短調)ツィマーマン、カラヤンとアンダ、クーベリックのベルリン・フィルなんかが挙げられます。オケの比較ですが、結果的に無理のない弾き方のツィマーマンを取ります。カラヤンがシューマンを得意にしていることとグリーグなどスケールの大きな北欧サウンドを作り上げるのが上手い。アンダは名人だけどグリーグのが北欧よりも東欧的なのか、魅力がない。
ちなみにクララも10代で「ピアノ協奏曲」を書いていてこちらもなぜかイ短調である。ナクソス盤で聴いてみたが、やはり、曲の構成も似てました。

投稿: eyes_1975 | 2010年2月11日 (木) 19時44分

お晩です。
ショパンばかりがクローズアップされていますので、シューマンをとりあげたyokochanさんの男気に感謝いたしますよ。この曲10枚持ってました。当然ここで挙げられたものは全部あり。後はフォークト、ペライア(ハイティンクとのアレです)、アルゲリチ、アンスネス、ボレット、バレンボイム(チェリとの共演)でした。
個人的にはペライアですね。ハイティンクとのライヴDVDはお宝扱いです。アバドではブレンデルでしょう。オーケストラとピアノの音色が完全に融合して素晴らしい。そしてブレンデルのピアノが格調高く、細部まで練られていて信じられない完成度の高さでした。
ポリーニ、ピレシュも、録音した時点では彼らのベスト・フォームだったのでしょう。けれど、yokochanさんのご指摘のとおり、今だったらさらに高い境地の演奏が聴けるはずです。特にポリーニはそう。平均律の凄い演奏を聴いた後では、このシューマンは不満が残りました。もう一度、オケをMCOにして再録音してもらいたいですね。

投稿: IANIS | 2010年2月11日 (木) 21時43分

昨日は大変お世話になりました!次の日の仕事がなければまだまだいけたのですが?先にお暇して申し訳ありませんでした。
また楽しいお酒でした!ぜひ継続してやりましょう!

話に出ましたブレンデル、そしてシューマンというのはこのことだったのですね!ブレンデルの「子どもの情景」を生で聴き、圧倒的な感銘を受けた私、もちろんブレンデルを一押しいたします。アバドの溌剌とした指揮がまた最高。ザンデルリンクとの録音も好きですけどね・・・。
ただペライアもピリスもポリーニも捨てがたい(捨てちゃいかんだろ)。特にペライアなんかはもう!
ピリスはこの1曲(30分強)しか入っていないのに限定盤:特別価格などと銘打って2000円で売られていたのにカチン!と来たんだけど、買ってしまった自分はやっぱりアバド好き・・・。というか挙げられた4枚全部持っている時点でアバド好き・・・。

ミケランジェリの古~い録音ですが、終楽章のある1カ所(911小節目~:ピリス盤で10:10~)の絶妙なアゴーギクがツボで、たまによく引っ張り出してそこだけ聴いたりしています。DGから発売された1984年パリのライヴではこの揺らし、やっているんだろうか・・・気になるところです。

投稿: minamina | 2010年2月11日 (木) 23時12分

天ぬきさん、こんばんは。
やっぱりですね。
天ぬきさんなら、ブレンデル盤を愛聴されていると思いました。
録音よし、そしてウェーバーもオペラアリアのようでいて、桂曲、名演ですね。
いまや廃盤なのが許せませんね。

投稿: yokochan | 2010年2月11日 (木) 23時13分

eyes_1975さん、こんばんは。
ペライア盤は、そう、カップリングがユニークですね。
協奏曲ばかり聴いてて、他の曲が御留守でした(笑)
しっかり聴いてみましょう。

クララの作品は聴いたことがありません。音源があるのですね。今年のシューマン・イヤーで、クララも注目を浴びるといいです。
 そして、この曲、グリーグとのカップリングが本当に多い。私は、ルプとプレヴィンが一押しですが、あとはリパッティも瑞々しいです。
ツィマーマン(ツィメルマン)とカラヤンはジャケットは知ってますが、聴いたことがないのがイカンですね(笑)
彼らのグリーグ興味大です。

投稿: yokochan | 2010年2月11日 (木) 23時25分

IANISさん、こんばんは。どうもです。
ショパンもいいけど、シューマンもね、って感じですが、すぐに耳はワーグナーに向かい、コルンゴルトにシュレーカーにブリテンが頭を駆け巡っております(笑)

しかし沢山もってますねぇ。
ペライアとハイティンクのあれは確かに素晴らしい。
そして私の刷り込みは、実はポリーニとカラヤンの自家製CDRです。
初レコードのブレンデルには、非常な愛着もあり、常に私のナンバーワンです。

ポリーニの再録音は、切に望みたいものですねぇ!

