チャイコフスキー 「フランチェスカ・ダ・リミニ」
台風がやってきて、それはそれは大変なことなのだけれど、秋風を運んできそうで、猛暑も先が見えてきた感じであります。
もっとも暑いころ、娘と浅草に行き、甘味処で涼んだおりのクリーム・ソーダ。
クリーム・ソーダ大好きです。
ちなみに、扇子はあたしのもの。
横浜で観劇したザンドナーイの「フランチェスカ・ダ・リミニ」。
そのタイトルは知ってはいても、内容はイマイチ不明で、ましてダンテの神曲とどうつながりがあるのか、あまり気にもしてなかったことが、そのオペラ観劇で、一挙に納得・解決のすっきり気分となりました。
フランチェスカ・ダ・リミニを描いた絵画も、かなりあるようで、いろいろ調べてみたら、レコード・ジャケットで見たことあるような作品もたくさん。
ロメオとジュリエットっぽいけど、実はフランチェスカ・ダ・リミニだったりしたこともわかった。
こちらの絵は、ウィリアム・ダイスのもの。
ルネサンス期の物語らしくその時代の雰囲気がよく出てるし、三日月に金星がとてもロマンティック。
(オペラの時のパンフレットや解説書の絵は、グスタフ・ドーレのもので、奥には、ダンテとヴェリギリウスの姿もシルエットで描かれていた)
「フランチェスカ・ダ・リミニ」にまつわる音楽で、一番有名なのは、チャイコフスキーによる作品。
ダンテによる交響的幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」。
シェイクスピアの「ロメオとジュリエット」に付けた幻想序曲と対をなすような劇的かつロマンテックな音楽は、よくレコード・CDでも1枚にカップリングされていた。
許されざる愛に落ちた男女の悲劇を描いた点でも、お互い姉妹作みたいな存在。
ロメオの方が、ひと際有名ではあるけれど、こちらのフランチェスカもチャイコフスキー節炸裂で、全然負けていなくて、むしろロメオより、むせかえるような濃厚ロマンティシズムを感じさせる点では上かもしれない。
それと、ダンテが神曲で描いた地獄編の中の一篇なだけけに、地獄を垣間見たマンフレッド交響曲のような激しさと禍々しさも感じさせたりもする。
ロメオの7年後の作品で、チャイコフスキーはバイロイトに行ってワーグナー体験もしているころだけによけいにドラマテックな音楽に仕上がっている。
だいたい3つの部分でできていて、真ん中には、美男美女の不倫の恋人たちの愛の情景がやたらと濃厚・繊細・きれいに描かれていて、うっとりしてしまう。
先の絵画などを思い浮かべて聴くもよしである。
でも、最後は二人の壮絶な死であり、それはそれは劇的なのであります。
久しぶりの聴いて、とても堪能しましたよ。
許されざる愛に生きたとして、地獄をさまようとされる、フランチェスカ。
思えば、結婚相手として偽られて美男の弟パオロに会ってしまった訳で、その出会いにはまったく罪もなく、やがて本来の相手が醜男だったことを知ったとしても、一度火がついた心は冷めないもんでしょう。
ともかく可哀そうなフランチェスカなのです。
で、相手役のパオロは、情熱をどんどんぶつけてくるわけだから、いい気なもんですよ。
今日のCDは、サー・ネヴィル・マリナー指揮するところの、アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズの演奏でございます。
チャイコフスキーのこんな劇的な音楽を、マリナー&アカデミーで喜んで聴いてるヤツはおおそらく、ワタクシぐらいでしょうか。
このコンビのチャイコフスキー全集は、アバドやハイティンク、メータのそれと並んで、大好きなんですよ。
本場から遠くはなれた純西欧的なスマートで、すっきりしたチャイコフスキーに、ロシアの大地を感じることはないが、知性と詩情との巧みなバランスを強く感じる。
