チャイコフスキー 交響曲第4番 バーンスタイン指揮
まるで、ヨーロッパの大きな庭園に続くかのような通路。
でも、これ靖国神社なんです。
社会人になった頃は、会社が九段下にあって、靖国神社はすぐそば。
7月の御霊祭は終業後よくいったものだ。
今や信じられないことだけど、出し物小屋が出て、お化け屋敷もどきの「ろくろ首」や「蛇女」なんて、怪しくもまがまがしい昭和の看板が溢れておりましたね。
九段下・竹橋・神保町・飯田橋あたりが、若い頃の根城でございました。
ちょっと路地入るとレトロな店がたくさんありましたよ。
映画館もありましたねぇ~
いまや絶滅に瀕してます。
その先に立つのが「大村益次郎」の像。
日本の陸軍の創設者ということで、ここに立ってるのだけれども、わたしは、そんな強面の益次郎よりは、半農半医のように若い頃を育った「村田蔵六」としての、医師、蘭学者、兵学者としての存在の方が好きだ。
長州の村田蔵六を主人公にした、司馬遼太郎の「花神」を大河ドラマで観たのは、1977年。大学生になったばかり。
長州・薩摩・土佐・幕府・新撰組・会津・・・、それらの相関図がこのドラマでとてもよく理解できた。
眉毛を濃く太くした中村梅乃助の名演技。恋仲のシーボルトの娘イネの浅丘ルリ子。
高杉晋作の中村雅俊、吉田松陰の篠田三郎、山県有朋の西田敏行・・・・。
ともかくいまにして思えば名優たちが、幕末の個性ゆかたかな人物像を鮮やかに演じてました。
音楽も、いまだに脳裏に残る素晴らしいものでして、林光の作曲、山田一雄指揮のN響のものでした。
懐かしい名作でございます。
ついてに申さば、「勝海舟」と「翔ぶがごとく」、「徳川慶喜」あたりが大河ドラマ幕末ものの大名作でございましょう。
いずれも男のドラマでしたので、女性の方々からは異論もございましょうが・・・・。
昔話が得意なもので、お若い方、あいすいませんねぇ。
チャイコフスキーの交響曲第4番をレナード・バーンスタイン指揮のニューヨーク・フィルハーモニックの演奏で。
1989年10月の録音。
聴く前からイメージできる濃厚・情念むき出しのバーンスタインの晩年様式で埋め尽くされた演奏。
冒頭のホルンの咆哮からして、ためにためた思い入れ強いもの。
しかし、同時に早いところは普通か、むしろ早く、遅いところを遅く、フレーズの橋渡しも入念にじっくりと・・・・、そうしたことで全体がねっとりと仕上がる一方、スピード感にも欠けていないので、聴いていて辟易とせず、思わぬ興奮状態に巻き込まれることとなる。
1楽章の終結部のものすごいアッチェランドと最後にいたる大見栄。
終楽章の興奮・酩酊状態のやぶれかぶれ戦法。
レニーの面目躍如たる場面。
そしてその半面が2楽章に12分もかけた耽美的かつ情熱的な2楽章。
通常9分ぐらいのこの楽章です。
オケも大変です。
ちなみに、この曲で割とじっくり型のハイティンク盤とのタイム比較
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
ハイティンク 18分 9分 5分 8分 約40分
バーンスタイン 21分 12分 6分 9分 約48分
こんな感じです。
ヤンソンスの若い頃の演奏は38分くらいだった。
通常は40~42分くらいの長さだから、バーンスタインは異常に長い。
もっとすごいのが同じDGへの「悲愴」ですな。
でも聴いてると、独特の陶酔感あるムードに飲まれてしまって48分という長さは感じることはない。
アゴーギグが巧みなのと、ものすごい熱狂の渦が待っているし、それを期待しているから、少し奇矯でも全体を取り戻せるから・・・、バーンスタインならではです。
マーラーを代表格に、80年代以降は、音楽をバーンスタイン側に引き寄せすぎてしまい、作曲者の言葉より、バーンスタインの言葉の方が聴こえ過ぎてしまった感がある。
でも、わかってはいてもいいものである。
いいものであった。
また暑くなってきたこの8月の終わりに、バーンスタインに引きずりまわされ、翻弄され、でも最後は、Oh!レニー!とニンマリ思わざるをえなかった。
レニーのチャイコフスキー4番は、同じNYPOで、あと2つ録音があるはず。
58年と70年のCBS盤。
あともしかしたらニューヨークスタジアム響とのごく若いものも、あったような・・・。
そのうち、70年録音はFM録音そして何度も聴いていた。
これが実は覇気に満ちた爽快な演奏だった。
是非復刻してもらいたい1枚であります。
そりゃそうと、4番はたまに聴くとむちゃくちゃ面白い曲ですわ。
わたしの愛聴盤は、あと先にあげたハイティンク、アバド(ウィーン盤)、プレヴィン、小澤などのスマートなヨーロピアン系が多いですな。
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コメント
私は2年前から靖国神社付近の会社で働いてまして、3.11の地震では靖国神社境内に避難しました。九段下から神保町あたりの古い住民の方々は、郊外に転居してしまった方が多いようですね。
さて、バーンスタインのチャイ4はおどろおどろしいけれどたまに聴くには感動的でいいですね。普段はしっかりしたDGのムラヴィンとか、さわやかなデッカのセル、あるいは小澤パリ管などがいいです。
投稿: | 2011年8月24日 (水) 06時36分
管理人さん こんにちは。
やっと夜半には秋の気配が感じられます。
そろそろ聴きはじめてますが、何故かバ―スタィンのチャィコは縁がありませんでしたので是非味わってみます。
ずっと前ですがレニ―のショスタコ5番、ウィーンとのライブが本当に素晴らしい演奏でした!
