神奈川フィルハーモニー定期演奏会 金 聖響指揮
「みなとみらい」にあるオブジェ。
軽やかで美しいマーラーを聴いたあとに、河岸を変えるべく移動中の17時でございました。
薄暮の水辺は美しいのでした。
モーツァルト ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調
P:菊池 洋子
マーラー 交響曲第4番 ト長調
S:大岩 千穂
金 聖響 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(2010.1.22@みなとみらいホール)
昨年から続く金聖響&神奈川フィルのマーラー・シリーズ。
そして、モーツァルトの最後のピアノ協奏曲とマーラーの短いが優しさと死の影に満ちた交響曲との組み合わせの妙。
聖響さん、古典・ロマン派系の音楽では、ついつい辛口になってしまうけれど、後期ロマン派、ことにマーラーに関しては手放しで誉めたたえてしまいます。
今回の交響曲第4番もそう。
歌うことに心がけた、気持ちのよい演奏で、指揮者もオーケストラも、マーラーの音楽にほどよく没頭していたところがよろしく、少しばかり醒めていたところも私にはうれしかった。
曲にあまりのめり込まずに、ある程度客観的に、さらとりした中に、マーラーの「歌」を解放してしまったようで、濃厚マーラーが辛い時には、金さんマーラーは耳に心にとても優しいのです。
演奏の精度はさらに上を求めたくなるけれど、わたしはこんな素敵なマーラーが、横浜の地で聴き続けることができることに、「大いなる喜び」を感じる。
それとともに、美音の神奈川フィルという個性あるオーケストラのマーラー、それを無理なく引き出す聖響さんの素直なマーラー、日本中に誇れるものとなっているのではないでしょうか。
かつてわたしがマーラーを聴き始めたころ、交響曲第4番は「大いなる喜びへの讃歌」というタイトルが付いていた。
それは、最後の楽章の天上の歌ゆえのことだが、4楽章という古典的な形式へのパロディでもあり、2楽章のような奇矯な姿と深淵さを見せる3楽章、歌曲のひとつのような終楽章という多面的な存在の交響曲。
軽やかだけれども、大きく深呼吸するようによく歌い込んだ第1楽章は、オーケストラの各パートも充実して楽しい聴きものでした。特にフルート陣とオーボエが見事。
第2楽章。調性を変えたヴァイオリンを持ちかえての石田コンマスのソロは、やはり素晴らしく、音楽が引き締まるし、われわれ聴衆の集中力も高まる繊細さと鋭さを併せ持ったもので、トリオとの対比も鮮やか。
私の大好きな3楽章。
2と3の楽章の間で、ソプラノ独唱を入れると思ったら、そのまま3楽章に入っていった。
どこで出てきて、どの立ち位置になるんだろう??
正直、気になってしょうがなかった。
あの素晴らしいピークがこの楽章にあるもんだし、4楽章へはアタッカで入るわけだしで・・・・。
まぁ、そんな思いはともかく、この神妙かつ絶美の音楽は、神奈川フィルの音色の魅力を堪能するのにうってつけ。
対抗配置が威力を発揮したのもこの楽章。
チェロによる夢見るような旋律。ビオラと第2ヴァイオリン、第1ヴァイオリンによってゆるやかに広がってゆき、天国的なまでに美しい場面が展開されてゆくのでした。
オーケストラのソロ、パート、すべてがマーラーの音楽に感じ入って聖響さんのもと、演奏してるのが見ていてよくわかった。
休憩時間に、飲んだビール(モーツァルトが素晴らしくよかったもんで、むちゃくちゃ旨かった)のせいか、ただでさえ涙もろいワタクシですから、この楽章のクライマックスの前、ビオラと第2ヴァイオリンがやたらとキレイに歌う場所(聖響さんも、ここでは思い切り振りかぶって指揮してました)ではまたはらはらと涙が・・・・。そして最高のピークを築く。
そしたら、しずしずと天使のようなまっ白いドレスで、大岩さんが登場して、指揮者の真横のソリスト席に立ったものだ。
このインパクトありすぎの雰囲気に、気押されてしまったのもワタクシでした。
3楽章が始まる前に、オーケストラの奥あたりにいて欲しかったなぁ~
ともあれ気を取り直して、消えゆく3楽章を味わい、ゆるやかな終楽章へ。
木管のやわらかな響きと鈴の音がとても心地よい。
でもソロの大岩さんは、ちょっと不調だったのかしら?
やや生彩にかけ、オケの軽やかさに比して、苦しい声に聴こえたのは私だけ?
