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2011年2月20日 (日)

神奈川フィルハーモニー定期演奏会 金聖響 指揮

Minatomirai1

だんだんと、春の近づくのを感じる土曜の昼下がり。
神奈川フィルの定期公演の日でした。
横浜駅東口からのんびり歩いて、みなとみらい地区に。
このずっと先がクィーンズモールの中庭。
みなとみらいホールもすぐです。

Minatomirai2

いよいよ中盤の佳境に入った、聖響&神奈川フィルのマーラー・シリーズ
最大の人気曲にして、マーラーの交響曲のターニング・ポイントともいえる第5番。
ここからは声楽がなくなって、オーケストラだけの純粋交響曲ながら、マーラーの心情はますます複雑に。

Kanagawaphill201102

    モーツァルト   ヴァイオリン協奏曲第4番

              Vn:南 紫音

    マーラー     交響曲第5番 嬰ハ短調

       金 聖響 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
                      (2011.2.19@みなとみらいホール

手始めは、モーツァルト
大曲を後に控えて、小手ならしのように聴こえてしまったのは、ちょっと地味な4番のせい?
ソロの南紫音さま。とってもいい名前です。
モーツァルトに相応しく、ともかく清々しいヴァイオリンでキリリとしていて、どこか微笑みも忘れないすてきな音楽を聴かせてくれましたね。
聖響さんとときおり微笑みつつアイコンタクトしてたし、オケの皆さんもリラックスしていたのがよくわかりました。
喜遊的な曲だから、あれこれ考えずに素直に聴けたし、この演奏でよかったのではないかしら。
メインは・・・、次という聴き方になってしまったけれど、マーラーを聴く前に肩の力が抜けたような気もしましたね。

休憩時間にアルコール注入。
いやでも、マーラーの第5に対する期待と思い入れが高まる。

この曲を聴いて35年。
マーラー受容歴のなかでも長いですが、80年代、狂ったように聴きまくり、実演経験もやたらとある曲。
でも、聴き過ぎてかえって遠ざかっていた曲でもありながら、ここ数年でまた熱が戻ってきたかのように聴きまくっている曲なのだ。
終りよければすべてよし。
最終楽章の晴ればれとしたエンディングを聴いてしまうと、それまでの艱難辛苦は嘘のように消え去ってしまう。
実演におけるこの曲の良さは、そこにあって前半にどんなことがあっても最後で挽回することができるし、聴き手も熱狂の渦におのずと巻き込まれてしまうのだ。

まさに、そんなマーラーの第5の特質にぴたりとはまりこんだのが昨日の聖響&神奈フィルの演奏。
終楽章のロンドフィナーレは、手に汗にぎり、ドキドキのしまくりで、ジェットコースターに乗せられアップダウンにはらはらしながらも、めくるめく超感動的な晴れやかななエンディングを迎え、わたくしも興奮の坩堝に誘い込まれたのでした。
金さんの若さ爆発で、汗だくで、もう夢中になりながらの指揮ぶりは、正直、ワタクシも驚き、そして心打たれましたよ。
こうでなくっちゃ。
音楽にいれこみ、すっかり入り込んじゃってるんだ。
石田オレさまコンマスも、終楽章は、何度も腰が浮いて、ほぼ立ち上がり状態!
オケの皆さんもノリノリの大熱演でございました!

終りはこうして超素晴らしかった。

でも、わたしのわずかな不満は、1と2のふたつの連続するシリアスな楽章と奇矯な3楽章。
マーラーの切実でペシミステックな音楽に、どこか外側から対峙しているように聴こえてしまった。
5番あたりから感じる死の影と、人間存在の弱さの表出といったものを感じ取ることができなかったから。
でもそれは極めて贅沢なはなしで、いまある聖響さんが神奈川フィルと一体化しつつあるという結実を思うと、まったく喜ばしくも素晴らしい演奏で、時を経ればきっともっと深化するに違いない部分なのかもしれない。
前から思っているとおり、熱いけれど、少し醒めたところのあるマーラーが、彼らの持ち味なのだし。

それにしても、マーラーの5番はどこもかしこも素晴らしい曲だ。
実演で、奏者の皆さんが必死に、そして気持ちよさそうに演奏している姿をつぶさに見るにつけ、そう思う。
冒頭トランペットは見事に決まったけれど、この曲のライブによくあるように完全始動まではやや時間を要する。
2楽章の後半の弦の熱いユニゾンは全員、体を揺らしながらの大熱演。このシリアス場面昔から大好きなんだ。
3楽章の長大なスケルツォは、オケの各パートの名技性が光った。
ホルン(森さん)の艶やかさ、柳瀬さんと山本さんの中声部の存在感と、そこに第2Vnの小宮さんも加わったピチカートの思わぬ強靭さ。
3番の3楽章もそうだけれど、この曲の3楽章は長くて、繰り返しの連続もあるからとりとめがなく、かつ名人芸も披露しなくちゃなんない。真ん中だし息切れしちゃうし。
難しい楽章です。
聖響さん、小細工せずに、よくまとめてましたが、前後のバランスにおいて将来ひと工夫が必要でしょうか。
4楽章は、神奈フィルの弦の美音を真近で聴いて、どこまでも、いつまでも浸っていたくなるような美しさでございましたね。
管はお休みだけど、皆さん一緒になって仲間の奏でるアダージェットに聴き入ってました。
そして、終楽章は先のとおり。
最後まで、オケのどのセクションもよく聴こえ、見通しがよくクッキリした響きで、これは神奈フィルの美点でありましょう。
エンディングとともに、大ブラボーの嵐でございました。

