ヘンデル 「メサイア」 マリナー指揮
横浜みなとみらい、クィーンズモールのツリー。
港街にかもめが飛んでます。
お隣のみなとみらいホールのパイプオルガンのクリスマス音楽の演奏に合わせて、鮮やかなツリー・パフォーマンスが行われるのでした。
このツリーを見たあと、お隣で神奈川フィルの定期。
心に沁みるフォーレのレクイエムを聴いたのでした。
あちらは、死者と残された人々を優しく包みこむ音楽。
クリスマスにレクイエムや受難曲は禁物かもしれないけれど、フォーレのそれは、その音楽ゆえにいいのかもしれない。
そして、本日は、この時期ならではの定番を。
ヘンデルのオラトリオ「メサイア」。
わたしが学校で習ったときは、オラトリオは聖譚曲と呼ばれてた。
オラトリオというよりは、そうした邦訳の方が宗教色が強く感じる。
同様に、この「メサイア」のタイトルも昔は、「救世主」とされていた。
それぞれがそう呼ばれなくなって、この作品が本来持っている、イエス・キリストの生涯を描いた宗教物語的な要素がかなり後退して、その音楽のよさのみが際立つようになり、より一般化したのも事実でありましょう。
それと英語による歌唱も、親しみやすさを後押ししてます。
3部形式のイエスの生涯。
Ⅰ「預言と降誕」、Ⅱ「受難と復活」、Ⅲ「栄光と永遠の生命(救いの完成)」
ゆえに、クリスマスに限れば、第1部のみで事足りるわけで、この時期に「メサイア」を聴く意義は、イエスを思い、その生き様を考えてみよう~的なことにあるわけだ。
そうした意味では、受難節や復活祭において、イエスを思い聴くことも充分ありなわけです。
無宗教な日本においては、ヘンデルの平明で伸びやかな音楽を中心にすえて、歌詞の中身や宗教観などは二の次にして聴くのもいいのかもしれない。
この曲が初演されたのは、1742年4月13日、アイルランドのダブリンの音楽堂でのこと。
その初演から250年を経て、同じダブリンで、その同じ日に演奏された記念コンサートのライブ録音が、本日のマリナー指揮によるCDであります。
こちらは映像も残されていて、NHKで放送もされました。
S:シルヴィア・マクネアー Ms:アンネ・ゾフィー・フォン・オッター
CT:マイケル・チャンス
T:ジェリー・ハドレー Bs:ロバート・ロイド
サー・ネヴィル・マリナー指揮
アカデミー・アンド・コーラス・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
Tp:マーク・ベネット Cemb:ジョン・コンスタブル
Org:イアン・ワトソン
(1992.4.13@ダブリン、ポイント劇場)
豪華歌手陣を配したこの演奏。
いま聴くと、18年の歳月は長く感じるかもしれない。
いまや古楽器を用いてもより洗練された鮮やかな演奏を普通に聴けるようになったけれども、こうした従来通りの演奏方法によるものこそ、わたしには新鮮でかつ懐かしく感じる。
なにも猫も杓子も、ピリオドしなくったっていい。
豊かな表情と、マリナーらしいキビキビした細部にこだわらない流れのよい感性豊かな演奏がこうしてとてもうれしい時がある。
イギリス由来の作曲家としてのヘンデル。
