« ショスタコーヴィチ 交響曲第12番「1917年」 ハイティンク指揮 | トップページ | チャイコフスキー 大序曲「1812年」をバカ聴きする »

2010年10月 1日 (金)

ムソルグスキー 「はげ山の一夜」ほか アバド指揮

Sashimirobataya
今日のお刺身は一見、地味で、色どりも渋いです。
白身を中心に、貝とタコ。
食べ物の色と酒って、微妙に合うようなところがあって、こんな刺し盛りだと、淡麗な辛口日本酒がいい。
マグロとか、かつおだと、ビールやウィスキーもいい。

要は、酒ならなんでもいいんです

長年飲んでると、酒にまつわる逸話がたくさんあるはずなんだけど、わたくしは、その量と酒歴からしたら、少なめかもしれない。
社会人になっての飲みは、学生時代の呑気で大らかな飲みより、気合いも入り、緊張感に満ちたものになったから、飲む量も半端ないけど、二日酔いもかなりのものだった。
独身時代は、帰らない(帰れない)日々が何日も続いたことがあって、会社のトイレで足を洗ったり洗濯したりもした(笑)。さすがに、その洗面台で水浴びはしなかったけど。
まだ酒が残っている状態で、朝、飲み屋か、喫茶店から会社に出社するわけですよ。
朝から、やたらテンション高くて仕事も乗ってて、うるさいくらい。
でも、酒臭いんですよ。
昼前には、急速に元気も萎え、トイレに籠るようになりまして、酒をまったく飲まない当時の上司に、ついにワタクシは、別室に呼ばれ、さんざん説教を受けたもんです。
でも気持ち悪くて、何を言われたかも覚えてないんです。
その人に向かって○○を吐かなくてよかった・・・・。
そんな日々が毎日。ついに上司も折れ(評価を下し)、何も言わなくなってしまったものでありました。(はははっ)
昼ごはんは、食べれません。
でも、夕方になると胃が活性化して、何かを食べたくなる。
そしてまた繰り出して、冷奴に枝豆、刺身に焼き鳥が一日唯一の食事となるのでございました。
 私のまわりには、こんな人ばかり。とんでもない業界であり、会社でございました。
その業界、いまは斜陽ですが、会社はまだしぶとく生き残ってますよ・・・・。
それにしてもおバカな社内でしたよ。
何するかと思ったら、急にデスクの横のゴミ箱に○○吐いてる人いるし、会社に泊まって重役室でパンツ1枚で発見されたヤツもいるし、やはり会社に泊まってパンツ一枚でオートロックに締め出され、新聞捲いて夜を明かし、一番出勤の女子社員に見つかり救助されたヤツもいるし。。。。。
ワタシじゃないですよ(笑)

Abbado_mussorgsky_lso
なんだか、酔っ払い記事になってしまったけれど、今週のテーマは、おわかりでしょうか。
マリナーの来日にちなんで、わたしのフェイバリット指揮者4人を、それもロシア音楽に絞って聴いてみたのです。
写真は、刺身シリーズで、おのずと酒の話に脱線してしまいました。

最後に登場は、クラウディオ・アバドでございます。
もう何度も書いてますがね、アバドを聴いて38年。
ずっと一緒にいるみたいな、朋友みたいな、兄貴みたいな、そんな感じさえ抱いている、私の尊敬すべきマエストロなんです。

そのアバドが、ほとんど異常ともいえる執念を燃やしていたのが、ムソルグスキー。
スカラ座時代に、「ボリス・ゴドゥノフ」と「ホヴァンシチーナ」を上演して、ミラノの聴衆を辟易とさせながらも、その完成度の高さにうるさいオペラゴアーも黙らせてしまった。
しかし、イタリアものは、シモンとツェネレントラばかりで、ヴォツェックやローエングリン、フィガロにボリス、ペレアスばかりを喜々として振っていたアバドは、スカラ座には収まりきらなくなってしまったのも事実。
のちのウィーンでも、同じようなことが展開され、ほんとうにアバドは渋いオペラが大好きなんです。

