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2010年2月13日 (土)

神奈川フィルハーモニー定期演奏会 下野竜也 指揮

Yokohama20100212

雪まじりの、冷たい小雨降る土曜日、横浜の桜木町駅前。

そう、思えば学生時代、横浜を乗換駅に日々利用していた周辺の駅といえば、桜木町は駅周辺はなにもなく、横浜西口(東口は卒業頃!)か、関内か、石川町のどれか。
桜木町、いまや、こちらランドマークタワーの先に、素晴らしいホールが燦然とあっていくつもの名演がそこから生まれているんです。

今日も、そんな名演が味わえるかどうか。
Kanagawaphil_20100213_2  神奈川フィルハーモニーの定期公演に行ってきましたよ。

      ラロ     歌劇「イスの王様」

     ショパン  ピアノ協奏曲第1番
   
            華麗なる円舞曲第2番

              ピアノ:田村 響

     矢代 秋雄  交響曲

        下野 竜也 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
                   (2010.2.13 @みなとみらいホール)

ショパン以外は、初聴きの曲ばかり。
矢代作品は、ニコ動で聴いて少し練習。
そして、実はショパン以外が私にはとてもよく、大いに楽しめた。
 ショパンは曲に配列にもよるのか、豪奢なオーケストラ曲のあとに聴く薄い響きのオーケストラは、これはまた仕方がないくらいに鳴らない。やむをえない。
石田コンマスも動きようがなく、じっと神妙に奏するのみ。
それに反してピアノの部分は極めて雄弁で、うっとりしてしまう。
しかし、そのうっとりがいけなかった。ぼぅっ~として、過ごしてしまった40分間。
長いと思った。陥落してしまうかとも思った。
曲の長さも含めて、2番の方が好きかな。
ロン・ティボー優勝の田村響クンのピアノは、その男らしい風貌に似合わず繊細なタッチの極めて美しいもので、アンコールも含めて素敵な演奏だった。
リストなんかもよさそう。

1曲目のラロ。ワーグナーや後期ロマン派風の香りがする、私を刺激する好きな分野の曲で、10分あまりの中に悲しみの旋律や、甘味な歌や、ガンガンなる豪奢な大オーケストラの響きなどが、しっかり詰まっていて、大いに気にいった。
見知らぬオペラとなると、チャレンジしたくなるので、全曲を是非聴いてみたいと思ったものである。
ここでは、山本さんのチェロのソロがまた絶品でございましたことを書いておきましょう!

矢代交響曲は、少し練習の甲斐もあって、こうしてライブで聴いて、どんどんこちらに入ってきた。
こんなすごい、そして聴きごたえのある音楽が、日本人作品のなかにまだまだ沢山あるわけで、ほかにもまだ聴きたい曲が一杯あるのに、残った人生、これまた困ったことになってきた。
パリ留学を終えて、1958年という我が方にとって馴染み深い年(?)に書かれた40分の大曲は、交響曲の美しくあるべき姿の、しっかりとした4つの楽章から成り立っていて、心酔していたフランクの循環形式によっているともいう。
 こうした馴染みの薄い曲だから、何に似てるとかしか言うことができない虚しい自分だが、第1楽章冒頭の神秘的な出だしは、何故かディーリアスの音詩を思い起こしてしまったし、第2楽章のスケルツォは聴くものすべてを興奮させる祭り囃子のリズムそのもの。
これにはハマった。
静謐な第3楽章は、メシアンの教会音楽みたいな神との対話のような雰囲気。
繰り返し繰り返し打楽器が、その配列順に左から右へと印象的に流れながら鳴ってゆく。
いつも神奈フィル打楽器軍団の素晴らしさに関心していたけど、この曲は終始活躍する様々な打楽器。もう完璧でした。
イングリュホルンの山本さん(ですよね?)、大見さんのバス(アルト?)フルートがやたらに深い響きで感銘をうけた。
終楽章は、静かな序奏を経て、激しいリズムの交錯する主部はメシアンとバルトークを感じた私。ともかくこんなややこしいリズムをしっかり振り分ける下野さんの的確でキレのよい指揮が、ここへ来て最高調。
最後の最後、第1楽章が、極めて感動的に回顧され、キターーーッ、という気分に心から満たされ、そのかっこいいエンディングにドキドキ感も極まってしまったのだ。