そして英国音楽としての伝統のうえに則っているかの様式美を描きだしたマリナー。
でも、そこはマリナーとその取り巻きの学究者。
少なめのヴィブラートで、表情が誇大になることや劇的になることを抑えつつ、歌うべきは歌い、締めるところはしっかり締め、実にソツなく全体を見通して演奏してます。
かつてのイギリスやアメリカでの、大オーケストラによる壮麗・劇的な演奏とは完全に一線を画していて、明快のそのものマリナーは、そう、いつものマリナーなのでした。
「ハレルヤ」に豪奢な響きを期待しちゃうと裏切られます。
軽やかで、かつ生真面目なくらいに楽譜を忠実に音にしたみたいなのです。
これもまたマリナー卿。
録音がちょっと潤い不足で、フィリップス録音も他流試合風なところが画龍点睛を欠くところか・・・・。
歌手はみんな立派です。
とりわけ、マクネアーとオッターのピュアな歌声は、混じりけのないおいし飲料水のようで、実に清々しい。
カウンター・テナーにいくつかのアルト歌唱の部分を配分しているところがユニークで、M・チャンスはまったくもって見事なものだけれど、オッターひとりでよかったかも・・・。
故ハドリーはやや歌い過ぎ、R・ロイドはやや不安定感を残すも、こちらは、さすがの品格が漂う歌唱。
わたしが一番好きな部分を、厳選してあげると。
1.シンフォニアとそのあとのテノールのレシタテイーヴォとアリア。
9.メゾのアリアと合唱「高き山にのぼれ」
12.合唱「ひとりの嬰児うまれたり」
13.田園曲と14.ソプラノと合唱による聖夜のくだり
18.ソプラノとメゾの二重唱
21.メゾのアリア「彼は侮られ・・・」
43.ソプラノのアリア「われは知る・・・」
46.バスのアリア「ラッパは鳴りて!」
51.「アーメンコーラス」
とかいいながら全部好きなんですな、これが。
百花繚乱の「メサイア」演奏。
皆さんは、どの演奏がお好きですか?
こちらは、新宿のミロード。
ミロードとサゼンテラス。いずれもブルー系の美しいイルミ。
ツリーっぽいものだけ、賞味期限の関係で公開しときます。
ほかは冬の景色として、いずれ公開してまいります。
LEDの普及で、初期投資は大きいものの、電気代が少なめでランニングはコスト減となっているはず(?)。
一番いいのは、球切れがなくなり耐用年数が伸びたこと。
でも、主催者側はいいけど、毎年毎年、同じものを見せられることになるわけでもありますな。
これはなんとも言えません。
クリスマスおめでとうございます
| 固定リンク
コメント
こんばんは。「メサイア」はピノックから聴き始めましたが、今年、マリナーがデッカ録音したものも入手しました。アメリングのソプラノです。
ピノックの古楽器は勢いがありますが、マリナーになるとふっくらした奏で方になります。
どうやら十八番のようですね。
クリスマスが土曜日のせいか、都心は賑やかでした。
今年も残り少なくなりましたが、やはり、救世主が必要なのでしょう。
毎年のことですが、来年はハレルヤと行きたいです。
投稿: eyes_1975 | 2010年12月25日 (土) 22時30分
eyes_1975さん、こんばんは。
そしてクリスマスおめでとうございます。
ピノックのメサイア、軽やかでいいですね!