今日の1枚は、アバド初のムソルグスキーで、ロッシーニとヴェルディの序曲集に次ぐRCAへの録音だった。
その内容がまたチョー渋い。

  1.歌劇「ホヴァンシチーナ」~追放されるゴリツィン公の出発
  2. 「ヨシュア」
  3.歌劇「サランボー」~巫女たちの合唱
  4. スケルツォ変ロ長調
  5.「センナヘリブの敗北」
  6.交響詩「はげ山の一夜」(原典版:聖ヨハネ祭の夜のはげ山)
  7.「アテネのオイディプス王」~神殿の人々の合唱
  8.歌劇「ホヴァンシチーナ」~モスクワ河の夜明け
  9.凱旋行進曲「カルスの奪還」

     クラウディオ・アバド 指揮 ロンドン交響楽団
                     ロンドン交響楽団合唱団
                     (リチャード・ヒコックス指揮!)
                  Ms:セルヴァ・ガル
                   (80.5@ロンドン・キングスウェイホール)

まったくもって、こんな曲目で1枚のCDを作っちゃうところが、ムソルグスキー・フェチたるアバドの所以。
はげ山は、いまでこそ原典版は珍しくないが、当時はこのアバド盤が初か2回目ぐらいの録音で、ほかの曲目はホヴァンシチーナ以外は、ほとんど馴染みのないものばかり。
「スケルツォ」と「はげ山」以外は、R・コルサコフのオーケストレーションによるものの、その根クラな響きは、抑圧されたロシアの民の声そのものを反映しているようで、本当に救いのない暗さなんだ。
曲名からして、追放とか敗北とか入っちゃってるし。

アバドがムソルグスキーにさほどまでこだわるのは、以前にも書いたとおり、リベラルで平和主義者であるアバドが、ムソルグスキーの音楽がいろんな人の手で纏っていた装飾を洗い落し、原色のロシアの大地の声と民衆の心、そしてさまざまな矛盾を本来描いていた作者の真の姿を炙りだすことに執念を燃やしたからにほかならないと思う。

「はげ山」が、通俗名曲じゃなく、ほの暗いて悪魔的な雰囲気の強い作品に聴こえて、ビター過ぎて、とうてい学校の音楽の授業じゃ聴かせることのできない別物になっている。
後の第1版は、歌劇「ソロチンスクの市」の間奏として改編され、そちらの方が有名曲として長く定着してきたわけだが、原典版が出版されたのは1968年まで待たねばならなかった。
アバドは、ライブも含め「はげ山」を都合4回録音しているが、いずれも原典版。
こんな人いません。
ECユースオケ(79)、ロンドン響(80)、ベルリンフィル(93)、ベルリンフィル合唱版(95)。
荒削りな生々しい迫力にかけては、当ロンドン盤が随一かも。
なお、ベルリンフィルとは、「展覧会」とのカップリングで、はげ山とともに、2,3,5,7の各曲、さらに「はげ山」合唱付きバージョンと「ホヴァンシチーナ」のオケ抜粋を再録音していて、そのホヴァンシチーナはウィーン時代に全曲録音もあるから、いずれも複数録音していることになる。
ほんと、好きなんだから。
まだルツェルンでやってないのが気になるところ・・・・・。

|

« ショスタコーヴィチ 交響曲第12番「1917年」 ハイティンク指揮 | トップページ | チャイコフスキー 大序曲「1812年」をバカ聴きする »

コメント

今晩は。ムソルグスキー初心者の越後のオックスです。ムソルグスキーというと長い間、展覧会の絵(ラヴェル編、ストコフスキー編、アシュケナージ編)とリムスキー版の禿げ山の一夜しか聴いたことがありませんでした。最近ラザレフ指揮のボリスのDVDでムソルグスキーのオペラの面白さに開眼しました。でもラザレフ盤はリムスキー版で演奏してるんですよね。ボリスの死が最後に来るバージョンです。アバドのマニアック・ムソルグスキー作品集、hmvでまだ入手可能なようですね。原点版ボリスやホヴァンチシナともどもじっくり聴いてみたいと思います。

投稿: 越後のオックス | 2010年10月 1日 (金) 23時36分

越後のオックスさん、こんばんは。
わたしのムソルグスキーは、同じようなもので、あとグランド・オペラ風ボリスぐらいでした。
 ムソルグスキーの真の姿を見せてくれたのがアバドをおいてほかなりません。
草葉のムソルグスキーは、アバドに感謝しなくてはなりませんね。