普段は実力半分のオケが全力でしたよ…特に3楽章とフィナーレの中間の祈りの深さが彼でなければの出来でした。
投稿: マイスターフォーク | 2011年8月24日 (水) 13時19分
チャイコにはまったく関連はないのですが靖国神社つながりということで。
若かりし頃、靖国神社の目の前に会社がありました。
ある日バイトの子に仕事を頼んだのですが翌日になっても連絡なし。
ふだんしっかりした子なのでどうしたのかなと思って聞いてみたら御霊祭りのことで頭がいっぱいで頼んだ仕事を忘れいたそうです。
私は御霊祭りには一度昼休みにチラリとしか行ったことがないのですが、yokochanさんの記事を拝読しそんなに楽しいところだったとは知りませんでした
投稿: はるりん | 2011年8月24日 (水) 14時47分
faurebrahmsさま、こんにちは。
九段下の御勤めとのこと、ご縁ですね。
たまに、そちらに訪問したおりには、いつも路地裏探訪です。
懐かしい定食屋さんや、割烹やそば屋さんはそのままあったりして、区画ごと残っているのを確認してうれしうかったりする一方、まったく跡形もない場所もあったりで、悲喜こもごもです・・・・。
都心すぎる下町の悲しさです。
レニーのチャイコは好きです。
CBS時代の全集や白鳥の湖は素敵なものですね。
あと、そうです、小沢さんとパリ管のチャイコフスキーは絶品でした!
投稿: yokochan | 2011年8月24日 (水) 21時41分
マイスターフォークさん、こんにちは。
昼は暑さが残りますが、朝晩は涼しく感じますね。
これからいい季節です。
レニーのチャイコ。
年代を意識して是非にもご確認ください。
そして、ウィーンフィルとのショスタコ5番。
75年(?)のウィーンライブでしょうか。
FM放送のテープをお宝のようにして温存し、CDR化しました。きわめて素晴らしい演奏ですね。
録音も生々しくてこれも素晴らしい。
レニーとLSOの、ショスタコ追悼の第5の2楽章もありました。
これなんて、涙が出るほどの壮絶な演奏でした!
投稿: yokochan | 2011年8月24日 (水) 22時09分
はるりんさん、こんにちは。
あらま、九段下仲間だったのですね。
もっともわたくしは、80年代初頭で一昔前ですが・・・。
あそこにいると、靖国ビームといいますか、なんといいますか、夏は独特の熱狂にさらされてしまいます。
きっと、そのバイトの方もそうだったのでしょうね。
いまは考えられませんが、当時の御霊祭りは、日本の各地のそこそこ規模あるお祭りと同列の賑やかな催しの一環だったんですね。
最近のものは知りませんが、靖国そのものがなにかとクローズアップされるようになった政治的な存在ですから、お祭りも、あんまり楽しくなくなったのではと、想像してます・・・・。
投稿: yokochan | 2011年8月24日 (水) 22時20分
残暑お見舞い申し上げます。
77年に大学生になったばかり…私も77年に大学生になったばかりでした。
「花神」「勝海舟」懐かしいタイトルです。幕末ものではありませんが、中学生の頃に観た「国盗り物語」や「新平家物語」も記憶に鮮明です。もっと古いところでは「風と雲と虹と」、これはいまだにテーマソングが口ずさめます。そして、記憶に残る一番古いものは「源義経」でしょうか。
私もなぜか男の物語のほうがよく覚えていますねえ。なぜかしら…
今日も、夕方雷が鳴って、激しい雨が降りました。いつどこに襲ってくるかわからないゲリラ豪雨、被害にあわれませんように。
投稿: 聖母の鏡 | 2011年8月24日 (水) 23時06分
聖母の鏡さま、こんにちは。
こちらこそ、残暑お見舞い申し上げます。
晴れたり、大雨だったり、涼しかったり、暑かったりと、目まぐるしくもややこしい天候ですね。
地球はどうにかなってしまったみたいです。
わたしも、幕末もの以外では、「国盗り物語」がとても好きでした。道三と信長の出会いなど、いまもって覚えてます。
新平家もよかったですねぇ!