ロストロや、バーンスタインの濃厚チャイコもたまには聴きたいけれど、普段取り出す機会が多いのは、マリナーのような演奏なんです。
まさに、クリーム・ソーダのようなチャイコフスキーです。
次回も、フランチェスカ関連いきます
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コメント
オペラ以前によく聴いた曲で懐かしいです。「ロメオとジュリエット」「ハムレット」より好きでした。とにかく一番安いCDを買っていたもので、演奏を確認してみたところ、Guennadi Rojdestvenski the USSR ministry of culture symphony orchestra ERATO という代物でした。ちなみにロメジュリとハムレットはマゼール指揮ウィーンフィル。
絵画もたくさんあるんですね。記事の絵も素敵です。
投稿: edc | 2010年9月 8日 (水) 08時18分
euridiceさん、おはようございます。
わたしも久しぶりに聴いて、とても楽しみました。
なんといっても、オペラのように長くないのがいいです。
お聴きになられたのは、ロジェストヴェンスキー指揮のソビエト文化省オーケストラですね。
いかつい名前ですが、まさに本場ものの演奏で、いまやレアかもしれません。
絵画の方も、絵描きさんを刺激する素材なんですね。
投稿: yokochan | 2010年9月 8日 (水) 08時41分
小学校低学年まで、なにかといってはクリームソーダをおねだりしていた自分を思い出しました。
昔はデパートの最上階に大食堂があって、そこでクリームソーダを飲ませてもらったもんです。
そんなこともあって、未だにクリームソーダ大好きなんですけど、さすがに大人一人では頼めなくなっちましました(涙)。
マリナー卿のチャイコフスキー、それも「フランチェスカ・ダ・リミニ」と来ましたかぁ。
この曲で耳に焼き付いているのはスヴェトラーノフ&ロシア国立管。もう冒頭の和音から上からスライムが振ってきて、
体にまとわりつくがごときねっとり感(苦笑)。
たまにはこういうのもいいけれど・・・。
マリナー卿のものは聴いたことがないのですが、きっと何度も手に取りたくなるバランスのいい演奏なのでしょう。
9月はN響を振りますね!一つぐらい足を運びたいのですが・・・無理っぽい・・・(残念)。
投稿: minamina | 2010年9月 8日 (水) 21時22分
こんばんは。「フランチェスカ・ダ・リミニ」緩・急の差があり、20分くらいの聴き応えのある曲。十八番にしているバーンスタイン、イスラエル・フィルが初聴です。ニューヨーク・フィルハーモニック再録はエネルギーが有り余っているのか、イスラエル・フィルは弦楽器が厚く、管楽器も柔らかくてちょうどいい。曲と相性の問題もあるのかな。バーンスタインは「ロメオとジュリエット」も両オケで録音してますね。
アバド、ベルリン・フィルの「作品集」に「ロメオとジュリエット」「テンペスト」が収録され、それと同じようにバーンスタイン、イスラエル・フィルの「作品集」にも「1812年」「スラヴ行進曲」され、それぞれ3曲聴き比べができる楽しみがありますね。
投稿: eyes_1975 | 2010年9月 8日 (水) 21時26分
minaminaさん、こんばんは。
チョコレートパフェが一人では食べられなくなってしまったのと同じように、クリームソーダもオヤジひとりには手のとどかない一品といえよう。
スヴェトラおじさんのフランチェスカ、すごそうですね。
まさに地獄篇でしょうねぇ(笑)
マリナーの見通しのよい涼しげなチャイコフスキーは、とても重宝しております。
N響で、英国ものやこういうのをやってほしいのに、ベートーヴェンやブラームスですから、ちょっと幻滅・・。
でも3つ行きますよ!
