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2010年7月16日 (金)

ヤナーチェク グラゴル・ミサ マッケラス指揮

Tokyo_catedral_1
東京カテドラル
近くで打ち合わせがあったので、足を延ばしてみました。
さすが、司教座のある東京の教会。
大きいものです。
そして、音楽ファンにとって忘れられないバッハやブルックナーの演奏会場としての大伽藍を持つ教会。
カトリック教会だけど、教派などは関係なく、音楽がいまにも響いてくるような雰囲気。

Janacek_glagolitic_mass_mackerras
サー・チャールズ・マッケラスが7月14日にロンドンで癌のため、亡くなったそうです。
享年84歳。
アメリカ生まれのオーストラリア人で、イギリス籍を持ち、チェコの音楽、とくにヤナーチェクのスペシャリストでもあったマッケラス氏。
実にいろんな顔を持つ多彩な指揮者でありました。

オペラも得意だったマッケラスは劇場の人でもありました。
モーツァルトやワーグナー、ヴェルディもよく指揮したが、なんといってもヤナーチェク、ドヴォルザーク、スメタナのオペラ。
ことにヤナーチェクにおいては、マッケラスがいなかったら、今のような受容状況にはならなかったに違いない。
70年代後半から、ウィーンフィルと録音を続けた一連のオペラ。
デッカの鮮烈な録音に、ウィーンフィルの魅力的な音色が、難解だったヤナーチェク作品をどれだけ魅力的にしたことであろう。
 ターリヒ仕込みの、根っからのチェコ魂を身につけていたマッケラスの学究的・献身的なヤナーチェクへの愛情が、いま残された数々の音源に息づいている。

マッケラスの偉業は、ヤナーチェクを主体とするチェコ系の音楽、英国音楽、そしてモーツァルトでありましょうか。

 キリスト伝来時の当時のボヘミアで、スラヴ語による布教をたやすくするため考案された文字がグラゴル。
 ヤナーチェクは、当時のグラゴルによる通常ラテン語ミサ典礼文に作曲をした。
それが本日、マッケラス追悼に取り上げた「グラゴル・ミサ」であります。

言葉が違うだけでなく、その造りも風変わりで、曲の前後に、有名なシンフォニエッタ顔負けの勇壮なファンファーレが付いているのだ。
おまけに、最後のファンファーレのひとつ前、オルガンのソロ曲が入ってる。
それらに挟まれて通常ミサ典礼文が5つ。
キリエ・グロリア・クレド・サンクトゥス・アニュス・デイ。

宗教的な雰囲気は、むしろ薄く感じられ、明るく前向きな人間讃歌のようにも聴こえる。
ヤナーチェクのオペラが持つような深い洞察力や、皮肉や諧謔といった内向的な部分は少なめだけれど、彼独特の人間に向けた優しい眼差しを感じ取ることができる名曲。

 S:エリーザベト・セーデルシュテレム A:ドラホミラ・ドロブコヴァ
 T:フランティシェク・リヴォラ       B:リハルト・ノヴァーク

 サー・チャールズ・マッケラス指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
                      プラハ・フィルハーモニー合唱団
                      オルガン:ヤン・ホラ
                           (1984 プラハ)


当時ウィーンとしか録音がなかったマッケラスのヤナーチェク。
レーベルを横断して、ついに本場チェコフィルとも録音をしたことで話題になった1枚。
ヤナーチェクの独特な語法を難なく引き出すマッケラスの指揮。
熱いけれど、整然としていて知的なアプローチ。
 録音に積極的だったマッケラス。
これからもヤナーチェクに関しては、ずっとスタンダードとして語り継がれてゆくことでありましょう。

サー・チャールズ・マッケラスのご冥福をお祈りします。

Tokyo_catedral_2
上から見ると十字架の形。
メタリックな輝き。
これ、一瞬、ベルリンのフィルハーモニー・ザールに似てる。
そう、今日、7月16日は、カラヤンの命日でもあるんですね。もう21年。
合掌。

追記~17日 0:40
 テレビで、新世界ナウ。
BBC響の唯一の来日公演の模様。
実に味わい深く、ブレのまったくない名演じゃぁないですか
ビエロフラーヴェクは、プロムスのCDやトリスタンの映像で、大物への変貌ぶりを感じていたのだけれど、この人は本物ですな。
マッケラスのあと、英国とチェコをつなぐ、ヤナーチェク指揮者になった。
                          
                   

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コメント

エーッ!亡くなったんですか、サー・チャールズが。
ほんと、ヤナーチェクのオペラをたくさん教えてくれた大恩人。そしてBBCミュージック・マガジンの付録でのマーラー第6の物凄い演奏は、鮮明に記憶に焼きついてます。
故人の冥福をお祈りいたします。

投稿: IANIS | 2010年7月17日 (土) 08時13分

IANISさん、おはようございます。
そうなんです、わたしもHMVのサイトで知りまして、ちょっと驚きました。
レコーディングが多く、いつもどこかで活躍してるイメージがあるものですから。
ヤナーチェクに関しては、わたしも恩人ですが、マーラーもあったのですね。
合掌。

投稿: yokochan | 2010年7月17日 (土) 08時31分

カテドラルの鐘が追悼の響きとなったのでしょうか。 
ご冥福をお祈りいたします。 


個人的にはあの大聖堂では音楽を聞いたことがなく、マイク越しのためなのか声も音歌もがガンガン割れるような記憶しかなく残念です。 
遠目に白い建物を見たときには、三角サンドかシベリアか?とも思えました。 
大変罰当たりで罪深い人間です… 

投稿: moli | 2010年7月17日 (土) 22時12分

moliさま、こんばんは。
私も実は聴いたことがないのですよ。
CDのみです。
堂内のチラシで、年内にマタイをやることを知りました。
気になるところです。

「三角サンドかシベリア」、わはっ、そうそう、見えますね。
夜中に小腹が空いてきました。
熱いお茶にシベリアが食べたいと妄想する、わたくしも罪深い男でございます(涙)

投稿: yokochan | 2010年7月18日 (日) 00時32分

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