小山 由美 サントリー音楽賞受賞記念コンサート
アークヒルズのお隣にある「桜坂」。
福山さまの歌の「桜坂」とは違うみたい。
ライトアップされ、こんな美しさ。
いまいち画像ですが。
日本を代表する最高のメゾソプラノ歌手、小山由美さんが、2008年度の活躍を評価され、昨年第40回のサントリー音楽賞を受賞されました。
その記念コンサートでありました。
パンフレットによりますれば、初回が小林道夫さんで、あとは歴代、日本の音楽史が書けそうな方々が受賞されております。
小山さんのご活躍がおおいに評価されての受賞、まさに慶賀の至りでございます。
ワーグナー好きのわたくしですから、ワーグナーやシュトラウスの緒役をレパートリーにする小山さんの舞台はかなり拝見しておりまして、逆にそれらの上演においては、小山さんはいまやなくてはならぬ存在になっているわけ。
これまでの観劇記録をひもとくと、オルトルート、マグダレーネ、フリッカ、クンドリー、ヘロディアス、エミリア・マルティ、ゲシュヴィツ公爵夫人などなど、たくさん接し、いずれもキリリとした歌唱とお姿は舞台を引き締め、牽引する小山さんが極めて印象的でありました。
ワーグナー 「ワルキューレ」
ワルキューレの騎行、第2幕~フリッカとウォータンの場面
R・シュトラウス 「カプリッチョ」
前奏曲、月光の音楽
ツェムリンスキー 「メーテルリンクの詩による6つの歌曲」
ワーグナー 「パルシファル」
前奏曲、第2幕後半
R・シュトラウス 「献呈」
Ms:小山 由美
T: 成田 勝美(パルシファル)
飯守泰次郎 指揮 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
(2010.4.5 @サントリーホール)
実に素晴らしいプログラミング。
この演目を拝見し、小山さんだし、即チケット入手だ。
新国「神々の黄昏」、東京春「パルシファル」と続いてのこのコンサート。
まさに、ワーグナー週間、ワーグナー祭りでございますよ。
何もこんなに集中してやってくれなくてもいいじゃないと、半ば嬉しく、そして苦しい懐中に鞭打ちつつのワーグナー祭。
その仕上げに相応しく、リングとパルシファル、そしてワーグナーに派生したシュトラウスとツェムリンスキーの配合。
まったく見事なまでに、自分の中で完結した連続体験なのだ。
しかも、最後は日本人が達成した最高のワーグナー演奏で締めることができて、こんなにうれしいことはないし、自分のワーグナー鑑賞歴に大きなひとコマを刻むことができた大いなる満足感もひとしお。
ともかく、小山さんの歌とその立居振舞が素晴らしい。
まずはやはり、クンドリー!
数日前にシュスターの強烈なクンドリーを絶賛したばかりだが、テオリンのブリュンヒリデも含めて、その歌唱は強く圧倒的だが、あまりに凄過ぎて、かえって遠い近寄りがたい存在に感じたりもする。
それはいい意味で外国人が自分たちの音楽をむちゃくちゃ高度に歌い演じた姿であって、われわれ日本人からすると憧れの存在であろうか。
でも、小山さんのクンドリーは遠くなく身近な存在であり、シュスターのようにおっかない異次元クンドリーじゃなくて、転びの弱さも感じさせる、極めて人間的で情味溢れるクンドリーでありました。
高音域から低域までを存分に駆け巡らなくてはならない至難の役。
すさまじかったシュスターは、少し荒れて音程も怪しくなったが、小山さんは完璧だし、叫び声のようにはならなかった。
日生劇場で観劇したパルシファルを思いだしながら聴いた。
その時は、3幕ともに味わいを変えてのクンドリー。最後に、洗礼を受けて両手で目を覆って涙するクンドリーに、私も涙ボロボロでありました・・・・。
今回は前半・後半でドレスと髪型を変えての小山さん。
完全にクンドリー入ってました。
ドイツ語の語感の快さ。明晰な発声とほどよい感情移入。きりっとした切れのよさ。
音符に乗せた言葉の重みを感じさせる豊かな歌いこみ。
クンドリーのみならず、小山さんのドイツものは常にこうした感銘を与えてくれる。
成田さんのパルシファル。
アンフォールタースの決め言葉、サントリーホールを揺るがしました!
安定感あります。カットはあったけど、小山さんとのあうんの演技も堂に入っていて、パルシファルの緊迫した2幕を心から感激しながら聴くことができた!