ブラボーが飛び交ってましたよ

大満足の指揮者とオーケストラ。
石田コンマスが、やろうぜ、と下野さんを誘うかのように、Vの字、(いやこれが第2楽章の2だったのだが)を全員に出してアンコールは、祭り囃子
をを~、これまたかっちょいい音楽が再度聴けて、われわれ聴衆は大満足の心持ちでホールをニコニコとあとにするのでありました。

いやはや、下野さん、いいじゃないですか。
初シモノーだけど、あのリラックマちゃんみたいな癒し系の風貌だけど、音楽にあふれるキレのよさと、豊かな感情表現は、聴衆が初めての曲でも、わかりやすく説得力抜群に聴かせてしまう。オケも弾きやすいみたいだし。
 下野スケジュールを調べてみたら、各地でぎっしり大活躍。シュトットガルトも振るみたいだ。そして、そのプログラムの絶妙さ、グラゴルミサ、ドヴォ4、ブリテン、トランスクリプション集などなど、果敢な挑戦ばかり。
いやぁ、若いんだからこうでないと。
どうしても比べてしまいますなぁ・・・・・。

という具合に予想通りの辛口比較から、矢代作品の素晴らしさ、大胆な海外話(笑)など、今宵もまた「勝手に神奈川フィルを応援する会」終電コースは楽しく続くのでありました。
皆さん、今回もお世話になりました。Sake 電車で心地よく寝てしまった。
お酒も寝てます。

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コメント

yokochanさん、いつもの神奈フィルねた、楽しく拝読させていただきました。言外に誰のことを言っているのかはこの前ゆりかもめさんとご一緒させていただいたときの勢いで分かりました・・・。
只今ロシア五人組の音楽をしこたま仕込んで聴きまして、あとはグリンカの歌曲とコルサコフの音楽を10曲ほど聴き終えて終わり。そうなると、しばらく休んでいた日本の作曲家の音楽が視野に飛び込んできそうです(フランス近代のはCDが出なければ取り付くすべもありません)。差し当たって矢代(幸いなことに作品が少ない)、團、三善かな。それと無視してきた芥川に尾高父の辺りでしょうか。四月に東響川崎名曲全集で日本の作曲家の一夜(新潟の定期でもあります)があります。そちらも“食べて”みてはいかがでしょう。

投稿: IANIS | 2010年2月14日 (日) 15時50分

IANISさん、こんにちは。
矢代シンフォニー、聴きごたえありましたよ。
ナクソスの湯浅盤が、ピアノ協奏曲とカップリングですな!
昨夜も例の調子で盛り上がってしまいました。
私も、少しづつ日本人作曲家を聴いていこうと思います。
武満だけじゃないですねぇ!
東響のプログラムはなかなか魅力的です。
しかし、GW真っ只中なところで、家族の冷たい視線に勝てるかどうかですよ。

ロシア五人組ときましたか。
すさまじい聴き方に頭が下がります。

投稿: yokochan | 2010年2月14日 (日) 16時54分

どうも昨夜はありがとうございました!!矢代秋雄の習作時代を除けば、ピアノ協奏曲とともにもっとも聞きやすい作品ですが、そのわりにはもっとやられてもいいのにと思うばかりです。
最近聞いた演奏会の中では白眉でした。前半は夢うつつ(ホントの夢うつつ)でした…ので、ほとんど憶えていませんが、後半は1音たりとも聞き逃すものではありませんでした。いや、良い演奏会でした。
ルツェルンのお誘いをエントリーしました。ついでに、TB打っておきますね…。大きなお世話でしたね。

投稿: Schweizer_Musik | 2010年2月14日 (日) 17時30分

こんばんは。2010年はショパン・イヤーなのか2曲挙がっているのが伺えられますね。
ラロの「イスの王様」序曲はフルネ、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団のCDで聴きました。だいぶ前にジャケットとタイトルに魅かれてしまって購入。長年廃盤でフルネ以外のCDで出回ってないな、と思ったら引退後に再発売されたのは嬉しかった。80歳を過ぎてからもコロムビアでオランダ放送フィルとレコーディングしたりする。力強いサウンドはいつまでも残っている。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E5%BA%8F%E6%9B%B2%E9%9B%86-%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%E6%94%BE%E9%80%81%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E7%AE%A1%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%A3-%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%8D-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3/dp/B000JVS3MC/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=music&qid=1260259580&sr=1-1
プレヴィン、ウィーン・フィルによるR.シュトラウスの「オペラ管弦楽曲」を集めたもの。(「ばらの騎士」なんかが入ってますね)と比較してしまいそう。
「ローマの謝肉祭」以外はマイナーな曲ばかりでこの曲が初めは椅子に座る王様かな、とイメージしてしまったこともあります。フルネはこれらは非常に好んでいて来日した際に演奏したこともあります。
やはり、「イスの王様」序曲は再評価されているそうですね。「全曲版」も再評価されればいいですね。

