「悲劇女優」 ミレイユ・ドゥランシュ
もう立夏を過ぎて、暦のうえでは初夏。
ちゃんとした、うららかな春がなかった気がする今年の陽気ですな。
以前出したツツジの別カット。
実はこれ、住んでるマンションの法面なんです。
周囲3面が法面で、そのすべてが芝とこうした光景。
一年のうちで、一番美しい眺めを迎えているのです。
また雨が戻ってきたし。
でも暖かい雨。
少し憂鬱。
こんな日にピッタリのフランスのメロディなどを。
歌うのは、最近お気に入りのフランスのソプラノ、「ミレイユ・ドゥランシュ(Mireille Delunsch)」。
彼女は、フランスでも、ドイツ・スイス国境に近いアルザスの美しい街Mulhouse(ミュルーズ)の生まれ。
この街の名前、ムルハウスと検索したらドイツにある別の街だった。
原語で調べたら、中世の雰囲気と現代風建築の混合した趣きある街のようである。
ミュールは、水車のこと。そして、「美しい水車屋根の娘」の独語Mullenもそう。
水の街=工業の街でもあるそうな。
こんなことにこだわったのは、歌手の故郷って、その歌やレパートリーに影響があるだろうから・・・。
日本でもそうでしょ。東北の歌手と、九州の歌手って心の心象風景が違うから、その歌の表現にも何かしらの影響があると思うし。
音楽はストラスブールで学び、デビューはミュルーズ。
ボリス・ゴドゥノフ(たぶんクセーニャ)でデビュー。
詳細な経歴は、手元では不詳ながら、彼女はミンコフスキと組んだいくつものバロックオペラで名をあげ、各地でひっぱりだこになって、この10年あまりで、いまやバロックから現代もの、フランスからドイツ、イタリア、イギリスものまでを歌う広大なレパートリーを持つ最先端歌手となっているのである。
最近新しい録音がないのが寂しいところ。
アルザスの清涼な水で育まれたようなステキな歌声。
その声は、リリコだが、スピント系も充分カヴァーし、かつ音域も広く、ワーグナーのフリッカまでそのレパートリーにあるとあった(これ本当かな?)
でもワーグナーではエルザを歌ってる。
その一方で、モンテヴェルディやラモー、グルック、モーツァルト、ヴェルディ、グノー、チャイコフスキー、プッチーニ、ブリテンなどなど・・・、すごいですね。
あと、歌曲ではフランスのメロディ系すべて!
ビブラートの一切かからない、真っ直ぐなクリアボイスはバロックや古典を歌うのに最適で、20世紀ものも、ねじの回転の教師役などもばっちり。
ヴェルディやワーグナーは、これからの歌い込みで独自のスタイルを築くのではと期待。
あと、なによりも素晴らしいのは、自国の歌曲。
民謡的でないメロディという詩的なジャンルのフランス独特の歌曲に、アルザス生まれの明晰な歌声を持つドゥランシュは、澱や埃といった雑味のまったくない純な世界でもって新鮮な感銘を与えてくれる。
このクリアさは、明快な発声によって心地よいフランス語の語感をも堪能させてくれて、ある意味快感を呼び覚ますのであります。
デュパルク 「旅への誘い」
「ミニョンへのロマンス」
「悲しい歌」
ブロッホ 詩編114&137
ヴィエルヌ 「嘆きと絶望」から
「愛の詩」から
ロパルツ 歌劇「故郷」から
S:ミレイユ・ドゥランシュ
Pf:フランシス・ケルトンキュフ
ディヴィット・シャローン指揮 ルクセンブルク・フィルハーモニー(ブロッホ)
ジャン・イヴ・オソンス 指揮 〃
ティンパニレーベルに入れた彼女のアルバムから、そのエッセンスが抜粋となった1枚。
なんといっても、デュパルクが曲も含めて魅力的。
おフランスな雰囲気にうっとりしてしまうけど、往年のねっとりした歌唱と明らかに異なるスマートでセンス満点のミレイユの歌たち。
ブロッホの詩編は思わぬ世紀末系ミュージックで、ユダヤ語によりながらも、宗教的な雰囲気は希薄で、甘ささえ漂う歌。
馴染みないヴィエルヌは、抒情と洗練、そして情熱も同居したなかなかの音楽で、彼女の歌も徐々に熱を帯びてゆくのがステキでありました。
それとロパルツにオペラがあったのは知らなかった。
抒情派としてフォーレ系統のレクイエムを聴いてはいるが、2時間以上の大作オペラらしい。これは是非とも全曲聴いてみたい。
オーケストラの背景を受けて、華のある歌唱のミレイユだけど、その声はどこまでも真っ直ぐで気持ちがよい。
最後に、ラモーの「プラテー」の有名な歌を。
素晴らしいでしょ
ついで、音源だけで、パトリシア・プティボン
プティボンも才気煥発、よくハジけてますが、オケで損してます。
鮮度高いミンコフスキの比じゃありませんな。
ふたりの、才能豊かで美しいフレンチ・ソプラノ。
どちらもお気に入りでございますよ
| 固定リンク
コメント
パトリシア・プティボンとミレイユ・ドゥランシュ、どちらも大好きです。
プティボンのコンサートへは昨年2度行きました。次回来日の際は、是非「優雅なインドの国々」等のラモーやリュリを中心に歌って欲しいです。
ドゥランシュは、おっしゃる様 「プラテー」のフォリーが圧巻!ドンナ・エルヴィーラも好きでした。
お勧めの音源、是非手に入れたいと思います。
投稿: まさヤン | 2010年6月22日 (火) 03時52分
まさヤンさん、こんにちは。
現在、フランスを代表するステキなソプラノ二人ですね。
どちらも、知性的でかつ機知にも富んだ歌唱は、バロックものにぴったりです。
プティボンのコンサートは、玉手箱のように、何が飛び出すかわからない楽しみがありますが、そうですね、今度はバロック系が聴きたいですよね。
そして、オペラを是非とも!!
そう、同じことはドゥランシュにもいえます。
是非、来日して欲しい歌手であります。
「プラテー」のDVD、どちらも廃盤で入手しずらいです。
ロパルツとブリテンの記事をいずれUPしたいと思ってますので、またご覧いただけましたら幸いです。
投稿: yokochan | 2010年6月22日 (火) 19時44分