もちろん、飯守さん指揮する東京シティフィルの、これぞワーグナーというべきサウンドは、もう何も言葉にすることはできないのであります。
多少の傷はまったくといっていいほど気にならない、そんな音楽の流れのよさと必然に満ちている演奏。
遡って、ワルキューレ。
騎行はともかくとして、馴染み深い小山さんのフリッカ。
気品と気位の高さを感じさせる。
ツェムリンスキーの歌曲を、実演で聴けるのも望外の幸せ。
小山さんの新境地ともいうべき、後期ロマン派こてこての世界は、先のベルクの「ルル」の系譜につながるもの。
思い切りこの系統が好きなもんだから、ハープのグリッサンドにピアノ、チェレスタの味付け、濃厚かつ緩めの音楽。まったくリラックスしてしまう。
この歌曲集は、オッターの蒸留水的な歌で聴いているが、小山さんの脂肪分ゼロのクリアーで透明な歌唱もツェムリンスキーにぴったり。
ここでは飯守&シティフィルは、絶妙のタッチで透明感と濃密感を見事に表現していたのが印象的で、オーケストラ部分だけ聴いていても存分に楽しめたのであります。
そのオケが、私の大好きな「カプリッチョ」を演奏してくれた。
弦楽6重奏による前奏曲は、飯守さんは椅子に腰掛けて聴いいて、月光の音楽のみ指揮。シティフィルによる「カプリッチョ」は昨秋、日生で聴いて、その素敵な演出でノックアウトされてしまった。
その時の思い出が、次々に思い起こされてきて、素晴らしい月光の音楽では、涙が出てきてしまった。もう勘弁してよ、って心境。
アンコールに、シュトラウスの歌曲をもってきたのも、小山さんと飯守さん、そして、今回のコンサートの流れを見事に完結する巧みな配分でありました!
素敵なコンサートでした。
盛大な拍手にブラボー、私も一声いきましたよ!
今年のびわ湖でのイゾルデ挑戦、楽しみですね。
トリスタンだらけだけど、なんとか観劇したいものです。
終演後は、ヲタ会理事のおひとりminaminaさんと、ホール近くの居酒屋で、軽く一杯。
長いコンサートだったのですが、やはり締めは飲まなくては。
ちゃんとお互い終電前に帰宅の途につきました!
お疲れさまでした。
数日前の桜坂。
六部咲き花曇り。
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コメント
なんと! このコンサート、知らなかった自分が情けないです。もし知っていれば、仕事サボってでも(嘘です(笑))行きたかった。私の職場は関東の端っこなので、平日のコンサートは無理なのです。しかし、カプリッチョにパルジファルって! すばらしいですね。小山さんは、10月にびわ湖でイゾルデを歌われるということは押さえていたのですが。
投稿: Shushi | 2010年4月 6日 (火) 20時34分
こんばんは。いいコンサートでした。あ、あの坂は桜坂って言うんですね(今頃知った)。
小山さんは世界に誇れるワーグナー・メゾですね。しかし私にとってはゲシュヴィッツの印象が一番強いのですが・・・まさか昨日の舞台でベルクは無理ですね。
月曜でなかったら是非飲みに行きたかったです。
横レス失礼。
Shushiさん、私もこのコンサート知らなくて、ウチのブログの常連さんに教えて頂きました。ブログやってて良かったです。
投稿: naoping | 2010年4月 6日 (火) 21時54分
shushiさん、こんにちは。
もしかしたら、いらしてらっしゃるかと思ってました。
サントリーがらみのコンサートでしたので、抽選招待もあって、お子様もいらっしゃいました。
しっかり聴いてる子もいて、将来有望なワグネリアンですね。
一人楽しんでしまい申し訳ありませんでしたが、完璧なまでの歌唱とオケ。そして、馴染みの音楽でした。
naopingさんもおっしゃってますが、ブログの効能は大きいですから、こんなの行きます記事や掲示をしようと思ってます!
投稿: yokochan | 2010年4月 6日 (火) 22時38分
naopingさん、こんにちは。
いらっしゃるだろうことは知ってましたよ!
遅いし帰りましょうかとか、いいながら、でもほんのチョット、とか言いながら飲んじゃいました。
次回は是非。
それにしても、われわれ御用達コンサートといった感じですした(笑)
われわれのような聴き手と、そうじゃない聴き手とのギャップが、面白いように激しくあったコンサートでしたね。
飯守さんの唸り声も、小山さんの歌声の隙間からしっかり聞こえましたし(笑)
ツェムリンスキーは、実演で聴くとほんとにキレイで気持ちがいいです。我が家のお風呂に浸っているような気持ちよさでしたよ(再度笑)
投稿: yokochan | 2010年4月 6日 (火) 22時53分
お晩でございます。昨日はありがとうございました!
やっぱりいい演奏会の後の、ほどよい(←ここ重要?)お酒は最高です!
それにしても圧巻のクンドリでしたね!ちょっとばかり苦手意識のあった「パルシファル」でしたが、俄然聴いてみたくなりました!そしてツェムリンスキーも。
また小山さんの声は、オルトルート、ルルやマリーなんか、実に合うんだろうなぁ・・・と思いながら聴きいっていた次第です。
ちなみに、招待券をいただいたとき、yokochanさんの顔が真っ先に思い浮かんだのはここだけの秘密です(笑)。
投稿: minamina | 2010年4月 7日 (水) 00時05分
minaminaさん、まいどどうもです。
昨晩はありがとうございました。
終電を意識しつつの程よい飲み。
たしかに重要なことでございます。
昨今、忘れつつある麗しい終電帰りのスリリングな味わいこそ、長大なワーグナーの楽しみといえよう。
小山さん、ほんと、日本人離れのレパートリーですが、その歌は、実に日本人的なんですね。
真っ先に思っていただき、ありがとうございます。
二郎するとき、必ずや、minaminaさんを思うのと一緒にございますねぇ(笑)
投稿: yokochan | 2010年4月 7日 (水) 00時24分