NHK交響楽団定期演奏会 プレヴィン指揮
公園通りのPARCOの今年のイルミネーション。
タコみたいな、メリーゴーランドみたいな不思議物体。
赤いりんごが周囲にあったから、りんごの木の株かも。
でもパルコのサイトを見たら、マジョルカ マジョルカという新しい香水をイメージしたものなんだそうな。
この中に入ったら、その香りを味わえたかもしれませぬ。
わたしのようなオヤジ一人では、まずは不可能な行為でございますな。
相変わらずの人混みに辟易としたあと、これを見て少し和んで、NHKホール。
武満 徹 「グリーン」
ガーシュイン ピアノ協奏曲ヘ調
プロコフィエフ 交響曲第5番
アンドレ・プレヴィン 指揮とピアノ NHK交響楽団
(2010.11.13@NHKホール)
武満・ガーシュイン・プロコフィエフとプレヴィンらしい演目が並んだ今宵の定期。
オケが出てきてびっくり。
まろ様こと、篠崎さんがオケのメンバーと一緒に早くも登場。
でもセカンドに座り、堀さんが後に登場。
そう、本日は、ダブルコンマスの豪華布陣だったのであります。
そして、まさにプレヴィンの魅力を味わうプレヴィン・コンサート。
これで自作があれば完璧だった。
ガーシュイン1925、プロコフィエフ1945、武満1967。
それぞれの作品の作曲年であるが、それぞれに20年の経過がある。
近代ものの場合、その時代の響きを聞き取るのも楽しいこと。
ジャズの要素と本格クラシカル音楽を融合しアメリカ音楽の独自性を打ち立てたガーシュイン。
第二次大戦末期のソ連といういびつな体制の中で、戦勝ムードとともにむかえられたプロコフィエフ。
高度成長期に差し掛かっていた日本のクラシカル音楽を世界に認めさせることとなる武満徹の初期作品。
ほんと、よく考えられたプログラムであります。
そて、そして、今回来日の最終演目であるプロコフィエフは、N響も乗りまくって、まったくナイスな名演となりました!
この曲との付き合いは長く、中学生時代にサージェントのレコードで開眼し、大学時代は、FM放送をたくさん録音して、毎日聴きまくったものだ。
チェリビダッケ、コンドラシン、カラヤン、マゼール、バーンスタインなどなど。
そして、音盤ではロンドン響とロスフィルのふたつのプレヴィン盤も愛聴しているのです。
難解なモダニストから、平易でシンプルな作品を作る作曲家になったプロコフィエフの5番は、メロディが満載で、リズミカルでもあり、盛り上がりにも欠けていない。
プレヴィンは、この曲のそうした聴きやすさをさらに増すようなかたちで、山場をいくつも作りながら楽章間のインターバルを少なめにして一気に聴かせてくれた。
わたし的には、レコ芸の月評で大木氏に散々の酷評を浴びてしまった旧ロンドン響盤が、メランコリックでありつつ、颯爽としていて大好きな演奏なのであるが、今回のN響とのものは、そうした要素は備えつつも、より自在で繊細さが出ているように感じた。
N響の実力が実はモノをいっているように強く感じ、オケのパワーと緻密さには舌を巻いてしまったのです。
プレヴィンは、そのN響の力を信頼して、小さな動きで大きな音から、繊細きわまりない音まで引き出すことに成功している。
前にも書いたとおり、首が悪いことから、足腰に支障が出てしまっているプレヴィンの腰かけての指揮は、極めてわかりにくい。
しかし、その眼力の鋭さは横で見てるとスゴイものがあって、優しさと厳しさのないまぜになった目ヂカラは、それこそ、クレンペラーばりの域に達しているのではないかしら。
ことさらに素晴らしかったのは、第3楽章の深みある表現で、張り詰めた緊張感があったのがよいし、プレヴィンならではの歌の魅力も感じることができた。
終楽章の常動的な雰囲気が、最後、一気に弾けて終わると、ホールはブラボーの歓声に包まれました。
プレヴィンの指揮に奉じるN響メンバーの熱演たるや、なかなかのものでありました。
演奏後、しばらく立つことのできないプレヴィンを堀コンマスが助けて、客席ににこやかに応じる姿に、私はプレヴィンをずっと聴いてきてよかったと心から思った。
前半の、武満作品は、まるでメシアンのように聴こえた。
美しく、どこまで浸っていたい音楽のたぐい。
最後の最後の数秒で、曲の雰囲気が変わって、終わってしまう。
プレヴィンは、あっさりと指揮棒を置いたが、わたしもふくめ観客はあまりにあっけないので拍手ができず、プレヴィンが何か言ってるのが静かなホールに響いたくらい。
桂曲・桂演でありましょう!
