ブラームス、ウェーベルン、J・シュトラウス・ラヴェル 10月神奈フィル定期
銀座の歩行者天国です。
こちらでは、日本人の行動は控えめ、いま元気のいい隣国諸国の方々は大胆かつ元気でございます。
かつての我が邦も、海外ではそのように映っていたのでございましょうな。
銀座通りを新橋方面へ、8丁目あたり、「資生堂パーラー」さんです。
原色を廃したとりどりのパステル色使いが、とても美しく、曼荼羅のようにございます。
神奈川フィルハーモニーの今シーズン定期プログラムを踏破する特集。
今回は、10月の定期公演です。
ブラームス ヴァイオリン協奏曲
Vn:シン・ヒョンス
ウェーベルン 小管弦楽のための交響曲
J・シュトラウス 「皇帝円舞曲」
ラヴェル 「ラ・ヴァルス」
キンボー・イシイ=エトウ指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
2012年10月12日(金) 19:00 みなとみらいホール
石井さんと江藤さんが、ふたりで指揮するみたいな感じだけれど、日本の血を引くアメリカの指揮者ひとりにございます。
日本のいろんなオーケストラに客演して好評を博してますし、アメリカでかなりの実績をあげ、ドイツでは中世の色香ただようマグデブルク劇場の音楽監督としてオペラにコンサートにと活躍中の指揮者です。
神奈川フィルには2回目の登場で、2年前のコンサートでは半信半疑のワタクシが恥じ入るほどの素晴らしい名演を繰り広げてくれました。
オーケストラの統率力、指揮の技巧、勘所を押さえた聴きやすさ、そしてステージマナー、すべてがナイスなイシイ=エトウさんだったのでした。
前回の演奏会は、こちら→
演奏会でかけられる古今のヴァイオリン協奏曲では、チャイコフスキーと並んで、トップかもしれない、ブラームスの作品。
神奈川フィルでは何度も聴いてますが、ここでもシュナイト師の演奏がいまだに耳に残っております。
前にも書きましたが、ブラームス・オケでもある神奈川フィルから、イシイ=エトウさんはどんな響きを引き出してくれるのでしょうか。
韓国の若いシン・ヒョンスのヴァイオリンも注目。
彼女はまだ20代。技巧と、かの国の諸先輩のように情熱を持ったヴァイオリニストのようだ。
ロン・ティボーコンクールの覇者でもありつつ、KPOP風の可愛い子(みたいです)。
今日は、10月の演奏会とは、おそらく180度違うでありましょう、熟練の奏者と指揮者の味わい深い組み合わせのブラームスをあえて聴きました。
ナタン・ミルシュテインとオイゲン・ヨッフムの老熟コンビに、70年代のウィーンフィル。
もう何も言うことはありませんね。
当初、メン・チャイと同様にアバドの指揮が予想されたが、ふたを開ければ、ヨッフム。
希少な組み合わせによるブラームスが実現しました。
渋さを通りこして、明るささえただよう大人の世界。
名人同士の無為の境地。
その正反対かもしれない、積極的かつ若さみなぎるブラームスにも期待しましょう。
9月に続いて、10月もウェーベルン。
それも、めったに聴けない交響曲とは。
このような曲を定期に持ってくる英断を讃えたい。
少ない作品の中でも、もっとも難解な部類の曲のひとつがこちら。
交響曲とありますが、演奏時間は10分。
師シェーンベルクの12音技法を用いての、室内規模のミニ交響曲は、1楽章のソナタ形式と2楽章の変奏形式のふたつの楽章からなります。
同じく師の室内交響曲を意識していたかどうか。
でもそれ以上に自由に、別次元に羽ばたいてしまった感のあるウェーベルンで、初演の際は、聴衆の笑いを誘ってしまったとあります。
それほどまでに、当時としては実験的、アヴァンギャルドに満ちていたわけなのでしょう。
いまでも、とらえどころない、明滅する10分間、いかに聴くかを鋭く問われてしまうようです。
前にも書いたとおり、「研ぎ澄まされた緊張感」を体現できます。
完璧極まりないブーレーズとベルリンフィルの演奏ではありますが、神奈川フィルの華奢な美音で聴くウェーベルンはどうでしょうか。
ブラームスが前半で、ウェーベルン以降が後半という、一見短いが、味わいに溢れた演奏会。
ブラームスも魅惑した、Jシュトラウスファミリーのワルツを持ってくるという、普通の演奏会では考えられない大胆な布陣。
しかも、前はウェーベルンなんですから!
