神奈川フィルハーモニー定期演奏会 イシイ=エトウ指揮
横浜の土曜日は雨だった。
横浜ジャズプロムナードが開催されていて、街のあちこちでジャズライブが行われていて、とても賑やか
人も普段の土曜日より多いみたいだ。
でも、みなとみらいホールはちょっと人が少なめ。
もったいないことだ。
気持ちのよい朗らかな演奏が聴けたのに。。
コープランド 「エル・サロン・メヒコ」
ヒナステラ ハープ協奏曲
Hp:篠崎 和子
ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界から」
キンボー・イシイ=エトウ指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
ゲストコンサートマスター:山本友重
(10.9@みなとみらいホール)
南北アメリカにまつわる音楽を集めた洒落たプログラムでした。
当初は有名名曲を中心に据えたプログラムに、最近よく目にする不思議な名前の日系指揮者ということで、あんまり気乗りしないコンサートだったのに・・・・。
ところがどっこい、冒頭のコープランドからして、オーケストラから明るく、明晰な響きを巧まず引き出すブレのない本格指揮者に目を見張ることにあいなった次第なのです。
人懐こいメキシコ民謡の歌わせ方、リズムの取り方、いずれも見事なものです。
ダイナミックレンジの広い10分程度のこの曲が、こんなに楽しく聴けたのは初めて。
帰宅後、手持ちの新旧バーンスタイン盤を聴き比べてみたけれど、そちらはリズミカルだけど、歌わせ方が濃厚で、重心も低く感じた。
昨日のエトウ&神奈フィルの軽やかで弾む演奏の方がよいぞ!
管のソロの皆さんも輝いてましたし、兄弟共演となった山本さんのコンマスのソロも美しかったであります。
ところで、エトウさんと呼んで、いいんですかねぇ?
パンフレット等の写真で見ていたのと大違いの親しみ溢れるナイスガイ。
友達によくいるタイプって感じです。
次いで黄金色に輝くハープが中央に据えられ、オレンジの鮮やかなドレスの篠崎さんが登場。
そういえば、彼女のこのヒナステラの演奏、出光音楽賞の受賞で「題名のない音楽会」で見たし、録画した記憶ありますよ。南米ムードあふれる、すっごく印象的な音楽だったと。
で、その印象はさらに高まったと同時に、小柄な彼女が一たびハープを抱きかかえると、もう乱れ弾きのようにジャラン・きらリン・シャラシャラと見て聴いていて、そのパワーと没入感に圧倒される想いだった。
忘れられようもない1楽章の特徴的な旋律で突き進む1楽章は、打楽器が楽しいし、おっとびっくり、ハープもその木の部分を手のひらと、拳で、交互に叩いているし。。
この楽章の後半は、曲は急に静まり静かに終わるのだけれど、その雰囲気のままに、神秘的な第2楽章へ。
これはなんだか、南米の森の中の静かな湖面を見るかのような気分。
ハープの長大なカデンツァで篠崎さんの繊細かつ鮮やかなタッチのソロが堪能できた3楽章冒頭。(いや2楽章の終りなのか、どちら??)