終楽章の興奮のまま、アフターコンサートでは、横浜発の美味しいビールを飲みまくり。
皆さん、毎度お世話になりました。
二次会のビールもまた、趣きが違っておいしかったです。

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前回もお連れいただいた、「駅(うまや)の食卓」。
醸造所で飲むんです。
何種類いただいたかわからない。

Yokohama_umaya2

県内産の食材ばかりを使った料理も、どれも優しく麦酒に合います。

Yokohama_umaya4

なんてきれいな泡でしょ。

マーラーはきれいなばかりじゃなくって、人それぞれに、どこか引っかかるトゲのようなものをもっている音楽だと思う。
その感じ方は、まちまち。
そのへんとところを、このあとの番号あたりから聴かせて欲しいし、自分としては、聴きとってみたいと思っております。
連続してマーラーを聴く楽しみは、そのあたりにもあるし、演奏者と聴き手がマーラーを通してつながってゆくことにもなるのだから・・・・・。



        

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コメント

こんばんは。マーラーは苦手です。
大変おいしそうなビール。当方も、今日、プシュー。
新国椿姫行ってきました。最前列真ん中。Ciofi には、感激しました。他は予想どうり、終演後大変なブーでした。豪華な舞台、共演者、オケ判付のCiofiリサイタルと思っていましたので、十分満足です。オケそのものは良い音色を出していました。3幕ヴィオレッタのアリアでも、雑音、声を出す指揮者にはあきれてしまいました。

投稿: Mie | 2011年2月20日 (日) 21時56分

Mieさん、こんばんは。
美味しいビールでした。
素晴らしい演奏のあとはおいしいです。

チヨーフィのヴィオレッタは気になってましたが、指揮者がどうも気になりました。
そしてやはりそうでしたか・・・・・。
国内オケのシェフを起用する尾高方針は共感しますが。
そうそう、お馴染みのガッロもいかんでしたか?
観劇どうもおつかれさまでした。
わたしは、マノンレスコーまでお休みです。

投稿: yokochan | 2011年2月20日 (日) 23時45分

おお、厩のビールですか。
店に入ったとたんにビール酵母が私を襲ってきて、ついつい飲んでしまいます。平日のお昼は特に危ないです。個人的にはヴァイツェンが好きです。

クラの購入はちょっとお休みです。
3月になるとラインスドルフのプロコフィエフ集が出るらしいので、楽しみに待っております。

投稿: ぽち | 2011年2月21日 (月) 13時32分

ぽちさん、こんばんは。
こちらの店はいずれも連れていっていだき2度目です。
ほんと、各種多彩な味に、飲み飽きません。
でも何を飲んだか、覚えきれないのです。
困ったもんです(笑)

ラインスドルフのプロコはその存在すら知りませんでした。
ボストンというところがいいですね。
感想をお聞かせください。

投稿: yokochan | 2011年2月22日 (火) 00時17分

いやいや、素晴らしいマーラーでした。
仰るご指摘の点もごもっともと思いましたが、こういう行き方でもあれだけの感動があるのだと、ホントに目が醒めるように鮮やかでした。
こんなマーラーが聴ける、こんな美しい音で聴ける、こんな境遇に感謝しないわけにはいきません。
そしていつもその喜びをご一緒して下さり心から感謝です。
ありがとうございます。

投稿: yurikamome122 | 2011年2月22日 (火) 22時34分

Yurikamome さん、先般もお世話になりました。
贅沢すぎる不満を述べてしまいましたが、心から感動しました。
あの美しさは、在京、いや他国のオケでも聴くことができない独特の響きだと思います。
一回ではもったいない。
なんども、聴きたい、浸りたい演奏ですね。
次回もまた、大いに楽しみです。
また、よろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2011年2月23日 (水) 07時07分

遅蒔きながら、当日はお世話になりました。

聖さん、かなり見直しました。
彼のマーラーは本当にいいですな~。
案外、あの様にしなやかでハーモニーの重なりで聴かせるマーラー演奏が僕は好きなんだなぁ、と認識してしまい(笑)

それでいて、聖さんや石田はじめとする神奈川フィルの熱のこもった力演には驚かされるやら嬉しいやら。

また、次回のマーラーに期待したいですね。

投稿: スリーパー | 2011年2月23日 (水) 13時31分

スリーパーさん、毎度お世話になりました。
聖響マーラーの素晴らしさ、こりゃ定説となりつつあるといっていいですね!
一年前の悪夢がウソみたい(笑)
かれらの演奏姿を見て、さらに感動するという、ファンならではの喜びもありますし。
次回もまたよろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2011年2月24日 (木) 18時10分

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神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第269回定期演奏会 公演日:2011年02月19日(土) 開場:13:20 開演:14:00 会場:横浜みなとみらいホール 指揮:金聖響 ヴァイオリン:南紫音 モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲ニ長調K.218 ~~休憩~~ マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調  今の神奈川フィルのそのものが最高に聴けた演奏だったんじゃないかな。  前半も後半も透明で繊細で美しいこのオケを堪能。  モーツァルトでも紫音ちゃんのさわると壊れ... [続きを読む]

受信: 2011年2月22日 (火) 22時34分

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