わたしの一番古い記憶は、「赤穂浪士」でして、以降はほとんど見てました。
歴史小僧でした(笑)
今日も雨には要注意です。
気をつけてくださいね。
投稿: yokochan | 2011年8月25日 (木) 11時22分
チャイコの4番ですか。長い間、ムラビンスキーとかセルの演奏を聴いていました。デュトワ&N響の演奏も大好きです。ご紹介のバーンスタイン!結構ですね^^
モスクワでの演奏のライブらしく、音質がイマイチなのですが、そこはそれ、ライブで燃えるバーンスタインのことなので、いつになく無茶な仕上がりになっています。2回目を聴くのがちょっとツライのですが、バーンスタイン&ニューヨーク!大好きです。
私はどうしても1楽章が好きで聴いてしまいます。その昔、バーンスタインがこの曲を音楽番組で解説していました。
あのくり返し現れる1楽章の泣きのメロディーに「I want it! I want it!」と自分でピアノを弾きながら歌っていました。ナルホド。。。そういわれてみりゃ、そうも聞こえてくる。。。解説しているときのバーンスタインは今の私よりもはるか年下。
バーンスタインって本物の天才だったんだなー!ってつくづく感じます。
投稿: モナコ命 | 2011年8月25日 (木) 20時47分
こんばんは。小学校の社会科見学で国会議事堂。最高裁判所といった永田町。そして、靖国神社といった見学場所(科学技術館も)は入るのが常識となっています。社会人になるための準備段階だそう。
バーンスタインの再録。少し重々しいが、聴けば聴き入ってしまいます。お国ものという訳ではないがムラヴィンスキーも入れます。言うなれば日本の演歌のようでしょう。国を大切にしたくなります。
ここで:小澤さん。公演キャンセルされました・・・。
投稿: eyes_1975 | 2011年8月25日 (木) 22時39分
モナコ命さん、こんばんは。
セルとロンドン響のものは懐かしいです。
わたしは、へそ曲がりで、ムラヴィンスキーのものは1回聴いたのみで、そのままです。
本文に書いた以外では、同じニューヨークフィルを指揮したバレンボイム盤が竹を割ったような演奏で好きだったりします。
ヤングピープルズコンサートは、中学生のときにテレビで観ました。
I want it!は、なかなかに濃厚な表現ですね。
いかにもバーンスタインらしい。
あの番組では、マーラーの4番の鈴の音を執拗に取り上げていたのが印象的でした。
もう少し長生きして欲しかったものです。
投稿: yokochan | 2011年8月26日 (金) 23時05分
eyes_1975さん、こんばんは。
そうですね、子供たちもバスで同じルートを見学しております。
私の大昔の社会見学は、神奈川県庁でした。
ちょっとショボイです(笑)
レニーの晩年様式は、濃厚で重いですね。
最初は抵抗あっても、聴くうちに入り込んでしまうのです。
ロシア系の演奏は、ちょっと苦手なのですが、克服しなくてはと思ってます。
そして、征爾さんの体調、心配です。
大事にいたらなければいいのですが・・・・。
投稿: yokochan | 2011年8月26日 (金) 23時18分
(o^-^o)
チャイコフスキー第4はストーカー女生徒との結婚(ホモを隠すため?)
が破綻、川に飛び込み自殺を図った直後に作曲されたので
メランコリックでコロコロ変わる曲想が素晴らしい。
バーンスタインはロシア系ユダヤ人。
彼にとってロシアはもう一つの故郷。
この最晩年の後期3大交響曲の録音はいずれも超ヘビー級。
彼がチャイコフスキーに愛着を持ったのは、同じロシアだけでなく
同性愛者としての共感もあったのでは??
投稿: 影の王子 | 2011年9月21日 (水) 17時07分
影の王子さん、こちらのバーンスタインにもありがとうございます。
チャイコフスキーのその道の嗜好は有名ですね。
彼の素晴らしい作品を思うと、あんまり考えたくありませんが、レニーのロシア・スラヴ系音楽への入れ込みは晩年の粘着系の重い演奏から充分に伺えます。
両刀使い(?)のバーンスタインの開放性と天才性には感心してしまうのみです。
CBSの旧盤との比較も面白いものです。
投稿: yokochan | 2011年9月24日 (土) 11時43分