一応、楽しみ。
投稿: yokochan | 2010年9月 9日 (木) 21時33分
eyes_1975さん、こんばんは。
劇的でありながらロマンテック。
ちょうどいい長さで、チャイコフスキーが堪能できる曲ですね。
バーンスタイン向きなんです。
イスラエル盤は買いそびれてもってないのですが、ニューヨーク盤は壮絶ですね。
気品あるチャイコフスキーを聴かせるアバドは、こうした曲は苦手かもです。
交響曲以外も素敵なチャイコフスキーです。
投稿: yokochan | 2010年9月 9日 (木) 21時46分
こんにちは、yokochan さん。 先日は私のブログにコメントを頂戴し、ありがとうございました♪
たまたま yokochan さんが「フランチェスカ・ダ・リミニ」にことをコメント内に書いてくださっていたので、今日の KiKi のエントリーが決まりました。 そのご報告を兼ねてお邪魔しています。 実は KiKi はチャイコのこの曲もラフマニノフのも聴いたことがありません(苦笑)
最近ではクラシック音楽関連のエントリーをあまり書いていないのでこちらにはしょっちゅうお邪魔しているのですがいつも ROM 逃げしちゃっています。 まあ、今回は曲も違うのですが、せっかくなので・・・・ということでTBさせていただきました♪ ご迷惑でなければいいのですが・・・・・。
投稿: KiKi | 2010年9月20日 (月) 16時38分
kikiさん、こんばんは。
コメントどうもありがとうございます。
「ダンテを読んで」で来ましたか!
なるほどですね。
このフランチェスカのミニシリーズ、実はリストのダンテ交響曲をもやろうと思ったのですが、「ダンテを読んで」はすっかり失念しておりました。
そのシリーズも、コンサートが入ったりで、それっきりでして、kikiさんのブログの神曲で、思いだした次第なんです。
ですから、TBとコメント、とってもありがたいです!
ダンテを読んでは、レコード時代、ブレンデル盤を聴いてました。リストのピアノ曲はハマるとかっこいいし、妙に深淵でいいですよね。
煉獄篇は、オペラではプッチーニのジャンニ・スキッキ、あとマーラーの10番などを思い起こしますが、ダンテの作品はややこしそうですね。
投稿: yokochan | 2010年9月21日 (火) 00時55分
高校生くらいの頃でしたか。FM以外には聞く手段を持っていなかった頃、この曲が聴きたくて、リクエストを送った思い出があります。確か、諸井誠さんがやっていた番組だったかと思います。
別の機会にラジオで流れまして、嬉々としてエアチェックしたことを覚えています。
岩波新書の「チャイコフスキー」にこの曲の詳しい説明があって、どうしても聴きたいと思ったんですね。
今はCDも持っておらず、長い間聴いていません。今、聴いたら、どうでしょうか…自分の今の曲の好みはだいぶ、あっさり系になっていますので、この濃厚なロマティシズムをどう感じるだろうか…。と思います。
投稿: udon | 2013年5月25日 (土) 16時01分
udonさん、こんばんは。
諸井さんの番組、ありましたね。
わたしも聴いてました。
諸井さんは、文筆もかなり面白くて、マコトニオモンロイという名前で、楽しい投稿がたくさんありました。
たしかに濃厚でダイナミックな音楽です。
ロメオは聴いても、フランチェスカは遠ざかることもありますね。
こちらのマリナーのような英国系のスマートな演奏だったら今でも聴けます。
しかし、わたしの一番の演奏は、ハイティンクとコンセルトヘボウです。
投稿: yokochan | 2013年5月25日 (土) 23時03分
ザンドナイのこのオペラ、観劇なさったんですか。流石首都圏にお住まいのクラシック・フリークのお方、頭が下がります。メットの開場百周年記念公演に、ヴェルディでもプッチーニでもなくこの作品が、レヴァイン指揮スコット、ドミンゴ、マックニール他の顔触れで、取り上げられたんです。コロナウイルス禍の中、これを機会に暫くラックで『お休み』していたディスクを味わい直すのも、優れた方策かも知れません。
投稿: 覆面吾郎 | 2020年4月 8日 (水) 09時51分
ザンドナイのフランチェスカ、素晴らしい上演で、いまでもよく覚えてます。
その後、カバイヴァンスカのCDを入手し聴いております。
いまは、世界のオペラハウスをネット巡回し、毎日1~2本のオペラ観劇の日々です。
投稿: yokochan | 2020年4月 9日 (木) 08時29分