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2010年9月11日 (土)

神奈川フィルハーモニー定期演奏会 金聖響指揮

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これを見たら、ドン・キホーテだったら・・・・。
竜か大蛇か勘違いして突進か。
みなとみらいホールへ向かう途中のランドマークのモニュメント。

シュトラウスといえば、リヒャルト
同じリヒャルトのワーグナーとともに、シュトラウス愛のわたくし。
今シーズンもっとも楽しみにしていたコンサートのひとつは、まったくもって素晴らしい演奏会となりました。
最初のベートーヴェンから、最後のシュトラウスまで、音楽の感興は徐々にカーブを描きつつ高まってゆき、最終の「ドン・キホーテ」の穏やかなエンディングに至って最高潮に達し、つい涙ぐんでしまったのでありました。
曲が静かに終わって、ソロの山本さん、聖響さん、オーケストラの皆さん、ステージの上では微動だにしない。
私たち聴衆も拍手すらできない。
長い静寂にホールが包まれたのでございました。

Kanagawa_phill201009

    ベートーヴェン   ピアノ協奏曲第4番

    シューマン     トロイメライ

         Pf:伊藤 恵

    R・シュトラウス   交響詩「ドン・キホーテ」

         Vc:山本 裕康   Vla:柳瀬 省太

         Vn:石田 泰尚

      金 聖響 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
                  (2010.9.10 @みなとみらいホール)

協奏的作品をふたつ、でもオーケストラを聴く楽しみがたっぷり味わえる曲が並べた秀逸なプログラム。

淡いオレンジ色のドレスであらわれた伊藤恵さん。にこやかな笑顔がいいです。
でもひとたび鍵盤に向かうと、その集中力と音楽へののめり込みぶりたるや、目を見張るものがありました。
いきなり始まるピアノ。
この連打音からして、こんなにニュアンス豊かに弾かれるのにびっくりした。
続くオーケストラの音を聴いて、久しぶりだけに、しまった、コレか・・・。
そう、つぃーーっと、ヴィブラート弱めの弦なのでした。
昨年の頃からすると、弱めだし、楽員さんも自由に弾いてるみたいだけど、サラリと、ややのっぺりした響きは、味わいの濃い伊藤恵さんのピアノと合わないのでは、と思いつつ第1楽章はどんどん進行。
それにしても伊藤さんの弾き出すピアノは素晴らしく、深い。そして透明感もある。
最後のカデンツァの緊迫感といったら言葉もありませぬ。
常に音楽を感じながら、体も動いている。弾いてないときもオーケストラと一緒に動いている。いや、指揮をしている!
これは、金さん、やりにくいだろうな。
いつしか、音楽は完全に伊藤さんがリードしてしまい、オーケストラも掌握しちゃったみたい。
 同じことを、かつて内田光子さんの演奏で経験した。
そのときは、ヤンソンスとコンセルトヘボウだったのだけれど、ヤンソンスは形なしだった。
 第2楽章の深遠な雰囲気もよく、3楽章では飛翔するような軽やかさが素敵。
ここでは、金管とティンパニが、待ってましたとばかりに登場しにぎにぎしいが、この強打・強奏は毎度のことながらどうにかならないものか。
まぁ、そんなことはおかまいなしに、伊藤恵さんのピアノは素敵なわけで、ワクワクするフィナーレではドキドキしましたよ。
 アンコールのお得意のシューマンも、ほっと一息、安らぎの音楽を聴かせてくださいました。
神奈川フィルには、伊藤さん、どんどん来演してもらいたいです。

さて、後半の「ドン・キホーテは、マーラーと同じように、ぎっしり壮観のフルオーケストラのステージ埋め尽くし。そこに協奏曲のソリスト席のようにチェロの山本さん。
 木管の楽しい旋律で物語の開始。
神奈フィルの管は、いつも軽やかでいいんです。
やがて錯綜しつつも、オーケストラは騎士・チェロ殿の登場を準備するのだけれど、ここまでは手探り感もややって先走り感もあり。
こんな長い序奏的な導入部を聴きながら出番を待ちうけるって、緊張するだろうな。
そしていよいよ、ドン・キホーテの登場。騎士道精神に燃え使命感あふれる登場というよりは、山本さんらしい、優しくスマートな騎士の登場。
やや音が乗ってないな、と思ったのもつかの間、ヴァイオリンソロとの掛け合いで、アイコンタクトをとりつつ、石田コンマスが山本ドンキを盛りたて、鼓舞するような気合のこもった弾きぶりで、完全リラックス。そして、ここからすべてが決まりに決まる。
 やっぱり、石田氏はすごい。全体の空気を見通して、オーケストラやソロをリードしてゆく天性の何かを持ってる。指揮者も心強いし、楽(笑)です。

それと魅惑的だったのが、柳瀬さんのヴィオラのつややかで美しいこと。
ヴィオラの音色ってこんなにきれいだったかしら、とつくづく感心。
CDや音源ではあんまり気にしてなかったこの曲でのヴィオラの存在。
その魅力を引き出したシュトラウスの筆の冴えも素晴らしいが、こうした名手にかかると、気がつかずにいたものが引き出される思いだ。

