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2011年5月14日 (土)

プフィッツナー 「パレストリーナ」より ティーレマン指揮

Kanda_myoujin_7

キリスト教社会を背景とする西欧社会のクラシカル音楽。
日本の神社仏閣を崇める社会とは、趣きを異にするけれど、求道と救いを求める人々の心は一緒。

しかし、こちらは御利益の神様。
こちらは、神田明神の少彦名命(えべす様)を中心に造られた像でございます。
いうまでもなく、七福神のおひとり、商売繁盛の神様です。
イルカやくじらが、昔から大漁をもたらすとされ、えべす様も海のかなたからご来臨されたとの言い伝えから、こんな心躍るような像が造られたのであります。
芸大の学長さまの作と、あります。

願わくは、東北・関東の海に活況が戻りますことを!

Pfitzner_thielemann

今日は渋いところを。

ドイツ最後のロマン派。
いや、世紀末にあって、ロマン派の残滓を守り抜いた人。
ハンス・プフィッツナー(1869~1949)の歌劇「パレストリーナ」の3つの前奏曲。

R・シュトラウス(1864~1949)と完全に同一時期に活躍し、当時はドイツ国内で人気を二分するほどだったが、今やみなさま知るとおり。
声楽作品やオペラを中心に、交響作品や協奏曲もかなり残しているものの、その作品はあまり顧みられることがない。

二人の作曲家とも、ナチスドイツの治世のまっただ中に生き残った訳で、当然にユダヤ系じゃないところなのだけれど、シュトラウスが生真面目ながらも多くを語らず、時には批判もあえてしまくり、ついにはそれがバレて失脚してしまうのに比べ、プフィッツナーは、反ユダヤ的な主張やそう思わせる作品までも、堂々と正直に発表しまくった。

シュトラウスが、耳当たりよく、華やかですぐれた台本を得て、大衆にもわかりやすい機微にあふれたオペラをたくさん書いたのに、プフィッツナーは、その素材自体が渋くて難解なもので、その長大なオペラ作品を聴くのには難渋してしまいそうだ。

その代表作「パレストリーナ」には、クーベリック、スウィトナー、カイルベルトといった指揮者たちの全曲盤があって、いつかは制覇すべき作品と思っている。
しかも、映像で、シモーネ・ヤングもあるらしい(おそるべしヤング女史)。

16世紀のイタリアルネサンス期の作曲家パレストリーナそのひとが主人公。
時代柄、宗教音楽作曲家として活躍し、ポリフォニー様式を極めた人で、同時により自由なマドリガーレをも極めた。
宗教と世俗との両立に悩んみ、そんな葛藤が、プフィッツナーの、このオペラに描かれているといいいます。
オペラの全貌を把握するまでは、即断できませんが、比較的演奏される、ここに収めらた1幕から3幕までの3つの前奏曲は、一聴、とっつきは悪いものの、何度か聴き重ねるうちに、渋さとともに、豊かな旋律に溢れていることに気がつく。

真ん中の第2幕の前奏は、宗教会議場の場面に先立つもので、そちらは、快活ながらも少し尊大で、むしろ取りつく島もないくらいに厳しい雰囲気なんだ。
先立つ第1幕の前奏曲は、まるで「ロード・オブ・ザ・リング」のような、悠久の旅と孤高の心持を思わせるかのような、少しばかり切ない音楽。
最後の3幕前奏も、おおむね緩やかで内省的なもので、パレストリーナの静かな心境を映し出すかのような素晴らしい音楽で、このまま終幕は、どんなにか透徹した世界になるのだろうか、と想像するだに感動が走る。

3つの前奏曲が、緩旧緩というパターンになっていて、繰り返し言いますが、渋いのですが、音楽の純粋さが並々とあふれ出てきてます。
政治的・心情的なことがどうのこうのを、まったく感じることなく、旋律の美しさと、これらの音楽の持つピュアなあり方を普通に受け止めればいいのです。

ちょっと晦渋派だけれど、滔々と流れる旋律線の魅力にだんだんと気付かされることとなるプフィッツナーなのでした。

ここで指揮する若きティーレマン
ベルリン・ドイツ・オペラ管との95年の録音。
硬派なティーレマンならではの選択で、カップリングもR・シュトラウスなところがよろしい。
このCDは、大オーケストラサウンドを楽しむというより、歌いまわしの豊かさを味わうべきもの。
二人の作曲家の接点もしっかりと感じとれます。
シュトラウスの初期オペラ作品と、プフィッツナーの音楽にある共通項も多分に感じ取れます(晩年のカプリッチョだけ異質)。
それは、ワーグナーとドイツ・ロマン主義でありました。

そりゃそうと、若いね、ティーレマン。
この頃もきっと、しましまラガーシャツだったんでしょうかねぇ。

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コメント

今晩は。このCD、持っています。プフィッツナーよりもおまけについているR・シュトラウスの「グントラム」前奏曲が聴きたくて買いました。大学を卒業したばかりのころのことです。でもティーレマン指揮のグントラム前奏曲はテンポが遅いですね。個人的にはグスタフ・クーンの全曲盤に入っている演奏の方が好きです。プフィッツナーはまだろくに聴いていませんね。これからですね。

投稿: 越後のオックス | 2011年5月14日 (土) 21時56分

越後のオックスさん、こんばんは。
お持ちですか、これ。
ティーレマンの外盤はこれがデビューですが、日本ではフィルハーモニアとのベートーヴェンでした。
同時期のシノーポリとドレスデンの録音の方が、シュトラウスにおいては、上だと思ってましたが、パレストリーナとの組み合わせにおいて、同質性を感じさせる見事なカップリングという点で今回、見直しをすることになりました。
プフィッツナーは、ヴァイオリン協奏曲もなかなかのものですよ。

投稿: yokochan | 2011年5月14日 (土) 22時11分

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