ハープの涼しげなシャワーを浴びるようだった。
一転して明るく開放的になるが、こちらは、オケがいろんなことやってて楽しい。
ハープもオケの一員のように、鍵盤楽器か打楽器かと思えるくらいに溶け込んで、大盛り上がり。ズドンと一撃で突然の終結。
いやぁ、楽しかった。素敵なハープを聴かせてくれた篠崎さんにブラボー。
そして、前半にこうした日頃聴くことのできない演目を並べた指揮者・オーケストラを大いに讃えたい
いまさら「新世界」、されど「新世界」、やっぱり「新世界」は名曲だった
手垢にまみれてしまったように感じてしまい、有名曲には不感症になっていたイケナイわたくしの初心を呼び覚ましてくれたような素晴らしい演奏でした。
第1楽章から、私の心は懐かしい想いと、この曲を初めて聴いたときの新鮮な想いに満たされたのです。
多くの方がきっとそうであるように、クラシックに目覚めた曲の一つが「新世界」。
小学校のときだから、もう40年以上も前のことですよ。
ケルテスとウィーンフィルのレコードを聴いたときのこと、その時の感動が、急に甦ってくるなんて。
エトウさんの奇をてらうことのまったくない素直な音楽づくり。
本格的でありながら、実は細かなところに目も行き届き、内声部の充実にもよく心がけていてまとまりが実によい。それでいて、出てくる音の清々しいこと。
神奈川フィルの持つ繊細で美しい音色をすんなりと引き出しているところも素敵なのです。
このオーケストラとの相性はばっちりのようで、評判も上々のようです。
オペラ指揮者としての素質が、オケのまとめ方、歌わせ方、どこにも溢れてます。
過激演出の多いベルリン・コーミッシュオーパーの常連だし、マグデブルク劇場の音楽監督に就任も予定されている実力派。
オーケストラとしては、しっかり押さえておきたい指揮者のひとりですな。
1楽章は繰り返しも行っていたけれど、早めの爽快テンポで40分くらいの演奏時間は決て飛ばした感じはなくって、歌うところはしっかり歌っていたゆえに大昔に聴いたムーティ日本デビューのときのようなスッ飛ばしたイメージはない。
ラルゴのイングリッシュホルンの名旋律を聴いて、はからずも涙があふれてしまったわたくし。弦が各部4人から、最後はトップによる四重奏となって静かになってゆくところも、やたらと感動してしまってどうしようもなかった・・・。
痛快な3楽章に次いで、出ました明るく前向きな想いにさせてくれるかっこいい終楽章。
終わって欲しくないと思いつつ、回想録のようにして曲を閉じ、余韻に浸ろうと思ってたら、指揮者がまだ手を降ろしてないのに、間髪いれずのバカブラボー。
これはいけませんねぇ。
アフターコンサートでも話題になって、妙に盛り上がりましたよ。
でもそんなことも忘れさせてしまう、気持ちのいい「新世界」、そして素敵なコンサートが聴けて幸せなのでした。
いつものように、いつもの場所で、いつものものを飲み、いつものものを食べる。
でも、今日はちょっと違うぞ。
初めてお越しいただいた方と、復帰された方、そして可愛いおまけつき
いいコンサートのあとは、お酒も本当においしい。
怒りながら飲むのと全然違う(笑)
このところ、神奈川フィルは正解続き。
神奈川フィルを応援する署名アンケートも11万を超えたということです。
ベイスターズも横浜に残ることがほぼ確定だし、なんだか嬉しいではありませんか。
ランドマークのジャズライブ。
4時から飲み始めて、まだ8時前。
気分よろしくもう一軒。
前から行きたかった、野毛にある焼き鳥「若竹」。
こちら、まじ、うまいですよ。
正しい麒麟の瓶ビール、普通の日本酒を燗して、次々に出てくる焼き鳥の数々。
あぁもう、幸せ。
辛味噌で食べる手羽なんて、もう最高!
みなさん、最後までお付き合いありがとうございました。
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コメント
先だって、一見の客でお邪魔した者です。またまたお邪魔させていただきます。リピーターといったところでしょうか。HNがなかなか思いつかなくてすみません。
篠つく雨のせいなのか、馴染みのない曲目がのせられていたせいなのか、はたまたあまりにも定番のメイン演目のせいなのか、P席から見渡す会場は、ぱらぱら。例によってリハーサルから、今回は成り行きながらも皆勤参加の私は、のっけから「世の中にはみすみす宝を逃す者のなんと多きことよ」と嘆いていたのですが、終演後には益々その思いは強まりました。