山本さんのチェロは、雄弁さというよりは、その繊細さと爽快さ、そして、お人柄がにじみ出たような温厚であたたかな音色が魅力に思ってます。
だから、ドン・キホーテが随所で、いろんな思いにとらわれて考えにふけったり、独白する静かな場面がとっても味わいが深く、最後の人生を回顧する場面では、ドン・キホーテの見果てぬ思いとその死を優しく包み込むような絶美のソロを聴かせていただきました。
ここで、わたくしは涙ぐんでしまったのです。
オケのみなさんも、完全に感情が入ってて、感動しながら演奏してるのがわかったし、聖響さんも感極まってるのがわかった。
こんな素晴らしい演奏を聴かされちゃったら、そりゃもう拍手もできません。
静寂ののちに沸き起こった拍手は、それはもう盛大で温かいもので、私もブラボー一声献上いたしましたよ。
山本さんと聖響さん、抱き合ってハグしてます。

聖響さん、終始ノリノリの指揮ぶりで、こんなイキのいいのは、あの青春譜のようなマーラー以来。あれこれいじくりまわさずに、素直な音楽造りに徹していたことがいい。
だって、シュトラウスの音楽って完璧に書かれすぎているから。
あとは、楽器の強弱のバランスをもう少し工夫して欲しいところか。
でも、対向配置は、シュトラウスの音楽で効果バッチリ。観て、聴いて面白い。
やはり聖響さんは、後期ロマン派から近現代ものがいいみたいだ。
 そしてなんといっても、神奈川フィルのきらめく音色は、シュトラウスにぴったり。
またしても思い出すのは、シュナイト翁とやった「死と変容」と最高に美しかった「最後の4つの歌」の陶酔境でございます。

神奈川フィルにも吹く厳しい風を吹き払うかのような、素晴らしい演奏会。
メンバー全員が、ソロを盛りたて完璧に一体となった親密なる演奏。
それを束ねた、石田コンマスに、気概溢れる金聖響。
いい形になってきた。うれしいよ。

Minatomirai2

お決まりのアフターコンサート。
メニュー見ずともオーダーできるくらいになっちゃった。
でも、新メニューがそろそろ欲しいぞ。

今回の定期は、われわれ懲りずに勝手に応援する会の総帥yurikamomeさんが慶事にてお休み。
目出度いお席に出席のこととはいえ、このコンサートを楽しみにしておられて、断腸の思いでございましたでしょう。
カメラも入ってましたので、この素晴らしいコンサートはいずれお聴きになれるものと安堵しております。
この会に2度ほど、山本さんにもお越しいただき、ご一緒できたことは、思えば光栄かつ素晴らしい出来事でした。
演奏に打ち込むお姿を拝見していて、その思いはひとしおでございました。

リハーサルの模様がUstream配信されてまして全曲確認できますよ。こちら

そして、神奈川フィルの活動支援のために、皆様、こちらで応援メッセージを是非ともお願いいたします。

    

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コメント

おはようございます。
2日間、充実した演奏会、羨ましいです。特に金さんと神奈川フィルのシュトラウス。「ドン・キホーテ」はまだライヴ体験がないので・・・。
僕は、昨日今日の2日間でオペラデー。
9/11は上京して初台。いろいろ考えさせられた舞台でした。今日は、大雨洪水警報が出ていますが、りゅーとぴあで「ボエーム」の演奏会形式公演を観にいきます。

投稿: IANIS | 2010年9月12日 (日) 09時31分

IANISさん、毎度お世話になります。
二日連続は、きついですが、好きだからこそです。
そして、オーケストラの私よりオペラ連ちゃんは大変ですね。
新潟方面の大雨はテレビで知りましたが、これからの台風シーズン、異常気象だけに心配です。
魔笛は、二期会の公開画像を見ましたが、カネゴンまででてきて、懐かしの円谷キャラが楽しそう。
でも・・、という気もしますが、いかがでしたでしょうか。

投稿: yokochan | 2010年9月12日 (日) 21時44分

遅くなりました、全く以って断腸の思い、悔しくて仕方がないです。
あまりに腹が立ってこの熱いレポートも全部読むのをやめてしまいました、悔しい。
それにしても、本当に、本当に、このコンビ、そして山本=柳瀬の素晴らしいパフォーマンス、いつものことながら石田の素晴らしさ。
このオーケストラを聴き続けてよかったと思われていることでしょう。
私も好評のお声を聴けて本当にそう思います。
嬉しい限りです。
ただ、聴くことができなかったのが本当に残念。

投稿: yurikamome122 | 2010年9月13日 (月) 08時41分

yurikamomeさん、こんにちは。
このところ連続してご一緒しているのに、肝心の本命が聴くことあたわず、ご心中お察しします。
 全員一丸となったオーケストラという有機的な存在の素晴らしさを、この神奈川フィルで実感できてます。
それもこれも、ご紹介くださったyurikamomeさんのおかげです。
 なにかの機会に、この演奏が聴けますことをお祈りしております。

投稿: yokochan | 2010年9月13日 (月) 12時44分

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