お得意ガーシュインの弾き振り。
ピアノの蓋を外し、オケに対し縦に配置したが、ゆえに、私の席(1F右サイド)では、ピアノの音はオケに埋れてしまってあまり聴きとれないのでした。
放送ではそんなことがないと思いますが、暗譜でまったく完璧にスイスイすらすらと弾いていたスイングする、プレヴィンの至芸が楽しめたのではないかと。
技巧は衰えずとも、音量が落ちたのかしら。オケのメンバーをもっと刈り込んでもよかったかも。
ピアノに埋れながらの雰囲気もある指揮だったので、絶対オケからは見えない場面も多々あって、堀さんが、弓や体で完全に指揮をしてました。
こんな風にオケに支えられながらも危なげなく、ガーシュインの素敵な曲を弾きったプレヴィン。
2楽章の小粋なブルースが、とっても瀟洒な雰囲気を出していて、思わずわたしも、まわりのご夫人方も体を揺らしてしまうのでありました。
今度のプレヴィンの来日には、オケなしで、ジャズコンサートでもいかがでしょうかね。
N響の冊子には、来シーズンの予定がちょっこし出てまして、プレヴィンは10月定期を3つ振ります。
ちなみに、9月がブロムシュテットで、11月がコウト。
次回も早くも楽しみなプレヴィンであります。
その前にN響とは、来春、全米ツアーを予定していて、武満とプロコ5番に加え、エルガーのチェロ協奏曲と、キリの引退コンサートの一環として「最後の4つの歌」を予定している。
ますます蜜月の度合いを高めている、プレヴィン&N響です。
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コメント
こんにちは(^^)/。
同じく土曜日の公演に行ってきました。
2階R席でもやはりPfは聴こえにくかったので、もっと前だったらどうかな?と思っていたのですが、同様だったかも知れませんね。
1階はかなり盛況のようでしたが、2階はかなり空席が目立ちました。演目の関係だと思いますが、個人的には大好きなプロコフィエフの第5番が聴けたのでとても嬉しかったです。
堀さんの隣に篠崎さんが座られたので、私もおおっ!と思ってしまいました。
開演前の室内楽『ティル...』がなかなか楽しく聴けましたです。
そろそろ地元(横浜)のコンサートにもデビューしようかしらん^_^;。
投稿: ぽち | 2010年11月14日 (日) 17時29分
今晩は。う、羨ましい・・・思わずこの言葉が記事を眼にした瞬間に漏れてしまいました。ブログ主様は色々な演奏会やオペラに行っておられて、そのほとんどが田舎ものの私には羨ましいものばかりなのですが、今回のプレヴィン&N響は演奏会の中では五指に入るほどの羨ましさですね。指揮者兼ソリストといい曲目といい、オケといい・・・武満は、芥川や橋本国彦と並んで私が最も好きな日本人作曲家、「グリーン」は好きな初期作品の一つ。ガーシュウィンのコンチェルトは20世紀のピアノ協奏曲の中で最も好きな曲。そして20世紀の交響曲の中でも大好物に属するプロコの5番・・・プレヴィンさん、指の調子が良くないという噂を聴いていたので難しいガーシュウィンの曲を弾き振りできるのかなと心配していたのですが、バリバリ弾いていたようですね。初めてお聴きになったプロコ5番がサージェントというのはシブイですね。チェリビダッケの音源があることは不覚にも知りませんでした。私のプロコ5番初体験は、やはり中学時代のことでアシュケナージ&コンセルトヘボウのCDでした。カラヤン、ロジェヴェン、小澤なども聴きました。マイ・ベストは几帳面で端正なのにホットなところはホットな小澤さんの演奏です。
投稿: 越後のオックス | 2010年11月14日 (日) 19時30分
ぽちさん、こんばんは。
同じ日の公演でしたね。
1階席のはじっこでしたが、満席でしたので、ホールは盛況なのかと思ってました。
渋いプログラムでしたからでしょうか。
ガーシュインはもしかしたら席にもよるかもしれませんので、放送で確認したいところです。
わたしも好きなプロコフィエフの5番。
実は初ライブ体験でして、それもプレヴィンの指揮。
おおいに堪能しました。
ゴージャスなダブルコンマス。N響さまの実力も全開というところでした。
もしかしたら、プレヴィンの要望だったかもしれません。
プログラムで、ティルをやったことを知り悔しい想いをしました。
ちなみに神奈フィルは今度はフォーレですよ(笑)
投稿: yokochan | 2010年11月14日 (日) 23時05分
越後のオックスさん、こんばんは。
