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2011年9月17日 (土)

神奈川フィルハーモニー定期演奏会 下野竜也 指揮

Minatomierai20110916

しばらくぶりの「みなとみらい」。

神奈川フィルハーモニーの2011年後期の定期演奏会が始まりました。

Kanagawaphl_20110916

指揮は、神奈フィル定期の常連になりつつある、下野竜也

いかにも、下野氏らしいユニークかつ楽しくも知的なプログラム。
しかも、神奈川フィルハーモニーの主席奏者や、オーケストラの持ち味が存分に楽しめるときたもんだ。

   シベリウス  アンダンテ・フェスティーヴォ

   ニールセン  ヴァイオリン協奏曲

           Vn:石田 泰尚

   グルダ    チェロと吹奏楽のための協奏曲

           Vc:山本 裕康 

   ラヴェル   スペイン狂詩曲

   ゼキーニャ・アブレウ   ティコ・ティコ (アンコール)

    下野 竜也 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
         ※シモノー&聖響 対談付き
                     (2011.9.16@みなとみらいホール)


一見、とりとめなく、ばらばらに散りばめられた選曲に思われるが、なかなかに考え抜かれ、そして好奇心も刺激され、かつ満足させるに充分な素敵なプログラム。
舞台の転換もあったりして、長いコンサートになりました。
終演後、時計を見たら9時25分でありました。

前半が、フィンランドとデンマークの北欧もの。
後半は、オーストリアとフランスとスペイン、ブラジルと?マークが付いちゃう不思議さだけれど、聴いてみれば、カーニバルチックなお祭りのノリの音楽。
しかも、神奈フィルの名手ふたりのソロも相まって、最高に盛り上がりましたよ。

シベリウスの素敵な小品。
このあたりのシベリウスの愛らしい作品を、わたしは結構好んでいて、日曜の晩、月曜が始まる前の日などのお休み前の音楽として楽しむことも多い。
安らかな気分にさせてくれます。
冒頭から、すっかりリラックスさせてくれた神奈フィルの弦ならではの桂演です。

 俺サマ石田さまの登場。
今日は、黒のシャツに、紫のタイと渋い。
そして、ニールセンの協奏曲も渋い。
晦渋な印象ばかりの交響曲のイメージからすると、旋律線が良く見え柔らかく聴きやすい。それでもとらえどころのない曲に思っていた。
けれども、こうして実演で聴くと、全体の構成もわかりやすく、親しみやすい曲に感じた。
バーバーの協奏曲を感じたり、シベリウス風のひんやり感も味わえる。
そして、石田さまのスリムでかつ熱いヴァイオリン演奏は、この曲をクールでスマートな音楽として聴かせてしまうところがいつもの石田氏らしいところ。
コンマス席で座って弾いていても、立ちあがるようにして弾いちゃうけれど、ソロとして演奏していると、その多彩なアクションとに目も耳もくぎ付けになる。
大きくなったり小さくなったり(そう、屈伸しちゃう)、跳ねたり、足踏みしたり・・・です。
でも、それがこけおどしの音楽となって反映されないところが、この方のすごいところ。
どんな動きをしようとも、出てくる音楽は、豊穣かつ繊細。
細見な音色は、こうした北欧系の音楽や後期ロマン派の音楽にぴったりであります。
オケの仲間を見渡しつつ、下野さんとも顔近付けてアイコンタクトしつつ、実に気持ち良さそうに弾いておりました。
一気呵成に終わる洒落たエンディングもオケとともにバッチリ決まって大ブラボーでございました

休憩時間歓談中は、隣にいらっしゃった聖響さんがお知り合いと、マーラーの話を一生懸命にしているのを、こちらも耳を澄まして、ふむふむと一生懸命に盗み聴きしておりました(笑)

