バーンスタイン 交響曲第3番「カデイッシュ」 バーンスタイン指揮
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夕刻だったので、明るさ不足ですが、増上寺の桜と境内から見た東京タワー。
急いで歩くと汗かいちゃうくらいの陽気。
えらい事が起きてしまってから、空を見上げたり、季節の変化を感じることがなくなってしまってました。
しかし、ここ数日の青空は眩しいし、顔が火照るくらに「おひさま」の威力を感じた。
自然の力は、人知を超えて恐ろしいけれど、でもこうしてメリハリのある季節を与えてくれる。
日本人は、苦難に耐えてこうした自然と昔から共存してきた。
われわれ民族の強さは、こうして自然にも鍛えられてきたんですね。
そんな自然に感謝するとともに、その無慈悲さにも怒りを覚えてしまう。
増上寺境内には、子供の無事成長・健康を願う千躰子育地蔵尊があります。
すごい数のお地蔵さんが並んでますよ。
この先は、徳川家の墓所があります。
かたかたと廻る風車を見ていると、寂しい思いと優しい思いとにとらわれたのでございました。
今日は、作曲家バーンスタインが残した作品のなかで、もっともシリアスな作品のひとつ、交響曲第3番「カディッシュ」を自身の指揮で。
3つあるバーンスタインの交響曲は、いずれも生真面目かつ厳しい内容だが、純粋なオーケストラ作品でもなくて、1番は声楽つき、2番はピアノソロつき、そして3番は、語りと大規模な声楽つき。
「カディッシュ」の意味は、「聖なるもの」といった意義で、ユダヤ教では礼拝の祈りの際に、必ず唱える神聖なる言葉であるとともに、死者を追悼し唱える言葉でもあるといいます。
アーメンより、はるかに重みのある祈りの言葉であることは、厳格なるユダヤ教ゆえに、容易に想像できます。
この極めて「聖なる」言葉を、交響曲のタイトルにしたことに対し、初演当時、やはり厳格なる宗派から反対があがったともいわれる。
1963年の作曲時、忘れもしないケネディ暗殺事件があり、その死へのレクイエムとされた。
そして、われわれにとって忘れられないのが、1985年の8月、広島にやってきたバーンスタインは、平和記念コンサートとして、この曲を演奏し、NHKでも放送されたが、いまでもそのビデオはノイズだらけながら手元にある。
その迫真の演奏は、広島という地でのシテュエーションとともに、映像でみるバーンスタインの祈りに満ちた没頭感あふれる姿とあいまって、涙があふれるくらいの感銘をあじわったものだ。
この音楽は、追悼という意味や内容というよりは、神との対話と、和解がドラマティックに描かれたものだと思う。
神により選ばれた民とするイスラエルの民。しかし神に失望をあたえ怒りも買い、艱難辛苦を味わう。
その神の矛盾に対する激しいくらいの祈りと懺悔。
主として語り手によって劇的に、ときにはシャウトするくらいに語られるところは、時にジャジーな歌いぶりの合唱、そして手拍子なども伴って、極めて迫真的な音楽である。
そして、3部ある曲のちょうど中ほどには、平和を与えたまえというに祈りとともに、安らぎたまえという子守唄がソプラノソロで歌われる。
この歌のリリカルな美しさは、心に滲みいります。メロディストとしてのバーンスタインならでは。
神との関係修復を強く望み祈る語り手。
そして、これまで子守唄以外、厳しい曲調が続いたが、少年合唱が神の功績をたたえて明るく歌い始め、神と人間の和解を思わせる。
最後のフィナーレは、その後アダージョから始まり、平和な雰囲気を醸し出しつつ、語りが神と人間の一体化と互いに再び新たに歩まんと感動的に語る。
「Recreate each other, recreate」
その静かな感動の高まりの頂点で、歓喜の爆発として、合唱とソプラノソロによって神の賛美がゴスペルチックに歌われ曲を閉じる。
この音楽は、希望と平和の讃歌だと思います。
CDで音だけで聴いても、相当の感銘を受けることとなります。
S:モンセラット・カバリエ 語り手:マイケル・ワーグナー
レナード・バーンスタイン指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン・ジュネス合唱団
ウィーン少年合唱団
(77.8@マインツ)
DGへの録音は、CBSへのものに続いて2度目。
カバリエの歌声の美しさには目をみはります。
録音のよさもあって、バーンスタインの唸り声もリアルに聴こえます。
佐渡裕の演奏は未聴。
スラトキンのものをあと持っているが、どうもバージョンが違っていて、よく聴き比べなくてはと思ってる。
あぁ、こうしていま書いているときに、かなり大きな地震がありました。
あのときのように長い揺れ。
もう勘弁してくれぇ。
被災地と原発に何事もありませんように。
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コメント
管理人さんこんばんは
昨日も夜中に大きく揺れ港から今まで聴い事ない不気味な大音響が夜明けまで闇夜に響き 家族も眠られ無かったです。
原因はいきなり操業止めた火力発電所の圧力放出だそうですが恐るべし音でした。
レニ―の曲は重いのから軽めのまでシリアスで演奏にも遊びが少なく技術的にも要求されるセンスもとても厳しく苦労します。
演奏者を選ぶ作品が多いですね。
投稿: マイスターフォーク | 2011年4月 8日 (金) 20時57分
マイスターフォークさん、こんばんは。
まいどありがとうございます。
大きな余震、そして即座に中継された各地の様子に不安になりました。
停電の影響とか、大丈夫でしたでしょうか?
しかし、もう、勘弁して欲しいです。
そしてレニーの複雑な音楽性をまじまじと感じさせる、この交響曲。
宗教もからみますので、相当にややこしいです。
でも、何故かレニーの生真面目音楽が好きなのです。
奏者の方々には、不評かもしれませんが。。。。
投稿: yokochan | 2011年4月 9日 (土) 00時08分