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2010年11月 6日 (土)

NHK交響楽団演奏会 プレヴィン指揮

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NHKホール前、代々木公園にかけてお祭り状態の本日。
これから、コンサートに行って、秋のブラームスを聴こうというのに、すごい人混みと屋台の呼び込み。
毎度ながら渋谷からのサイテー行程も含めて、NHKさまのホールは厳しい立地にございます。
ですがね、上を見上げると、都心でもこんな秋があったんです。


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      ブラームス     交響曲第3番
                   交響曲第4番

          アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団

 で、アンドレ・プレヴィンNHK交響楽団の演奏会を聴くのでした。
今年で8回目となるNHK音楽祭の一環。
テーマはドイツ3大Bで、今宵のプログラムは、ブラームスの交響曲がふたつ。

まずは、苦言ひとつ。
いち早いブラボー野郎に。NHKホールでもありましたよ、アナウンスが。
余韻を楽しみましょう」と上品に控えめに。
でも、そんなことはおかまいなしに待ってましたとばかりの、ブラボー。
生放送収録中だけに張り切っちゃったのか。
静かに終わる3番に間髪いれずに、終楽章が感動の名演となった4番でも、同じ方や他の蛮声もともなって。
感動の表明なんだろうけど、曲の内容や演奏の質からして、ちょっと違うんじゃなかろうか?
プレヴィンの到達したしみじみとした境地のブラームスに、もっとゆったりと浸っていたかった。

コンサートにこんなリスクがあるなんて、なんだか嫌やだなぁ。
プレヴィンやN響の面々は最初苦笑いしてましたよ。
でも肝心の本編は、味わい深い演奏だったのでありました。
アナウンスは、上品に言わずに、もっとはっきり言わなくちゃだめですよ。


1年ぶりのプレヴィン
また小さくなっちゃった。
若い頃から猫背だったけれど、首が悪くて腰にもくる。
同年代の元気な指揮者からしたら、ほんとにお爺さんみたいで、指揮台の椅子の昇り降りもやっとこさ。
椅子に腰かけ、机の上に置いた譜面台のように見える楽譜に顔を突っ込んだようにしながら指揮をする姿も、さらに歳を感じさせる。

でも元気です。
あのわかりにくい、打点のない、こねくるような指揮は相変わらずのプレヴィン・モードで、慣れてないオケだと出れない。
しかし、さしものN響も、3番も4番も、出だしは手探りの感じで雰囲気を掴むまでしばしを要したように思えた。
さらに途中、気の抜けたようなか所もなきにしもあらず。
明日は、もっとよくなるかもしれない。

3番では牧歌的な第二主題、4番では主部のあとすぐ。
持ち直しは、旋律的な歌いどころ。
英雄的なんてまったく無縁な柔らかな第1楽章の3番。
続く2楽章と3楽章の、心持ち早めのテンポで流れるように進んだ場面は、ビューティフルなプレヴィン・ワールド。かつてなら、評論家受けはきっとよくないと思わせる柔な雰囲気。
でも、それがいま、とても心を開放し、多感となったわたしたちの心に迫ってくる。
音楽の受容も、世の中、時とともに変わるのであります。
終楽章も威圧感や闘争心はまったくなく、あっさりと迎える静かなエンディングは澄みきった雰囲気に急に満たされたんですが、あのブラボーが・・・・。
この曲は、ロスフィルとの来日公演で演奏し、NHK放送もあったもの。
レコーディングはありません。