リハーサル初日はソロなしのハープコンチェルトの練習の際、以前一時、よく聴きまわしていたメストレのアルバムの中の一曲が、これであったと気づきました。その中でも特にお気に入りの曲、作曲者の名を「ジャインアステラ」と間抜けに読み違えていた(輸入盤だったもので、ライナーノーツには日本語なし、いわんや発音記号をや)ヒナステラのコンチェルトを、いよいよ生で聴ける!ということだけでも心臓は高鳴ったのですが、イシイ=エトウ氏のユニークで気さくで、自然体でピュアな人間性、リハーサル中は団員さんも常に笑いが絶えず、ほとんど「キンボー先生劇場」状態。それでいて、頭脳明晰でなければできない無駄のないリハーサル運び、さらにディテールの微妙なニュアンスにも目配り心配りがゆきとどき、丁寧に細やかに音づくりをしながら、常に大局を見ることを忘れない。言ってみれば「木を見て森を見ない」どころか、「木をみて森をイメージ」しながら、さらに「森をみて木を植える」作業を繰り返しながら曲の世界を創り上げていく手法に、すっかり引き込まれてしまいました。
その3日間のあれやこれやが見事に収斂されての本番の演奏。こちらはあたかも森林浴を愉しむような心地で、ただただ音の響きに心身を委ねて居りました。
『そのりて』には、「自らの民族的なルーツを意識していた作曲家の名作を一つのプログラムにまとめた・・・」とありましたが、日本人の血と魂をDNAに潜めながら、アメリカという、今や旧き新世界を自国とするイシイ=エトウ氏だからこそ、想い馳せ、具現してみせられる曲の鼓動、血潮であったかとも思えてきます。
本当に貴重な体験をさせていただきました。
知名度もキャリアもまだまだこれからなのでしょうが、とっても魂がピュアな方というのは、派手さはなくてもいつかは広く愛され、認められ、信頼され、重んじられる存在になるもの。
そうなったときに、「マエストロ・イシイ=エトウさん、今までで心に残る演奏会といえば?」と問われて、「2010年10月9日午後(日本時間)にヨコハマ市のみなとみらいで行った、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会です」と答えてくださったとしたら――と、そんな妄想に駆られておりますところです。
投稿: リピータです | 2010年10月10日 (日) 19時21分
やっぱりいけばよかったかなぁ・・・。
前日の初台、シュトラウスの舞台がどうも引っかかってしまっていて。その上に翌日の雨。14:00の芸劇、18:00の国際フォーラムCと立て続けに聴いて、げんなりしてしまいましたが、どうもみなとみらいが気になっていけません。次はなんとか横浜に参じます。
(追)ベイスターズ、ほっとしてます。ジョニーがピッチング・コーチだそうで。慶賀。
投稿: IANIS | 2010年10月10日 (日) 20時02分
わたしはヒナステラをその出光賞で生で聴くことができましたが、本当にいい曲ですよね。第3楽章なんかちょっと伊福部っぽい。篠崎さんも大好きな曲なんだそうで、その時も見事な演奏でした。
いっぽうのキンボーさんは、モートン・グールドのアメリカンシンフォネットを目当てに今年のサマーフェスタミューザへ足を伸ばし、ゲネプロと本番を聴いてその明るくのりのよい音楽性に好感を持ちました。
このコンサートは「新世界」がどうかなあと思っていたのですが、よい演奏だったようで、これから要注目のひとりですね。
投稿: 白夜 | 2010年10月10日 (日) 22時06分
リピーターさま、こんばんは。
今回も臨場感あふれるコメントどうもありがとうございます。
リハーサルの様子が実によくわかりました。
客演ですと、短いリハーサル時間で自分の音楽を作りあげるのがきっと大変だと思っておりましたが、優れた指揮者は、オケも楽しませつつ、本番に向けて完璧に仕上げてゆくことができるのですね。
オーケストラからは、再登場の要望が出ていると聞きました。
さもありなんの、素晴らしい音楽性を秘めた指揮者ですね。
忙しい土曜日にギリギリに横浜にたどり着き、あやうく「宝」を見逃すところでした。
リピーターさまのご意見・妄想に100%賛同いたします。
大阪のオケに先んじらてしまいましたが、神奈川フィルの常連になって欲しい指揮者ですね。
遠からずひっぱりだこになりそうなイシイ=エトウさんです。
ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2010年10月10日 (日) 22時08分
IANISさん、こんばんは。
観劇ツアー、お疲れさまでした。
充実の3連ちゃんでしたね。
私の方は、毎度の飲んだくれで、日付が変わるころにようやく帰還。
それほど、気分のよくなる演奏会でした。
次回は是非、横浜を組みこんでください。
というか、ミューザもありますね。
ベイの件は一安心のうえに、ジョニーのコーチ就任の話。
喜ばしいことです。
しかし、聖響の離婚はなんとも・・・・。
投稿: yokochan | 2010年10月10日 (日) 22時16分
白夜さん、こんばんは。
コーポランドもよかったですが、ヒナステラは曲とともに、健気な篠崎さんのハープが楽しめる聴きものでした!