そうですか、好物ばかりでしたか。
わたしもそうなんですよ。
プレヴィンは、武満作品をよく演奏してくれます。
わたしもこれで3度目です。
デュトワとともに武満作品を熱心に取り上げてくれてうれしいことです。
それとアメリカ作品に、両親の故郷ロシアもの。
まったくすばらしい、プロコの5番でした。
いろんな演奏で楽しみたいですね。
わたしは、ヤンソンスとレニングラードの若き演奏を聴きたくてしょうがないところです。
投稿: yokochan | 2010年11月14日 (日) 23時14分
二日目を聴いてきました。
プロコフィエフの5番はエッシェンバッハ=フィラデルフィア、ゲルギエフ=ロンドン響と名演を聴いてきましたが、プレヴィン指揮によるN響がそれらに勝るとも劣らない名演を聴かせてくれました。素晴らしい燃焼度でした。
お目当てだったガーシュウイン、ピアノがベーゼンドルファーでしたね。ガーシュウインにベーゼン?とびっくりしましたが、エレガントで柔らかなニュアンスが香る今のプレヴィンさんのガーシュウインを聴かせてくれたように思いました。あまり気にしていませんでしたが、昔の録音はスタインウェイだったんでしょうかね?1階センター6列、たしかに音は大きくはありませんでしたが、しっかりと聴こえていましたよ。
おまけにFMの「まろのSP日記」収録の入場券まで頂いて、今日は得した気分でございました(笑)
投稿: | 2010年11月15日 (月) 00時48分
名無しのゴンベエ、また、やっちまった(汗)
投稿: 白夜 | 2010年11月15日 (月) 00時50分
yokochanさん、こんにちは。
先週のプレヴィンの演奏会では、ちょっと意見が分かれたようですが、今回は揃いましたね!
本当に素晴らしいコンサートでした。
N響のうまさもやっぱりさすがです。
ぼくは3階R前方でしたが、プレヴィンのピアノの音は、細かいニュアンスまでちゃんと届いてきましたよ。
以前聴いたモーツァルトにも並ぶ名ソリストぶりでした。
来年の再来演、楽しみですね。
そして、その前にアメリカ公演ですか!
これは是非放送して欲しいですね。
投稿: pockn | 2010年11月15日 (月) 00時57分
白夜さん、こんばんは。 そして、ご丁寧にどうもありがとうございます。
凄演をお聴きになられた白夜さんにも、プレウ゛ィンの演奏は熱演に響かれたとのこと。まったくもって、うれしい限りですし、音源として所有したい名演でありました。
N響のやる気がひしひしと感じられました。
同様にガーシュインでの
オケの充実ぶりは見事でしたが、席の関係か、よく聴こえませんでした。
ちなみに、1階R4という端っこでした。
目の前のビオラやコンバスが響きすぎでした。
このホールはやはり厳しいですね!
まろチケット、入手おめでとうございます(笑)
投稿: yokochan | 2010年11月15日 (月) 20時28分
またまた幸福な演奏会のご感想、ご馳走様です。
ブログの記事、yokochanさんの興奮ぶり伺われるような、マジな記述ににんまりしましたよ。そうそう出会うことのないこのような愉悦を味わうためにコンサートにいくんですよね。
武満の「グリーン」なんて、短すぎて滅多にやらないから余計めっけもの。それとN響が本気になったプロコ。美味過ぎます。
投稿: IANIS | 2010年11月15日 (月) 20時45分
pocknさん、こんばんは。
いらっしゃいましたか!
そして、ブラームスも。
貴記事拝見しました。ブラームスは意見が別れましたね。
しかし、今回は、誰しも納得の素晴らしいプロコフィエフでした!
嫌なこと続きの日々でしたが、結構興奮してしまいました(笑)
巨大なNHKホールは、やはり場所によってムラがあります。どうもいけません。
ガーシュインは放送が楽しみなところです。
で、同様に来年も楽しみなプレヴィンですね。
アバドも、ひょろっと来てくれませんかねぇ!
投稿: yokochan | 2010年11月15日 (月) 22時17分
IANISさん、こんばんは。
嫌なこと続きでしたので、余計に興奮しました。
しかも、N響ダブルコンマスなんて、めったに遭遇できないVIP指揮者待遇ですからして。
さすがに、こうなるとN響さまも全開。
忘れえぬプロコとなりました。
願うことなら、もう一度、グリーンとガーシュインを聴いてみたいところです。
美味しすぎてすんませ~ん。
投稿: yokochan | 2010年11月15日 (月) 22時47分