マリナーのデッカ盤は、レコード時代、スルーしてしまったもので、いまだに聴いてないのですよ。
マリナー好きとしては、けしからんことですが、一度は聴かずはおきませんね。
フルオケのゴージャスなものから聴き始めた、わたくし。
古楽系では、ピノックとガーディナーから入りました。
でも、マリナーの普遍的な演奏には魅力を感じます。
救世主は、いつの世にも待望論が出ますが、ほんとうはもう来ているような気もします。
その姿を見れる世になって欲しいですね。
投稿: yokochan | 2010年12月25日 (土) 23時59分
こんばんは。
この演奏はDVDで持っています。
生真面目な指揮姿が、演奏そのものを表していて非常に面白いです。
話は変わりますが、爆演堂さんで買ったマリナー指揮:ストラスブールPOのCDが期待以上によかったです。お薦めですよ。
投稿: ナンナン | 2010年12月26日 (日) 02時16分
マリナー卿の演奏はまだ聴いていません。興味ありありです。このメサイアも次のヘンゼルとグレーテルも演奏したことのある曲なので、いろいろレコードを聞き比べた記憶があります。私はどうしても最後のアーメンコーラスが好きなのです。私のような素人に受ける曲です。
クリスマスプレゼントにオヤジギャグをひとつ。
問題です。視力が衰えてきたら「ハレルヤ」コーラスを歌うといいんだそうです。
はい、さまよえる様、答はわかりましたね^^;
投稿: モナコ命 | 2010年12月27日 (月) 18時17分
ナンナンさん、こんばんは。
映像はNHKのものを録画してあります。
まさにマリナーらしい指揮ぶりでしたね。
物足りないと感じる人もありましょうが、わたしには満足の演奏です。英国です。
ストラスブールですか。
よく見つけましたね。いい演目だし、あと、シュットガルトとのベルクも気になるところです。
投稿: yokochan | 2010年12月27日 (月) 21時30分
モナコ命さん、こんばんは。
アーメンコーラスは、この大作を締めくくるに相応しい素晴らしい合唱曲ですね。
実際に演奏したら、ここまでたどり着いて、感動しまくってしまうんでしょうね。
ヘンゼルも、オケの部分に聴かせどころが多いですから、演奏しがいもあるというものですね。
ギャグのプレゼント、どうもありがとうございます。
検索フレーズ、第2位に「老眼境をかける ついに」という不可解な言葉がランクインしてまして、いったいなんのことだろうと思ってました。
もしや、こちらのコメントが引っかかったのでしょうか?
実に不思議なのであります(笑)
で、その答えですが、老眼境で視界がハレルヤですかねぇ・・・、うーーん、なんだかすっきりしませんねぇ・・・。
投稿: yokochan | 2010年12月27日 (月) 22時08分
さまよえる様、オヤジギャグの正解を発表します。
視力が衰えてきたら「ハレルヤ」を歌うと視力が回復するそうです。
そのこころは?
「ハレルヤ」は「メサイヤ」(目さ良いや^^)
おそまつ!
投稿: モナコ命 | 2010年12月28日 (火) 21時17分
モナコ命さん、こんにちは。
オヤジギャグをかましていただき、ありがとうございました。
さすがのワタクシも、正解は見出せませんでした(笑)
秋田入ってるところが実によいですねぇ!
ふむふむ。
また次のギャグを期待しております!
投稿: yokochan | 2010年12月29日 (水) 17時36分
今年もあと少しになりました。
今年はクラヲタ様のブログに出会えて、わたしの偏った音楽生活に違った光がさして、掘り起こす部分や新しい見方が出来た部分が増えて、とても嬉しかったです。
こちらのブログを訪れるきっかけになった辻裕久さんが、ヘンデルの「エイシスとガラテア」のエイシス役で出られます。
1月13日に浜離宮朝日ホールにて行われる
こうえんです。
ヘンデルが英語に付曲した初期の作品ながら、その後、彼のライフワークとなるオラトリオの、原点ともなった傑作です。
当日、6台のカメラが入り、世界に生放送中継されるという注目度だそうです。
チケットは辻裕久さんのホームページからお求めになるのが一番良いようです。
ご興味がお有りでしたら、お出かけください。
私?!
もちろん出かけます。
良いお年を!!
そして来年も素晴らしい記事をお願いいたします。
投稿: madahiyoko | 2010年12月31日 (金) 21時55分
madahiyokoさん、こんばんは。
年が明けてしまいました。
旧年中は、弊ブログをご覧いただきありがとうございまいした。
そうですね、辻さんのコンサートにコメントをいただいたのが初めてでした。
もう半年がたち、ヘンデルのオラトリオの演奏会になったのですね。手帳にはしっかり書いてありました。
都合がつき次第でまいりたとは思っております。
今年も頑張ってblogします。
辻さんの出演機会もできるだけ押さえていきたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
投稿: yokochan | 2011年1月 1日 (土) 00時26分