しかし、それでも終りよければすべてよし。
オーボエ主席の鈴木さんが何故イングリッシュホルンだったのか、ハープとともに大納得の清浄なるエンディング。コントラバスの残り香も最後まで深く美しい。
その余韻にしっかりと、どこまでも浸ることができました。
われわれ、聴衆も素晴らしい。
1曲目の、モーツァルトもそれはそれは美しいモーツァルトでございました。
何よりも菊池嬢の澄み切った、混じりけのないピアノの音色が素晴らしい。
モーツァルトのK595の協奏曲は、ともかく大好きな曲なのだけれども、すごく深い音楽というイメージが若い頃、どうも某評論家先生から植え付けられてしまって、自分ではめったやたらと聴くことがない曲になっていた。
しかし、このように若々しくも陰りのない演奏で聴けば、そんな難しい思いを抱くことなく、なんのことはない、いつものモーツァルトが微笑んでいたのでした。
そして、モーツァルトだからツツツィーッと来るだろうという予想に反して、そこそこかけられたヴィブラートが心地よく、冒頭からして、かつての神奈川フィルの音色があったのでした。
これはまた嬉しいモーツァルト。
演奏会終了後は、新年の恒例乾杯式。
こんな様子です。
「拍手が来ないでよかった」と金さんも嬉しそう。
それでもまだ外は明るい。
いつもの仲間と、楽員の方々と、オーケストラ事務局の方々とも楽しくお話することができました。
アフターコンサートは、ベイサイドを横切って、横浜地ビールの飲めるビアレストランにご案内いただきました。
ちょっと影になっちまいましたが、濱麦ラガー(瀬谷区産の大麦使用)と綱島・桃エール(綱島産の桃使用)の2種類でもって乾杯。
うまぁぁぁぁぁ~っ
撮った写真を編集してみました。
食事はどれも美味しかったけど、ピザ各種は最高でしたね。
右上のチョコレートスタウトはできたてホヤホヤの新作。
チョコレートの甘さというよりは、ほどよい苦みがうれしい味でした。
よいお店をご紹介いただきありがとうございました。
皆さん、毎度お世話になりました。
次のマーラーは、5番です。
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コメント
聖響さんのマーラーは好評ですよね。
次回の5番を聴きにいきますよ。
初めて聖響さんを体験します。今回の4番か、5番かどちらかで迷ったんですが、聴き馴染んだ5番でと判断しました。楽しみにしています。
投稿: ナンナン | 2011年1月24日 (月) 02時22分
どうも先日はお世話になりました。
アフターは飲みすぎたらしく、なんだか終わりの頃はあまり記憶もなく翌日二日酔いで、朝えらく叱られました。
いいコンサートでしたね。
神奈川フィルのマーラー、そして聖響さんの情熱と誠実さを感じる演奏だったと思いました。
私も実は自分の中のマーラーの4番とはちょっと違うと思うのはアフターでもお話したとおりです。
でもこういうのもアリかなと、この演奏世に出してもいいのではないかと、そう感じております。
このシリーズ、このオーケストラの成果としてぜひ残したいです。
それからyokochanさんの某プロジェクトもお力になれることがあれば何なりとお申し付け下さい。
こんな楽しいオケ、その場限りが演奏の宿命とはいえもったいなさすぎだと思います。
それにしてもよく飲みました。
投稿: yurikamome122 | 2011年1月24日 (月) 13時27分
ナンナンさん、こんばんは。
いまのところ、聖響マーラーは好調です。
これからだんだんと難題にぶつかるかもしれませんが、このままの勢いで9番まで行って欲しいと願っております。
初金さん、期待してください!
投稿: yokochan | 2011年1月24日 (月) 21時26分
yurikamomeさん、こんばんは。
ほんと、よく飲みましたね。
ビールばかり、あんなにたくさん、ずっと飲んだのは、生涯初めてです。
わたしは、もう叱られることもないくらいに存在無視の我が家でございます・・・。
それでも翌朝でも、マーラーの響きは残っておりました。
4番の姿は、またもっと別な顔もあるとは思いますが、今のこのコンビならではのマーラーではなかったでしょうか。
聖響さんが、さらに歳を経たら、もっと違うマーラーを聴かせてくれるんでしょうね。
これからのものも含めて、いずれのマーラーもしっかり頭の中に記憶しておきたいです。
例のプロジェクトは多難ですが、その節は是非ともお力添えいただきたく存じます。
投稿: yokochan | 2011年1月24日 (月) 21時47分
先日はお世話になりました。
ビールの写真良いですね~。頂きます。
ビール党には夢のような世界でした!
夢といえば、あのマーラーでは別世界に連れて行かれていました。
あぁ美しい…。
今までの濃厚なマーラーはいったい何だったのでしょうか。
正統的なマーラーとは何ぞやについてはまだまだ語れませんが、とにかく感動すればいいと思います!
聖響さんには、乾杯式でどなたかが言っていた“日本を代表するマーラー指揮者”という肩書きはまだまだでしょうが、今回のような演奏をどんどん生み出して成長していってもらいたいですね!
2月、3月も楽しみにしています。
投稿: syllable | 2011年1月24日 (月) 23時45分
syllableさん、こんばんは。
最後までずっとビール。
あんなにビールばっかりだったんは人生初かもです。
夢のようといえば、コンサートの続きのようでもありましたね。
時代の流れで、マーラー演奏も変わってゆきますが、このコンビは先端を走っていって欲しいと願ってます。
とはいっても、これから深まる番号に不安もなきにしもあらずです。
でも楽団側も自慢したくなるマーラーですし、ファンとしても誇りたいですね!
投稿: yokochan | 2011年1月26日 (水) 00時29分