後半は、チェロの山本さん、指揮の下野さん、おふたりとも、吹奏楽&バンドメンバーと一緒にステージに登場。
フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、トランペット、ホルン、トロンボーン、テューバ、コントラバスに加えギター、ドラム、ベースといったユニークかつクラシカルじゃない編成。
みなさん、燕尾服から黒いシャツ姿に衣裳替え。
グリーンの蝶ネクタイとグレーのハットもお洒落なのでありました(笑)
 ジャズ奏者としても鳴らしたピアニスト、フリードリヒ・グルダが、朋友ハインリヒ・シフのために書いた協奏曲。
時代錯誤のロック風、アルプスの田園牧歌風、シリアスな無伴奏風、古典風、ジャズっぽくかつカーニバル風の行進曲・・・・、こんな多彩な5つの楽章からなる30分の音楽は、聴く側も演奏する側も楽しめるオモシロ作品なのでありました。
まさに、人をくったような、グルダそのひとを感じさせる。
 バンドが入るものだから、チェロもマイクを当てて増音。
それが全然不自然じゃなくて、バランスがとても取れてました。
横長に配置して、カジュアルないでたちで、みなさんリズムも取りながらの演奏は、聴くわたし達も、思わず動きたくなってしまう楽しさに溢れてます。
ちなみに、youtubeで観れる「アルミンクの新日フィル」の演奏会は、とってもお堅いクラシック寄りの演奏風景ですので、今回のものとの比べてみてください。
http://www.youtube.com/watch?v=Ludf3NPN3UY&feature=related

石田さんの個性とまた異なる山本さんのチェロは、その誠実で優しいお人柄そのもので、ジャジーでポップな曲を弾いてもそれは変わりません。
とってもナイスで、しかも無伴奏の楽章ではチェロの響きのコクと深みが漂い、神妙に聴きいるのみでした。ベートーヴェンのオマージュみたいにも感じたこの場面、グルダもこんな曲書いたのだなぁ、と妙に感心。
その前、アルプス風ののどかな楽章では、フンパーディンクの「ヘンデルとグレーテル」を思わせるもの。
それから、やや古風なメヌエット楽章は、ギターやタンバリンもポロポロ鳴って、こちらはドン・キホーテみたいな雰囲気に。
ドイツかオーストリアの田舎のサーカスみたいな少しばかりチープで、仰々しい終楽章。
この曲がにぎにぎしく終わると、これまた大ブラボー

フルオーケストラへの配置中に、下野さんが登場して、客席にいた聖響さんを呼び出し、楽しい同期歓談をご披露のおまけ付き。

最後は、ステージにオケメンバーぎっしりのラヴェル
こちらはもう、ゴージャスな耳のご馳走。
文句なし、なにもいうこたぁ~ござんせんよ。
イェ~イ、最高だぜ、って感じ。
それにしても、ラヴェルって天才的です。
オケがこんなに精妙かつ多彩に鳴り渡るなんて。
それを完璧に再現した下野さんの明快な指揮ぶり。
そして神奈川フィルのきらきら美音は、ここに至って大炸裂。
ここでも飛び交う大ブラボー

終わりかと思ったら、下野氏は山本さんを引っ張ってきました。
石田・山本を両翼に配置して、アンコールはきっとお馴染みの曲、ということで・・・・・。
おんやまぁ、始まったのはラテンナンバーの「ティコ・ティコ」じゃぁありませんか、お客さん。
ヴァイオリンとチェロの独奏付き、フルオケによる「ティコ・ティコ」は、これまたゴージャスきわまりないフルサービス全開、満漢全席横浜中華街状態
神奈川フィルの輝かしい響き炸裂の大爆発状態。
目尻、鼻の下、わたしの顔はすべて伸びきり破顔状態。
下野氏のプログラミングとステージ盛りあげ上手の魅力と実力に感服状態。

参りました、やられましたよ。

Doubustuendori_1_2

そして、スゴイ勢いで、いつもの神奈川フィルを勝手に応援するメンバーと、ラストオーダー間近のいつもの店に直行して、スゴイ勢いでコンサートの興奮そのままにビール飲みまくりました。
あんまり夢中で、いつもの写真を撮り忘れ・・・・。

こちらは、最終ぎりぎりまでの2軒目の中華で紹興酒を飲むの図。

みなさん、お世話になりました。

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コメント

管理人さん こんにちは。

とても盛り沢山のプログラム! まるでホテルのバイキング料理のようですが、どれもが素材の新鮮さとシェフとスタッフのアンサンブルが生きてるようで私も必ず聴いてたと思います。