投稿: eyes_1975 | 2010年2月14日 (日) 21時21分

Schweizer_Music先生、こんばんは。
昨晩はどうもお世話になりました。
自分にとっての見知らぬ曲に、あんなハイテンションになれるなんて、曲も演奏も素晴らしい証しでした。
いろいろとお話もお聞きできて、矢代作品への興味が増しておりますところです。

そして、悩ましいですねぇ(笑)、ルツェルン。
間違いなく凄いことになるのがわかるだけにです。
すんばらしいエントリーに心揺れ動くワタクシでございまして、美しい教会もさることながら、トリプシェンのワーグナー邸のお話などを拝見してしまったらもう・・・・・。
罪な先生でございますねぇ(笑)

投稿: yokochan | 2010年2月14日 (日) 23時28分

eyes_1975さん、こんばんは。
初聴きの「イスの王様」でしたが、ほんとに気に入ってしまいまいした。
フルネのご案内のCD,まったく知りませんでしたよ。
そのCDに収められた有名でない曲、そんな風な人知れぬ作品を開拓する喜びはたまりませんね。
フルネは都響で演奏してたようです。

そしてイス全曲をなんとか挑戦してみたいと思ってます!
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2010年2月14日 (日) 23時33分

渡辺さんのlpで親しんだ矢代秋雄の交響曲。ひさしぶりに生で聴けるチャンスでしたが、残念ながら逃してしまいました。ピアノ協奏曲、チェロ協奏曲ともども何度か実演に足を運んでいる好きな作曲家のひとりです。今日は伊福部昭の「交響譚詩」を飯守泰次郎氏の熱いタクトで聴いて来たところです。
下野さんは正指揮者をつとめる読売日響での意欲的なプログラムに、指揮ぶりともども大いに魅力を感じております。以前プレトークでみずから「ゲテモノ担当」なんて自己紹介していましたが、どんどんやってもらいたいと応援する気持ちであります。読響も若い指揮者をどんと構えてアシストする姿勢が素晴らしいと思います。
そうそう、来期の新日本フィルのプログラムもなかなか凄いことになっております。時間とお金が追いついていきません。

投稿: 白夜 | 2010年2月14日 (日) 23時34分

下野さんは1月に読響でスッペ序曲集を聴いた時も楽しませて頂きました。
今回の演奏会で、最近名曲路線になっている神奈川フィルに良い刺激を与えてくれたと思います。
これからも意欲的に「果敢な挑戦」をどんどんしてほしい指揮者ですね。

ちなみにニコ動は僕も活用してます。さっそく矢代さんのピアノ協奏曲を見つけました。

投稿: syllable | 2010年2月14日 (日) 23時48分

白夜さん、こんばんは。
矢代作品を馴染んでらっしゃる白夜さん、相変わらずさすがです!
初物でしたが、ありきたりな表現しかできませんが、すごくカッコよく、整然とよく出来た音楽に思いました。
飯森先生の伊福部作品ですか!
これまた聴いてみたかったですねぇ~。
さすがに連チャンは厳しいですし、ホント、おっしゃるようにキリがなく、こんな厳しい時代なのに魅力ある音楽会ばかりで困りはててしまいます(笑)

下野さんの「ゲテモノ担当」、大いに結構ですね!
各オーケストラや、聴衆をどんどん刺激してもらいたいと思います!

投稿: yokochan | 2010年2月14日 (日) 23時59分

syllableさん、こんばんは。
下野=スッペですか!
なんだかワクワクしそうな気配を感じますね。
初めてでしたが、とても好感のもてる指揮者でした。
神奈川フィルのレア曲担当監督になってもらいたいですよ(笑)
ニコ動のピアノ協奏曲、私もチェックしました。
なかなか聴きやすい曲ですね。

投稿: yokochan | 2010年2月15日 (月) 00時02分

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