リスト「前奏曲」とワーグナー「リング」 5月神奈川フィル定期
この急な階段に、重厚なる建築物。
わたしも、この階段を昇り、帰りは上気した気分でゆっくり慎重に降りたことが何度かあります。
正面にまわるとこの趣き。
昭和4年の開設。生きる東京の歴史です。
1階には、アーカイブカフェがあって、蓄音器が鎮座し、SPコンサートも行われちゃうみたいだ。
わたしの思い出に残るこちらでのコンサートは、ドラティと読響のハイドン「ロンドン」とマーラー1番だ。
初ライブ・マーラーはいまも鮮やかに、そのドラティの動きのまったく少ない指揮とともに、このホールの音塊を覚えております。
響きは少なめだが、音のブレンド感は抜群。
レトロです。
日比谷公会堂には負けますが、神奈川フィルのもうひとつの本拠地の音楽堂も歴史あります。
そして、素晴らしかった神奈川フィルの今シーズンオープニングのマーラー。
次に続く今シーズン演目を、一挙に先取りして聴いちゃいますシリーズやります。
神奈川フィルハーモニーの5月の定期公演は、リストとワーグナー。
もっとも楽しみにしているコンサートのひとつ。
リスト 交響詩「レ・プレリュード」
ピアノ協奏曲第1番
Pf:後藤 正孝(2011 リスト・コンクール1位)
ワーグナー 「ニーベルングの指環」抜粋
指揮:現田 茂夫
2012年5月25日(金) 19:00 みなとみらいホール
わたくしのブログをご覧いただければおわかりのとおり、わたくし、そこそこのワグネリアンなのでもございます。
その膨大なワーグナー音源をこの先の人生、再び聴けるか、その置き場所は・・・、悩ましい問題デス。考えると夜も眠れません。
ワーグナーの理解者であり、義理の父親でもあるリスト。
この二人の作曲家のコンサートとはまた実にオツなものであります。
マーラーを演奏した後に、そのマーラーや同時期の音楽家に徹底的に影響を与えたワーグナーの音楽と、ワーグナーの根源にある存在のリストを取り上げることの妙。
世紀末のドイツ・オーストリアに焦点をあてた神奈川フィルの今シーズン。
その世紀末を生きた作曲家たちの指標になったのがワーグナーの、それも「トリスタン」を中心とする巨大な楽劇なのですから、マーラーのあとに聴くワーグナーにリストは格別なものがあるんです。
交響詩の元祖リストの、その名も「前奏曲」(レ・プレリュード)。
この曲は、ともかくカッコよくってダイナミックだし、抒情的な夢見る場面にも欠けておりません。
その中間部のホルンの朝の目覚めのような音色が魅力的なパストラルな場面が素敵です。
また違う演奏でレビューしますが、今回はシノーポリとウィーンフィルの生々しい演奏を再度取り上げておきます。(→過去記事)
コンサートの2曲目は、同じリストのピアノ協奏曲第1番。
協奏曲的な華やかさを持ちつつ、交響詩的なファンタジーあふれる音楽。
トライアングルの活躍が聴きものです。
こちらの最強の演奏は、若きアルゲリッチとアバドの共演。
瑞々しさと勢いに溢れた永遠の名演であります。(→過去記事)
演奏会ではリストコンクールの勝者の若い後藤さんと現田さんの巧みなサポートが聴きもの。
ワーグナーの4部からなる大作「ニーベルングの指環」。
延べ15時間あまりを要する史上空前の連作音楽劇。
一般のリスナーには、あまりに手ごわい作品なれど、その中からオーケストラ映えする名曲をチョイスして演奏することも、コンサートではよく行われるし、CD録音も多数出ております。
なかでも、ヴリーガーによる編曲は、連続して1時間あまりの「リング」ファンタジーのような大作で、CDもそこそこ出ております。
しかし、今回の神奈川フィルの演奏では、ヴリーガー版だと長く、重くなりすぎてしまうので、リング全体からの自由なチョイスによる演奏ではないかと推察しております。
現田さんの、外向的で華やかかつ歌心にあふれたワーグナーが楽しみです。
CDでは、ヴリーガーやマゼール版以外のチョイス版では、録音の素晴らしさも含めて、ショルティとウィーンフィル盤が最高。(→過去記事)
ウマすぎるし、オケの味がありすぎです。
あとは、セルとクリーヴランドなんかが定盤でありましょう。
ワルキューレの騎行ばかりに注目せず、5月の緑を感じながら「森のささやき」を、そしてワーグナーの行きついた最高のオーケストレーションを感動的な「ブリュンヒルデの自己犠牲」で味わっていただきたいです。
いずれも、神奈川フィルのビューテフルな音色がホールに鮮やかに広がることでしょう
次は6月定期を先取りします。
神奈川フィルのシーズン定期に是非おいでください。
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コメント
「前奏曲」(レ・プレリュード)は、ダイナミックさで高校生の頃から大好きですが、今は抒情的な面も含めて好きです。シノーポリとウィーンフィルの演奏は、ダイナミックかつ抒情的で素晴らしいと思っています。
シノーポリは、ブルックナーも含め、もっと評価されるべき指揮者だと考えます。
投稿: faurebrahms | 2012年4月28日 (土) 11時22分
faurebrahmsさん、こんばんは。
レ・プレリュードの魅力は、まさにおっしゃるとおりの動と静の世界ですね。
大昔は、カラヤン。
いまは、こちらのシノーポリやショルティ、そして渋いハイティンクやバレンボイムです。
それにしてもシノーポリ亡きあと、急速に忘れられつつあるようです。でもブルックナーが復活しますね。
タワレコオリジナルシリーズです!
投稿: yokochan | 2012年4月28日 (土) 22時19分
ドラティの青ひげ公をききながら、そういえば子供のころ「巨人」をきいたな、と思って検索したら、なぜかまたこのサイトにつきました。
私がきいたのは二日まえの厚生年金会館で、奥さんがコンチェルトを弾いた回。巨人は、読響の管がきたなくてがっかりした記憶があります。なつかしいですね。
投稿: もちだ | 2012年5月 3日 (木) 21時13分
もちださま、こんばんは。
コメントどうもありがとうございます。
厚生年金会館でも演奏会があったのですね。
どちらも歴史あるホールですが、日比谷はまだ現役なところがすごいものです。
わたしの時は、ハイドンのロンドンシンフォニーでした。塊の音、というイメージのみを温存しておりますが、いま思えば、ドラティを聴けたということはお互いに貴重な経験でございますね。
もう一度聴いて、確認してみたい演奏のひとつであります。
投稿: yokochan | 2012年5月 5日 (土) 00時26分