オケのレパートリーも必ずしも大曲長大で有る必要も無いと思います。

かつてはそうだったし…


グルダのシフとウィーンの連中のは 随分聴きましたが同じ釜の中の集まりでいかにも村バンドの酒盛りで泥臭くチロル風のいでたちが懐かしいです。

投稿: マイスターフォーク | 2011年9月18日 (日) 07時24分

どうも先日はありがとうございました。
またまた遅くまでお引き留めして申し訳ありません。
でも楽しいコンサートに以前の仲間で加わり、新たな若い人も、その上来期の刺激的なプロまで発表されてはもういやが上にも盛り上がってしまいます。
それにしても石田、山本の素晴らしさを改めて実感致しました。この二人がいることがどれほどありがたいことかと。ニールセンの素晴らしさ、グルダでは山本さんの熱いロック魂がシャウトしていましたね。
それにしても選曲の面白さはこういう演奏会を聴く機会があると言うこと(聴かされるということ)ですよね。それにしても、youtube、こんなのがあったのですね。様子は違いますがあのコンサートを思い出します。
それにしても次回、どうですかね。ちょっと怖い気もします。

投稿: yurikamome122 | 2011年9月18日 (日) 16時27分

マイスターフォークさん、こんにちは。
ほんと、バイキング料理のようでした。
しかも、超一流じゃないのに、この人たちでしか味わえない独特の味わい。
わたしたち、日本人の西洋音楽の再現も、こうして独自の域に達しているのだな、と痛感しました。

マーラーやブルックナーといった、重厚長大な作品ばかりがもてはやされるなか、こうした洒落たプログラムの一夜も、ほんとうに大切で味わいあるものに思います。

グルダの音楽にある、インスブルックやチロルの響き。
そうですね、この曲にもしっかりありました。
指揮者では、以外にもスウィトナーとも相通じる世界でしょうか。

投稿: yokochan | 2011年9月18日 (日) 22時20分

yurikamomeさん、こちらこそ、先日はお世話になりました。
わたしも、音楽会久しぶりなものですから、そして楽しいコンサートに、久々の皆さん、来季の展望・・・等々に興奮してしまい、興奮して麦酒を頼みすぎてしまいました。

ほんとに、あの2人の主席がいるというその存在自体に感謝しなくてはなりませんね。
おかげさまで、神奈川フィルのない音楽生活が考えられなくなりまして、そして期せずしてこんな素敵な音楽会を聴かされちゃうと、ますます入れ込んでしまいそうです。
いい按配、いい流れになってきてますね。

次回モーツァルトは、う~ん、たしかに、微妙なことになりそうな、そんな予感です。。。

投稿: yokochan | 2011年9月18日 (日) 22時41分

先日はありがとうございました。

今年度のシーズンで行くならこれだろ!と狙い撃ちした公演でしたが、ここまで楽しめるとは!
3月以来不足していた神奈フィル成分(?)を十二分に吸収できました。
そして、神奈フィルを良く理解し、ここまで魅力を引き出すプログラミングをした下野さんに拍手ですね。
神奈フィルの指揮者ポストを用意するのは難しいとしても、これからも毎年必ず登場して振ってほしいものです。

あの演奏会の後では、勢いのままに酒を飲むしかありませんよね。
私は飲みすぎで次の日はぐったりしてました…。
次はいつになるかまだ分かりませんが、その時はまたよろしくお願いいたします。

PS:グルダのyoutube、その動画で予習してました!偶然ですね。

投稿: syllable | 2011年9月18日 (日) 23時45分

syllableさん、先日はどうもでした。

名フィルもいいですが、やっぱり・・・、でしょう!
ほんとに、よきコンサートに帰浜されました。
下野さんは、実によい指揮者ですね。
そして、聖響さんと刺激し合って、よきコンサートを企画して欲しいものです。

でも、短時間によく飲みました。
終電のわたしは、眠らないように、ゲームやったり、立ちあがったりと工夫しながら帰りました(笑)