投稿: yokochan | 2010年2月11日 (木) 23時43分

minaminaさん、こんばんは。
昨夜はどうもお世話になりました。
千葉から先、電車が終わってまた午前様。
タクシー台ケチって歩こうかとも思いましたが、雨脚が強く断念し、長蛇のタクシー待ちの列に並びました(笑)
楽しい飲みは、時間の観念を失ってしまいますな。

やはり4つともお持ちですな。
アバディアンとしては、やってみたかった企画なのです。
私のピリス盤は、カップリングの五重奏曲が出るまで待ちわびたものです。
ミケランジェリ盤は聴いたことがないのですが、その揺らしとは一体?・・・気になるじゃないですか。

この曲もピアニスト泣かせの難しい作品ですね。

投稿: yokochan | 2010年2月11日 (木) 23時51分

シューマンにもかかわらず、訪問が遅れましてすみません。
そうなんですね。ブレンデルなんですね。
お財布がーーーー。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。です。

私がよく聴くのは、ゼルキン/オーマンディかな。
なんとなく手が伸びちゃいます。
それとブログ仲間から紹介してもらったリパッティ/アンセルメを入手。これもよく聴きます。

私はこの曲を聴くと、どうしてもウルトラセブンの最終回を思い出して涙してしまうんですよ。

投稿: はるりん | 2010年2月12日 (金) 17時29分

はるりんさん、こちらでもこんばんは。
シューマン記事にご来臨ありがとうございます。

そう、そうそう、ウルトラセブンじゃぁないですかぁーーーー。
ご指摘、まことにありがとうございます。

アンヌ隊員のファンだったワタクシ、あのダンの正体を知ったときに流れたのがこの曲だったのですねぇ。
少年時代、すでにクラヲタになっていたと思いますが、シューマンの曲という正体を見破れなかったのが心残りであります(笑)
しっかし、あの最終回は悲しかった・・・。
ああした特撮ものに、豊かな感情を入れ込んでしまう、日本人のセンチメンタリズムって、ほんとに繊細で素晴らしいと思います。

リパッティとアンセルメもあるんですね。
聴いてみたいですし、ウルトラセブンが見たい!

投稿: yokochan | 2010年2月12日 (金) 21時19分

はじめまして。
いつも楽しく拝見しています。
アバドオタク歴37年です。
アバドのシューマンのP協奏曲はみんな愛聴盤で、その日の気分で聴き分けています。
それでもやっぱり一番好きなのはブレンデル盤ですね。
ロマンティックとは、こういうものなんだなぁと、しみじみ感じます。
でも最近、動画で発見した同じクラウディオという名前のアラウの演奏に惹かれています。画像と演奏がずれまくっていますが、とにかく圧巻!素晴らしいです。
たしか1963年の演奏だと思います。
この一曲だけで、アラウファンになり、シューマンのP協奏曲のCDを買ったんですが、このズレマクリ画像の演奏には及びませんでした(泣)。
今後とも宜しくお願い致します。

投稿: Lilla | 2010年4月18日 (日) 08時49分

Lillaさん、こんにちは。
そしてはじめまして、コメントどうもありがとうございます。
お互い、アバド歴が長いですね!
アバドを聴き続け、愛するものとして、心強い限りです。
わたしもブレンデル盤の地位は揺らぎそうにありません。

同じクラウディオ、アラウですが、さっそく探したらバッチリありました。いま聴いてます。
ロマンテックですねぇ。そして剛毅さもあり、味があります。いいです!
でも見事なまでのズレ画像(笑)

アラウのCDは、ボストン響とのものでしょうか。
同じ63年に、ドホナーニ・コンセルトヘボウとの録音が名演といわれますね。そちらは是非聴いてみたいと思ってます。

こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2010年4月18日 (日) 11時04分

こんにちは。
多忙な日々が過ぎ、つかの間の2連休です。

>アラウのCDは、ボストン響とのものでしょうか

はい。ボストン響とのものです。
コンセルトヘボウが名演ですか!
私もぜひ聴いてみたいですね。

このところシューマンのP協づいています。
今日もグルダの演奏を某動画サイトでみつけて聴きました。
グルダらしい楽しい?シューマンでしたが、バックがウィーン・フィルなのにイマイチ・・・
(Volkmar Andreaeという指揮者さんです)
この協奏曲は、“特に”指揮者の腕前がものをいうなァ。
てか、やっぱりアバド先生でないからかな?

投稿: Lilla | 2010年5月 4日 (火) 17時48分

lillaさん、こんばんは。
シューマンのコンチェルト続いてますか!
連休は人それぞれ、わたくしも仕事したり、ぼぅっとしたりで、どこへも行きませんた。

普通通りの方がうれしかったりします。

アムスのアラウの録音は、なかなか見つかりません。
いま、心がシューマンしてませんので、さほどでないのですが、この協奏曲は、時に、はまってしまいますね。

グルダのオケは、アンドレーエという指揮者です。
シューマンを得意にした地味指揮者だったかと記憶しますが、グルダの相手にならない方ではなかったかと。
 グルダもあぁこうだ言わず、シューマンでもアバドと共演していたら世紀の名演が生まれてうたかもしれませんね。

投稿: yokochan | 2010年5月 4日 (火) 23時57分

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