ウィーンを魅惑したワルツは、R・シュトラウスが引き継ぎ、退廃的なまでの甘味なワルツをオペラや交響詩に組み入れた。
ウィーンを舞台にした、「ばらの騎士」のワルツを思い起こしながら聴くJ・シュトラウスの円舞曲もいいかもしれない。
シュトラウスが「ばらの騎士」で描いたモーツァルトもいた時代にはワルツの概念はなかった。
新ウィーン楽派の面々は、Jシュトラウスのワルツを室内系に編曲したりしていて、彼らのウィーンへのオマージュの精神がいかに強いかを伺い知ることもできます。
ゴージャスな「皇帝円舞曲」は、ウィーン華やかななりしハプスブルク帝国のお姿を伺い知ることができましょう。
1889年の作品で、このあと20年くらいで第一次大戦が巻き起こり、オーストリア帝国は終焉を迎えるのであります。
この曲をいにしえ風のヨゼフ・クリップス指揮のウィーンフィルの演奏で聴くと、かつての古き良きウィーンへのノスタルジーに満たされ、東洋人たる私どもも、あぁ、あの頃は良かったなぁ・・・・なんて想いにつまされてしまうんです。
時代を経た丸っこい録音にも哀愁を感じます。
オマージュといえば、J・シュトラウスのウィンナ・ワルツへの想いがノスタルジックに結実したラヴェルの「ラ・ヴァルス」。
自身、参戦もし、苦しい思いもした第一次大戦が終わってから書かれたバレエ音楽は、12分くらいの長さの中に、めくるめく魅惑のワルツと甘味かつ感傷的なシーンに溢れた、あまりにステキでお洒落な音楽なのです。
わたくしは、ラヴェルの音楽の中で、「ラ・ヴァルス」が一番好きかもです。
ワルツの3拍子は、耳に、脳に、そして体へとスルッ~と、入り込んできて、いかに聴く人を魅惑してしまうことでしょうか。
ラヴェルの音楽は、シュトラウス・ファミリーの明るく華やかで、気持ちを解きほぐす音楽以上に、人の五感にも完全に入り込んでくる音楽です。
ここにはもしかしたら、香りや味覚すら潜んでいるように感じるんです。
若きプレヴィンとロンドン響の演奏は、意外なまでの渋さもも持ちつつ、華やかさも欠けてません。
にちのウィーンフィル盤とともに、プレヴィンならではのビューティフルな演奏に思います。
イシイさんエトウさん。きっと神奈フィルにばっちり合ったこの曲で、爆発的な名演を聴かせてくれそうな予感がします!
いまからやたらと楽しみな10月なのでした。
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コメント
今晩は、よこちゃん様。その昔、不甲斐ない横浜ベイスターズに「横浜高校と替われ!」という野次が飛んだと聞いた事がありましたが…今そんな状況なんですかね★
シン・ヒョンスさんの演奏聞いた事ありますよ。ベートーベンのスプリングソナタやブラームスのソナタ3番でしたね。24歳とは思えない確かな技術と表現力。素晴らしかったです!アンコールのタイスの瞑想曲なんて心にしみるようでした。片言の日本語の挨拶や曲紹介も初々しく感じました。キリリとした美人ですしね。きっと素晴らしいコンサートになると思います。乞うご期待!その頃、ベイスターズが息を吹き返してクライマックスシリーズを争っていると信じましょうよ、よこちゃん様!
投稿: ONE ON ONE | 2012年5月 2日 (水) 23時03分
ONE ON ONEさん、こんばんは。
胸に染み入るコメント、どうもありがとうございます。
シンちゃん(ヒョンスちゃん?)の情報もありがとうございます。
正統派の演目ですね。
今回もブラームスですし、むちゃくちゃ萌え~ですよう(笑)。
そして、秋にはお互い、熱く応援していたいですね!!
へこたれません、だって、これまで何十年もこんな姿見てきたんですもの。
投稿: yokochan | 2012年5月 3日 (木) 00時16分
今年のプロ野球はお天気みたいに異常であります。まぁyokochanさんには申し訳ないけど、セントラルの定位置は相変わらずですね。いっそ、昨年の身売り話の際に、新潟に来ればよかったのに(サッカーは今年、崖っぷちです!)。
シン・ヒョンスのブラームス、きっとブラームスらしくなく尖がった演奏になると思います。弓の馬の毛、何本切るか勘定してみてください(間違えても重厚でロマンティックな演奏にはなりません。チョン・キョンファとまでは言いませんが、相当情熱的です)。
ウェーベルンの交響曲か、いいなあ。東響新潟定期でパッサカリアはやってくれたけど。
神奈フィルのフランス音楽は首都圏では一番フランスの香りがすると思われます。「ヴァルス」、羨ましいです。
投稿: IANIS | 2012年5月 3日 (木) 18時51分
こんばんは、よこちゃん様。 男宮本やりました!2000本安打!同期の稲葉と同時期の達成。ふたりともホントにおめでとうございます。
今日はベイも粘りましたね。勝利ではないにしろ、それに匹敵するくらいの引き分け。きっと、これをきっかけに快進撃が始まりますよ。楽しみが増えました。
投稿: ONE ON ONE | 2012年5月 4日 (金) 20時40分
IANISさん、こんばんは。
今日は少しはまともでしたが、定位独走には変わりなく、今後も走り続けることでありましょう。
そして、そうですか、ヒョンス嬢の情熱ブラームス、とても楽しみであります。
弓の糸を数えましょう!
ウェーベルンのこの曲は、めったに実演に乗らないですね。大英断ですし、二つのウィーンにまつわるワルツもともかく楽しみ。
ご指摘のとおり、神奈フィルは、フランスの香りももっておりますね!
投稿: yokochan | 2012年5月 5日 (土) 00時16分
ONE ON ONEさん、こんばんは。
まずは、宮本選手の2000本安打、おめでとうございます。実にいい仕事してますね!
稲葉ともども、巨人には決して似合うタイプの選手たちではございません。
そして、ベイですね。
なんとも、すっきりしませんが、土壇場で、負けなかったことは褒めてあげたいです。
ソロホームラン2本というのが、どうにも気に食いませんが。。。
ノリさんがいなかったら、恐ろしくなりますよ。
しかし、筒香の復帰は極めて明るい話題です!
投稿: yokochan | 2012年5月 5日 (土) 00時34分