投稿: yokochan | 2010年10月 1日 (金) 23時53分

はげ山の一夜。結構ですな^^さまよえる様は本当にアバド卿をお好きなんですね。80年代の録音は私の世代には「新しい録音」という意識が強いのですが、30年前の出来事になります。改めて驚きです。はげ山といえばどうしてもディズニーのファンタジアの画像とストコフスキーの演奏が第一に思い出されます。その後、デュトワのオシャレな演奏も好きでしたが、恥ずかしながらアバドのはげ山はまだ聴いておりません。
モナコの10CD!最高です。車で聴きまくっています。かなり著作権を無視したセットです。スタジオ録音のものとライブ録音のものがゴチャゴチャになっています。おもしろい^^モナコ教皇の信者である私には心から楽しめるセットです。

投稿: モナコ命 | 2010年10月 2日 (土) 20時51分

こんばんは。私が手元にあるアバドの「はげ山の一夜」はソニーのベルリン・フィルです。通常リムスキー=コルサコフ編曲に比べ、合唱入りが大胆ですね。ゲルギエフ、ウィーン・フィル。デュトワ、モントリオール響は「展覧会の絵」「はげ山の一夜」は同時収録です。ロストロポーヴィチ、パリ管。オーマンディ、フィラデルフィア管。サヴァリッシュ、バイエルンといったものもあります。ちなみにストコフスキーが「ファンタジア」とは別に編曲したのもあり、こちらはロシア勢も真っ青。
また、ムソルグスキーの「展覧会の絵」で私が持ってるのはアバド、ベルリン・フィルがウゴルスキのピアノとカップリングです。現状ではラヴェル編曲とピアノのカップリングで出てるのが多く、カラヤン、ベルリン・フィル(初録)がベルマン。プレヴィン、ウィーン・フィルがブレンデル。メータ、ロサンゼルス・フィルがアシュケナージ。これ以外にラヴェル編曲、ピアノ曲なら他にもあります。
某局の「何これ○百景」ではないが、「ムソルグスキー○百景」はアバドに決まり。

投稿: eyes_1975 | 2010年10月 2日 (土) 22時03分

モナコ命さん、こんばんは。
アバドは、本文にもありますように私のアニキなんです。
嬉しいときも、辛いときも、いつも聴いてました。
この「はげ山」は、あの通俗はげ山とは、まったくの別物ですので、機会がありましたらお聴きください。

モナコ10CDは、聴きでがありますね。
50年経過しても、著作権をクリアしてるか不明の音源ですが、録音もよくて、剛毅な歌声に酔いしれることができます。
やはり、すごい歌手でした。
最近のヤワな歌手なんて足元にも及びません・・・・。

投稿: yokochan | 2010年10月 2日 (土) 23時47分

eyes_1975さん、こんばんは。
はげ山は、実はあんまり好きな曲ではなかったのですが、アバドの原典版を聴いて、そちらのみ聴くようになってます。
4回も録音する執念は、それはすごいものがありますね。
従来版は、どうも生ぬるくて聴く気になれません。

あと展覧会も、かつてはよく聴いたものですが、いまやさつぱり。
聴いてて醒めてしまうのです。~歳なのでしょうか・・・・。
でも、アバドのふたつの展覧会は、ラヴェルの存在を感じさせない渋いもので好きな演奏です。
ピアノのオリジナルも、大昔、ワイセンベルクを聴いたのみで、驚くべきことに、いま調べたら1枚も持ってませんでした(笑)
まさに、○百景はアバドのみのワタクシでした(笑)

投稿: yokochan | 2010年10月 2日 (土) 23時54分

こんばんは!リヒテルのお返事ありがとうございました。

私の愛するショスタコービッチが言ったとされるお言葉・・・
「ウォッカには2種類しかない。ひとつは旨いウォッカ。もうひとつは凄く旨いウォッカ」

要するに
「要は、酒ならなんでもいいんです」ってことでして、彼もお酒は大好きだったようです。

投稿: さすらいの写真屋さん | 2010年11月 1日 (月) 00時29分

さすらいの写真屋さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

ショスタコーヴィチのウォッカ証言、名言でございますね!

あの訳のわからない謎の証言より、ずっと真実を語っております(笑)
そして、おっしゃるとおり、酒ならなんでもござえれ、なんでもいいんです、よね!

投稿: yokochan | 2010年11月 1日 (月) 23時44分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ムソルグスキー 「はげ山の一夜」ほか アバド指揮:

« ショスタコーヴィチ 交響曲第12番「1917年」 ハイティンク指揮 | トップページ | チャイコフスキー 大序曲「1812年」をバカ聴きする »