どう呼んでいいのかわからないのですが、とりあえずエトウさん。
エトウさんの新世界は純で新鮮な聴きものでした。
ミューザでは都響を指揮したんですね。
日本の各オケでも人気があるようですし、ドイツのポストでは、マーラーやイタリアオペラを指揮するようです。
楽しみな指揮者がまたひとり生まれました。
投稿: yokochan | 2010年10月10日 (日) 22時31分
どうも先にコメントをいただいてしまい申し訳ありません。自宅ではなんやかやとなかなか時間が思うに任せず、しかも昨日、一昨日と休日出勤の日々、腰痛と睡眠不足に悩まされておりますが、まぁそれも一時期ですからせいぜい今を楽しむことといたします。
ところで、いいコンサートで楽しかったです。なんと言っても神奈川フィル、このオーケストラの美しいところを総動員して神奈フィルパワー炸裂の、このオケを聴き続けた身としては本当に嬉しい(と言うかこれは実は現田さんの役目だと思うのですが)コンサートでありました。
民族色やらノスタルジーやら、言えばいろいろ文句を言いいたい人もいるでしょうが、まぁ黙ってこの音楽を聴いてご覧なさいな、ダンナって感じですよね。かといってそのへんが足りないわけでもなく、音が綺麗すぎてちょっとその陰に隠れただけ、どこかの国のオケのように爆演系の大きな音をダイナミックに出すわけではないけど、この本当に繊細な美音オケの歌心とデリカシー、輝くような音のシャワーに酔いしれた幸福なひとときでありました。
その後の焼き鳥の美味しかったことと言ったら。
焼き鳥もまた行きましょう。
投稿: yurikamome122 | 2010年10月11日 (月) 08時42分
yurikamomeさん、おはようございます。
いいコンサートが聴けて嫌な雨がまったく気にならない1日でした。
名前とお顔と、有名曲ということで妙な抵抗感を持ってた自分が情けなく思えたのもこのコンサートです。
いい指揮者が、オーケストラの持ち味をしっかり見極め、ホールに美音をまき散らしたって感じですね。
鬼門はまだいくつかありそうですが、次回以降の神奈川フィル演奏会、ますます楽しみになってきました。
千葉在でありながら、こちらのオケと野球チームを飛び越して横浜に行く価値がますます高まってきました。
とはいえ、ニューフィル千葉は一度聴かねばと思っているのですが・・・。
またあの焼き鳥、是非!
投稿: yokochan | 2010年10月11日 (月) 09時54分
エル・サロン・メヒコ!
私はこの曲を、長らく
「エル・サロン・ヒミコ(卑弥呼)」という名の
日本の曲だと信じてました。
真相(?)を知った時、
なんと恥ずかしかったことか・・・!笑
神奈フィルの応援署名、ホームページを見たのが
遅すぎて(9月30日で締め切りだった)
書きそこなってしまいました。(-_-;)
ベイスターズもお金が無いなら
署名運動すればいいのに。
投稿: 恋するオペラ | 2010年10月12日 (火) 23時32分
恋するオペラさん、こんばんは。
「エル・サロン・ヒミコ」ですかぁ・・・、失礼ながら笑えてしまいますよう(笑)
しかも、なんだか、田舎の美容院みたいで!
わたしも、そんな恥ずかしい思い込み外語、たくさんありますよ。
しかも、歳とると修正できないんですよ(悲しい。。)
神奈フィルの署名は、とりあえず〆切り、また第二弾を行うらしいですよ。
ありがたみが薄れそうですが、そんなことでオケが元気に存続できるのならガンガン署名します。
その節は是非よろしくお願いします!
ベイは、へたすりゃ、募金運動になりかねない勢いでしたね。
でも今日のニュースでは、お金持ち企業が赤字解消をうたってましたので、なんとか一息です。
投稿: yokochan | 2010年10月13日 (水) 00時14分