予習youtubeは、神奈フィル聴いちゃうと、ちょっと生真面目な演奏でしたね。

投稿: yokochan | 2011年9月19日 (月) 00時11分

こんにちは、初めまして。いつもこちらのブログ楽しみに拝見しております。
実は初めて神奈川フィルの定期を聴きにみなとみらいまでまいりました。
大変感激して帰宅いたしました。
下野さんの演奏者やオケの本質を見抜いた選曲のよさ、もちろん、指揮そのものも楽譜に忠実で真面目な下野さんらしさが充分にあふれ出たものでした。
石田コンマスのニールセンは第一楽章で思わず拍手でしたね。完璧なまでのテクニックと迫力に、観客の皆さんもわかっていながらも思わず拍手!
グルダは私も例のカプソンのユーチューブを見て、山本さんにはぐっと砕けた扮装でのだめのようにチェロをぐるぐる回しながら弾いてもらいたいなあと思ったものでした。それは無理でしたが、近いイメージで心から楽しめました。

シベリウスやラベル、アンコール曲も短いながらも神奈川フィルの様々な側面を聴けました。

管理人様の勝手に神奈川フィルを応援する会の方々のようにビールを短時間で飲みまくった気分、同感です。

また、神奈川フィルの演奏会に足を運びたいと思います。

次回以降詳細なレポート、楽しみにしております。

PS 休憩時間中にホワイエで後ろを振り向いたら聖響さんがおられました。実は管理人さんはすぐ近くにおられたのですね。


投稿: はっちー | 2011年9月19日 (月) 11時49分

はっちーさま、こんにちは。
コメントどうもありがとうございます。
初めての神奈フィル定期をお聴きいただき、そしてこうしてご感想をお聞かせいただき、わがことのようにうれしいです。
多彩な演目の一夜でしたが、こうして神奈フィルの魅力が全開になり、それをしっかりお楽しみになられたましたね。
ニールセンにおける石田コンマスの鮮やかさと美音、グルダでの山本さんのカジュアルでかつシリアスなチェロ。
ほかの曲目も、爆発力と美音のアンサンブルが楽しめました。
どうぞ、また続きのコンサートもお楽しみいただければ幸いに存じます。

私は、聖響さんの左手にあったテーブルに数人で歓談しておりました。お近くでしたか!

投稿: yokochan | 2011年9月19日 (月) 18時25分

金曜はお世話になりました。

たまにはこう言った演目も良いもので。
石田様のソロにコンマス、山本さんのソロ、
そして、あのハッチャケたアンコール!
ある意味、"贅沢な"1夜だったかもしれません。
来年度の演目も楽しみですし、
まだまだ、神奈フィルからは目が離せませんな!

またの際にも、よろしくお願いします。

投稿: スリーパー | 2011年9月19日 (月) 22時42分

スリーパーさん、こんばんは。
先般はこちらこそ、どうもお世話になりました。
久しぶりなもので、調子に乗って飲み過ぎてしまいました。

神奈川フィルのいいとこ全開の素敵な一夜。
聖響さんにはできない下野ワザ、ふたりのいいコンビネーションを継続してもらいたいものです。
シュナイト体制が懐かしくはありますが、金さん体制は、もしかしたらかつての、わたしがまだ知らなかった現田体制の再来となるかもです。

次回も、こちらこそよろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2011年9月19日 (月) 23時41分

神奈川フィルはますます腕を上げてきていると思うのは私だけかしら(笑)


話しは違うけど、個人的には知的な下野竜也さんに佐村河内守さんの交響曲第1番《HIROSHIMA》を振って欲しいです。やっぱ読響かな〜


シモーノ指揮、サムラゴッチ交響曲第1番《HIROSHIMA》・・・・・なんかよさげです。

投稿: マリリンバマチコ | 2011年9月21日 (水) 14時31分

マリリンバマチコさん、コメントおありがとうございます。
ご返事遅くなりました。
神奈川フィルを効いてきて、その独特の音色がますます磨き上げられてきていると思います。

下野氏は、きっと佐村河内作品も素晴らしく、的確に指揮してくれると思います。
そしてやはり重量級の読響ということになるのでしょうね。

投稿: yokochan | 2011年9月24日 (土) 11時31分

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