4番は、プレヴィンが完全に、自分のものにした曲。
ロイヤルフィルとの桂演やN響とのかつての演奏などでお馴染みのお得意の作品。
後ろから見るプレヴィンも、この曲では大きく見え、指揮棒の振幅も大きい。
そして、左手の拳を上げる、昔からお馴染みのポーズも座りながらに出していて、そうした局面では、N響がほんと、鮮やかにかつ敏感に反応していて、繊細さから強打まで、レンジも広く、プレヴィンの音楽の特徴の一面をしっかり出している。
流麗な1楽章に、絶品の静謐な2楽章。
すっきりとした3楽章は、打楽器は控えめ。でも勢いはしっかりある。
次ぐ、パッサカリアは、淡々とすすめながらも、随処に熱がこもっているのがよくわかり、オーケストラが没頭して演奏しているのもよくわかった。
さりげない、指揮棒のひとこねくり。左手の抑え。猫背ながらも、オケを見渡す鋭くも優しい目は、斜め後ろからでもしっかり確認できました。
名指揮者は、やはり目がものを言ってます!
この終楽章が終りの方に向かって、テンポを抑えながらも、熱を帯びてゆくさまは、聴いていて涙が滲んできた。
その無為の高まりに、最後の最後で、心の底から感動がやってきた。
名演奏家がオケを動かし、背中からオーラを発し聴衆を惹きつけ、ホール全体を独特のムードにしてしまう。

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プレヴィンはプレヴィン。健在でありました。

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コメント

今晩は。マエストロ・プレヴィン、健在そうでよかったですね。私が始めて聴いたブラ3がプレヴィン&ロスフィルのエアチェックと録画したビデオでした。高校時代のことです。プレヴィンさん、第1楽章提示部で眼鏡を落としていました。あれは猫背だからなのですね。エアチェックしたテープもビデオも引越しした時に無くしてしまいました。惜しいことをしました。ノリントン&ロンドン・クラシカルプレーヤーズやベルグルンド&ヨーロッパ室内管のような室内楽的で小編成のアッサリブラームスが好きになった最近の私ですが、ブログ主様の文章を拝読してプレヴィンのブラームスが久々に(本当に久々に)聴きたくなりました。放送されるのが楽しみです。

投稿: 越後のオックス | 2010年11月 7日 (日) 00時55分

遂に天下のNHKもアナウンスしたんですね~。

ブラボー屋を記事にしたら、いろんなコメントが来てしまって、閉口してたところです。
昨日も「もっとほかの観客に寛容になっては?」という方がいましたが、本当に「寛容であるべき」なのだったら、「あの」NHKホールまでが「余韻云々」のアナウンスをするでしょうかね?

ブラームス。私、大好きなんです☆
3番の3楽章の「か~ねが~、な~いよ~」の弦の物悲しい使い方なんて典型的ブラームスですよね。派手に盛り上がる高揚感のかわりに、じわ~っと身体の中に沁みわたるような、あの感じがたまらないです。。涙があふれる気持ちがよく分かります。ブラームスがオペラを書けなかった理由も分かる気がします。オペラ好きとは思えない反応?笑

投稿: | 2010年11月 7日 (日) 01時13分

失礼しました。恋するオペラです。名前書くの忘れちゃった。。(^_^;)

投稿: 恋するオペラ | 2010年11月 7日 (日) 01時14分

越後のオックスさん、こんにちは。
元気そうなプレヴィン、まずはうれしかったです。
優しい眼差しのブラームス。
難しいことを言わずに、このきれいなブラームスを楽しめばいいのでした。
ロスフィルのものは、CDR化しましたが、映像はモノラルで、ビデオもイマイチの映りのものですが、持ってます。
しかし、どこにあるかわからない山積み状態です(笑)
あげられた演奏、ご嗜好がよくわかりますね。
 テレビ放送を期待ですね!

投稿: yokochan | 2010年11月 7日 (日) 11時43分

恋するオペラさん、こんにちは。
NHK様もあの無粋なアナウンスをやるようになりましたよ。
お客さんからのクレームも多いじゃないでしょうか。
私自身もどこのホールでも体験してます。
イタリアオペラやガラコンならいいのですが、ドイツオペラやしみじみ系の音楽にはキツイですねぇ。
トリスタンなんて、ひやひやしてしまって、音楽に集中できないということになります。神経質すぎますかね?

