R・シュトラウス 「ヨゼフの伝説」 若杉弘 指揮
「ふじ」の花が満開。
棚にするともっとキレイだけど、自立したものもよい。
ちょいと調べたら、「ふじ」には、動脈硬化・糖尿・メタボに効く成分が含まれているんだそうな。
蔓を粉状にしたり、花を酢の物、芽や種なども食べれるらしい。
あの豆みたいのはそのまま食べれそうだけど・・・・・。
「ふじ」の花を見る目が変わってしまった。
これからは、「うまそ~、おいしそ~」って見ることにしましょう(??)
でも、「つつじ」とともに、その甘い香りは初夏の魅力のひとつですな。
歌曲と室内楽以外は、大方取りあげたR・シュトラウス。
残された管弦楽曲のなかから、バレエ音楽を。
劇音楽では、いうまでもなくわたしの愛してやまない15のオペラ作品がるのだけれど、それ以外は少ないし、演奏機会もまったくない状況。
劇付随音楽として、「町人貴族」。
バレエ音楽として、「ヨゼフの伝説」「あわ雪クリーム」「鳴りやんだ祭典」の3作。
本日は、それらの中で一番の大作「ヨゼフの伝説」を聴く。
作品番号は63で、1914年の作曲。
最後の有名な交響作品「アルプス交響曲」(作品64)と同時期で、オペラでは「アリアドネ」(作品60)と「影のない女」(作品65)の間に位置する関係。
豪奢なオーケストラ作品ながら、上演されないのは、あまりのフルオーケストラなのでピットに入れるのが興行的に大変だし、1時間あまりなので、同時上演作品の選別も難しそう。
また、コンサートにかかりにくいのは、視覚的な要素がないと、その物語の理解が難しいのがお得意の交響作品との大きな相違だし、馴染みの少ない旧約聖書の物語を基本にしているためと思われる。
それ以上に音楽に親しみやすさがやや足りなく、シュトラウスの霊感もやや欠如しているように感じるのも事実。
でもシュトラウス好きとしては、ほっとけない音楽だ。
鳴りっぷりのよい大オーケストラを眼前にする楽しみは随処にあるし、たとえば砂金がさらさらと舞い落ちるモティーフとかヴェールの薄衣をあらわすかのような、毎度おなじみのシュトラウスの手管が満載。
全体に東洋・中近東風のエキゾテックムードに覆われているのも新鮮で、オペラでいうと、「エジプトのヘレナ」とか「サロメ」みたいな雰囲気もあり。
そして、なんといってもドラマの外面的描写力と心理的描写力の両面に秀でていること。
これはまさに、オペラ作家のシュトラウスならではの強み。
このあたりを捉えて聴き込めば、なかなかによくできた作品だし、好きな音楽にもなってくる。
簡単なあらすじ。
ヤコブ(アブラハムの子イサクのそのまた子)とラケルの子ヨセフは、父に溺愛され、神格も宿っているため、たくさんいる兄弟たちから妬まれ、ユダヤの地からエジプトに奴隷として売られてしまう。
この少年ヨセフをひと目見て、魅せられてしまい、買い取った待衛長ポティファルの妻。
さっそく、ヨセフの枕元に忍びより迫ろうとするが、ヨセフは逃げ、マントをかぶってしまう。
なおも言い寄り、マントがはぎ取られ、上半身をあらわにしてしまったヨセフ。
もう、爛々の妻はうっとりである。
騒ぎを聞きつけ召使たちがやってくるが、ヨセフに罪を着せる爛々妻。
ポティファルに逮捕されてしまい拷問を受けんとする憐れヨセフ。
拷問の準備を見て再び、熱い心を燃やすポティファルの妻であるが、ヨセフは軽蔑のまなざし・・・・・。
そこへ閃光が差し込み、大天使があらわれ、ヨセフの鎖を解き外へと導く。
妻はもう敵わぬと感じ、自らの首飾りで首をくくりこと切れる・・。
ヨセフと天使はそうして、天上へ消えてゆくのでありました・・・。
どうです、この筋立て。
まるで、「サロメ」じゃありませぬか。
権力側の俗たるサロメと、権力を超えた神的なヨカナーンとの対比に同じ。
人間の持つ二面を象徴的に描いた聖書の基本をそのままに、みずから台本を書き、作曲もしたR・シュトラウスでありました。
最後の天使の場面の神々しさと盛り上がりの素晴らしさは、シュトラウスの音楽を聴く喜びにあふれております。
この全曲盤に若杉弘さんの録音が残されていることは望外の喜び。
87年の全曲として世界初録音は、東京都交響楽団の演奏。
その後、シノーポリやI・フィッシャーの録音も続いた。
それとサヴァリッシュとN響の放送もCD化が望まれる。
珍しい作品へのチャレンジという以上に、ここではシュトラウスやワーグナーを愛し続けた若杉さんの熱意がひしひしと感じられる熱演となっている。
時おり唸り声まで聴こえてくる。
息の長い旋律を伸びやかに歌い込み、ライトモティーフの浮かび上がらせかたもまったくもってうまいもので、錯綜した響きのなかから主要なメロディが見事に浮かびあがってくる。
録音がやや硬いのが難点だが、世界に誇れるシュトラウス演奏であります。
この録音、先ごろ、ほかの劇作品と組んで4CDで格安に復活したようだ。
これ1枚しか持ってないので、組物にされると本当に不便でならない。
どうにかならないだろうか。
シノーポリは、未所有だが、こちらも既得のものと組物にされてしまった。
安くすればいいばかりじゃないと思うんだけど!
ちなみに、旧約でのヨセフ物語は、続編があってややこしい。
逮捕されたヨセフは、夢を解き明かしそれが現実に起こったりするので、大いに重用されファラオにも認められ、エジプト宰相となる。
やがて、飢饉で苦しんだ母国の兄弟たちを助け、和解し、老いた父とも涙の再会をし長命を全うしたとさ・・・・・。
| 固定リンク
コメント
こんばんは!
クラオタ様のところへお邪魔すると、ご紹介されたものは全て聴きたくなりますがこの『ヨゼフの伝説』強く強~く惹かれます。
ふじの香りは本当にステキですよね。
わたくしの周りにはふじは香らない、という人ばかりでとっても不思議です。
みんな鼻が詰まっているのでしょうか…
投稿: moli | 2010年5月 8日 (土) 22時15分
moliさん、毎度こんばんは。
ふじの花は、甘くていいにおいですよね。
わたしは子供の頃から、ヤマフジを身近にしてきましたので、桜の次はふじ、そして桃にツツジと、その美しさと香りに酔いしれながら生きてきました。
怪しいですよね(笑)
この「ヨゼフの伝説」ですが、かつては「ヨゼフ王の物語」だったり「ヨゼフ物語」だったりと、その名が変わってきております。
今回、何度も読んだ旧約をも読み直しましたが、この場面、そちらは淡々とした短いものでして、分厚い全体のなかのひとつといった結びつきしかないのです。
しかし、この短い出来事に息を吹き込み、劇作品にしたシュトラウスはスゴイと思います。
神も男も女も、みんな、シュトラウスの素晴らしい音楽に載せられてしまった感があります!
ご興味を引いていただければ幸いです。
投稿: yokochan | 2010年5月 8日 (土) 23時45分