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2010年5月27日 (木)

ブリテン チェロ交響曲 ウォールフィッシュ

Mikasa
道央自動車道走行中の岩見沢SAにて。
岩見沢はかつて、ばんえい競馬が行われていた街。
隣接の三笠は、化石が多く出て、恐竜やアンモナイトの街。
なかなかのオブジェたちです。

Britten_cell_sym
ブリテン(1913~1976)シリーズ。
そろそろ、オペラも登場させなくてはと思いつつ、金聖響さんが就任する、ベルギーのフランダース響との初録音が、もうリリースされるとの報を受け、その初録音たる、チェロ交響を取り上げてみることに。

正式なタイトルは、「Symphony for Cello and Orchestra」。
1963年、ブリテン50歳の充実期の作曲で、その頃の作品はというと、「カンタータ・ミゼリコルディウム」(これいい曲です)、歌曲のいくつかと、そして「カーリュー・リヴァー」。
かなり渋い音楽ばかりを創出していた時分で、東洋のエキソシズムなどにも感化し、ミステリアスな雰囲気と独特のリズム感などにも特徴を見出すことができる時期。
正直、この曲は難解でありますし、確たるメロディーの噴出もない。
でも、ブリテン特有のクールさと熱っぽさが、混濁した響きの中から立ち昇ってくるのを聴くと、五感を刺激されるような大いなる感銘を覚えることになるんです。
ブリテンの音楽をオペラ中心に何度も聴いてくると、そうしたことが必ず体感できるようになります。
 クールでかっこいい音楽、それがブリテン。

一般に聴かれる、ブリテンといえば、有名な作品に限られてくるけれけど、それらはちなみに、シンプル・シンフォニー(1933年20歳!)、青少年の音楽入門(1946年)、ピーターグライムズ(1945年)、戦争レクイエム(1961年)とういった創作年になっている。
そう、初期のものほど有名で、ブリテンは歳とともに、難解に、とっつき難くなっていくイメージがあるのが浮き彫りになってしまう。
 わたしは、好きな英国音楽のひとつとしてとらえているし、何よりも、オペラの数々に最高の劇作家としてのブリテンを見出しているので、その周辺音楽も難なく受け入れることが出来たのです。

チェロソナタ、チェロ組曲などと並ぶロストロポーヴィチのために書かれた作品としては、最後の作品。
協奏曲としてもピアノやヴァイオリンのものがいずれも1930年代のものなので、最後。
4つの楽章からなり、チェロとオーケストラが完全に拮抗した立ち位置にあり、シンフォニックであるとともに、チェロのすさまじいまでの名技性も、巧みなオーケストレーションとともに味わえる。

ラプソデックな第1楽章からブリテン節炸裂。
 スケルツォとしての2楽章は、短いけど、とらえどころが難しくチェロの目まぐるしい動きの背景で、オーケストラが明滅し、これ演奏者には大変じゃないかしら。
 アダージョ楽章。この時期のトレンドか、東洋風な神秘的アトモスフェアが忍びよってくる。こんなヶ所に痺れてしまうのがブリテン好きの所以。
そして、休みなく続く終楽章では、トランペットのソロが素敵すぎる。
ここは、パッアカリアになっていて、ちょっと古風な面持ちながらも、クール&ホットなブリテンの面目躍如たる音楽が満載。

イギリスのラファエル・ウォールフィシュのブリリアントなチェロは、ロストロさんほどに思い入れが少なく、気品と情熱のバランスがよい。
そのウォールフィッシュの音楽一家の家族が在籍したイギリス室内管弦楽団と、ブリテンのアシスタントだった、ステュワート・ベッドフォードの指揮。
理想的な純英国産ブリテン演奏であります。

余白には、「ヴェニスに死す」のベッドフォード版組曲が入ってます。
これまた、わたくしにはシビレルようなかっちょいい音楽なのでありました。

このブリテンに果敢にチャレンジした聖響さん。いいじゃないですか!
名手ウィスペルウェイあっての演奏かもしれませぬが、聴く前から大いに評価したいですよ。
聖響ファンの方も、ブリテンの素晴らしさを聴きとってください。
そうだ、神奈川フィルで、山本さんのチェロで是非とも取りあげてもらいたい。
でも、オケ運営サイドは渋すぎるから逡巡してしまうだろうなぁ。。。

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コメント

これはこれは、またまたオヤジ心をくすぐる名曲を^^下手なチェロ弾きの私も一度は挑戦し、まあ上手に弾けないことは最初からわかっていましたが、挫折した名曲です。ブリテンのチェロ協奏曲!!!ようこそ取り上げてくれました。ブリテンの作品は名曲ぞろいのワリには意外に録音が少ないですね。この曲もそうです。さまよえる様のおっしゃるとおり、コンサートでどんどん取り上げてもらえるとウレシイ作品です。そのコンサート、私も行って聴いてみたいです^^

投稿: モナコ命 | 2010年5月28日 (金) 21時39分

モナコ命さま、こんばんは。

お~っ、コメントいただけて極めてうれしいです。
この手の曲は、まったく人気がないようでして、こうして大いに啓蒙しているのです。
というか、自分がこうして文章に残すことで、愛着が増してゆくんだと思います。
自己満足だったりしますが、実際にチェロを弾かれる方から同じ思いをお聞かせいただき、その思いは、間違ってなかったと確信しました!

生演奏で実感してみたいです。
神奈川フィルに直訴してみましょう!

投稿: yokochan | 2010年5月28日 (金) 22時09分

おっと、チェロ交響曲ですかっ!!
実は結構好きなんですよね、コレ。

と言ってもパッサカリアばかり繰り返しているような聴き方ですか…(汗)
心を入れ替えてちゃんと聴いてみます(^^;)

さて、本文中にあった「カンタータ・ミゼリコルディウム」を久しぶりに聴いてみましたがいい曲ですね!!
二重唱の部分(2回(?)しかないですけど)が特にしびれます。
って、マニアックですかね(笑)

しかし、自作自演以外に演奏されているのか疑問に思うくらいマイナーな感じのする曲です…


投稿: ライト | 2010年5月28日 (金) 23時45分

ライトさん、こんにちは。

おっ、これお好きな方がまた一人。
これまた嬉しい。
そして、さすが、ミセリコルディウムも!
こちらは短めだし、盛り上がりにも欠けてなくって、何度聴いてもシビレますね(笑)
全然、マニアックじゃないですよ。
ってか、我々は傍から見たらそうなのかもしれませんが(笑)

さきほど調べたら、チェロ交響曲の録音、結構ありますね。実演で是非聴きたいところです。

投稿: yokochan | 2010年5月29日 (土) 11時35分

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