でも、今回のブラームス、素敵な演奏でした。
確かに、「か~ねが~、な~いよ~」・・・、ですよね。
これから、ここを聴くと思いだしてしまいますよ(笑)

投稿: yokochan | 2010年11月 7日 (日) 11時50分

あー、やっぱりこちらの公演、行かれていたのですね!
実は私もチケットを所有しておりまして、行く予定であったのですが、
「あの方」のコンサートとかぶってしまったのであります。
友人もNHKホールに参戦していたので、川崎から駆けつけようと思ったのですが、
サインをもらったらもうすでに5時前。泣く泣くあきらめた次第です。
アフターコンサートだけでも(あれば?でしたが)ご一緒したかったところです。

プレヴィンのブラームス、さすがだったようですね。
自然体で、飾らずひたすら音楽と対峙する、あのプレヴィンなのでしょう。
ロス・フィル公演はTVで見た記憶があります。冒頭で指揮棒振ってたら腕がめがねに当たっちゃって、
ずり落ちちゃったりしませんでしたっけ?
そんなシーンだけ、やたらに覚えたりしております(笑)。
次週は武満にガーシュインとプロコフィエフですか?!これは行きたいところですが、
先月今月と散財してしまったからなぁ・・・。

投稿: minamina | 2010年11月 7日 (日) 11時54分

minaminaさん、こんにちは。
あー、やっぱり、あの方のコンサートに行かれてたんですね。
先日来の「あの方」めぐり、頭が下がる思いです!
まぁ、人のことは言えませんが、音楽好きの悲しい定めにございますねぇ。

プレヴィンはまだまだいけそうです。
過去の人ではないと確信できました。
次の定期も楽しみですし、あと1年の首席客演の任期、次が早くも楽しみです。

投稿: yokochan | 2010年11月 7日 (日) 15時55分

こんにちは。
3番のブラボーは1階最後尾か2階最前列のL席側で、私は席が比較的近かったので、アレを聞いた途端にびっくりしてしましました。

4番では、第2楽章でしばらくコンビニの袋とおぼしき物をバリバリ~やっている親爺がおりまして、そこから先はあまり覚えておりませんです。
(その親爺の席番だけは覚えておりますが^_^;)

演奏は良かったですねー。
Hrがちょっと厳しかったかしらん。でもあまり気にならなかったですよん。

来週がまた楽しみです(^-^)。

投稿: ぽち | 2010年11月 7日 (日) 21時47分

ぽちさん、こんばんは。
あのブラボーは、2階席ですね。
1階にいた私は、上から来た声に右上方を振り返りましたから。。。
 ぽちさんは、コンビニ袋親父攻撃に会われましたか。

N響は、ちょろちょとやらかしておりましたが、演奏の流れのよさに、まったく気にはなりませんでしたね。
私も、次回定期を楽しみにしております。

投稿: yokochan | 2010年11月 7日 (日) 22時01分

初めまして!先ほど自身の記事をアップしまして、minaminaさんのリンクから飛んできましたが、なんと、冒頭の写真からしてまったく同じようなことを感じていらっしゃる方がいるとは!驚きです!!
それにしても、演奏はやはり素晴らしかったですね~。そして、ブラヴォ~も豪快でしたね~。3番で、あれはないかな?とわたしも思いましたが…
出来れば、ウィーン・フィルでシュトラウスなども聴いてみたいものですが!
また、お邪魔します。

投稿: 武蔵野の風 | 2010年11月 7日 (日) 23時24分

武蔵野の風さん、こんばんは。
そしてはじめまして。
minaminaさんも、こちらのチケットをお持ちだったとか。

代々木公園の紅葉と空はきれいでしたね。
あの柔軟なプレヴィンのブラームスにぴったりでした。
この際、あの喧騒と豪快ブラボーには目をつぶることにしましょう(笑)
せっかくウィーンフィルも日本にいるのですから、共演が実現するとよかったです。
メタモルフォーゼンなど最高でしょうね。
来年にまた期待です。
今後とも、どうぞ、よろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2010年11月 7日 (日) 23時54分

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